IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第64話 第一次ミレニアムウォーズ 日本編2

「さて、セシリア……君に人を殺したことは?」

「あるわけがありません」

 

「それも道理か。完全に平和ボケだな」

「返す言葉もありませんが、軍人が人を殺したことのない世界こそ真の平和と言えるのではありませんこと?」

 

「ミレニアムが存在していても?」

「……ごめんなさい」

 

「そちらは問題ない。EUにはアーカードが居る――何も問題はない」

「そんなふうに言われると悔しいですわね。まるで、ミレニアムに対抗できるのは希テクノロジーだけみたい」

 

「別にアーカードは希テクノロジーの技術で生まれたわけではない。私の異能と同じく生まれ持った異能だ……今までそこに所属していたに過ぎない」

「けれど、あなたがたが世界を左右しているのではありませんこと? まるで世界の支配者が誰かを争っているみたい――」

 

「左右することと支配するのは等号では結べない。世界を変えても、本人の思惑とは無関係に逸れていってしまう。世界とは、かくも愚かで度し難い」

「けれど、ミレニアムが作る世界が地獄でないはずがありません」

 

「ならば、殺せるか? ひよっこ」

「殺せますわ。玄人」

 

 

 

「「では、殺戮の宴の幕をあげましょう」」

 

轟、と2つの影が舞い上がる。

 

ファサ、と翼が広がる。

 

両翼が2対。

 

針が何十にも重なってできたような羽。

そしてビットの檻。

 

「オーバードウエポン――999式多層破壊天使砲(スリーナイン・エンジェルフォール)

 

もともとは背部兵装『EC-O307AB』という名のEN兵器だ。

絶大な破壊力を持つ天使の羽を連想させる砲塔が3つ連なったものが片翼。

その代わり――通常のISに乗せると飛べなくなる。

絶大な破壊力の代わりにすぐにエネルギーが底をつく。

まさに『零落白夜』の銃版と言ったところ。

 

それが――全部で999。

3つでさえ威力も消費もすさまじいのだ。

それが333倍となれば、とんでもないことになる。

 

 

 

「さあ――舞いなさい。ブルー・ティアーズとその仲間たちよ!」

 

蒼い涙のようなビットが12個。

そして、他のビットが124個。

完全にISの軌道を捨て、ビットに集中すれば――BC兵器の世界最高適正を持つ彼女ならばこれほどの数を操るのも不可能ではない。

彼女は己が所属する政府から、そして奈落から際限なくビット兵器を集めていた。

そう――まさにこの時のために。

 

 

 

撃つ。

その程度の言葉で表せるものでもないが、他に形容できる言葉も無い。

999+136の……計1125の砲が火を噴く。

 

相手は中国軍。

流石に外洋に出るだけで沈みはしない。

ゆっくりと、確実に本土に向かってきている。

そして敵への警戒も怠らない。

 

叫び声が聞こえる。

ほとんど聞き取れるものでもないが、見ればわかる。

彼らは銃火の中で兵のケツをひっぱたくために声を張り上げているのだ。

すぐに戦闘に移る。

 

元々二人はまともな狙いなどつけていない。

水柱が次々と当たる。

数撃ちゃ当たる――そのことわざどうりに次々に船に穴が開いてく。

 

そこは地獄。

一方的に蹂躙される。

運がよい者は船が揺れることもなく戦闘位置につく。

だが悪いものは?

体の一部が――いや、むしろ一部が残っているだけというべきか……直接攻撃を喰らって消し飛ぶ。

 

その中、なんとか迎撃体制を整えた。

ISの出撃。

他はなんとか回避を試みながら日本本土へ。

 

「セシリア。慈悲をくれてやれるほどの余裕はなさそうだ」

「彼らは侵略者ですのよ? 慈悲など初めから存在しません」

 

それは初めから覚悟していた。

よほどの馬鹿でなければ、超兵器なんぞ無視する。

本土に到達すれば勝ちなのだから。

 

「ふむ――。一応は海上救助隊に連絡したのだが、無駄だったかな」

「……なんてことを」

 

セシリアが信じられないものを見るかのように奈落を仰ぐ。

それもそうだ。

よりにもよって、戦争を挑まれた国に――

――つまるところ、虐殺しようとして、略奪しようとして断りもなく領土に入ってきた敵を……よりにもよって

犠牲予定者に助けろと言っているのだ。

道理に合わない。

そんな聖人がいるわけない。

 

「日本らしいと思ったのさ。それに、もう自衛隊はないからな」

 

もっとも相手は国。

それも日本だ。

あの妙に自虐的なんだか利他的なんだか、とにもかくにも自分の国を愛する意識に欠けた国。

敵の中国人兵を助けたいと思う人間はいないだろうが――

――中国を助けたいと思う政治家はいるということだ。

 

「ああ、その予算をISに回したのでしたか。日本人の考えることはよくわかりません――現に色々な支障が出たのでしょう? レスキューがこんな外洋まで到着するにはいくらかかるのやら」

 

そう、自衛隊もいない。

それは、国を守るという意識事態がもともとないのか。

軍を縮小した国は数あれど、手放した先進国は日本くらい。

セシリアはそれを聞いたとき、開いた口が塞がらなかったものだ。

 

「何かを考えている者など、実は相当に少ない。こいつらも――何も考えちゃいないさ」

「――その言葉は否定したいところですが」

 

「敵ISと交戦に入るまでに2割も落とせなかったか。全部隊の3割……兵士の6割だな。それで全滅と言えるが……」

「さすがに2割では引いてくれませんわね。それに、一矢も報いずに逃げ帰れるものですか」

 

「だが――」

 

奈落は999式多層破壊天使砲(スリーナイン・エンジェルフォール)をマニュアル制御に変える。

セシリアのビット数のおよそ6倍。

その程度なら奈落もシャルだって楽々と扱える。

 

「弱すぎる」

 

天使砲の射線を操り、誘導するだけで落とせてしまう。

敵ISは一矢を報いることもなく、早々に潰された。

まるで雑魚を掃除するように。

 

「女ではこの程度か。それとも、今の世界では……と言い直すべきかな?」

「今の世界では、と言い直すべきですわ。だって、この中国軍は戦争を体験したことなどないのですもの」

 

「そうだな……全体の1割も消耗していないだろうに――もう脱走兵が出ている。こんなところで海に逃げても溺れ死ぬだけなのにな」

「……助けます?」

 

「降伏勧告をかけておけ。私は一夏の方に……む?」

「どうかしましたの?」

 

「あいつ、予想以上によくやっている。助けは必要ないな――だが、箒を連行する必要がある」

「――彼女が何か?」

 

「問題なのは彼女ではない。間抜けにも助けに行ったつもりで、自分の命を危険に晒しただけで何の助けにも――否、はっきりと足手まといだった。しかし、そんなものは奴の自由だ」

「――では?」

 

「問題なのは彼女の周囲さ」

「……篠ノ之束?」

 

「彼女の悲劇――その元凶」

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