IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第45話 緊急出撃

出現する敵に対し、戦うことを決めた一夏。

作戦は単純。

VOBで一気にAFまで近づき、これを撃破。

しかるのちに有象無象のISを掃討。

まるでゲームのような華々しさだ。

 

「セラス・ヴィクトリアです。よろしくお願いします、織斑さん」

 

司令室の扉が開き、入ってきたのは若い女。

金髪碧眼で真面目そうな初心な美人だ。

胸に至ってはセシリアを上回る。

この人が一夏を案内してくれる。

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

とはいえ、鈍感な一夏は気にすることがない。

つくづく――女に興味のないと見られてもしょうがない男だ。

 

「では、案内させてもらいます」

「あ、ども」

 

几帳面そうに歩くセラスについていく。

彼女はけっこう緊張しているようだ。

 

「あの――」

「はい!?」

 

ちょっと話しかけただけでびっくりしてしまう。

その姿はなんだか小動物のようで――年上ながら愛らしくもある。

 

「あ、すいません。大した用事じゃないんです」

「い、いいいえ。どんな要件でも気楽にどうぞ」

 

気楽に、とはセラスの方に送ってやりたい言葉だ。

 

「えっと――あなたはどのような役割で?」

「ああ、護衛ですよ。ベルナドットさんの部下の方々と一緒にオービットベースを守るのが仕事です」

 

……とてもそんなようには見えない。

一応はISをまとっておらずとも、装備はしているようだが。

この小動物のような人が戦う姿など想像もできない。

――それは山田先生も同じか。

 

「あ、疑ってますね? 私はこれでも婦警だったんですよ。近接も射撃も両方できます。まあ近接格闘は――奈落さんにはこき下ろされましたけど。酷いと思いません? これでも武術はB+だったんですよ」

「へえ、そうなんですか」

 

一夏にはB+の実力がどれほどかわからないから答えようがない。

 

「まあ、気にすんなよ――嬢ちゃん。B+っていや、世界最高峰のISの大会モンテグロッソレベルって話だぜ。まあ、優勝候補になりたきゃ最低でもAは取ったかなきゃだがな」

「あ、ベルナドットさん。通信していて大丈夫なんですか? お仕事は――」

 

ベルナドットは通信だけで会話に参加する。

後ろにはコンソールに向かってすごい勢いで打ち込んでいる奈落とセレスの姿。

他にも司令室の要員が計器を弄ったり、報告したりしている。

彼以外はとても忙しそうにしている。

 

「俺の仕事は作戦に口を出すだけだよ。他の二人は作戦会議そっちのけでVOBやら何やらを忙しくやってる」

「ああ――ベルナドットさん、機械苦手ですもんね」

 

ケタケタと笑い転げる。

なんだか気の知れた夫婦のようなやりとりだ。

 

「放っとけ。こちとら爆弾や無線の使い方がわかってりゃ、それでいいんだよ。プログラミングとか軌道に抵抗の計算なんざ、お偉い学者さんにまかせときゃいいのさ。嬢ちゃんだってインターフェイスでカタカタやるのは人任せだろ」

「――あはは。それやるなら訓練していたほうがいいかな――なんて」

 

ニヤニヤと笑いながらセラスをからかうベルナドット。

そして、冷や汗を浮かべながら返答するセラス。

正直、一夏には間に入れない。

夫婦漫才を見ている気分だ。

 

「ま、それでいいんじゃないのか。なんて言っても、お前さんの仕事は射程外から敵さんをズタズタにしてやることだからな――」

「いやあ、はは。あまり褒められると照れますって」

 

「いや、本当に人間なのか怪しいんだけどな、嬢ちゃんの場合。狙撃能力が測定不能のEXレベルってどういうことだよ。夜を徘徊する化け物じゃあるまいし」

「私は人間ですよぅ!」

 

涙目で抗議する。

目の前にベルナドットがいたら掴みかかりそうな勢いである。

 

「いや、わからねえぜ。奈落みたいに人間の皮をかぶった化け物もいることだしな。嬢ちゃんが額に第3の目を隠していても俺は驚かねえ」

「ひどっ! 酷いですよ。人を化け物扱いして。そんなこと言うならベルナドットさんだって奈落さんに人外扱いされてたじゃないですか。正気の人間があんな作戦を立てるなんて、とてもじゃないけど信じられないって。私が化け物ならベルナドットさんだって異星の知的生命体ですよ」

 

「ははっ。まあ、嬢ちゃんが化け物かどうかは置いとくとして――俺はれっきとした人間だぜ、一夏君」

「私だって人間です! 信じてくれますよね? 一夏さん」

 

「ああ、俺の目には二人共人間にしか見えないけど」

 

「おおっと。馬鹿話で時間が潰れちまったようだな。そろそろツクヨミにつく時間だぜ」

「あっ! 本当だ。では、こちらに」

「ああ」

 

「では、VOBを接続するのでISを装備してそこに立っていてください」

「こう?」

 

「――はい、そうです。そのまま20分ほどそうしていてください」

「20分て……え?」

 

「いや、奈落さん達はミレニアムの出現は30分後くらいだと見ていますね。それが終わったらそのまま待機しておいてください」

 

 

 

「馬鹿な! もう出現だと――早すぎる……っ!」

 

慌ただしい司令室。

その中で奈落が悲鳴を上げる。

大画面の中ではイギリスの上に表示された数字が急激な上昇を見せる。

 

「ち――っ! 予想外だ。いや、こちらの手落ちか。一回目がそうだからといって、二回目が同じだとは限らないか……っ!」

 

セレンが呻く。

そもそもこの状況が予想外。

無視を決め込んでいたところに支援を突発的に決めてしまったものだから、準備が済んでいない。

 

「今後悔しても意味がねえ! 奈落、セレン――準備はもう終わってんだろ? 1分早まったから問題なんて」

 

ベルナドットが叫ぶ。

 

「セレン、大気圏突入の角度を計算しなおせ! こちらは各種ブースターの燃焼時間、熱応力の再演算を行う」

「了解、20秒で仕上げる! そっちは?」

 

悲鳴のような声でやりとりする。

目は血走り、二人はコンソールを凝視する。

すごい勢いでガチャガチャやる。

よく見ればコンソール内の画面で文字が流れる速度と奈落が指を動かす速度が一致していない。

はるかに速く動いている。

能力を使っているのだ――地味だが。

 

「こっちは25秒もらう。ベルナドット、一夏に作戦の変更を伝えろ!」

 

一転して阿鼻叫喚に陥る司令室。

誰も彼もが必死にコンソールを操作する。

 

「了解! 嬢ちゃん、一夏君。聞こえるか!?」

 

ベルナドットが連絡を取る。

リラックスしていた二人は何気なく通信を受ける。

 

「なんですか?」

「え?」

 

一転して必死な様子のベルナドットに驚く。

そして、すぐに緊急事態を理解する。

 

「奴らの出撃が早まった。奈落とセレンが色々と準備してくれている。作戦決行は――今から30秒後。きっちり覚悟決めとけよ」

「――問題ない」

 

断言する。

一夏の瞳に迷いはない――そして不安も。

そんなものは無駄だと割り切ってしまっている。

 

「あん?」

「覚悟なら、もう決まっている」

 

怪訝そうなベルナドットの目を見つめて言った。

 

「――上等。ちょっとした講習だ。変に気にさせてもどうかと思ったんで言わなかったんだが、お前ならやるべきことは見失わないだろう」

 

「何かあるのか?」

「効率のよい飛び方ってやつさ。腕はぴったりと身体にくっつけろ。そして、足は閉じておけ。姿勢は前傾。これでちょっとは速く飛べるはずさ」

 

もっとも、変に意識したら逆に墜落するが。

VOBの操縦はかなりデリケートだ。

 

「――なるほど。サンキュ」

「いいてことよ。さあ、悪いやつらをやっつけちまえ」

 

「――ああ」

 

一夏の目が正面を見つめる。

そして、蒼き地球に誓う。

無辜の人々を助けることを。

 

 

 

司令室の中では慌ただしさが終わりを告げる。

 

「セレン、各種計器は?」

「順調だ――よし、ディビジョンVII超翼射出司令艦ツクヨミを起動」

 

最終段階だ。

即興で全てを組み上げ、後は実行するだけ。

少なすぎる時間の中で人事を尽くした。

後は運を天に任せるだけ。

 

「大気圏突入用鏡面結界の凝着を確認」

「カタパルト始動」

 

システムの最終段階。

超翼射出司令艦とは、そのまま機体を撃ち出して出撃させる。

出撃の時がやってきた。

 

「――システム、オールグリーン」

 

最後の確認を終了する。

奈落とセレンの声が重なる。

 

待ち望んだときがやってきた。

それは反抗。

踏みにじられる世界への反逆。

殺戮を望む悪魔の皆殺し。

さあ――反撃を始めよう。

 

「「射出!」」

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