IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第50話 本音との一幕

「アーカード。君はいつまでここにいる気だ?」

「――さあ。死ぬまでかな?」

 

学園の前でアーカードの前に突如として出現する奈落。

そして、言葉を投げつけた。

対する方はひょうひょうとしたものだ。

顔には笑みすら浮かべている。

 

「なら、ここで殺してやろうか」

「くっくっく。面白そうなお遊戯だ――だが、君にはすでに相手がいるのではないかね?」

 

「ち――」

 

奈落は横を向く。

そこに人影が走りよってくる。

 

「奈落! あんた……一夏をどこにやったの!? いえ、イギリスでのあの事件――あれは一夏にやらせたんでしょう」

「――鈴音か」

 

怒って拳を振り上げて、奈落を睨みつける鈴音。

それも当然だ。

彼女は何一つ知らない。

奈落と一夏だけで決めてしまって、連絡もとっていない。

 

「奈落さん、一体あなたは何を企んでいますの?」

「セシリアも来たか」

 

こちらは幾分か落ち着いている。

だが、睨みつける目は同様。

むしろ覚悟ができていると見える。

回答次第では斬り結ぶ覚悟が。

 

「まあまあ、そんなにかっかするものじゃないよ。落ち着いて話そうよ、別に敵同士ってわけじゃあないんだからさ」

 

シャルロットも登場。

こっちも奈落からの連絡は受けていないはずだが、妙に訳知り顔である。

 

「ふん、そんなにも慌てふためいて――見苦しいな」

 

ラウラ。

やりたいなら私が相手してやろうと……好戦的な笑みを浮かべる。

一触即発の空気が流れる。

 

「そういう言い方は良くないと思うな~。それにらっくーなら何がどうなったか説明してくれるよ」

 

本音。

ぴょこっと現れた彼女が戦場の空気を乱す。

剣呑な雰囲気は雲散霧消して白けた空気が流れる。

 

「シャル、ラウラ、本音か。そして――」

 

奈落は明後日の方を見る。

 

「私も参加させていただけません?」

 

更識盾無まで現れた。

IS学園の生徒会長であり、日本の暗部そのものと言える更識家の長。

水色の髪――そして紅い目は鋭く細められている。

一本の刀のように研ぎ澄まされた気配が場を支配する。

 

「いいとも、しかしここでは話すのもどうだな」

 

しかし、奈落はあっさりとその気配を塗り替えてしまう。

 

「分かりました。では、生徒会室でお話を。あそこならば防諜も整っております。これでも私は生徒会長――そのくらいの権限は持っていますわ」

「使わせてもらう。アーカード、お前はどうする?」

 

ここで皆は初めてアーカードを見る。

先ほどまでの殺戮……遠目からで細部が見えなかったけれど、アレだけのことをやらかしたにしては幼すぎる容貌――そして可憐さに息を呑む。

彼女は悠々と言葉を続ける。

 

「では、私も行かせてもらおうか。ここに来たのは暇つぶしのようなものだからな」

 

 

 

「さて」

 

奈落はそう言い置いて立方体を机に置く。

別におどろおどろしい雰囲気があるまでもなく――ただのカメラだ。

カチカチと操作する。

そして、画面に光が灯り一夏の顔が映る。

 

「……」

 

楯無は無言で驚いていた。

外からの盗聴を許さないということは、中からの通信も許さないということである。

一々小さな発信機を除去するより、外に持ち出せなくしてしまったほうが早い。

この生徒会室でもダメということは、盗聴も難しいだろう。

 

「おお? なんだこれ――? あれ、皆……」

 

画面の中の一夏はアホ面を晒している。

どうやらリラックスしていたようだ――うたた寝するほどに。

 

「一夏は今、プライベートジェットでこちらに向かってくる。おそらくこの会議が終わるまで降りることはないから、通信で参加させる」

 

「へえ――、面倒がなくていい話じゃない。それで、一夏……イギリスでのあの事件はあんたがやったことね?」

「――なんでバレてるんだ? ああ、俺がやった」

 

「そう、怪我はしてない?」

「無事だぞ。あやうく自爆しかけたがな」

 

「それなら良かった。で、奈落――理由は?」

「おいおい鈴音――なんで俺には聞かないんだよ?」

 

「大体想像つくわ。どうせ、見過ごすことはできないとかそんな理由でしょ」

「その通り、そう言って私を頼ってきたよ」

 

「一夏のことは大したことじゃない。いや、この戦争の矢面に立つんだから、十分重すぎるけど――そういうことじゃない。問題は世界を操れるだけの権力を持ったあんたがそうさせたということよ、奈落」

「それは買いかぶり過ぎだね。私達は世界をどうにかしようと必死にやっているのだから――世界を操れたら、そんな苦労はいらない」

 

「それはどうかしら? いえ、きっと土台が違うのよ。あんたとあたしらじゃね。世界に影響力を持つとか、正直言って想像もつかない。だからこんな言葉になるんでしょうけど、でも――あなたの行動で世界ががらっと変わっていくって意味じゃ十分に支配していると言えない?」

「言えないね。何かしてみて、その結果がどうなるか全くわかりませんなんてものでは――支配なんて程遠い。だからいつもびくびくと謙虚に振舞っているのさ」

 

「けん……いや、いいわ。あたしはね、奈落。世界に協力な影響力を持つところの神亡奈落が何を思って一夏を戦わせてあげたかに疑問を持ってるの」

「友人に協力するのは当然の話ではないかな?」

 

「一夏を選んだのにはそんな理由もあったかもしれない。けれど、それと戦争を始めたのは別でしょ。希テクノロジーが表立ってミレニアムと戦争を始めるのかは知ったことじゃないけれど――いや、本当は調べなきゃいけない立場なんだけど――でも、あんな宇宙基地まで持ち出すのなら個人のやったことじゃすまない。なんで一企業がテロリストと戦うのを決めたの?」

「一夏の熱意にやられたのさ。彼ならば、悪い奴らをやっつけてくると思った。だから開発途中だったものまで持ち出してきた。それではいけないかな?」

 

「いけないわね。そんなもの、国家に任せておけばいいじゃない。いや、任せるべきなのよ――本当は。繰り返すわ、なぜ戦争に参加したの?」

「別に本当に希テクノロジーが矢面に立つわけじゃない。目立つといえば、最初から論外なほどに目立っている。希テクノロジーをなんだと思っている? 国家に対して最も大きな影響力を持ち、国家に依らずISを開発する超巨大結社だ。そんなことは今更なのさ」

 

そこで少し考えこむ。

更に言葉を続けた。

 

「後は兵器のPRかな? 確かに無償で――いや、この場合は無料と言ったほうが正しいのか。後で一夏に請求書を送るつもりなんて毛頭ないけど戦闘行為自体が宣伝になっているからね」

 

「あのAFを破壊したS―11……ま、要するに爆弾だけど、すでにうちの製造能力を超える注文が来ていてね。嬉しい悲鳴が聞こえるよ。苦労するのは私じゃなくて現場の連中だがね。ま、私としてはちょっとメールで号令をかけてやるだけさ」

 

「まあ――VOBの方は先行予約を取っている段階だけどね。あれは試作こそ出来上がっていたが、生産ロットはまだ製造途中だったんだ。ま、今の段階から予約がとれているなら早くに完成するさ」

 

そう、思い出したように加えた。

 

「――なるほど。体の良い人寄せパンダ、あるいは実験体ってわけ」

 

納得したような言葉を、納得していない態度で吐くのは鈴音。

 

「けど、それなら一夏さんが危険に……」

 

心配そうに一夏をうかがうのはセシリア。

 

「何を勘違いしている?」

「え? 試作機をテロリスト相手に実地試験なんてとんでもなく危険なはずでは――」

 

「私は止めた」

 

「決めたのは一夏ってこと? 都合のいい言葉ね」

「都合が良かったから一夏に武器を渡してやれたのさ」

 

「それ、違うよね~」

 

今まで主に話していたのは奈落と鈴音。

他は注意深く話を聞き、時折セシリアが口を出す程度だった。

このときも口を出すといえばそういうことになるが、他とはまるで別。

真っ向から奈落に反目した。

 

「「本音?」」

 

皆があっけにとられる。

このにこやかな乱入者に視線が集まる。

 

「らっくーは嘘をつかないよ。つくとしたら、それは敵にだろうね~。でもさ、嘘をつかないのと全てを明かさないのは別だよね。それで勘違いするのも――悪いのは勘違いした人なんだと思うよ」

「何を言いたいのかな? たしかに私なら――開発が完了したものを、さもぎりぎり開発に間に合ったという態度で持ち出してきてもおかしくないがね。しかし、懇切丁寧に一つ一つ説明していく気はないよ」

 

「うん、それは知ってる。らっくーってば飽きやすいから、気が乗らなければ長々とお話なんてしないもんね。でも、私を舐めてもらっちゃ困るんだよ。ね、何を隠してるのかな? 大切なことを言ってないよね」

「やれやれ――本音は鋭いな。私の態度に何か変なところでもあったか?」

 

「ううん、私はとろいからそういうのはけっこう見逃しちゃうの~。でも、雰囲気が変だったから」

「……雰囲気ね。そんなもので見透かされるとはな」

 

「うちの本音が失礼しました。で、教えてくださるのですか?」

「――古い話だよ」

 

そう、前置きした。

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