IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

62 / 95
第60話 韓国

「ちょっと待ちなさいよ、希テクノロジーが人体実験をしているってどういうこと!? 国際法で禁じられているはずよ」

「別にしてないぞ」

 

にべもない奈落。

慌てている鈴音とは正反対に。

 

「はあ!? 織斑先生――」

「私が実験台だったことは本当だな」

 

こちらも断定。

二人共本当のことを行っているようにしか見えないが――

――それはおかしい。

食い違っている。

 

「一体全体どういうことよ!? どっちが正しいのよ」

「そんなの両方に決まっているじゃないか」

 

奈落のすっぱりとした答え。

そんなこともわからないのかと言いたい顔だ。

 

「シャルロット――あんたらは一体何を言ってるのよ」

 

諦めてシャルに助けを乞う。

 

「まあまあ、人体実験って聞いて怒るのもわかるけど落ち着きなよ。“もう”やってないんだからさ」

 

とりなすようにシャルが言う。

もう……つまりは過去にやったということ。

過去に受けたという千冬と、今はやっていないと言う奈落。

一応、食い違いはない。

 

「じゃあ、本当なのね? 人体実験なんて――狂ってるわ」

「そう嫌わないでほしいな。まあ、仕方ないかもしれないけどね――でも、そのことを誰かに言っても無駄だよ。君の立場が悪くなるだけだから」

 

「情報統制が敷かれてるっての? まあ、そのくらいのことかもしれないけど」

「ま、ばれたらばれたでミレニアムにでも押しつければいいことだけどね。あそこも大概だし。で、そのことを知った鈴音はどうするのかな?」

 

「なにもしないわよ……! そんな、私が知ったところでどうにかできる話じゃない」

「ま、安心して。今はもうやってないから」

 

「……一夏」

 

鈴音は想い人を見る。

悪い奴らをやっつけるために彼らと協力している一夏はなにを思うのかを知りたくて。

協力を求めた人間たちですら悪い奴らだったなんて真実を彼がどうするのか想像もできなくて。

 

「なんだよ? 別に今やってないならいいだろ。なんというか――反省してるみたいだし」

 

なんというか――非常にあっさりとしている。

それでいいのかと思うくらいに。

 

「――っ!?」

 

このとき、鈴音は今まで一夏に抱いたことのない感情を覚えた。

それはこの前に初めて知った胸が押しつぶされそうな感覚。

ケルベロスと相対して、何もできなかったときに感じたもの。

得体のしれないものに対する恐怖。

 

「……?」

 

わずかに一歩を退いた鈴音を、一夏は疑問の目で見る。

……子供のように純粋に。

 

 

 

すさまじい音がした。

奈落が机を叩き割った。

その形相はもはや憎しみと言ってもいいほどの嫌悪に溢れている。

 

いきなり過ぎて意味がわからない。

 

「おいおい、どうしたんだよ? そんな顔するなんてお前らしくないな」

「――は! こんな馬鹿らしいことを聞いてそうそう真面目な顔などできるものかよ」

 

奈落にしてはわかりやすすぎる悪態をつく。

 

「本当に。私は失礼いたします、本音は残しておきますね」

 

盾無が席を立った。

 

「すまんな、私もだ」

 

千冬。

 

「奈落。あんた――それ、本気で言ってる?」

 

次々と去っていく人を気にもせずに奈落を睨みつける。

鈴音は彼の態度を自分たちの話を聞いてのものだと誤解した。

 

「ちょっと待って、鈴音。今連絡が来たから――」

 

シャルが携帯を手に取る。

 

「はい、僕だよ。それで?」

 

「は? ホント――ま、そりゃそうだよね。で――」

 

「はいはい。うん、それでいいと思うよ」

 

「はーい。じゃあね」

 

携帯を切って鈴音を見る。

やれやれ、皆馬鹿だねーとでも言いたげな顔で。

鈴音はそんな脳天気な顔を殴り倒したくなる。

 

「緊急事態かな。アメリカが日本に脅しをかけたみたい。それも最悪の形で」

「最悪? それはつまり――」

 

「そう、核の火だ。彼らは篠ノ之束の身柄を要求し、果たされなければ日本を火の海に沈めると言っている」

「――奈落。それなら……」

 

「無理を言うな。何をどう干渉しろと? まあ、私が束の奴を殺したが――そう言って信じる奴はいない。証拠もないのだから」

「アメリカは本気なの?」

 

「もちろん――」

「もちろん?」

 

「違うに決まっている」

「――はぁ?」

 

「まさか本気で核を使うものかよ。ミレニアムを放っての核戦争に突入する危険がある。だがまあ――本気でなくとも奴らは使う。一度言ってしまった以上、奴らには面子というものがある」

「それ、最悪じゃない」

 

「まあ、な。だが私たちに打てる手段もな――」

「撃墜すればいいだろう」

 

「一夏。ことはそう簡単ではない。ICBMくらいならそれでいいかもしれんが――相手は核だ。海が汚染される。どうにかして使わせないようにしなくてはな」

「希テクノロジーの力を使って脅せないの?」

 

「それはさすがに無理だ。相手はアメリカだぞ」

「まあ、それもそうね」

 

「――? またか」

 

奈落が動きを止めた。

 

「はい?」

 

またシャルの携帯に連絡が来る。

 

 

 

「今度は何? はあ? 韓国が――ねぇ」

 

「うん。まあ、そうするしかないよね。でも逆に考えると絶好のチャンスだよ」

 

「そうそう、頑張ってね。ま、やるだけやってみなよ――どうせ、君たちにとっては対岸の火事でしょ」

 

「はいはーい。ま、こっからはリアルタイムで情報が欲しいところだからこのままにしておいて」

 

 

 

「――お次は韓国が日本に宣戦布告してきたみたい」

「なによそれ」

 

「ホント、僕もそう思うよ。でも、助かったんじゃない? アメリカも上げた拳の適当な振り下ろし場所も見つかったし」

「なら、日本に核が落とされるような事態には――」

 

「――甘い。まだ可能性はある。我欲に支配される者、保身に走る者、愚か者はいくらでもいる。その動きが渦となれば、予想もつかぬ結果が生まれることもある」

「動きがあったよ。というか、韓国は――うん。そうだね……アメリカが日本に脅しをかけたときから準備してるみたい。いや、行動が遅いのか早いのかちょっとよくわからないけど」

 

「国家の即断と言うには早すぎるし――前から準備していたというには遅すぎる。うん、やっぱり微妙だね。ヘリにISを乗せて出発したみたい。武装ヘリでもないただのヘリだから戦力に入れないとして――3機のISが日本に侵略する戦力だ。というか、ISを全部投入しちゃってよかったのかなぁ」

 

首を傾げるシャル。

あくまで彼女は他人事だ。

 

「まずいに決まってるでしょ。韓国ってまだ北朝鮮と戦争状態にあるんでしょ。国連は国家として認めてないからIS戦力はないはずだけど――通常戦力で攻めてこられたらどうするつもりよ」

 

だが、普通の神経を持っているなら違う。

状況のあまりのマズさに嫌な顔を隠せない。

鈴音のほうが一般的といえる。

 

「さあ? 何かありそうな情報もないし、別にアメリカ軍が駐留してるわけでもなし。攻められたら終わりだね。なんというか――日本に攻め込むのに夢中になってるんじゃないかな。ま、本当に攻められたら日本に謝罪と賠償を要求するでしょ」

「視野狭窄……それって追いつめられた人間がなるものだけど。韓国ってそんなに追い詰められていたっけかしら? なんか破滅の未来が見えるわね」

 

「ただ現在日本が動かせるISも3体なんだよね」

「は? 少なすぎでしょ。そんなものじゃない数のコアが譲渡されてたと思うけど――ってか一番ISを持ってるのも日本よね? おかしくない」

 

「データの上ではね。でも、IS学園に所属するISが半分以上。これらは日本政府の命令では動かないよ。そして企業に所属しているのもそう。まあ、企業が持ってるISに命令権がないなんてのは日本だけだけどね」

「ふぅん。でも――正直数が同じなら日本が圧勝しそうなものだけど」

 

「それは違うよ。どうせ、1体は国防のためだか、政治家の保身だかのために残されるはずだよ。だから2対3だね。まあ、これでも韓国に勝ちの目が出てきたってレベルだけど」

「それは違うな」

 

断定がシャルの声を遮る。

こちらは鈴音以上に苦い顔をしている。

この馬鹿どもが……っ! なんて程度には収まらない。

今すぐにでも国会に乗り込んでいきそうなほどの憤怒。

 

 

「え? 奈落――って、うん。はいはい、日本に動きがあったの? 一体って、何考えてるの? いや、わかるわけないよね。それじゃ、引き続きお願い。つまり、こういうことなんだね」

 

「そう、1対3だよ。これなら日本の勝ち目は薄い。馬鹿者どもが」

「ええ……っと、この場合どうなるんだ?」

 

一夏は唯一わかってないような顔をしている。

脳天気というくくりではシャルと同じだが、こちらは本気で世界情勢を理解できていない。

まあ、各国の保有台数すら知らぬのだから仕方がない。

 

「うーん、さすがに1対3は無理だね。まあ、アメリカも示威のためにやってるからね。日本が負けた――まあ、残りの2機でも勝てるんだけど、初戦で負けたのは変わりないし、そこで止めると思うよ。とりあえず戦争自体なかったことにしろってさ」

「いやに歯切れが悪いな。で、それでなんか悪影響でもあるのか。戦争なんかやめましょうってことじゃないのか」

 

「いや、まあ――そうなんだけどね。なんかアメリカって日本にだけ、やたらに高圧的だし。韓国にギャーギャー言われたら譲歩しろと言ってくるかも。それに、日本が負けたところで戦争終結だから一応は賠償金をふんだくられる立場になっちゃうんだよね」

「あー、なるほど」

 

「ま、僕たちは見てることしかできないよ」

「そうなのか、奈落?」

 

「残念だが、な」

「そうか」

 

「まあ、見ていることにしようじゃないか。この戦争はすぐに終わる」

 

と、そこでシャルがもう一つの携帯を手にする。

 

「あ、セレン。日韓の戦争について、ね。そっちではそっちで動きをキャッチしてるでしょ。僕の【ホワイト・グリント】にデータを転送してくれない? はい、うん。来たよ、ありがとね――え? 奈落は横に居るよ。うん、それじゃ」

 

空中にディスプレイが展開される。

ISの基本能力の一つ。

まあ、整備のため以外に使用されることはそうないが。

 

「さて、韓国側はヘリから飛び降りたね。交戦予想時間まで3分近くあるけど、ヘリは帰るのかな? あれ」

「おい、ヘリのポイントが変わらないんだけど、これどうかしたのか?」

 

「これ、落ちてないかな?」

「確かに高度は落ちているな。その場に留まる意味もないことだし――単なる故障か。考えてみれば、ヘリを戦いに巻き込まないのには1分前で十分だしな」

 

「なんかグダグダねえ」

「さて、そろそろか」

 

見ているうちに3つの点と1つの点が近づいていく。

……交錯する。

 

「さて、どうなるか」

「さすがに結果なんて……」

 

高速で動きまわる点が、3点を中心に回る。

 

「これは――」

「ふむ少数が多数を圧倒するか。だが――」

 

「このままだとじり貧だね」

「どういう意味だよ? このまま押し切れば――」

 

「まあ、一夏には縁のない話だけどね」

「ISの火力でもってしてもISは硬すぎる――落とせて二体で弾丸が尽きる」

 

「でも一夏のは一撃必殺だしね。相手にかわされさえしなければ、何体でも屠れる」

「ふむ――いや、これは」

 

「どうしたの? こんな自爆戦法に何か、奈落」

「これは面白いことを考える」

 

「うん――何を考えてるって? 上が上なら下も下。押し切れると考えて馬鹿なことをしてるんじゃないかな。持ってる弾薬の量も考えずに」

「いいや、上の無能を下が補うのは古来からの日本伝統だ。そのIS操縦者が戦っている相手は韓国ではない」

 

「――へえ。なら、どこ?」

「アメリカだ」

 

「――? いや、うん。そういうことか……チキンレースだね」

「え? どゆこと」

 

「この場合、韓国が勝つのは別にいいけど、日本に勝たれちゃまずいのよ。少しは国際情勢と言うものを考えなさいよ、一夏」

「いや、そうは言ってもな鈴音――俺には国際情勢なんて難しすぎてさっぱり」

 

「別に難しくはないわよ。しょせん、この世は武力と金――それから眼をそらそうとするからわけがわからなくなる。歴史とか友愛とか罪業とか無関係なもので括れるわけがないのよ」

「――鈴音、お前……何かあったのか?」

 

「あんたには関係のないことよ、話を戻すわ。日本が勝ってしまうと、これ幸いと虐げられる現状をひっくり返される恐れがあるのよ。まあ、現状でも国際貢献に比して影響力が低すぎるからね。なんで怒らないのか不思議だけど、まあ――戦争に勝っておいてそれを全部なかったことにされたらさすがに怒るでしょ」

「……なるほど」

 

「……何がわかったの?」

「日本が勝っちゃマズイんだろ」

 

「説明全部なかったことにされたわね……で、どうなのよ」

「うん、こっちが米軍から来たIS。沖縄米軍基地唯一のね」

 

「そう、いつでも仲裁に入れるようにしているわけだ。この日本所属機が戦っているのはこいつだ。韓国所属機などただの障害でしかない――単なる敵未満のガキ」

「敵は鬼畜米兵ってとこかな」

 

「いや、鬼畜米兵なんて今どき流行らないわよ」

「さて、チキンレースはどちらが勝つのかな?」

 

「なんにせよ、一番利益を得るのは……唯一利益を得るのはと言ってもいいか、アメリカだ。しかし、まったく持って完全に追い詰められてなどいないゆえに、余裕が判断を狂わせる」

「別に損するわけじゃないんだから、次善の策でもいい――そう、最悪の兵器をぶっ放すよりは。まあ、別にぶっ放しても死ぬのは日本人だけど――さすがに虐殺は遠慮したいはず。そうでなければISに乗る許可を得るための検査のうち精神鑑定で弾かれる」

 

「「ゆえに、この米兵は日本兵の思惑にはまる」」

 

「……どうでもいいけど、お前ら仲いいな」

「本当にどうでもいいわね。ほら、一夏……今まで動きをひそめていた米兵が動くわ」

 

「勧告は――

 

『双方動くな! 我らがアメリカが自由と正義の名のもとにこの戦争を預かる。武装解除し、指示に従いたし』

 

と言ったところかな」

「うん。全員の動きが止まったし、受けたようだね」

 

「――いえ、韓国兵が動いたわ。そして、日本兵が逃げ…..後方で支援に回った。米兵と連携して反撃する」

 

武装解除と言っても拡張領域にしまっただけだ。

さすがにアメリカでも機密の含まれている最新式の銃器を海の真ん中に落っことせとは言えない。

あっちは日本などよりもずっと機密流出には厳格なのだ。

だから不意を突かれても、一瞬後には武器を引き出している。

後ろに下がったのはエネルギーが心もとないから、そして米兵の方には連携する気などないから。

日本機はやむなく援護に回ったというわけだ。

 

「1機落ちた。やはりあっさりと片付いたな。2対2なら――そら。もう1機が落ちた」

「はい、最後のも落ちたよ」

 

「さて、これで無条件講和の条件は整った。まあ、韓国には後でIS委員会がコアを徴収するだろう。そのコアについては、世界平和の貢献だとかの名目でアメリカに渡るだろうな」

「そうだね。世界のためなら自国の損失を躊躇しない政治家もいるし。今の日本首相って誰だっけ?」

 

「それくらい覚えときなさいよ。|鴨海雪妻≪かもうみゆきめ≫よ」

「へー、そうだったんだ」

「ああ、そんな名前だっけ」

 

「あんたは日本人でしょうが! それくらい覚えときなさいよ!?」

「いや、日本人と言えるかは微妙……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。