IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第47話 正義の味方への意趣返し

「よくやった」

 

侵攻作戦を食い止めた一夏を奈落がねぎらう。

司令室の方にも一件落着の空気が漂っている。

AFを一機、他にもISを10機倒したのだ――普通なら戦力は底をついている。

ISが10機と言ったら、小国の総戦力よりも大きい。

 

「さて、もう一度宇宙まで上がるのは骨だろう。近くに希テクノロジーの子会社があるからそこに行って――」

 

だから、休ませるのを考えるのは当然。

秘密裏に一夏を回収してプライベートジェットで移送するのが機密を管理する上では楽だ。

というか、大衆の面前にそのまま顔を出させたら面倒臭いことになる。

彼の顔が割れるのも時間の問題だろうが。

なにせ、奈落はそれに関して何かしらの手段も取っていない。

 

「――奈落、連絡だ」

 

セレンが口を出す。

不機嫌な顔――先ほどの新兵器自爆が糸を引いている。

 

「む? 誰からだ」

「本社の連中だ。どうやら、世界を騒がせる事態が起こったらしいな……だが、奴らの言葉は要領を得ん。なにがしかの発表がどうとか――」

 

「発表? もしや、少佐からか……!」

「まあ、それも連絡をよこすくらいの大事だな。ネットにばらまかれたらしい。その動画をモニターへ写すぞ」

 

「――ああ。その前に、一夏。さっさと安め。いつまで浮いてるつもりだ。そっちにも届けてやるから撤収急げ」

「あ、ああ」

 

とりあえずは一夏を撤退させる。

いつまでもそこに浮かばせておかせることはできない。

 

「よし、写せ」

「そら」

 

ざざ、と一瞬画面がぶれて――肥った男の腹が写る。

 

「――ん? これ、ちゃんと写っているのかな。シュレディンガー准尉、聞こえてるかね?」

「はいはい。聞こえてますよー。だから、その出っぱった腹をどけてくださーい」

 

映像が遠ざかる。

男の全貌が写る。

悪魔のようにいやらしい笑み。

そして、成金のように醜い体型。

――少佐と呼ばれる男がそこにいた。

 

「やれやれ――どうも機械は苦手だ……二回目だというのにまともに動きやしない」

「あっはっは。確かに機械は――目の前に小金をぶら下げれば何でもいうことを聞いちゃう馬鹿どもよりも扱いにくいかもしれませんねぇ」

 

その人間として腐っている男は猫のような少年と話している。

一見すると可愛い優男にも見えるが――目を見ればわかる。

こいつも腐っている。

この肥った男と性根は同じだ。

最悪を嘲笑する汚濁。

自分が放送しているというのに、イカレた会話を繰り返す。

 

「そうだとも。私はボタンが二つ以上ある機械よりも、人に命令するほうがいいよ――気楽で」

 

気楽?

命令するのが気楽だというのだろうか。

人に命令するものは、それが他人の人生を左右しかねないことだと自覚しなければならない。

この場合は更に最悪。

なにせ、戦場に送るのがこの男のやったことだ。

死ねと指示することが――機械を操ることよりも大変だというのか。

そんな――最悪、そんな汚濁がここに存在する。

悪夢の結晶――悪意のみを集めて凝縮したかのようなこの男!

 

「――あ、もう映像入っちゃってるんで、演説行ってくださーい」

 

ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるのは少年も同じ。

男は最悪を意図せずとも、汚濁を吐いている。

そのまま悪夢のような男だ。

だが、少年の方は自覚している。

己らが最悪であることを。

――楽しんでいるのだ。

 

「ああ、そういえばそうだった――おほん」

 

散々茶番を見せつけた男は咳をして仕切りなおす。

奈落が開いたような哄笑を持って先を続ける。

 

「――さて、織斑一夏君。この映像を見てくれているかな? いや、そりゃ見ないはずがないだろう。前回各国に送りつけてやった宣戦布告のビデオとは違うのだから。あれを冗談か何かと誤解した馬鹿どもはどうしているのかな?」

 

「ところで私は君のような人間が大嫌いだ。自分の邪魔をしてくれる人間が嫌いなのは当たり前だが、それが正義面しているとなるもうダメだ。身の毛がよだつほどにおぞましい――正義? そんなもの、子どものお遊びで十分だ。本物の兵器を、人を殺せる武器を持つ人間のやることじゃあ……ない」

 

「とはいえ、君のバックに付いているのは神亡奈落だ。”あの”より良き人の世界を創世せんがために人の尊厳を踏みにじった――我々ですらおぞましいとしか言いようのない数々の悪夢を実現させてきた野呂瀬玄一の後継者だ。分かっているのだろう? その行動がなんら自分のためにならないことが。私が君の正体を明かしたせいで色々と――そう、面倒臭いことが起こることを。それでも、やるのだろう? 自分のためではなく、世界のために悪い我々をやっつけるのだろう?」

 

「しかし、それではかわいそうだ。だから、プレゼントをしてやろう。傷つき、捨てられる君に……贈り物だ――銃火の花をくれてやろう。はははははは! なんてことはない――まず誰よりも敵である我々が悪意をもってもてなそう」

 

「存分に楽しんでくれたまえ。ああ――君が倒した兵隊アリだが、まとめてくたばったみたいだぞ。笑えるなぁ。いや、ホントに。あっはっはっはっは。君の所属する学園にも送っといてやったから、存分に血の海を築くといい……いや、そこからでは間に合わんかもなぁ? あひゃひゃひゃひゃひゃ」

 

「さてさて、私はここらでおいとましよう。いや、君なら大丈夫さ。60億を殺し尽くした大罪人――人では亡き人……虚人。世界を滅ぼしつくし、それでも飽き足らずにこの世界に居座った虚数生命体。偽物の君が本物の世界で何をしようというのかな?」

 

パンパンと耐え切れなくなったかのように手を叩きながら、腕を振り回して子どものように喜ぶ男は最後の悪魔じみた笑みをカメラに向ける。

 

――映像が途切れた。

 

「――なるほど。で、反応は?」

「虚数空間係数が上がっています。出現時間は――わかりません」

 

司令室にいた一人が報告する。

地図上で大きな変化があるのは――急激に数値が減少している一夏が出撃した場所しかない。

だが、初めから莫大な数値があり、一定していない場所がある。

 

「そうだろうよ。学園には私と一夏がいた。そして、今も――織斑千冬、シャル、ラウラがいる。ノイズが酷すぎて測れるわけがない。誰が騒々しいライブの中で針の落ちた音を拾える?」

 

数値が大きすぎるところならある。

それがIS学園。

むしろ測定不能にならないのが不思議なほどの数値が表示されている。

明らかに桁が違いすぎる。

 

「それはそうです。では、どうするのです? 出現時間がわからなくては後手に回ることになってしまいます」

 

そう、これでは出現の予測ができない。

そもそも、出現するかだって少佐の掌の上でしかないのだから。

 

「――ふん。どうせ、すぐに出現するに決まっている。奴はせっかちだからな」

 

奈落がつぶやく。

それは、自らが戦ってきたためであろうか。

時折、奈落は少佐と既知であるかのような様子を見せる。

 

「――は?」

 

だが、そんなこと一職員の知ることではない。

そんな予測よりも不確かな予想を元に行動する奈落に戸惑う。

一瞬偽物かと疑ってしまう。

奈落はこんな予想を元に行動を起こす男ではないのだ。

 

「ここは任せる。一夏も半日あれば学園まで帰ってこれるだろう」

 

だが、確固たる自信を持って行動している。

何かの確信があるのだろうか。

――それとも、焦っているのか?

 

「あなたはどうするのです?」

「私は、やることがある。希テクノロジーの神亡奈落ではなく、ただの神亡奈落としてやることが」

 

滅茶苦茶なことを言い出した。

そういうのはやっても、言わない――もしくは他人に押し付けるような男ではない。

いや、防衛だけならいいのだが。

さすがにここのメンバーでは防衛以外できない。

権限を持っていない。

上司たる奈落の号令があってこそ、なんらかの行為が可能なのだ。

 

「――奈落、やるつもりか?」

「そういうことに――なるだろうな」

 

ベルナドットの言葉に奈落は苦い表情でうなづく。

敵の撃破直後は色々と微妙なこともある。

今この場で奈落が席を立つのはかなり面倒くさいことになったりする。

 

「曖昧なことを言うな。貴様の方針通りに私達は動く。所詮私はオペレーターで、そいつは戦術顧問だ。貴様が目的を作る。そして、私達が方法を考える。これが契約だ。ゆえに、貴様が何をすると言わなくては私達では何もできん。IS学園を助けるのか、見捨てるのか――まずはそれだけでもはっきりと言葉にしろ」

 

だが、セレンは認めない。

雇われるものとしての立場を明らかにし――雇うものとしてしっかりと責任を果たすことを要求する。

ここは希テクノロジーの最前線にして指揮場。

ここから世界中に散らばる傘下の組織を導かねばならない。

最低でも戦闘行為についてはそうだ。

政治やら社内のあれこれについては社長がやる。

 

「ここでは見捨てるのが正しい判断だ。後は、個人の私の勝手だ」

「そう言うってことは、やっぱり助けるつもり――いや、お前自身が戦う気か?」

 

「ラウラとシャルを使うわけにも行かん」

「ミレニアムが決戦を挑んできたらどうする? その時のために消耗する訳にはいかないといったのは誰だ」

 

「……少佐がここで決戦を挑んでくる確立は低い。あいつの性格からして、どうせまともな準備などできているまい。あいつは玩具が手に入ったら遊ばずにはいられないタイプだ」

「――奈落。お前がそう言うのなら、こっちは手伝うしかないな……まあ、俺の知ってる奈落は嬉々として悲観論を語るやつで、楽観論なんかつまらないと言い出す奴だったと思うがな」

 

「――ベルナドット、済まんな」

「やれやれ、ツクヨミの整備をもう一度か――中々に手間だが、その分給料をもらっているから仕方ない」

 

「――セレン。済まんな、私事だと言うのに」

「ふん。お前も中々に甘いところがあるじゃないか。まあ、そういう甘さも嫌いではない」




奈落たちがなんでそんなに慎重なのかと奇異に思うことがあるかもしれません。
ですが、相手の本拠地が分からずに一方的に攻められることはとても不利だとこのssでは定義してあります。
普通に相手の戦力の10倍持ってるだけではこの不利は覆せません。相手がミスしまくってどうにか、といった感じですね。
まあ、この辺を掘り下げたラノベは少ないでしょうが。
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