IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第44話 小さな反撃

「どうだ?」

「いや、宇宙基地って言うけどさ――なんだか普通だな。普通の基地ってかんじだ」

 

彼らの来た場所は宇宙基地――のはずだが、普通に地上と変わらないように見える。

壁は真っ白いプラスチック製に見える。

窓から青い地球が見える。

歩くとカツカツと音がする。

 

外から来るにあたっては発着場から入ってきた二人。

こちらの方は宇宙基地らしく、下方にあるゲートだった。

無骨で、防御のみを追い求めた実践重視の鋼鉄の塊。

 

「基地だからな。アミューズメントパークにするつもりは毛頭ない」

「そりゃそうだろうけど……こんなところに俺を連れてきてどうするつもりなんだ?」

 

二人は司令室を目指して歩く。

いや、目的地があるのは奈落だけで一夏の方はただついていっているだけなのだが。

――そもそもどこに行くのかさえ言っていない。

 

「とりあえず、オペレーターと軍事顧問を紹介しておこうと思ってな」

「そんなのが居るのか?」

 

カツカツと色々な区画を通りぬけ、警戒が厳重そうな場所にたどり着く。

警備も中々にしっかりしている。

よくいるやさぐれた男ではなく、硝煙の匂いのする下品なジョークの一つでも飛ばしそうな傭兵が至る所で警戒している。

 

「居るに決まっているだろう。今は待機しているが、時が来たら私も現場で戦うのだぞ。そういった人間は必要だ」

「なるほど、そういうもんか」

 

扉が見えた。

他の扉とそう変わらないように見える。

だが、雰囲気が違う。

一夏はカンで危険を判断できるようにまでなっていた。

こんなところまで不審人物が入り込んだら、一瞬で蜂の巣どころか灰になるまで銃弾をぶちこまれてしまうだろう。

そして、それだけではない。

いざというときは区画一体が吹き飛ぶほどの爆弾。

乗っ取られた時のための最終手段だ。

 

とはいえ、一夏は不審人物ではない。

危険の匂いを嗅ぎ取りこそしたが――それが彼を危機におとしめることはない。

そのまま、扉を通る。

 

「よろしくお願いしますわ、一夏君」

 

そう言って話しかけてきたのは、怪しい風体をした男。

かぶった帽子を指で押し上げて、もう片手を差し出している。

職業そのままの傭兵然として堂々と――それでも気楽そうにしている。

 

「紹介しよう、ベルナドット――ピップ・ベルナドットだ」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

二人は握手を交わす。

ここでやっと内部を見渡す。

いきなり話しかけられて部屋の内部まで見る暇がなかった。

 

改めて見てみると、部屋はスクリーンで覆われている。

光が灯っているのは前方の大画面だけ。

あまり頭が良いとは言えない一夏でもわかる。

あれは世界地図だ。

一夏にはよくわからない数字が表示されている。

上がったり、下がったり――数字が大きいのは……日本?

それも、IS学園に近いところのように見える。

 

「しかし、こんなところに来るとはどのようなご用件で? 一般人を連れ込んじゃマズいでしょう」

「彼はミレニアムと戦いたいそうでな」

 

こちらはこちらで話しかけ始める。

ベルナドットはさすがというか――クライアントに対する敬意こそ払っているものの、へりくだった様子は全くない。

 

「はー、そりゃ……物好きなこって。で――」

 

ちょっと嫌そうな顔をして言う。

 

「お前も手伝え」

 

奈落はにべもない。

 

「でしょうね――。で、コレは」

 

ベルナドットは親指と人差指で輪っかを作ってみせる。

 

「当然、給料は出すさ。一夏にはなにもないがな」

 

秘密基地っぽいスクリーンに目を輝かせている一夏を横目に捉えながら言う。

支援はするが、依頼はしない――断固とした態度を取っている。

雇用関係で結ばれている奈落とベルナドットと違って――奈落と一夏を結ぶのは善意による協力関係。

 

「なるほど、じゃ――給料の範囲内でお手伝いさせてもらいますぜ」

「危険手当くらいは出してやる。もっとも、教官はここにいて指示を出すのが仕事だがな」

 

二人はニヤリと笑っていう。

その辺りは心得たものだ。

さっぱりとしている。

が――ベルナドットは眉をひそめる。

 

「――ちょ。それって、オービットベースが撃墜される可能性があるってことですかい?」

「普通に考えて、静止軌道上にある、装甲で保護されたこの基地は撃ち落とせない。だが――誰が単なる一テロリストがあれだけの戦力を展開することを予想した?」

 

やはり奈落は変なところで律儀だ。

世界各国の最新兵器ですらオービットベースを落とすことはできない。

これは相手の情報が筒抜けだからでもあり、当然核だろうがミサイルだろうが対応策を用意してある。

それならば、大丈夫と安請け合いしても良さそうなものだ。

だが、奈落はそうしない。

相手が自分の予想を上回った以上、安全には何の保証もない。

 

「いや、まあ――そんなもんですか。ま、こっちは傭兵としてやれるだけやって、後は尻まくらせてもらいますがね。で、一夏くん」

 

だが、可能性についてはなんとでも言える。

ベルナドットにとっては予測される事態に対応策が用意されていれば十分。

それを破られたらしょうがないと割り切っている。

事前には完璧を求め――実践では柔軟に。

いくつもの戦争を切り抜けてきた彼の知恵。

 

「はい?」

 

で、こちらは戦闘についてはまだ素人。

奈落から戦闘データのダウンロードを受け、ISでの戦い方がうまくなったが実戦経験はまだ足りない。

今もそれを連想させるかのような間抜け面をしている。

 

「なんで戦うんですかい?」

「それは――襲われる人々を見過ごせないから。逆に聞くが、あんたはなんで奈落に協力するんです?」

 

戸惑ったような声。

そんな声で、青臭いことを言う。

そんな正義の味方のような理由でよくもまあ――

傭兵然としている大人に気後れしている素人が吐けたものだ。

 

「金のためっすよ」

 

こっちは理想とかそんなのはない。

女尊男卑になった世界に傭兵の居場所はない。

警備員として安月給でこき使われるか、力仕事で身体を壊すか。

それほどのことをしても、自分一人が食いつなぐのがやっと。

だから、高額の報酬を払う奈落にほいほいとついていった。

ただそれだけの話。

ちゃんとした仕事がしたいという――それだけの。

 

「は――」

 

とはいえ、一夏にはピンと来ない。

彼も女尊男卑には苦しめられていたが、そんなのは傭兵や兵隊とは比べ物にならない。

理不尽な扱いを受けるだけで、飯に困ったことはないのだから。

だから、理解できない。

ほうけてしまう。

 

「いや、そんなにおかしいもんですかい? 俺たちゃ――傭兵なもんで」

 

ベルナドットが笑う――嗤う。

彼は何を見下しているのか。

底知れぬ闇――戦争から抜け出せない男の深淵を垣間見せる。

 

「まあ、戦う理由は人それぞれだろ」

 

ぞくり、と背にあわいものがはしった一夏は――逃げた。

話をそこで切り上げた。

顔もそむけた。

救いを求めるように――

――そして、目が合う。

 

「ほう。そいつに単身でミレニアムに対向する力があるのか? 見たところケツの青いひよっこにしか見えんが」

 

目があった女――キツめの美人だ。

だが、キツすぎて常に人を睨んでいるかのような印象を与える。

言葉もキツい。

なにやら傭兵とも気が合いそうだ。

 

「――ふむ、君も紹介しておかなくてはならないか。彼女はセレン・ヘイズ。オペレーターだ。彼女が居なくては作戦目標を探すのも苦労するだろうな――敬え」

 

こちらは慣れた様子で紹介する。

彼女は奈落のことも睨んでいるようだが――意に介した様子すらない。

 

「ええっと――織斑一夏です。よろしく」

 

気後れしながらも言う。

底知れぬ闇を見せたベルナドットよりも付き合いやすそうではある。

もっとも奈落の選んだ人物だ――刺は見えるものだけではあるまい。

 

「よろしく。この私に戦場で貴様の力を見せてみろ」

「――ああ。そうすることにするぜ」

 

握手する。

一応は認められたらしい。

――いや、死のうが構わないと思っているのか。

 

「なら朗報だ」

「奈落?」

 

そこに朗報をもたらす奈落。

いや――悲報か。

彼らにとっては都合が良くても、伝えられるのは第二の惨劇なのだから。

 

「ミレニアムが出現するようだ。標的は――英国だ」

「英……国?」

 

ピッと世界地図に指をさして言う。

刺された先はもちろん英国で――数字が上昇していた。

日本にあるものよりは小さくても、他と比べれば十分大きすぎる。

 

「イギリスだよ。セシリアが所属している、な。南西から攻めてくるか。まあ、そちらからなら他の国の邪魔がはいらないと踏んだのだろう」

 

うんうんとうなづく。

少佐の立てた作戦など大抵は即興で穴だらけに見える。

イギリスは日本と同様、海に四方を囲まれた島国だ。

だから、海を行けば他の国は手を出さない。

蹂躙されるのは自分じゃない――そんな思いで引きこもる。

兵器の運用には馬鹿げたカネがかかるのだ……自分の国の防衛でもなければやってられない。

だから奈落は自分が敵を片付けてやろうかと持ちかける。

そうすれば――金を惜しんだ政府はあっさりとうなづく。

 

「わかった。俺はどうすればいい?」

 

一夏は先程までの間抜け面を引き締める。

戦闘モード、だ。

 

「格納庫へ行け。いや――案内をつけよう」

 

そう言って奈落はどこかへと連絡する。

いよいよ空気が緊張してきた。

 

「待っている間に作戦の説明をする。セレン、頼んだ」

「了解した。では、心して聞け――織斑一夏」

 

セレンは凛とした声で朗々と話す。

その声は厳しくて、それでも温かみがあって――なによりもその声はしっかりと脳髄に刻まれる。

押し付けがましいことなど何一つなく、聞こえづらいところは何一つとしてない。

 

「まず、貴様にはヴァンガード・オーバード・ブースト(VOB)を装備してもらう。長射程と高火力を誇る要塞兵器に対して超高速で接近し、懐に入り込むことで損害を最小限に抑えるために開発された馬鹿げたブースターだ。常人なら加速で死ぬが――奈落のお墨付きである貴様なら問題ないだろう」

「――へ?」

 

「これには主翼も、ラダーやフラップ――飛行の補助装備は何一つとして配備されていないため何もしないと高度が下がることは覚えておけ。まったく、推力だけで無理やりぶっ飛ばすとはいつもながら滅茶苦茶なことを考える。これも立派な変態兵器だな」

「――そんなもので突っ込むの、俺!?」

 

「そして、重要な装備はもうひとつある。S―11と言う名前があるが、ようするに時限爆弾だ。こいつで敵AFを仕留める。具体的には動力炉を爆破して動けなくするだけだがな」

「AFって?」

 

「そこからか……まあ、いい。AFとはアームズ・フォートの略でそのまま武装した要塞とも言える馬鹿げたデカさの要塞兵器だ。あのISに守られた馬鹿でかい兵器を見ただろう? 襲撃のシーンは中継されていたはずだ。超射程、高火力を誇るが――接近してしまえば鉄の棺桶同然だ」

「そいつを俺が倒すのか?」

 

「そいつだけではない。他のISも含めて全てを始末するのが貴様の任務だ」

「――っ!」

 

「怖くなったか? 別にやめても――」

「いや、やる」

 

「――そうか。作戦は簡単だ。超翼射出司令艦ツクヨミによりIS白式を地球圏内へ射出。突入が完了した後にVOBを点火。一気にAFに接近する。零落白夜で装甲を切り裂き、中に侵入――そのまま動力炉にS―11を仕掛ける。爆破は10秒後だ。遅れずに退避しろ。その後に敵の残党を撃破――質問は?」

「ないさ」

 

「よろしい。ちょうどセラスも来たか――作戦始め! 敵の出現は以前のデータから30分後と予想される。織斑一夏はディビジョンVII超翼射出司令艦ツクヨミにて待機せよ!」

「はい!」

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