IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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学園生活編
第1話 のほほんさん


さて、飛行機に乗って、更に車に乗ること数時間。

やっとIS学園についたか。

 

いい加減ストレスでおかしくなりそうだな。

あんなに鈍い乗り物に乗ってまで外出するなど、そんな奴の気がしれん。

まあ、単なる不可攻略なのだろうけど。

 

しかし、それにしても立派だな。

これでは学校というよりも宮殿だぞ。

周りの警備も厳重でご苦労なことだ。

もっとも、外側だけだが。

 

ただ、外人がちらほら見えるところが学園の立場の弱さを示している。

かわいそうなことに、ここは日本が責任を負う場所ではあっても日本が主権を持つ場所ではない。

 

 

 

ちなみに私は強権を使って入学したから試験すら受けていない。

まあ、停滞(ステイシス)の基礎データは送っておいた。

後は勝手にあちらの方でデータを取るだろう。

現物に触らせはしないが。

 

さっさと受付に行き、書類を提出、鍵をもらって自分の部屋に行く。

ここらへんは普通に入学してきた女達と変わらない。

ただ、ここには私以外に男は居ない。

織斑一夏はまだ来ていないようだ。

 

「さて、入学式の一日前というのに人は少ない。少ないうちにさっさと修理に取り掛かるとするか」

 

部屋に適当に荷物を放り込んで、その足で出て行く。

彼は一人部屋に住むことになる。

特別な人間には個室が用意され、機密が保証される。

この場合の特別は専用機持ちやVIPのことだ。

今年度は個室の使用率は高い。

ここに世界初の男性操縦者が入るとわかった途端にこれだ。

まあ、無駄に多くて使わないからいい機会だろう。

 

 

 

「うるさくないので好都合とはいえ――流石に人が少なすぎる。ここの生徒にはISの操縦者になる気があるのか?」

 

ため息をついて整備室を見渡す。

広くて設備も整っているが人が居ない。

反対側で頭を悩ませている女の子が一人居るだけだ。

まあ、粗製IS乗りが乱造されたところで私には関係ない。

修理をすすめるとしよう。

 

「む――。ここまで見事に破壊されるとは。一度バラさないといけないか」

 

ISを点検してみて驚いた。

まさか、ここまで見事に壊されているとは。

作り直したほうが早いのではないか?

まあ、直すと言っても壊れたパーツを予備のパーツと交換するだけだ。

そもそも一撃必殺という超威力を得る代わりに武器に莫大な負担をかける特性上、修理しやすくはなっているが。

それでも直すのは事だ。

 

「まだ入学生も在校生も本格的に入ってきては居ないとはいえ、天下のIS学園でこれか。こんな調子で使い物になるのかね――」

 

ぼやきながらも手際よく修理を進めていく。

まるで柱のような6連チェーンソを分解して、人の腕より二回りほど大きい部品にまでバラす。

ちなみにISを使って作業を進めている。

人間の力では持ち上げられないとはいえ、かなりシュールな光景と言える。

普通はクレーンを使って作業する。

 

「ふふん。部品も結構揃っている。至れり尽くせりでありがたいことだ。設備だけは本当に見上げたものだ。お前もそう思うだろ?」

 

そちらを見ずに3人目に言う。

丁度終わりかけた頃合いだった。

 

「そうだね~。私も助かってるよ。けど、どうして分かったの? 私、作業の邪魔をしないように気配を消してたと思ったんだけどな」

「部屋に入った後に気配を消しても仕方ないだろう。それに、こんなところで作業しているんだ。直接的な邪魔さえしなければいくらでも見ててくれて構わん」

 

見られた相手を殺そうとする奴は例外なく馬鹿の極みだ。

情報なのだから漏出するに決まっている。

誰かに見られたくらいで失敗する計画なら――それはすでに失敗したも同然。

そしてもちろんステイシスを見たくらいで何かが分かるはずもない。

 

「そう。ありがと~。でも、羨ましいな。ISを使って作業できるなんて。楽そうで羨ましい」

「使えるものは活用するべきだろう?」

 

無邪気な彼女に彼は得意気に返す。

羨ましがられるのは悪い気はしない。

 

「私、布仏本音(のほとけほんね)っていうの。あなたは~?」

「私の名は神亡奈落(かみなきならく)だ。ところで、君はそこで一人で頭を悩ませている彼女に会いに来たのではないのかな?」

 

さっきからISを弄っている女性。

私の気のせいでなければ、どうもあのISは完成していないようだが。

まあ、率先して関わるようなことでもない。

 

「あ~。忘れてた。私、かんちゃんに差し入れを届けに来たんだった。じゃあね、らっくー。また今度」

「ああ。縁が合ったらまた会おう」

 

らっくー?

なにやら変なアダ名を名付けられたな。

そんな可愛い名前で呼ばれたのは初めてだ。

初めては何でも面白い。

この楽しさに浸っていたい気もするが、本音は女のほうに向かっていく。

私は食事でも摂ることにしようか――。

整備室を出て食堂に向かう。

 

「らっくー。一緒に晩ご飯食べよ~」

「……先ほど別れたと思ったのだが、あれは勘違いか?」

 

「何言ってるの~。さっきそこでバイバイしてまた会ったんでしょ。私もうお腹ペコペコ」

 

どうやら差し入れをさっさとおいてきて私に合流したらしい。

たった7秒の別れ。

詩的だな。

もっとも、それは何の意味もないということだが、な――。

 

「君がそのつもりならいいだろう。で、要件はあったりするのかな」

「そんなもの、ないよ~」

 

ないらしい。

初対面の男とここまで物怖じせずに喋れるのも珍しい。

 

「ところで、君の名は本音と言うそうだが。君はどこまで本音で行動しているのかな?」

「やだな。私、そんな黒い女の子じゃないよ~。で、あなたの乗ってたISってもしかして専用機?」

 

「そうだ。希テクノロジーが開発したIS――停滞(ステイシス)。色々と危険な機能が付けられている暴れ馬だ。何をどうしたのかは知らんが、弄っているうちに女にすら拒否反応を起こしてしまってな。で、手当たり次第に反応を調べていたら、私の専用機となってしまったわけだ」

「へぇ。じゃ、らっくーは他のISには乗れないの? それで、もう一人の男性IS操縦者もそうなの?」

 

「もう一人の方については知らない。だが、私が乗れるのはステイシスのみだ。そ、ステイシスに乗れるのも私のみ。私達には私達しか居ない。そういうのは素敵な関係だと思わないか?」

「あは。素敵だね~。まるで、恋人みたい」

 

「恋人なら別れることもある。だが、私達は死ぬまで共にあるさ」

「あ、それは違うよ~。恋人だってね、ずっと一緒にいるんだよ」

 

「そういうものか。生憎と、私は人間関係には疎くてね――」

「それじゃ、私とお友達になりましょ~」

 

本音の笑顔はあどけなくて、子供みたいだった。

……っふふ。

良い歪みだ。

――ああ。

きっと、私達は良い友だちになれる。

 

「――っ!っくく。君みたいな友人は初めてだよ。そうだな。よろしく、本音」

「こちらこそ、不束者ですがよろしくお願いします~」

 

「本音。食堂に着いたが、何がお勧めだ? それと――、注文の仕方がわからない」

「ええっ? らっくー、こういうとこ来るの初めて? それじゃ、私が教えてあげます。販売機で券を買って~、おばちゃんに渡すんだよ」

 

「ほう。で、ここに金を入れれば良いのか。うむ、合理的だな」

「そんな感想を言うのはらっくーだけだと思うよ~。でのほほんさんのおすすめはコレなのです」

 

「のほほん?」

「私のあだ名~。ついつい使っちゃうんだよね。なんで皆私のことをそんなふうに呼ぶんだろうね?」

 

「雰囲気だろうな。友人に侮られているのではないか?」

「駄目だよ。そんなふうに言っちゃ~。女の子はとっても傷つきやすい生き物なのです。だから丁寧に扱わなきゃダメ」

 

「……そういうのは、苦手だな」

 

口には出さないが、面倒くさい。

そこまでやるくらいなら、別に女と人間関係を築かなくても――

 

「や~。やっぱり始業前だと食堂も空いてるね。早く食券出して作ってもらお」

「なら、本音のお勧めを味あわせてもらおうか」

 

とっとと話を勧められたので、前の話は流す。

 

「はいよ、フルーツサンド2つね!」

 

見るからに人の良い、ついでに恰幅も良いおばちゃんが果物のたっぷりはいったサンドイッチを渡す。

これが本音のおすすめだ。

デザートだろ、とは突っ込んではいけない。

 

「ありがとう~」

「こういうときは礼をいうものなのか? ありがとう」

 

「いや、別に本音ちゃんは挨拶してくれるけど、必須ってわけじゃないよ。ま、挨拶してくれると嬉しいんだけど、忙しい時にゃ構ってやれなくてね」

 

「ふむ。見たところ今は空いているが、学期が始まったらそうも言ってられないのか」

「そうだね~。まあ、授業が始まっちゃったら席に座るのも一苦労だよ」

 

「あっはっは。あんたら、面白い子たちだね。これからもご贔屓にね!」

 

「料理をする気はないからな。食堂を使わせてもらうことになるな」

「あはは。こちらこそ、よろしく~」

 

二人は席に着く。

 

「どきどき……。どう~?」

「うん。うまいな。しかし、これはすぐに飽きるな。甘すぎる。こんなものを毎日食っているのか?」

 

「そっか~。私コレ大好きなんだけど、皆何故か敬遠するんだよね。とっても美味しいのに」

「そうか。私としてはコレに飽きないほうが不思議なのだが」

 

そう言って3口で食べ切ってしまう。

女用なので量が少ないのだ。

 

「ま、腹には溜まるな」

「うん、そうだね~。夜にはお菓子とか食べちゃうけど」

 

「それは辞めた方がいいな。ホルモンバランスが崩れてISに要らん負荷をかけるぞ」

「あっはっは。それ、初めて聞いたよ~」

 

「そうか? ISに最高のパフォーマンスを発揮させるために自分を調整するのは一般的ではないのか……」

「うん。一般的じゃないよ~。ていうか、専用機持ちでもそんなことしないと思うな」

 

「ふん。まあ、あの気違いじみた基礎理論はどうでもいいとして、まだ操縦の仕方の方は確立すらしていないからな。自分にあったやり方をした方がいい。――そう、それが本当に合理的なのかは誰にもわからないのだから」

「じゃ、うっつーはどういうふうにISを操ってるの~?」

 

「まあ、感覚かな。一々理論を考えていたらISなんぞ動かせん。私に限っての話だが、な。そういう奴は結構少ない。一々理論に従って飛ぶ奴らの多いこと、理論が発展しない理由がわかる」

「ほ~。なんで? なんで?」

 

「感覚で動かす奴は真っ先に足切りに合うからな。見た目が麗しくて、頭の良い奴が候補生になる。そんな奴らから代表者が選ばれる。これがつまらない世の常だ」

「なるほど~。じゃ、もしかして何も考えないで動かすと強くなるの?」

 

「それこそ本人次第だ。論理で敵を追い詰められるなら、感覚で動かすことは完全にマイナスにしかならんよ。ま、適正次第かな」

「ほうほう。じゃ、らっくーは本能で敵を追い詰めていると」

 

「違うとは言えないな。だが、戦術と一口に言っても様々な要因があり、それを達成するためには――

「あ~。美味しかった。明日は始業だね。生徒がたくさん来るよ」

 

「……。戦術論に興味はないか? だが、本音の言った通り明日になれば人も増える。あまり人は好きではないのだが」

「だよね~。人混みって私も嫌い。なんか踏まれそうで」

 

「それはお前がのんびりし過ぎているんだよ、本音」

「え~。私、そんなにのんびりしてるかな?」

 

「しているさ」

「え~」

 

「頬をふくらませても説得力はないぞ」

「ええ~」

 

「そんな可愛くむくれられてもな」

「えええ~」

 

「さて、そろそろお暇しよう。もう食堂も閉まる。中々に楽しい時間だったよ。じゃあな、本音」

「違うよ~」

 

「何がだ?」

「じゃあ、じゃなくて~、また、だよ」

 

「ふ、また明日。本音」

「また明日~。らっくー」

 

部屋に戻って送られてきた資料を再確認する。

そこには学園の設備のパスワードもある。

 

さて、織斑一夏とはどのような人間なのだろうな。

顔と経歴から判断して、中々に鈍感そうで馬鹿っぽいが――。

重要な事は会ってみないとわからない。

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