ソードアートオンライン~二刀流使いの少年~ 作:黑(不定期)
「せやぁっ!!」
赤い光を纏った右手の剣がジェットエンジンのような音を響かせながら、敵<ブラック・ウルフ>を貫いた。単発重攻撃技<<ヴォーパル・ストライク>>を食らった<ブラック・ウルフ>は、ガラスが砕けちるような音をたてて霧散した
「疲れちゃった、帰ろうかなぁ…」
と言いつつも、二年間で染み付いた癖で周囲の索敵をすると、知り合いの名前とモンスターの反応があったので援護に向かうことにした
「必要ないかもしれないけど……一応様子だけみておいた方がいいよね…」
と言いつつもその方向に歩いていく
「おーい、キーリートー」と軽く手を振りながら見てみるが返事がない。絶賛戦闘中のキリトに答える余裕はない
「……」
もしもの時に備え、右手を剣にかけておく。しかし、モンスター<リザードマンロード>が放った単発重攻撃技<<フェル・クレセント>>をギリギリで避けたキリトは、反撃のソードスキル:水平四連撃ソードスキル<<ホリゾンタル・スクエア>>で<リザードマンロード>のHPを0にした
「おーい、キーリートー」
戦闘が終わったので、安堵の息を吐くキリトに話しかけた
「よう、ユウ。奇遇だな」
キリトはユウの呼び掛けに答え、手をあげながら言った
「それは同感だよ。帰るとこ?帰るとこだよね。帰るとこなら飯でも、おごってよ。前の貸しの分あるしさ」
「帰るとこだけど、貸しの分そんなのでいいのか?」
「いいんだよ。お腹すいたんだもん」
「…まぁ、それならいいかな」
「いやったぁ!キリトのおっごり、キリトのおっごり!」
「そんな高いのは駄目だからな!?」
「ぶーぶー」
そう言いつつ二人は第74層の主住区に向かって歩きだした。
「 ……」
「どうしたの、キリト?」
「いや…二年前、全てが終わって全てが始まった、あの瞬間を思い出してたのさ」
とキリトは自嘲気味に笑った
「あの時ね…」
二年前、βテスターに選ばれた僕は、運がいいと思っていた。完全ダイブという新世代のゲーム環境下でのVRMMOである<ソードアート・オンライン>を他の人よりも一足早く体験できたのだから…いや、今、デスゲームと化したのをみると運が悪かったのだろう
親によって束縛され、素直に従っていたあの頃の僕は<ソードアート・オンライン>によってもたらされる解放感に酔っていた。正式サービス開始の2022年11月6日、日曜日。一秒も遅れずログインした。そして、武器や防具をそろえレベル上げをしていたところで、五時半すぎ世界はその有りようを、永久に変えた
突然、鐘のような音が鳴り響き俺の体を、鮮やかなブルーの光の柱が包んだ。そして、気が付くとゲームのスタート地点である<<はじまりの街>>の中央広場にいた。そして、同じようにテレポートしてきたのであろう一万人程のプレイヤーの群れがいた。
「…どうなっているんだ?」と僕は考えていた。メニューを開くと驚くことにログアウトの文字が消えていた
「なるほど…この事の説明か、何かかな…」
と一人合点し運営アナウンスを待った。そして、「あっ……上を見ろ!!」という声が聞こえたので視線を上に上げると100メートル上空、第ニ層の底を、真紅の文字[Warning]と[System Announcement]が浮かび上がり、その後身長二十メートルはあろうかという、真紅のフード付きローブを纏った巨大な人の姿が現れた
不意に巨大なローブの右袖が動いた。続いて左袖もゆるゆると掲げられた。直後、低く落ち着いた、よく通る男の声が、遥かな高みから降り注いだ
「プレイヤーの諸君、私の世界へよるこそ。私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく<<ソードアート・オンライン>>本来の仕様である」
「なっ……」
予想の斜め上をいく言葉に流石のユウも絶句した
「諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない。……また、外部の人間の手による、ナーヴィギアの停止あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合……ナーヴィギアの信号粒子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴィギア本体のロック解除または分解または破壊の試み…以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴィギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果……残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している」
親が海外にいて良かったと思った。もし親がいたのなら間違いなく外そうとしていたからな、と場違いにも安堵していた
「諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴィギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴィギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい。しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、<<ソードアート・オンライン>>は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に…諸君らの脳は、ナーヴィギアによって破壊される。諸君らがこのゲームから解放される条件は、だった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう。それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え」
それを聞き僕を含む全てのプレイヤーはメニューを開いていた。そして入っていたアイテムは<<手鏡>>…頭の上にハテナマークを浮かべていると、突然全てのプレイヤーを白い光が包み込みそして……
「あの時は本当に驚いたよね」
「あの時っていつだよ」
「<<手鏡>>を見た瞬間だよ。鏡をみたら現実の顔だよ?」
「あー…あの時か…いきなり隣にいたクラインの顔が不細工になってびっくりしたよ」
「確かにいきなりあの顔はね」
「ひでーな」
「そうかな?」
何気なく周囲を索敵するとモンスターがひっかかったので警戒をした
「あそこだ…」
「<ラグー・ラビット>だ……」
「<ラグー・ラビットの肉>…」
最高級の<ラグー・ラビット>から取れる最高級の美味に設定されている<ラグー・ラビットの肉>の味を想像しヨダレがでているキリト
「キリト……ヨダレたれてるよ?」
「おっと……さて、どうやって倒そうか?」
ヨダレを拭いながら言った
「飛び道具は使える、キリト?」
<ラグー・ラビット>は逃げ足がとても速いため飛び道具による不意討ちを考えたが自分は飛び道具のスキルをスロットに入れてないため倒せないと判断し、キリトに希望をかける
「ああ…投剣スキルがある…だがスキル練度が低いけどな」
といいつつも腰のベルトから投てき用の細いピックを抜き出した。そして投剣スキルの基本技<<シングルシュート>>のモーションをおこし、投げた。ピックの行く末を見守っているとポリゴンの砕ける音が響き、キリトは思わず左手をぐっと握る。そして、キリトはメニューを開き、アイテム欄をみるとキリトの目に<<ラグー・ラビットの肉>>の文字が飛び込んできた
「ドロップした?」
期待を込めた目でキリトを見ると
「あった……」
満面の笑みでグーサインしつつキリトが答えた
「どうする?僕らで食べる?それとも、売って装備にする?」
と表面上は冷静に(手が震えていて、満面の笑みだが)キリトに尋ねた
「そうだなぁ……ユウはどうしたい?」
「食いたい…けど、僕は料理スキルの練度が足りないし、今の時間から頼みにいくのもなぁ…だから、売る?」
「そうだな。よし、エギルんとこ行こうぜ」
とキリトは転移クリスタルを手に取った
「よし、じゃあ転移!アルゲート!」
体が青い光の包まれ周囲の景色が消滅していく
「この街、猥雑で好かないんだよなぁ……」
と顔をしかめてユウは言う
「そうか?俺はこんなかんじ結構好きだぜ?」
かつてよく遊びに行っていた電気街に似ているからだろうなと呟くキリト
「じゃあ、行こうよ。ついでに冷やかしかなぁ……」
「おーい、心の声が出てるぞ?」
苦笑まじりにキリトが突っ込む
「毎度!!また頼むよ兄ちゃん!」
と商談が終わったみたいなのでエギルの店に入って行った
「うっす。相変わらず阿漕な商売してるな」
「……エギルなんて、いつか壁に埋め込まれちゃえ」
相変わらず毒をはくユウ
「よぉ、キリトとユウか。安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーなんでね。それとユウ…毎度のことだか酷くねぇか?」
悪びれる様子もなくうそぶく
「それが僕だよ」
「安く提供するって部分が疑わしいけどなぁ……まぁいいや、俺たちのも買取を頼む」
「キリトとユウはお得意様だしな、あくどい真似はしませんよっ、と……」
言いながらエギルは猪首をのばし、俺の提示したトレードウインドウを覗き込んだ
「おいおい、S級のレアアイテムじゃねえか。<<ラグー・ラビットの肉>>か、俺も現物を見るのは初めてだぜ……。キリト、ユウ、おめえら別に金には困ってねえんだろ?自分で食おうとはおもわんのか?」
「思ったが、練度が足りないんでな」
「同じく思ったんだけど……こんなアイテムを扱えるほど料理スキルを上げてる人なんてそうそう……」
「キリト君、ユウ君」
とそこで後ろからキリトは女の声で話しかけられた。キリトは左肩に触れたままの相手の手を素早く掴むと、振り向きざまに「シェフ捕獲」と言った
「やぁ、アスナ。久しぶりだね」
と軽く手を上げて挨拶をする「貴様!!」とかいう言葉が後ろから聞こえるが気にしないでおこう。うんそうしよう
「久しぶりね、ユウ君」
「珍しいな、アスナ。こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」
「だね、スキンヘッドのいかついオッサン一人の店によくきたよね。……キリトにあうためだけにボソッ」
二人がかりで毒を吐かれエギルの顔がピクピクと引きつる。がエギルはアスナに声をかけられると顔をだらしなく緩ませる……現金なやつだなぁ
「えっとシェフがどうこうって何?」
「あ、そうだった。お前いま、料理スキルの熟練度どのへん?」
「聞いて驚きなさい、先週に<<完全習得>>したわ」
「なぬっ!」
「ほんとに?!」
キリトと僕が同時に驚く。……顔から察するにキリトは(アホか?)とでも思ってるんだろな……
「ふふっ、ユウ君が驚くところ初めてみたな」
…しまった。僕のポーカーフェイスが崩れていたみたいだ
「……その腕を見込んで頼みがある」
キリトがアスナを手招きしている。アスナが覗き込んでしばらくすると目を丸くして
「うわっ!!こ……これ、S級食材!?」
「取引だ。こいつを料理してくれたら一口食わせてやる」
言い終わらないうちにアスナはキリトの胸ぐらを掴み、そのまま顔を数センチの距離までぐいと寄せると
「は・ん・ぶ・ん」
「……僕も食うんだからねアスナ」
存在を消されていたようなので言うと
「じゃあ3分の1ね……いい?」
アスナの方が身長が低いため自然と上目遣いになる。上目遣いをアスナのような美少女がやると……
「わ……わかった」
「あ……ああ」
破壊力満点ですね。OKするいがいの選択肢がない
「悪いな、そんな訳で取引は中止だ」
と振り向き、エギルに言った
「いや、それはいいけどよ……。なあ、俺達ダチだよな?な?俺にも味見くらい……」
「感想文を八百字以内で書いてきてやるよ」
とキリト
「壁に食わせる高級料理があると思う?いや、ないよね」
と僕。いや、別に慎重が高いから嫉妬してるわけではないよ。断じてちがうよ!………誰に言い訳してるんだろ?
「そ、そりゃあないだろ!!」
この世の終わりか、といった情けない声を出すエギル……どうでもいいかな
そのエギルを一瞥しアスナが
「でも、料理はいいけど、どこでするつもりなのよ?」
「うっ……」
「僕の部屋でもいいが、ちょっと汚いかな」
自分の部屋を思い浮かべる
「今回だけ、食材に免じてわたしの部屋を提供してあげなくもないけど」
…とんでもないことをさらりと言ったよね今
「今日はここから直接<<セルムブルグ>>まで転移するから、護衛はもういいです。お疲れ様」
「ア……アスナ様!こんなスラムに足をお運びになるだけに留まらず、素性の知れぬ奴らをご自宅に伴うなどと、と、とんでもない事です!」
(うっわー…<様>付けだよ…)と思いキリトを見ると案の定僕と同じ事を思ったらしく顔をしかめている。この場はアスナが収めたが後々大変なことになるのだが、今は知るよしもなかった
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