IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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誤字、脱字、こうしたほうが良いなどの意見は歓迎します。
それでは、拙い作品ですがごゆるりとお楽しみください。


プレリュート
プロローグ 動き出す闇


「やれやれ。わざわざ足跡を残さなくてはならんとは――。偽装も大変だ。それに……」

 

人気のない裏町で溜息をつく黒服の男が一人。

その姿はいかにもわけありですよと全力で主張している。

こんな怪しい男なのだ。

顔は隠せども行動はバレバレ。

尾行され放題である。

 

この男が向かっているのはIS学園というところだ。

ここから飛行機に乗って、大体6時間ほどと車で3時間ほど。

 

ISを使えれば数分で着けたのに、と面倒臭がっている。

ところでISとは簡単にいえば多機能強化外骨格(マルチフォーム・スーツ)であり、その力は潜在的に国家をも滅ぼしうるほどのパワーを持つ。

 

ただし、兵器としては最大の欠点がある。

元々戦闘用という触れ込みではなかったのだが――、それは置いておく。

いや、欠点があったというべきなのかどうなのか。

そのISには女しか乗れなかったのだ。

故に女尊男卑世界が出来上がってしまったわけなのだが、ある時突然にISを操れる男が見つかった。

ISを操ろうとした男たちは万では利かないというのに――、その男はいとも容易く操ってしまった。

 

だが、この黒服の男はISを操ってみせた男――織斑一夏ではない。

彼は中学生。いや、卒業して高校生になろうとしているところだ。

こんな黒服なぞ着ているわけがない。

彼の服装センスは極めて一般的だ。

個性がない、と表現してもいい。

 

では、この男は何者なのか。

その正体は一夏の存在が世界に広まってから発表された、もう一人のISを操れる男である。

無所属の一夏とは違い、彼は希テクノロジーという黒い噂にまみれた機関の人間だ。

一夏のIS学園入学は彼の保護のためだが、黒服の方はというとこちらは強引にねじ込んできた。

学園側も狙いはわかるが手出しはできないので警戒することしか出来ない。

 

まあ、ともかく――こうして彼が足を使って歩いているのはISの製造基地を悟らせないためだ。

希テクノロジーは今時珍しい秘密主義の塊だった。

調整や何やらでずっと基地に居たが、他の機関に場所を悟られるわけにも行かないのでこうしてせっせと偽装工作に取り組んでいるというわけだ。

 

だが、それなら裏町に来る必要なんて無い。

一体何を考えているのやら――。

 

「こうまであからさまに人を尾行されると、殺してやりたくはならないか?」

 

虚空に向かって質問した。

何も見えないし、何も聞こえない。

 

彼はそれを黙殺して続けた。

 

「なあ――。何故貴様ほどの者がここに居る? 暗殺狙いというわけでもあるまい。その程度の考えしか無い残党どもがそこまでしぶとく生き残れるはずがない。――亡霊が現世を滅ぼすつもりか?」

 

沈黙。

肌に突き刺さるような沈黙だけがそこにあった。

その沈黙がぎりぎりと音を立てて圧迫されていく。

 

「いつまで黙っているつもりだ? なにもしないのなら、お前を滅ぼすぞ。その胸に掲げたハーケンクロイツは飾りか――。人狼の女」

 

―ガシャアアアアン!―

 

地を引き裂く音が夜の闇を引き裂いた。

IS同士が衝突した音――。

 

闇の中から融けるように姿を表したISはその爪で男を引き裂こうとした。

が、相手は爪を恐れずに顔にカウンターを撃ち込もうとした。

そんな馬鹿げた行為を女は驚異的な反応速度で持って片手を盾にして爪を叩き込んだ。

この間わずかにコンマ2秒。

ISには操縦者の思考速度を加速させる能力があるが――、二人の攻防はそれにしても度を超えている。

 

「……なるほど、第三世代機――特殊兵器を積んだ実験機か。よく調達できたな。だが、私の『停滞』(ステイシス)には敵わない」

 

「…………」

 

挑発には爪で応える。

黒と黒がせめぎあい、互いを殺そうと迫る。

 

男の方はブレードを装備しているが、女のほうは爪だけで戦っている。

 

「ふふん。さすがに厄介だな。こんなところで銃を連射しては、さすがにお咎め無しといかんしな。やれやれ――」

 

そう言いながらも、声には余裕がある。

宙に浮く仮面の下でそんな顔をしてているのやら。

 

「……っ!」

 

女はひたすらに爪をひるがえす。

攻撃が当たり始めてきた。

 

だが、爪による攻撃があたっても、ダメージらしいダメージは見受けられない。

ISには絶対防御というシールドがある。

これのお陰で操縦者が傷つくことはない。

だが、絶対防御には限界がある。

ISコアに蓄えられるシールドエネルギーという限界が。

 

女は子供のような笑顔を浮かべ――

     ――男は残酷な気配を遊ばせる。

 

「野生の戦い方というやつかな。面白いものを見せてもらった。お礼に私も面白いものを見せてやろう」

 

「コード――【666】(トリプルシックス) モード――【獣】(ビースト)

 

仮面の目が地獄のように紅く染まる。

気配が死神のそれから獣へと。

 

「……シャアッ!」

 

野獣の動きで襲いかかる。

その動きは直線のようでいて、ジグザク。

 

「――――っ!」

 

女もまた、獣のようにしなやかにその攻撃をかわす。

 

だが――。

動きのキレが違いすぎる。

 

そもそも女は地に手足をついて高速機動を行っているが、男は空間を掴んで縦横無尽に跳ね回る。

イメージ的に言えば、空中に取ってを作りそれを掴んで自分を投げ飛ばしている。

ここまで滅茶苦茶に動かれては、動きを捉えることでさえ神技である。

 

女は4次元的な動きに対応しきれていない。

殴られ、蹴られ、さらには斬られる。

 

シールドエネルギーは瞬く間に危険域に陥る。

 

《オオーーーン!》

 

遠吠えをした。

今まで口を利かなかった彼女が初めて口を開く。

 

彼女の黒い機体は蒼いオーラに覆われ、その光は強固な守りと絶大な攻撃力を与える。

剣や刀とは違った明らかに魔法的な力。

これが第二次移行(セカンド・シフト)したISの力。

 

「これは――。面白くなってきた、とは言えないかな。残念だけど、そこまでやられてはこちらとしては一瞬で終わらせるしか無いかな……」

 

その姿を見ても恐れるどころか、残念がるような姿を見せる。

お互いに残りのエネルギーはわずか。

決着は間近。

 

男は空間を蹴り上がり、上空へと高速飛翔。

女は吠えて向かい撃つ。

 

規格外超弩級戦略兵装(オーバードウエポン)――【対警備組織規格外六連超振動突撃剣】(グラインドブレード)

 

そして、取り出したのは6本のチェーンソーで組み上げられた柱。

ISには仮想領域武器を収納しておく能力がある。

この能力があれば、このようなISと同等の体積を持った兵器でさえ持ち歩くことが出来る。

 

「死ね」

 

宣告――落下。

6連チェーンソーはギャガガガガと言う騒音――、そして二筋の火炎を噴く。

 

人狼の女は一声吠え、そして迎え撃つ。

蒼いオーラが凝縮し、ゆらめく。

 

赤のチェーンソーと蒼のオーラがぶつかる。

 

耳を引き裂くような凄まじい音が響く。

ここに生身の人間がいたら――この音だけでおかしくなってしまうことだろう。

 

「は! 規格外超弩級戦略兵装(オーバードウエポン)に対向するか――。やはり、進化したISともなると恐ろしい……! だが、この私に力押しで勝てると思うなよ!」

 

ガリガリと蒼いオーラとともにISが削れていっている。

6連チェーンソーの威力の前に並のISでは、かすっただけでも機能停止にまで追い込められる。

世界大会の試合ですら超えるとんでもない死合が観客の一人も居ない闇の中で交差する。

 

《グルル……。シャアアアアア!》

 

女は牙をむき出して吠える。

最後の一滴の力まで振り絞って押し返そうというように。

 

だが――。

 

「終わりだよ。狼女」

 

無常にも、宣告がなされる。

背後から噴く火炎が増大する。

とてつもないパワーが急行落下を実現する。

 

2つのISは地表へと激突する。

 

―ズドォォォォン!―

 

まるで隕石が落下したかのような衝撃。

そのクレータの真中で女は気絶している。

見たところ傷一つない。

 

絶対防御のおかげだ。

これがあるからこそ――ISの中にいれば絶対に安全と言われる。

だが、男は仮面の下で凶悪な笑みを浮かべ――未だに作動し続ける6連チェーンソーを振り下ろした。

 

気絶した彼女を絶対防御は守る。

この時点で彼女のISは装備が解除されている。

一見して気絶した生身の女に武器を振り下ろすのは相当な勇気がいるはずだが、彼はいとも容易く外道を行う。

 

嫌な音が発されながらも、絶対防御は女を守る。

だが――それは永遠ではない。

攻撃を加え続ければ、絶対安全なISの中にいる人間でも殺せるのだ。

 

「さて、何秒持つのかな。起きていてもらっても意味のない拷問にしかならぬし、そういうのは嫌いだが。寝ているうちに殺されるのもどうなのだろうな。なあ――狼女。お前とて戦って死ぬ事こそが本望だろう。篠ノ之束も余計な装備を付けてくれる」

 

更に強く押し付けようとした時、チェーンソーが弾かれた。

男は弾かれたようにその方向を睨みつける。

ISのレーダーに引っかからなかった。

これは2000m以上離れた場所からの狙撃を意味する。

 

「……っち! 新手か。この距離でこの正確な狙撃――《魔弾の射手》リップヴァーン・ウィンクルか!?」

 

チェーンソーが沈黙する。

連結部が破壊されていた。

 

役に立たなくなったその武器を拡張領域へと収納する。

その間、実にコンマ1秒。

 

だが、そのわずかな時間に狼女は消えていた。

 

「何も気配を感じなかった……! この突然な消失は、あの猫か。そして、二撃目の狙撃も来ない。これは第一射の直後に逃げ出したな。これでは追いかけても無駄か。結局殺せずじまいか」

 

悔しそうにほぞを噛む。

明後日の方向を睨んで見れども、うんともすんとも言わない。

 

「まあ、いい。IS学園に行くか。修理も必要か。やれやれ、小娘一匹殺せないとは私も不甲斐ないな。だが――見ている奴に私の力は誇示できた。それで良しとしておく他あるまい」

 

つぶやいて、自分の足で歩き出した。

その腕には無骨な手錠のような鉄の輪っかがぶら下がっている。




次話からはISの登場人物を出します。
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