IS 第三次世界大戦   作:Red_stone

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第71話 不死の兵隊

「――来たか」

 

一夏は宙を睨む。

ここは学園の近く。

奈落に言われたとおりに待機している。

そしてISは装着済み。

 

「なるほど。観測は出来るわけか――さすがは真正のギガロマニアックスってとこだね」

 

何もない場所から鎌を持った女が出現した。

そこはちょうど一夏が睨みつけていた場所なのだった。

 

ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。

その女の殺気はねばねばしていて、背筋を凍らせる。

半身にのみ刺青が刻まれた体が威圧する。

 

「奈落が言っていた。お前らなら冗談か嫌がらせで学園を狙うってな。だから俺達がここにいる」

「――は? 俺達って……ああ、そこにゴミ虫が二匹ほどいたのかい。どうでもよくて気づかなかったよ」

 

「「――っ!」

 

鈴音とセシリアは息を呑む。

自分たちのことを無視された屈辱、そしてなにより敵の圧倒的な存在感に押しつぶされてしまった。

 

「あいつらは仲間だ。悪く言うのは許さない」

「へぇぇ、聞いてたとおりの熱血漢だね。隊長は――奈落はどうしたのかい?」

 

「隊長?」

「あの人が私達人狼部隊(ウェアウルフ)を作りあげたのさ。もっとも、その後で脱走しちまいやがったけどな」

 

「――あいつ、そんなことまでやってたのか……」

「まあ、私達はテメェの同類ってことだよ。同じく奈落に化け物にしてもらった同士ってわけだ……よろしく、兄弟」

 

「俺とお前らは違う」

「どうかな? てめえはちょうど手頃な悪がいただけだよ。力を振るいたくて振るいたくてしょうがないクソッタレな戦争狂さ! 悪がいなかったら正義を相手取っていたに決まっている」

 

「違う!」

「違わないね!」

 

火花が散る。

鈴音とセシリアには動き出しすらわからなかった。

敵と一夏がつばぜり合いをしていた。

早すぎて、ハイパーセンサーごときでは動きをつかみきれない。

 

「おお!」

「ヒャハ!」

 

鎌と剣。

すさまじい斬撃戦を繰り広げながらどんどん離れていく。

 

「――鈴音さん!」

 

セシリアがあることに気づく。

地面にトランプが敷き詰められている。

いつの間に……二人は全く気づかなかった。

そして、最初からあったというのもありえない。

ISによるスキャンは常に行っていた。

けれど、突然敷き詰められていたとしか言いようのない事態。

 

「ち――っ!」

 

全力で飛び退く。

何かは分からないが、たった一つわかることがある。

これは攻撃だ。

それ以外に考えられない。

こう考えられるようになることが兵士の第一条件。

 

爆発。

気付いたのが一瞬早かった。

ダメージを貰うが、飛び退いた分だけ衝撃は逃がせる。

それでも――

 

「セシリア!」

「――鈴音さん!」

 

分断されることには変わりない。

 

 

 

セシリアの目にちらりと光の軌跡が写る。

青白い光――異能。

魔弾の射手の攻撃が始まった。

 

「――っ! なんて馬鹿げた弾道ですか……」

 

その光をセシリアは追い切る。

彼女もまた射手。

その誇りにかけて弾丸を見逃すことなどありえない。

 

「射撃戦と洒落こみましょうか……!」

 

ビット【ブルー・ティアーズ】を展開。

一斉射撃。

しかし、魔弾はすべるようにかわす。

ただの一発すらも当らない。

だが、それこそが狙い。

 

「本命はこの一撃ですわよ――」

 

手にしたライフルで魔弾をぶちぬいた。

ビットによる射撃は誘導だった。

彼女は一目見ただけで魔弾は自由に弾道を操れることを見抜いてしまっていた。

いや、この一瞬の攻防に考える時間などない。

彼女は感じていたのだ。

 

あの弾丸。

普通なら滅茶苦茶な軌道を描くだけで、着弾点くらいしか制御できないと思うだろう。

弾道を曲げる偏差射撃なら、異能を使わなくても出来る。

めちゃくちゃな軌道で獲物を欺く撃ち方。

 

だが、同じ射手としてそんな無様はありえない。

魔弾と呼ぶならば軌道すら完全に操ってこそ。

ゆえにセシリアは感じ取った。

あの弾丸は完全に敵の制御下にあると。

どんなに奇想天外な動き方をしたところで、それは意志のままに。

 

「へえ……やるじゃない。けれど――私は漁師リップヴァーン・ウィンクル。有象無象の区別無く、私の弾弾は許しはしないわ」

 

第2撃、続いて第3撃。

龍が獲物を食い殺すように左右から迫る。

 

「2発に増えようと同じこと。全て撃ち落としてあげますわ! ――けれど」

「なら、3発目ならどう? さすがに操りきれないけど、直進なら出来る――そして」

 

セシリアは自負に満ちた好戦的で、でも苦渋に満ちた笑みを。

リップヴァーンは愉悦に満ちた奈落的な笑みとともに銃を構える。

 

「「私(あなた)の弾丸は届かない」」

 

 

 

「トランプぅ? これも異能かしら――」

「その通り。これこそが私の異能でございます――ちゃちな小娘」

 

鈴音に対するのは慇懃無礼な男。

帽子をとって礼をするが、なめきったニヤニヤ笑いが透けて見える。

鈴音はこのふざけた男を睨みつける。

 

「そういうあんたは気障な格好してるわね。そんな格好じゃなきゃ外にも出てこれないの?」

「ええ。お恥ずかしながら――ゆえに私は近しき者からは伊達男と呼ばれております」

 

「なるほどね。けど、知ってる? トランプなんて使うのはやられ役と相場が決まっているわ。気取って登場して、ちょっといい勝負繰り広げたところで新キャラに殺されるポジションよ」

「ふむ。ありがたい忠告ですが、二次元と三次元の区別をつけたほうがよろしいのでは?」

 

「……ぶん殴る!」

 

キレた鈴音は一直線に殴りかかる。

どうせ敵の情報など持ってないのだから先手必勝。

間違ってはいない。

いないのだが、問題はある。

それは敵の思惑にはまってしまったこと。

 

「は――」

 

嗤う。

トバルカインは嘲笑う。

トランプを指に挟んで直線軌道で迎撃する。

 

「「おらあ!」」

 

ぶつかる。

そして離れる。

力は互角だった。

 

「――っふふ」

 

薄ら笑いを浮かべたのはトバルカイン。

 

「――っやば」

 

冷や汗を浮かべたのは鈴音。

 

鈴音の背には大量のトランプが舞っていた。

顔色を青くした鈴音は地面に蒼天月牙を叩きつけて少しでも離れる。

爆発は鈴音を前方へ弾き飛ばす。

伊達男が待ち構える前方に。

彼の手にはこれまたトランプ。

 

鈴音の態勢は崩れきっている。

両手共に蒼天月牙を握りしめて、地面にたたきつけたために腕が下に伸びきっている。

足だって今更前に出して盾にすることはできない。

例えるなら気をつけの状態で投げられたような状況。

あとは顔を思い切り殴られるか、斬られるか。

どちらにせよ歓迎したいことではない。

 

「さて――あっけない幕引きですね」

「――と思うかしら?」

 

絶望的な状況。

その中でも鈴音は不敵な笑みを浮かべている。

そう、覚悟を決めた顔。

 

「死なばもろとも。その程度の覚悟すら出来てないあたしじゃないのよ……!」

 

爆薬をばらまいた。

希テクノロジーから供与された特別製。

威力は折り紙つきだ。

そう、誤爆したら自らも危ないほどに。

 

「馬鹿な――死ぬつもりか、貴様!?」

「さあ? 運が良ければ生き残れるかもしれないわよ? これは自慢だけど、あたしってけっこう悪運だけは強いのよね……!」

 

「イカれているぞ!」

「ふふん、あんたらも奈落に狂わされたんじゃなかったの? 狂気の戦争屋さん」

 

大量の爆薬に囲まれた鈴音を、伊達男はよけられない。

自爆する。

 

「この狂人がァ!」

「ありがと」

 

敵も味方ももろともに爆発に飲み込まれる。

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