IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第34話 進化

シャルとラウラの十字砲火の前に銀の福音はどうすることもできなかった。

落下して海に沈みゆくISを見る二人の目は冷たい。

 

「あっけない。アメリカの最新鋭実験機ということだが――」

「別にそんなものじゃない? しょせん、機械ではポテンシャルの100%しか引き出せな――え?」

 

蒼光が爆発した。

二人が見ている前で、突然に。

場所は銀の福音が墜落した場所。

 

「「――っち!」」

 

光はそのまま襲い掛かる。

二人は退避したが、かわしきれるものではない。

数が違う。

通常兵器ではありえない。

馬鹿げてるとしか言えないほどの――数。

 

「これは……第二次移行(セカンド・シフト)!」

「シャルロット、気をつけろよ。こいつは……今までの雑魚とは――違う!」

 

ラウラが警戒を隠さない目で睨みつける。

彼女たちは銀の福音に対処しながらも決して周囲の確認を忘れなかった。

哀れな密漁船が撃破されたことも当然気づいていた。

だが、ここに来て周囲を警戒する余裕がなくなった。

目をそらせば――撃墜されると本能が警告してくる。

 

「そうだね、これが奴の特殊能力かな? 威力は上がりこそしてないものの――落ちてない。そんなものをこれだけばらまかれたら……っ!」

「はん、手数は圧倒的に奴が上というわけか。停止結界!」

 

ラウラは結界を展開させて弾丸を止めようとする。

だが――

 

「うわっ!」

 

2,3発当たったシャルがよろめく。

結界は7割ほどの弾丸を停止させられても、他は通してしまう。

よけようにも、数が数でかわしきれない。

数十発とか――そんな甘い数ではない。

 

「くぅ……っ! あれは、実弾に光学兵器の性質まで持たせているのか」

 

停止結界はビーム兵器に相性が悪い。

絶対の盾を突破されたラウラは舌打ちを一つ。

 

「まさか、多数側の僕達が集中砲火にさらされるなんてね――さっきとはまるで立場が逆になっちゃったよ」

 

ため息を付いたシャルはやるせなさそうに敵を見る。

この戦いは1対2でシャル側が有利なはずだった。

だが――今はどうだ。

圧倒的な手数を前に手も足も出ない。

 

「だが、あの程度でこの私とシュヴァルツェア・レーゲンを止められると思うなよ……!」

「ラウラ? ディソードはもちろん、VTシステムも使っちゃダメだからね」

 

燃えるラウラにシャルが釘を刺す。

そう――この戦いは監視されている。

あくまで舞台は公海上なのだから、その手段はそれこそいくらでも。

立場の弱い日本の要請など気にかける国はいない。

 

つまり、ここで新しい装備を使うということは、その存在を世界にしらしめることになる。

技術というのは隠しておくことが原則だ。

それこそ――原爆のような使わないことが前提の兵器でもない限り。

知っていたら対策ができる。

敵に対する最も有効な攻撃とは――相手が思いもつかないことをすることだ。

だから使うことは許されない。

ただ、奈落は命が危険でしたとでも言えば許してしまいそうではある。

 

「必要ない」

 

ラウラはそれだけ言って突っ込む。

上で述べたようなことは分かっている。

だが、それでこそのダメージを無視しての特攻。

何を考えているのやら。

言葉通りに普通に特攻する。

 

「ラウラ! ああ、もう。行っちゃった。ま、いいか」

 

シャルはブースターを展開――高速飛行を開始する。

普通の人間なら加速に殺されるはずだがシャルは別。

ほんの一瞬でしかないが、音速軌道を可能とする銀の福音を凌駕する速さを得る。

 

「この……っ!」

 

ラウラは十数発の弾丸を受ける。

そして、かろうじての反撃。

さすがはラウラといったところだろうか――攻撃は無数の銃弾の合間を縫うように飛んで行く。

しかし、かわされる。

動きがセカンド・シフト前よりも鋭く、そして早くなっている。

 

「それだけだと思ったか?」

 

だが、すでにワイヤーは展開してあった。

しかし、ISの飛行速度についていけずに引きづられる形となる。

それがそのまま、網のように銀の福音に覆いかぶさる。

現時点でさえ数十発では済まない銃弾が当たっているはずだが破れもしていない。

 

銀の福音もされるがままではない。

新しく得た翼で網を引きちぎる。

その様はまるで、大空に向かって羽を大きく広げたかのよう。

 

「巻き込まれても、悪いのは君だよ?」

 

そこにシャルがミサイル攻撃を敢行する。

ラウラが巻き込まれようとお構いなしである。

数十発ものミサイルによる爆炎が暴れまわる。

 

「シャルロット、私ごと焼き殺す気か!?」

「特攻したのは君だよ? それに、敵の方も大人しく焼き殺されてはくれないみたい」

 

二人が見つめる先――銀の福音が炎の中でもがいている。

だが、その動きは一向に衰えない。

むしろ小さくなっているのは爆炎で――

 

「「そこ!」」

 

黒い煙の中――わずかなとぎれ目から敵を発見した彼女たちは同時に撃つ。

ラウラは肩の大砲を。

シャルは即時出現させたスナイパーライフルを。

 

爆炎が煙を振り払う。

その先には蒼い羽に守られた銀の福音がいる。

――無傷。

攻撃力特化の兵器が二発も直撃したというのに。

 

「ふむ。中々に硬い。あの能力は攻防一体というわけか。普通なら、防御から攻撃に切り替わる一瞬の隙でも狙うものだろうがな――」

「僕達のやり方じゃない、よね?」

 

ラウラが冷静に分析。

そしてシャルが煽る。

口元には揃って悪い笑み。

 

「――当然。力づくでぶち破るぞ」

「おっけ。じゃあ――」

 

止まっていた彼女たちが急に散開する。

銀の福音の飽和攻撃が来たのだ。

空を覆うかのような弾幕。

青く透き通った光が目を奪うが――止まったら撃墜される。

 

「……っふ!」

 

ラウラは果敢に襲いかかる。

弾丸の中を駆け抜けて――ナイフを突き出す。

 

が、弾かれた。

羽によるガードは健在である。

どうやら、物理攻撃に弱いなどといった性質は持ち合わせていないらしい。

 

ラウラは乾いた音を聞く。

シャルが撃ったのだ。

彼女の方は十分離れたところから、散発的な攻撃を繰り返している。

 

だが、銀の福音はそんなことを意にかいさない。

ただ大量の弾幕をばらまいている。

 

「ち――っ!」

 

ラウラは至近距離からばら撒かれた弾幕に対応する。

一番密度が高いのは目の前。

上昇する。

だが、まだ弾幕がある。

とんでもないなく大量の弾幕をばらまくため、回避しただけでは被弾を免れない。

 

盾はない。

持って来たものは捨ててしまったし、盾というものは容量を食い過ぎる。

他の武器をダウンロードするためには、そんなものにまわせない。

もちろん、ラウラとて例外ではない。

武器を盾に?

――暴発するに決まってる。

逆に危険だ。

回避はもう行った。

二度目をするには時間が足りない。

 

なら――受け止めるしか、黙って被弾するしか無い。

しかし、そのまま終わらせる気など無い。

もう一度突っ込んでいく。

 

――弾かれた。

青色の羽はすさまじい強度と柔軟性を併せ持つ。

それは、羽が物質で出来ているのではなく、特殊能力によるエネルギーフィールドが可視化したものでしかないからだ。

現実的な物質ではないのだから、物理法則が通用するわけがない。

 

「ちぃぃっ!」

 

またもや爆発。

総錯覚するほどの弾丸は厄介に過ぎる。

弾幕密度の低い場所へ特攻してダメージを抑える。

だが、それはあくまで抑えるだけ。

 

こりずに特攻。

確かにエネルギーフィールドは物理干渉に弱い。

殴り続ければいつかはオーバーロードもするだろう。

残骸になった遥か未来――そんな”いつか”。

弾き飛ばされたところに弾幕を張られる。

 

4度の特攻。

いい加減、別の戦術に切り替えればいいものを。

もう装甲がボロボロになっている。

ISは操縦者こそ何があっても絶対に守るように設計されているが、装甲の方は別。

エネルギー節約のために割と見捨てられたりする。

だが、そんなふうになってくると武器の方にも影響が出てくる。

壊れた武器は捨てなければいけない。

そして、ISには装甲に守られているセンサーがある。

それが壊された。

視界にはノイズが混ざり、聴覚には制限が加えられる。

 

だれにでもわかる。

これは”悪い状況”だと。

撤退すべきだ。

勇ましいことを言っても、攻撃は一度足りとも通じていないのだから。

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