欠片の少女 作:人形
――ふと思う。何故自分はこの場所に立っているのかと。
ステンドグラスのような文様が浮かぶ、青く、薄暗い、円形であろう空間。
目の前には人形と人形が相対する相手を破壊しようと腕を打ち合い、足を突き刺し合う光景。
背後を垣間見ても先程まで歩いていたはずの通路はない。
打ち合う人形らを視界に入れつつ、人形らの奥を確認すると、多くの人間の死体が積み重なっていた。
――死体を目にしたならば、普通の人間ならば忌避感だとか、吐き気だとかあっても不思議じゃないんだが。
冷静にそう思って、すぐに思考を打ち切る。そして眼前の、人形による戦場に思考を移した。
自分の目の前にいる人形。そしてその奥にいる人形。それらによって永遠と同じ光景が繰り返されている。
目の前の人形の方は、私がここまで連れてきた。それを壊されたら私が死ぬ。
それは誰に言われずとも理解していた。奥の人形が立ち上がったとき、傍で横たわっていた男子生徒の存在がそれを証明していた。
だから考える。どうすれば生き残れるのか。どうすれば襲いかかってきた人形を破壊することができるのか。
戦場は秒速で切り替わる。足を打ち合い、腕を打ち合い、薙ぎ払いそしてまた打ち合う。
繰り返しだ。この人形たちの攻撃パターンは3つしかない。自分が連れてきた人形も、ここにいた人形も、同程度の性能でしかない。そして何かしらの外的要因がなければ、同じ動きを繰り返すことしかできない。
だから膠着する。だから膠着している。
だから、それを変えるのが私だ。それが多分、私の役割だ。
指示だ。指示をする。それだけでいい。攻撃パターンは数えるのも飽きたほど見た。全て同じ。全てが規定のプログラム通り。
ならば相手の人形の隙も、見える。判る。それに合わせてこちらの人形に指示を出すだけ。
同程度の力しかないなら、それで膠着するのなら、覆すには技巧をもって制するしかないのだから。
そうでなければ共倒れになる。それは自分が本当に良く知っていたことだった。
――それは、いつの経験だ?
一瞬の戸惑い。しかしそれを即座に切り捨てた。
目の前に映った相手の人形の隙。それを逃せるはずもないからだ。
「――そこ!」
声を上げる。だが思考が伝わるものだったのだろう。声による指示が飛ぶその瞬間からこちらの人形は動いた。
相手の人形が腕を振り下ろし、体制を整えるその一瞬。無防備になった――人体で言う脇の部分を、こちらの人形が腕で刺し貫いた。
それによって人形を動かす核が破壊されたのだろう。こちらの人形が貫いた腕を引き抜いたとき、相手の人形はそのまま崩れ落ち、動かなくなった。
人形は動かなくなった。貫かれたあちらの人形もそうだが、こちらの人形も。
道中のエネミーが視界に入ると動きだし、殲滅していた人形が動かない。それだけでこの場にはもう外敵はいないのだと証明された。
……勝った。生き残った。
静寂の中、実感した。
何故この場にいるのかという疑問より。どうしてこのような命がけの戦いをしなくてはならなかったのかという疑問より。まず私の生を実感し、そして安堵した。
思わず床に座り込む。どうやら腰が抜けたらしい。
「――は、ハハハ」
安堵故か、己が腰を抜かしたという事実からか、理由はわからないけれど、笑いがこみ上げてきた。
中々笑いが収まらない中、天上より声が落ちてきた。響いてきた、というべきかもしれない。
「見事だった。よって君をマスターと認め、聖杯戦争本戦への参加を受理する」
その言葉とともにこの空間に光が差し込む。いつの間にか、空間の端にあったはずの死体の山は消えていた。
思わず笑いが止まった。そして目の前を凝視した。
何故なら、いきなり目の前の二体の人形が砕け散り、光に変換され、それが人の形になるように集まっていくのだから。そして、ついにそれが現れた。
白銀の鎧を身に纏う、一人の男。その男は現れるなり跪き、述べる。
「――サーヴァント、セイバー。真名をランスロット。ここに参上いたしました。一時の間ではありますが、この剣、貴女に捧げましょう」
どうか手を、マスター。と男は続ける。反射的に右手を差し出すとその男は私の右手を優しく掴み、甲にキスをした。
――な。ななな。なにをするんだ突然……!?
口から出かかった叫びは――いつの間にか右手の甲に刻まれた紋の痛みによって抑えられた。
そのまま男に手を引かれて立ち上がる。それを待っていたかのように天上から声が落ちてきた。
曰く、聖杯戦争。万能の盃を求め人々が争う。その一人に選ばれたこと。
刻まれた紋は令呪。三回のみ己のサーヴァントに行使不可能な奇跡を実現できる。ただし三回使うと令呪は失われ、聖杯戦争参加資格を失う。
即ち、死を意味する。
天上からの説明が終わると視界が白くなり意識が落ちていく。
落ちきるその前。一瞬の間に、わけもなくふと思った。
――何故自分の生死はいつも天上の何かに握られているのだろうか、と。
◇
一回戦開幕。残り 128人。
書いてしまった。もといやってしまった。
三周年記念第六特異点PUでガウェインを引いたことによって実装済みEXTRA初出サーヴァントが揃った事実と、受験勉強から逃げたい精神によって生み出してしまった。
とはいえ当方は狂ランスロットは宝具4であるものの剣ランスロットは宝具0なので、剣スロが引けるか受験勉強が終わるまで続きを書かないと思われる。多分。