IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第70話 第2次ミレニアムウォーズ

「――副総帥」

「奈落と呼べと言ったろう。で、早速ミレニアムの登場だな――AFの数は?」

 

アームズフォート。

それは戦場を支配する数の暴力。

ただの一機でIS数十機分の火力をまき散らす移動要塞。

この場面で一々ISの数を把握しても意味が無いと思った奈落は初めからそれを問う。

だが、それは無駄でしかない。

 

「出現した敵は1000。全てAFです」

「――なんだと? それではさすがに倒したとて……いや――奴らに負けて勝つなんて発想ができるものか」

 

一人でぶつぶつつぶやく。

そう、1000機のAFなど……そこまでの戦力を用意された時点で初めから詰んでいる。

さすがにそれは奈落でもどうすることもできない。

いや、戦力がどうのといった話とは少し違う。

数ではなくゴミという暴力。

地球の表面を残骸が覆い尽くし、とても人が住める環境は残らない。

兵器の残骸が世界を覆うなど、どんな悪夢的な世界の終わりか。

 

「転送装置か、それとも虚数物質を使ってあるのか。ともかくもそんな無様な策を使うやつではない。なんにせよ、残骸は消える。少佐は消す」

「奈落様、どうしますか?」

 

奈落は疑うこともなく信じる。

彼とて、何億トンどころではないゴミをどこかにやってしまうことはできない。

さすがにそれは得体のしれない彼であろうと不可能だ。

彼はあくまで多能を有するだけで、全能とは程遠いのだから。

 

それでも、彼は言い切った。

皆目見当もつかないが、少佐が出したゴミは少佐がかたづけてくれる、と。

立つ鳥跡を濁さず――当たり前のことかもしれないが、できる人間はあまりいない。

それが政府だとか、組織であるならなおさらに。

そういう潔癖さだけは持っているのだ――少佐流の悪の美意識といったところか。

 

「動揺する必要はない――なに、相手がすこしばかり想定よりでかかったというだけの話だよ。文字通りにね」

「では配置しておいた【セラフ】を起動させます」

 

わずかに動揺していたことなど嘘のようにすらすらと指示を下す。

そして、受ける側も迷いなく処理する。

ここにいるのは超一流ばかりを集めた世界最高レベルの軍事機関。

それをただの一企業が所有しているのだから恐ろしい。

 

「ああ。砲台代わりにはなる。どれだけ戦果をあげられるかは指揮者次第だ」

「――はい。奈落様が気張れとおっしゃっていたと伝えておきます」

 

配置していたというセラフは実はまだ未完成。

空中戦すらできやしない。

それでも、オーバードウエポンは使える。

舐めていると一瞬で蒸発することになる。

 

「ああ、頼む。それで【神の杖】は?」

「ラウラ様が位置につきました。発射準備が整うまで後20秒です」

 

神の杖――アメリカが開発していた兵器を希テクノロジーが買収し、改良した。

いや、改悪というべきか。

ラウラのための仕様といっても、むしろ言葉不足。

彼女がいたからこそ、“そう”された兵器。

 

「よし、そっちはそれでいい。シャルは?」

「予定通り、島にいます」

 

「そうか。我々の最高戦力は彼女だ。そして、長年隠していた秘密の島――切り札を切るときは効果的にしなくてはな」

「はい。未だその時期ではないということですね。ベルナドット様かセレン様にお繋ぎしますか?」

 

「ああ、戦況はまだ動く。こんなのは序盤だ。趣味の悪い序曲などさっさと止めてしまうに限る。さて、あいつらに演奏させることなく楽器を砕く――次はどの手を打とうか。なあ――どう思う?」

 

憂鬱そうな奈落が問いを投げかけたのは――

余裕で不敵な笑みを浮かべる歴戦の傭兵ベルナドット。

殺意が滲む笑みを口の端に刻む過激な戦闘指揮者セレン。

 

 

 

「さて、収束まで3秒」

 

ラウラ・ボーデウィッヒは衛星軌道に居た。

ギガロマニアックスの異能を遺憾なく発揮、さらに最新のIS装備の力を合わせて全世界を俯瞰する。

普通ならば脳が焼き切れる。

それでもなお、なしてこその最強を望む者(ブリュンヒルデ)

 

「なんともまあ――蜂の巣をつついたような大騒ぎ。一ヶ月前からこうなるとはわかっていただろうに」

 

眼下には有象無象。

人間どもが騒いでいる。

まるでこんなことになるとは思わなかったと叫ぶように。

むろん、宣戦布告は1か月前にされていた。

それでも、対抗策などほとんど用意されていなかった

そう――希テクノロジーを除いては。

 

「だが、そんなものはどうでもいい。有象無象がどうあろうが、私の針の一撃は敵だけを貫くぞ……!」

 

彼女は星。

比喩ではない――彼女のISシュヴァルツェア・レーゲンが本体の大きさをはるかに超える追加外装をまとっているため、球状のずんぐりとした状態になっているのだ。

そのせいで大きさは3倍ほどに、つまり体積は30倍近い。

そして追加外装のほとんどすべてはエネルギーの生成のためだけに使われるのだ。

 

「見せてやろう。希テクノロジーの最新鋭技術を結集した超弩級欠陥兵器の力を……. 規格外超弩級戦略兵装(オーバードウエポン)の前にひれ伏せ」

 

ラウラは眼帯をもぎ取り、金色の目をさらす。

そう――【|劫≪アイオン≫の目】を。

封印された馬鹿馬鹿しいほどまでに強力な魔眼が発動する。

 

「【衛星軌道上地上掃討用反射レーザー神の杖(ネビーイーム)】」

 

羽根が開く。

球状から羽根つきの半球へと。

体が10倍ほどに大きく見える。

それはレーザーの発射台。

羽根はすべてを焼き尽くす光を放つためのもの。

 

「――発射」

 

羽根から光が放たれる。

その光は目の前のレンズに吸い込まれて拡散する。

拡散された光は地球を回りこむように拡散し、すでに配置されていたレンズに当たる。

また拡散する。

拡散した先でレンズに当たる。

さらに拡散。

ぴったり1000本の光が地上に降り注いだ。

 

「AF……撃破完了」

 

全ての光はAFの動力部に命中。

機能が停止した。

ありえない命中精度だ。

どれだけの腕前があれば、いや――レーザーは空気の状態で微妙に曲がってしまう。

全弾命中させられる“状況”が都合よく眼の前に転がっているなど、いったい何日――いや何十年待ってれば現れる?

 

いや、そもそも

ラウラは超弩級欠陥兵器といったのは、悪い意味で伊達ではないのだ。

 

ネビーイームは想像を絶するほどのエネルギーを必要とする。

それに関してはブラックホール・エンジンを実装することで解消した。

しかし、不安定。

実に80%の確率で起動に失敗し諸共――それは半径5m四方が消失するだけだが、吹っ飛ぶ。

更にはデータ上、レーザー発射時の動力炉の負荷で99%の確率でこれまた吹っ飛ぶ。

データ上なのは危険すぎて試せないから。

吹っ飛んで生き残る手段などない。

消失だ――どうなるかは人類の感知できるところではない。

 

「これが私の【刧の眼】。この黄金の瞳は勝利の未来をつかむ――そして、それにはこういう使い方もある」

 

ラウラは賭けなどしていない。

0.00000000001%の確率なら、それを100%にする裏技を使えばいい。

確率操作の上位互換、運命操作。

ならば、こんなことも可能。

 

狙いをつけらない兵器でピンポイント狙撃を敢行する。

レーザーの起動を予測するには、ミラーの角度、大気の組成、風、温度をリアルタイムに予測する必要がある。

それくらいしなければ、ビルほどの大きさの的に当てるのすらおぼつかない。

もっとも、そこまでできるCPUは存在しない――ISでも不可能だ。

 

「さて、どう出る? このようなあっけない終わりを許容できる貴様らではないだろう――」

 

不可能とすら言える技を成功させたラウラは不敵に笑う。

 

 

 

停止したAFが起動する。

 

「――む? 再生能力か。だが、第2射の準備は完了している……!」

 

2度目の発射。

出力が上がっている。

当然だ――暴走しかけているのだから。

 

「次は完全に撃破してやろう……発射」

 

見事命中。

しかし、次の瞬間には回復している。

思わず舌打ち。

 

「……っち! キリがない。しかし、打つ手が無いわけではない……!」

 

ラウラのオーバードウエポンが変形していく。

 

「こいつももう限界。いくら抑えても、熱暴走は止まらない。だから――」

 

そもそもこれは確立を淘汰するラウラの眼があってこそ。

いや、あっても危険すぎて作られるわけがないレベルのものだ。

完成してるとかそういう以前に、動くだけで制御はできない。

当然、使ったら暴走して壊れる。

 

「捨てる」

 

最後の発射。

構成していた部品が流星となって敵を貫いて喰らいつく。

もっとも最重要で地球をどうにかしてしまいそうな部分だけは虚空空間に堕としておくが。

 

「異物を体内に抱え込んでは再生どころではあるまい」

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