IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

51 / 95
第49話 秘密の島

「さて、私は行く」

 

画面の中で行われる殺戮はもはや奈落の目には入らない。

彼が考えるのは別のこと。

学園にどう説明するか――なによりもアーカードの登場による影響を心配していた。

あの鬼札を軽々と誰かに貸してやる訳にはいかない。

隠しておけたら黙っていればいいだけの話だったのだが……

 

「で、どこに?」

 

ベルナドットが聞く。

これはもはやここにいる人間の関われることではない。

アーカードと奈落は根幹に関わる人間。

彼らは雇われただけの人間。

 

「【不在証明】で野呂瀬のもとに赴く」

「使っていいのかよ?」

 

「戦わないからな。少しくらいならあまりに節約する必要もない」

「そうか。んで、俺らはどうすればいいんだ?」

 

「いつもと変わらない。日常業務をこなしていてくれればいい――つまりはオービットベースにこもっていろ。虚数空間係数が急激に変化したら報告するのを忘れるな」

「――了解。気をつけて行ってこい」

 

「――って、もう行っちまったか。気の早いやつだな」

 

 

 

「久しぶりですね。ちょうど起きていてくれて助かりました」

 

――敬語。

それもしっかりと敬意を払った――嫌みのない憧憬。

奈落のこのような態度など、それこそ目の前の男しか見たことがないだろう。

 

「くく。あれほどの〈奈落〉の出現を感じて――起きていないわけがあるまい」

 

奈落の敬意を受けるのは水槽に浮かぶ男。

体の下半身が無くなっている。

そこからケーブルがつながれており、男の肌色は悪すぎるほどに悪い。

占い師でなくともこう言うだろう――死相が出ていると。

 

「――っ!? 虚人が現れた、とそのような感触は受けませんでしたよ――どういうことです?」

 

虚人――それは奈落と同じ人で亡き人。

そして、虚人は誰一人の例外なくギガロマニアックスである。

とはいえ、まあ……アーカードはその力をほとんど使わない――せいぜい弾丸の無限供給くらいにしか。

上記の他にもう一人。

それが虚人の総数であったはずだが、5人目が現れた。

それも奈落の感知できない形で。

 

「くく。それもまぬけな話だな。まあ、違和感というものは光の中に影が差すから分かるもの。影に覆われてはわかることもないか」

 

違和感。

そう、虚人というのはいるだけで違和感を抱かせる。

例えば、3次元の世界で2次元の人間が動いているような。

そもそも世界の違う人間がいると言う違和感。

とはいえ、比べるものが無くては違和感は抱きようが無い。

そう、よほど感覚の鋭い人間でなければ。

野呂瀬が言っているのはそういうこと。

 

「それは――そういうわけですか。なるほど、少佐の奴――星すらもその手中に収めたか」

「そういうわけだ」

 

奈落もまた納得してしまう。

しかし……星?

――比喩、だろうか。

夜空にてまたたくことから、光り輝くもの――期待できる人を希望の星と呼んだりしている。が、それでは意味が通らない。

この二人が敵に期待するわけがない。

なら、そのままでかいものということになるのかもしれない。

あまりにでかいとコロニー落としもどきの心配までしなくてはならなくなる。

少佐にはそれだけの狂気があるのだから。

 

「しかし、少佐が何を得ようと我々のやることは変わりません。ノアⅢが完成さえすれば、勝ちは揺るがない」

「――そう。その通りだよ」

 

笑う。

――嗤う。

相手が何をどうしようと……ジョーカーさえ完成したなら、全てをひっくりかえせる。

つまるところ、彼らの目的はたった一つ。

時間稼ぎでしかないのだ。

 

「だが、あなたの寿命は――」

 

ここで奈落が悲しそうな顔をする。

常人であれば逃げ出してしまいそうな光景――上半身だけの男が水槽にぷかぷかと浮かんでいる。

そう、いかにギガロマニアックスとは言えその状態で生き長えるには限界がある。

 

「ふ。織斑千冬にやられた傷か」

「ええ。奴の【深き悲哀の紅桜(デウス・マキナ)】は死を与える最凶の鎌――どんなに手を尽くしても、回復どころか代替すらもありえないのですね」

 

彼女のディソードは死を与える。

その最悪の能力の前には防御も、そして回復も通用しない。

――完全に。

 

「まあ、色々試しはしたが全て駄目だった」

「ええ。再生医療による体のスペアを繋いでも壊死し、機械による機能代替はバグが起きて故障しました。更にはリアルブートによる創造も仮想観測の収束を散らされてしまいます。もちろん、身体機能書き換えによる超再生も不可――まったく、受ける側としては本当に厄介極まる」

「まあ、下半分を失っただけだから生きてはいられるのだがな」

 

「しかし、それも限界にきているのでしょう? 食事は消化の必要のない高濃縮栄養剤を、そして失い続ける血は無限に供給し続ける。感染だの何だのは全て、その水槽の中に自信を閉じ込めることでシャットアウトする。そんな滅茶苦茶な延命法はそう長くはずがないのです」

「確かに――持って、後1ヶ月と言ったところか」

 

「ノアⅢの完成はどんなに早く見積もっても、1ヶ月程度で日の目を見ることはないでしょう」

「――ふ。だが、もういいのだよ。私が死んでも、ノアⅢはお前が完成してくれるのだから」

 

「――総帥」

「――そんな顔をするな、総帥代理。私はこの世に悪意がなくなれば、それでいいのだから――」

 

秘密の基地の中、濁った水音が響く。

 

 

 

「少佐殿、これからのご予定は?」

「ふふ。我らが太陽――【ピサ・ソール】も未だに真の力は発揮できていない。まだまだ様子見の段階だよ」

 

こちらは豪華なホテルの一室でのこと。

政府の要人が泊まるような秘密主義のホテル。

彼らは世界中に追われながらも、その姿をやつしてはいない。

思い思いに目立つ服を着ている――今となっては悪目立ちする軍服を。

 

「そうですか、楽しみですな。無限の闘争、そしてそれを可能とする超兵たち。ただ、残念なことに世界の方がどれだけ持つか疑問ではあります」

「ふふん――そう悲観する必要はないよ。ドク、世界を舐めてはいけない。そう、この世にはおぞましくてしょうがない、だけどとても哀れな化け物が存在するのだ」

 

「――と、申しますと」

「化け物がいるのだよ。どんなに数を集めようと、どれだけの火力を用意しようと打倒できない化け物が。奴らは必ず来る。闘争の匂いに引きづられて――今は我らが尻尾を出すまで待っているにすぎん」

 

「神亡奈落のことですか?」

「そうとも言える。だが――我々が手に入れたわずかな情報の中でも、このアーカードは群を抜いている」

 

「なんと。それほどまでに注目なさるとは――増援を送りますか?」

「いや、それにはおよばん。大海に石を投げ込んでもしょうがない。今のところはおとなしく見守っておくとしよう。それに、どれだけ増援を送り込んだところで無駄だよ。今裂けるリソースには限りがあるし、なによりも原住民では何を与えたって化け物は倒せない」

 

「ならばアーカードはそれでいいとして、神亡奈落はいかがいたしますか? 彼の方なら職にあぶれた兵隊どもでも数さえあれば」

「いや、そいつもどうしようもないよ。後で驚かせてやろうじゃないか――|大虐殺≪ビッグパーティ≫でね。やはりミレニアム自身が動けるようになるまではどうしようもない」

 

「なるほど。良いお考えです」

 

「では、ドク。来るべき|千年戦争≪ミレニアムウォーズ≫に向けての準備を進めよう」

「はい、少佐どののご意思のままに」

 

 

 

IS学園の学園長室。

そこで英語が交錯する。

酷く厳しい敵対的な響きで。

 

「|What are you cinsider?≪貴様は何を考えている?≫」

 

千冬は声を荒げて詰問する。

このしっちゃかめっちゃかにされてしまった世界では、ちょっとした火種が世界に悲劇をばらまくことになる。

ただでさえ、最初にミレニアムに攻められたアフリカは暗黒大陸と呼ばれる程の惨状になっている。

これ以上の悲劇は許容できない。

 

|Oh , it’s very fearfull.≪怖い怖い≫ |Don’t angry , beautiful Brunhild≪そんな顔をしないでくれたまえよ、美しいブリュンヒルデよ≫」

 

だが、こちらはひらりひらりとかわしていく。

万人が思うような傲慢な二枚目のアメリカ人――といったところ。

この男こそIS学園の学園長。

一国の武力すら超えるほどのIS戦力――教師部隊を指揮する最高権力者。

 

 

(ここからは日本語ですが、英語で話しているものとします。筆者の英語技能が低くて申し訳ありません)

 

 

「尊敬に足る人物ならば敬語くらい使うさ」

「おやおや、人類最強のあなたが敬意を払う存在がどこに?」

 

「――っは! ただ強いだけの奴にどこの誰が敬意を払うというのだ。敬意を払われるべきなのは、真に世界を想う人間さ……誰が我欲に飲み込まれた人間に敬意など払ってやるものかよ」

「ほほう、それは大変な言いがかりだ。我らは世界に自由と平和をもたらすために戦っているのだ。大体、我欲に飲まれた人間などと――君らの口から出る言葉ではないな」

 

「貴様らはいつもそうだ、アメリカの犬どもめ。自由と平和? 確かにそう思っているのだろう、他ならない貴様らだけは。しかし、私にはこうしか見えないのだよ――貴様らは自由の名のもとに人殺しの自由を謳歌しているにすぎない、とな。米軍はいい面の皮だ。まったく、殺す奴らは殺したくないと――殺されたくないと思っているのに、お前らはいつも殺す機会を狙っている。そんなに人殺しが好きなら、アフリカにでも行け。飲めた喰えやのパーティがやってるぞ。あそこにこそ真の民主主義とやらがあるのだろうさ――君たちが大好きな民主主義が」

「……ジャァップ! 貴様――この学園長を侮辱して、ただで済むと思っているのか? 大体、貴様らなどしょせんは我らが偉大なるアメリカ合衆国が征服するまで愚昧なる王とやらに支配されていた劣等民族が。我ら自由を愛し、自由に生きる民族を貴様ら|経済にとり憑かれた猿≪エコノミックアニマル≫ごときが、そのくだらない価値観で判断するか。誰が貴様らにものを教えてやったと思っている」

 

「――は! 日本人は昔から象徴としての天皇を中心とした君主制の民主主義だったよ。貴様らがやってくる前からな。アメリカが自由をもたらした? 貴様らがそんな顔をして乗り出して行った他の国を見てみろ。今のアフリカに勝るとも劣らぬ惨状ではないか。つまり、貴様らがもたらしたものと、ミレニアムがもたらしたものは同じだよ――もちろん、理想は違うことは知っているとも。まあ、利用されて軍事費を浮かしてくれたことには礼を言うよ。軍事費なぞ、経済発展の足かせにすぎんからな。しかし、泥船にいつまでも乗っているわけにはいかん」

「なるほど。あなたはあくまでそう言うわけか。いくら世界中の下等市民どもに人気があったとしても――我々の正義の前には脆い砂の城にすぎない。調子に乗りすぎると――どうなるかわかりませんよ」

 

「貴様らこそ、どうなるかわからないとは思えないのか? この私の名で貴様らがやろうとしていることを公表すれば……面白い光景が見れるだろうなぁ」

「あなたこそ、そんなことをして――民草の意志を二分するおつもりか? 暴動が起きますよ」

 

「ち……くれぐれも余計なことだけはしてくれるなよ」

「それはこちらのセリフです」




これで奈落側の黒幕が登場しました。
そして、少佐側の本命も登場。この虚人は道具のような扱いなので能力クロスの分類になるでしょうね。元ネタのガオガイガーは知らなくても問題ないです。能力は後で説明しますし。
さて、基本的に人物はISとHellsingだけから出すようにしていますが、能力だけのクロスも含めるとクロス作品は10を超えそうな勢いです。
PS.学園長がアメリカ人なのは独自設定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。