シャドウサーヴァントは滅んだ。
所詮彼らは理性無き、できそこないのサーヴァント。
宝具を持つ、真の英霊たちの敵ではない。
だが、クーフーリンは全く弱気を見せなかった。
「まあ当然か、だがなあ。まさか、これで終わりと思わんよな?」
「愚かな、同じことを繰り返すつもりか?」
セイバーがその剣をクーフーリンに向ける。
「ああ、そうだ。だがな!さっきの千倍ならどうだ!?」
○
セイバーはクーフーリンと斬り合っていた。
彼の望む一対一の状況が生まれてしまっているのである。
援護したいが、そんな余裕のあるものなどいようはずがない。
それぞれのマスターを守るので精一杯なのだ。
なぜならシャドウサーヴァントが
無限に
湧き出てきたからである。
いくら倒しても途切れることがない。
否、もはや明らかに増えるほうが早い。
彼らはジリ貧だった。
「どうする?どうすればいいの!?」
凛は必死に考えた。
しかし案が浮かばない。
ダークナイトに令呪を使い、瞬間的に
いや、それは焼け石に水だろう。
今彼が撃てる最大範囲の宝具はその名を「
天から星を堕とす、A+のランクを持つ対軍宝具である。
だが、もはやその程度では終わらないのは明らかだ。
大聖杯から溢れ出る影のサーヴァント達は、おそらく千を超えてくる。
令呪を用いて宝具を連発することも考えたが、だめだった時はどうしようもなくなる。
ならばあの大聖杯を破壊するか?
それは最も愚かな行為だ。
その時の被害は、おそらく冬木市だけで留まるまい。
その時だ。
王の勝鬨が響いたのは。
○
「遠征は終わらぬ……我が胸に彼方への野心ある限り! 勝鬨を上げよ!!『
世界が変わった。
かの征服王の世界に塗り替えられたのだ。
今や広大な砂漠の中、二つの軍勢が対峙している。
方や輝ける征服王の近衛師団。
方やクーフーリンの率いる影の軍勢。
彼らは凛の目前で
激突した。
「手向けと受け取れ…!」
最初の一手はクーフーリンだった。
朱黒く色を変えたその槍に魔力をため、中空に飛び上がる。
「まずいわ!あれは対軍宝具よ!」
双方の軍勢には宝具を使えないという制限がある。
その一撃が解き放たれればライダーの軍勢は大きな被害を受けるだろう。
それを止めたのはセイバーだった。
「受け止めます!
「
「
槍が分裂した。
さらに分裂した。
限り無く分裂したのだ。
そして、セイバーに襲いかかる!
だが彼女の前に、巨大なる、城壁が出現した。
それは終末の要塞。
絶滅に瀕した人類の、最後の拠り所。
ウォーリアーの宝具が最古であったならば、パラディンの宝具は、最後のそれである。
それは、セイバーに傷一つつけることなく、クーフーリンの宝具を防ぎきった。
だが彼はまだ止まらない!
「
その身が、禍々しき海獣の鎧に包まれた。
それは、彼の怒りの結晶。
彼がその怒りのまま征服王の軍勢に飛び込めば、おそらく勝敗は決するだろう。
「仕留める!リン、令呪をくれ!」
ダークナイトの宝具はセイバーと同じ、結界宝具である。
ならば戦闘中にも関わらず、彼の霊基を変更させねばならない。
令呪ならば、それを可能とするだろう。
だが、その時彼女は悩んだのだ。
○
マスターとサーヴァントには、夢という繋がりができる。
凛は、自らのサーヴァントの真なる半生を識った。
ゆえにその望みも。
彼は、絶望しているのだ。
無限に続く戦いに。
彼は、戦いを好むものではないのである。
彼は、漁師である。
彼は、料理人である。
彼は、革細工職人である。
彼は、ギャザクラ勢である。
よって彼は、疲れていたのだ。
彼の聖杯にかける望みは超える力との決別。
彼は友を見捨てられない。
願いを叶え、戦いの中に飛び込み、そしていつか必ず命を失うだろう。
凛は思った。
それでいいのか?
○
「令呪をもって命ず!ダークナイト!その霊基を変えなさい!」
「
彼の姿が変わった。
蒼き鎧が彼を包んでいる。
彼を称える名は『蒼の竜騎士』
竜の力を身に宿し、一人で一国に値すると言われた天空の騎士。
その宝具の名は『
竜の力を全開放するその宝具は、その恐るべき威力にも関わらず、対人宝具なのである。
それはクーフーリンの命脈を穿つだろう。
そして彼は聖杯を手に入れる。
だがそれでいいはずがない!
「重ねて令呪をもって命ず!」
「リン!?何を…」
「気づきなさい!カレイドルビー!貴方には、無限の仲間がいるということに!」
それは因果の逆転。
彼女は賭けたのだ。
『
ならば彼の周りには
仲間たちがいるはずだと!
○
宝具を放とうとしたドラグーンは果たして気づいた。
ナイトがいる。
モンクがいる。
召喚士がいる。
機工士がいる。
そして占星術師がいる。
七人の仲間が自分を支えている。
彼らは全身全霊で叫んでいた。
仲間が『
そして、カレイドルビーは叫んだ。
『
○
『
士郎は、己の肉体から、その鞘を解き放つと、ピクリとも動かないイリヤに向かって、その力を使った。
だが、なにも変わらない。
イリヤは目を開けてくれない。
「シロウ、それではだめなのです。」
沈痛な表情をしたセイバーが士郎に話しかける。
「その鞘は、いかなる害からも守ってくれる。いかなる傷も癒やしてくれます。しかし、イリヤは傷ついてなどいない。彼女は、聖杯となってしまった。彼女からは、もはや生命の鼓動を感じない。」
その言葉を聞いても士郎は諦めることができなかった。
自らの固有結界に存在するあらゆる宝具を考慮して彼女の復活を期する。
だが、無い。
彼女を、救えない。
その時、士郎の肩を叩くものがあった。
彼は、白い衣に身を包んでいた。
まるで、聖人のようだ…。
士郎はそう思った。
「あれを試すのね?ルビー。でも…。」
カレイドルビーは思った。
確かに足りないだろう、『
だが、彼の世界で古くから語り継がれる言葉があった。
誰もその言葉を口にすることはない、しかし、誰もが知っている言葉。
自分という存在と、その言葉を捧げよう。
世界が変わる。
その場にいた誰もがカレイドルビーを注目した。
彼はその杖を掲げ、そして祝詞をつぶやいた。
『
彼の地において、魔法と魔術の区別はない。
だが、彼の今の行いは、奇跡と呼ばれただだろう。
そして、イリヤは、目を開いたのだ。
○
「いくのね?ルビー」
「ああ、そうだリン。」
彼の霊基が解けていく。
まもなくこの地から消えるだろう。
凛は思った。
彼は聖杯の力を使ったのだろうか?
「応えは得た。」
「え?」
カレイドルビーは、心からの笑顔を凛に見せた。
「大丈夫だ、リン。私は、これから頑張っていける。私は一人ではないのだから。」
そして彼は帰って行った、神々に愛されし地、エオルゼアへ。
○
「それでどうであったか?ランサー。バーサーカーの真似事は?」
ライダーは、地面に大の字になって寝転がるクーフーリンに話しかけた。
ランサーは不機嫌そうに応える。
「は、足りねえよ。」
「だろうな、お主はようするに戦い足りなくてここにきたのだろう。」
ランサーは立ち上がった。
「さって、どうすっかなあ。」
彼は負けたのだ。
いくら戦闘狂とはいえ、今更ここにいるサーヴァントに挑むようなことはしない。
それは戦士の行いではない。
「ならば我が軍門に降らぬか?戦いならばいくらでも用意するぞ。」
そこでランサーは初めてまともにライダーを見た。
ライダーは更に語る。
「余は受肉して、世界征服に再び挑むつもりだ。その道のりは険しいだろう。余についてくればいくらでも戦いの場はあるだろうな。」
ランサーは思った。
面白い。
「いいだろう、だが下らぬと感じたら俺はいつでも去るからな。」
○
「えっとね、聖杯の力は使えます。使えるんだけど…。」
イリヤは言葉を濁した。
「むう、いまさら受肉できんなど困るぞ。」
「そうですよ!私は、その、シロウとごにょごにょ。」
サーヴァントたちが意識を取り戻したイリヤに詰め寄る。
「じゃあね!あれをなんとかしてちょうだい!」
イリヤは背後を指さした。
そこには汚されし大聖杯がある。
その時、大聖杯から何かが生まれはじめた。
サーヴァントたちは咄嗟に戦いの姿勢をとる。
生まれいづるものの名は『
それはか弱きサーヴァントではない。
その霊基は、神の位に届くもの。
ゆえにその名は『蛮神アンリ・マユ』
最後の戦いが、始まろうとしていた。
次回
最終話 ~遠坂凛は光の戦士である~