IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第69話 始まりの凱歌

「さて、諸君――つかの間の平和は楽しめたかな?」

 

生徒会室。

奈落は7人の前で声を上げる。

 

「当然。誰が鬱々として暮らすってのよ、そんなのあたしの好みじゃない。遊ぶときは遊ぶわ――もっとも、そんな楽しい時間は終わりなわけだけどね」

 

まず声を返したのは鈴音。

言葉とは裏腹に顔は暗い。

いや、楽しむ時間が終わったのだから当然かもしれない。

 

「それはどうかな? どんなに絶望的な状況だって、好きな人と一緒に入れるなら大したことでもないと思うよ」

 

前者の発言に疑問を呈す形で声を上げたのはシャルロット。

目は細められていて、まるきり悪女――純情系にはまるで見えない。

それでいて奈落にすべての愛を捧げている。

それはもはや狂愛と言っても差し支えない。

 

「――ふ。誰が相手でも変わらん。全てを叩き潰して屈服させる。ただそれだけのこと……愛しい者の隣に立つ権利なら力で奪い取ってみせよう」

 

静かに軍人らしく屹立する。

その笑みは禍々しく、とても一介の少女には見えない。

これでいて奈落には愛と忠誠をごちゃ混ぜにした狂信を捧げているのだから――また。

それは全てを壊す凶器。

兵器として生まれた強化人間、ラウラ。

 

「皆、凄いな。俺はただ誰もが笑っていられたらいいな、と――それだけなのに」

 

ちっぽけで、それだけに難しい願い。

恥ずかしげもなく口にするのは一夏。

これでいて存在の種類としては奈落と同じ――人間ではない。

アンバランス……幼い願いと強力な能力が同居している。

それはなんて――忌避すべき怪物(正義の味方)

 

「無辜の人々の幸せを奪う権利は誰も持っていない。だからこそ誰かが戦わなくてはならない。そして私は力を持つことを誇りとしましょう」

 

ノブリス・オブリージュ。

時代錯誤と罵しられようと、僅かな力しか持たずとも、彼女はそうする。

それがセシリア・オルコットの生き様。

幼少の頃より正義に依る制裁を下してきた。

非合法な暴力に頼ったことなど一度もない。

 

「私にこの機会を与えてくれたことを感謝します。私はこの血にかけて守らなければならないものがある。ゆえに、汚泥を這いずってでも成し遂げてみせましょう」

 

血――“更識楯無”という名を受け継いできた一族。

日本を守るために影となって動いてきた。

それは今も変わらない、未来永劫変わるはずがない。

 

「私にはこれだけしか言えないけど。でも、言わせて――頑張って」

 

唯一ISを持たない彼女……本音。

けれど、彼らの戦いは力を持たない者のためにある。

 

 

 

「夜が明けるまで――奴らが指定した日まで後10分。覚悟はできているな?」

 

どうしていいのかわからなくてあたふたする本音。

それを後目にみんなが静かに頷く。

彼女以外は空中にディスプレイを表示させて数字をいじくっている。

最後の調整というわけだ。

 

「で、奈落――ミレニアムの出方はわかってんの?」

 

目は数字を追ったまま、鈴音は疑問を投げかける。

 

「正直わからない。しかし少佐のことだ――焦らしはすまい。いや、そもそも我慢することすらできないよ」

 

答えるその声は完全に平静。

こちらも同じく数字をいじっている。

 

「じゃ、出たとこ勝負ってわけ? 後手に回って勝てるような甘い相手かしら」

「その通り。奴らは甘い相手ではない。万全に対策をしてもなお食い破ってくる奴らだ――対策を立てられないことほど恐ろしいものはない」

 

「けれど、やらないわけにはいかないのよね」

「そう――我々がやらなければ誰がやる? アメリカは先の大戦のダメージから復旧できていない」

 

「EUはアーカードのおかげでダメージはないけれど、それでもあの程度の戦力じゃ対抗できないわよ」

「そして中国も死んだも同然。朽ちるのを待つ地に伏せた豚」

 

「日本も同じ。自ら牙を折った獣。寄生虫にやられて肉が削げ落ちて、けれど獲物を狩る牙はすでに亡い」

「絶体絶命というわけだ。世界の命運は高校生と怪しい組織に託すしかない。日本の命運にしてもそう。EUに少し働きかけてアーカードを日本方面の守りにつけることにした。大歓迎だったよ――奴らはよほど化け物を遠くにやりたいらしい」

 

「確かに長い付き合いだけど、あんたの存在は謎そのものよね。まあ、一人一人を守ろうって謙虚さはないけれど、こと人類を守ろうとしていうる点は信頼できる」

「それはどうも。君だって一人の死者も出なければいいと思っているだろう? いや、ここにいる人間に死者が出ることを望む者はいない」

 

「ええ、それは本当にその通り。だから――」

 

 

 

 

「戦争を始めよう」

 

奈落が言う。

まるで地獄の軍団の指揮隊長のように。

 

「……一夏」

「斬る。きっと、それは俺にしかできないことだと思うから」

 

「……シャル」

「やるよ。願いのためなら他なんて知らない。私は大切な人以外のことなんて知らない」

 

「……ラウラ」

「打ち倒す。この私の力で持って、有象無象も強者もまとめて――我が強さの証明としてくれる」

 

「……鈴音」

「守るわ。私にはあんたらほどの力はないけれど、やれることなら全部やってやろうじゃない」

 

「……セシリア」

「正義の為に。この私の銃弾は悪を貫く鉄槌ですわ」

 

「……楯無」

「国をかけて。一族の誇りに殉じるためなら、敵よりも深いところに堕ちるのも厭わない」

 

 

 

「――ならば」

「「「ミレニアムを叩き潰す」」」

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