「ニュースです」
「私どもの調べによりますと、アメリカのカリフォルニア州に希テクノロジーの研究所があったということです。識者によれば何らかの極秘任務が進行していると言われており、調査が困難な状況です」
「また、第3次世界大戦以降姿をくらませた希テクノロジー社長の身柄は未だに不明です。警察は指名手配をかけるとともに、重大な犯罪に巻き込まれた可能性を考慮して捜査しております」
「次のニュースです。第3次世界大戦で出た被害者の数は未だに産出されておらず、被害者の数は死亡者だけでも1億人を上回るとも言われ、今後はさらに増える見込みです。戦争で犠牲になった方々にお悔やみを申し上げます」
「ミレニアムの構成員らしき人物を見つけた際には警察までご連絡を。決して自分で捕まえようとは考えないでください」
「また、希テクノロジーの社員が暴行を働く事例も発生しております。被疑者は現在、病院で事情聴取を受けています。このような事件に巻き込まれないよう、どうか危険なことには近づかないようにお願い申し上げます」
「ニュースです。希テクノロジー総帥、神亡奈落の資産が流出しているとの知らせです。各国の政府は順次口座を凍結しているとのことですが、誰の口座かわからないように細工されていて警察は後手に回っているとのことです」
「また、同氏は希テクノロジーから総帥として異例な額の給料をもらっていたことが判明いたしました。これは同社の社長がもらっていた額の十倍以上だと調べがついています。また、社長は一般的なサラリーマンの1000倍の額をもらっていた模様です」
「その多額な資金の使い道ですが、これは不明です。何らかに費やしていたと推測できますが、その使い道は巧妙に偽装されており現在は見当もついておりません」
「また、例を見ないことにここまでの高給をもらっているにも関わらず、慈善団体に寄付をしていたという公式記録は残っていません。これは極めて同氏が狭量であることを示しており、某大学の某氏は残念なことだと言わざるを得ないとおっしゃっております」
「最後にお知らせです。不審者を見かけたら警察に連絡してください。くれぐれも危険なことにはかかわらないようにお願い申し上げます。これにてお昼のニュースを終わります」
「ニュースです。希テクノロジー総帥、神亡奈落は自らの出身を消しており謎のヴェールに包まれていました。しかし、わが局は同氏と個人的な交友を持つ人物の独占インタビューに成功しました。では、VTRどうぞ」
「Q神亡奈落氏の初対面の印象を教えてください」
「Aとにかく暗い男だと感じました。人の命を何とも思わないマッドサイエンティストとはあんな感じなのだろうと思わせる風貌です。いつも下を向いていて、ぼそぼそとしゃべる陰気な男でした」
「Qあなたとの関係を教えてください」
「A一方的な友好関係を結ばされました。彼の要求を飲まないとマフィアの方が私の家に直接来て“お願い”をしていったのです。私は彼との友情の証に様々な物資を提供せざるを得ませんでした。そのせいで苦しんでいる方がいるかと思うと、私の胸は張り裂けそうです」
「Q彼はいつもどんな様子でしたか」
「Aいつも怯えていました。病的なほどに目立つのを恐れ、いつも自分の身辺をSPに守らせていました。ただ少しでも気に食わないことがあると、暴れだして手が付けられなくなります。私もそれで殴られてろっ骨を折られたこともあります」
「Q彼の目的は何だったのだと思いますか」
「A彼は自分のことをほとんど話してくれませんでした。しかし今考えてみると、世の中がとても気に食わないと感じているようでした。きっと、目的なんてなかったんでしょう。ただ何もかも滅茶苦茶にしたいと思ったんじゃないでしょうか」
「Q最後に一つ。あなたは彼をどう定義しますか」
「Aまぎれもない悪です。あの男には他人を思いやる気持ちなどありません。いつも他人を傷つけることばかり考えているような男です。関わり合いになりたくなかったし、彼のような人物は生まれてくるべきではなかったと思います」
「ありがとうございました。これにて独占インタビューを終了します」
「希テクノロジーに鉄槌を!」
群衆の前に立った男が声を張り上げる。
「民衆から搾取し、あまつさえ虐殺した男に死の報いを!」
「人の命を金儲けに利用した大罪人に裁きを!」
「欲に駆られて戦争を引き起こした恥知らずを殺せ!」
100人を超える群衆が各々に殺意を叫ぶ。
そこはまさに憎悪のるつぼ。
死を奏でんとするオーケストラ。
狂想曲は自らをも高めていく。
――殺せ、殺せ、殺せと。
「諸君、我々の敵は何者か!?」
叫ぶ声に重なり合う怒声が答える
「「「希テクノロジー」」」
掲げられるのは包丁、バット、果てには鍋まで。
日常的に使う物でも、こうしてみれば恐怖しか感じない。
それはまるでねじくれた怨嗟を形にしたようで。
人嫌いな画家が描いた悪趣味な絵画に似ている。
「彼奴らの罪は!?」
ボルテージが上がる。
汗が飛び散り、咆哮が飛び交う。
「第3次世界大戦を起こしたこと!」
そこにあるのは狂乱。
満ちるのは嫌悪と忌避。
同じ世界に生きるのを許可しない絶対の――そして完全無欠の存在否定。
「ならば問おう。我々はどうするべきか!?」
大仰な身振りはまるで指揮者のよう。
紅いオーケストラはとどまることを知らず加速する。
一人残らず感情を肥大化させる。
それはまるで悪意に満ちた一個のおぞましき生物。
「皆殺し! 皆殺し! 皆殺し!」
狂気の集団が行進する。
目的はただ一つ。
希テクノロジーに関わる一切合財を打ち崩す。
壊して砕いて晒して並べて、それからまた殺す。
「よろしい。では――進軍しよう。希テクノロジーに加担した厚顔無恥を踏みつぶせ。例え世界の果てに隠れようとも、見つけ出して引きずり出せ。そして人道に劣る畜生のはらわたを引きずり出し、生まれたことを後悔させるのだ!」