遠坂凛は光の戦士である   作:ホリイ

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第二話 ~ナイト~

 彼は見た。

 

 楽士のような服を着た少年と、青いボディスーツを身にまとった青年の死闘を。

 

 彼は逃げた

 

 青年に追われ、校舎の中を必死に駆けずり回り。

 

 彼は死んだ。

 

 朱槍に胸を貫かれ。

 

 彼は蘇った。

 

 理由も知らず。

 

 彼は戦った。

 

 土蔵のなか、未熟な魔術を懸命に操り。

 

 そして、彼は喚んだのだ。

 

 ───最優のサーヴァントを。

 

 

 「問おう。貴方が私のマスターか」

 

 美しい、本当に美しい瞳をした金髪の少女が自分に問いかけてくる。

 その腰には慈悲の聖剣が煌めき、頭には王冠のような髪飾り、そしてその身は青と白の勇壮なる鎧に包まれている。

 

 「き、君は一体?」

 

 質問に質問で返してしまった。

 彼は、衛宮士郎は律儀にそう考えると、彼女の先程の問にどう答えるべきか悩んだ。

 だが答えは出ない。

 

 マスター?一体何の話だ。

 

 だが相対する彼女もまた律儀だった。

 彼の質問に応えようとする。

 

 「私はセイ…いや、違う?霊基が、能力が変わっている。さすがにイレギュラーを重ねすぎたか…。」

 

 そう呟くと、彼女は再び士郎に向かって話しかけた。

 

 「私はエクストラクラス、パラディン(ナイト)として現界したサーヴァントだ。」

 

 そしてしばし悩んだ後、再び話し出す。 

 

 「だが私のことはセイバーと呼んでほしい。この戦いを勝ち抜くために、それが最善手だ。」

 

 

 「この屋敷よ!」

 

 助けた少年を槍兵(ランサー)のサーヴァントが再び襲うと考えた凛は、その少年の家に向かっていた。

 

 なぜ知っていたか?

 

 大した理由はない、彼女が偶然にも職員室で生徒の名簿を目にし、なんとなく、以前場所を確認していただけ、である。

 

 そして屋敷の中に踏み込んだ彼女は驚愕した。

 

 カラカラカラ

 

 「マスター、警報の結界だ!ここは魔術師の住処だぞ!?」

 「そんな!」

 

 だが凛にはその事実を冷静に考える時間はなかった。

 眼の前に、ランサーではない一騎のサーヴァントが現れたのである。

 

 その姿は、   

 

 とてもよく知っているものだった。

 

 再び出現させた双剣で、サーヴァントを迎え撃つバード。

 しかし互角に撃ち合っているように見えるが、彼の方がやや不利だ。

 

 相手サーヴァントが硬すぎるのである。

 

 耐久は少なく見積もってもA以上。

 時々その防御力を増加させていることからA+にも達しているはずだ。

 そしておそらく宝具だろう、その左手に持つ輝ける盾があまりにも強力すぎる。

 攻撃力も防御力に比して圧倒的に劣るというわけではない。

 

 『マスター、仕切り直しの指示を。この距離では勝負にならん!マスター!?』

 

 凛は、

 

 それどころではなかった。

 

 

 『あのサーヴァントはどうみてもEmiya Shirouさんのナイト?で、ここは衛宮士郎くんの家…』

 

 彼女の目はぐるぐるしていた。

 

 『まさか二人は本当に同一人物?私は衛宮くんと毎晩毎晩おしゃべりしてたの…!?』

 

 その敵マスターの様子を見たセイバーは一か八かの賭けに出た。

 

 無敵(インビンシブル)

 

 そのシンプルな名を与えられた、規格外(EX)のスキルを発動させたのである。

 彼女はバードの攻撃を無視し、一気に凛にせまる。

 その賭けは、成功するかに見えた。

 

 「待て!セイバー!」

 

 彼女のマスターの一言(令呪)がなければ。

 

 

 結局凛と士郎は同盟を結ぶことになった。

 

 凛にとって、もちろん士郎にとっても、お互い命をかけて相争うなどとてもできないことである。

 その結果は必然だった。

 

 今は教会からの帰り道である。

 凛は自宅まで送るという男らしい士郎の申し出を受けていた。

 そして今、士郎の横を顔を真赤にして歩いているのである。

 

 これは、本来の遠坂凛としてはとてもありえないことであった。

 

 なぜこんなことを!?

 

 説明しよう!

 

 遠坂凛は機械に強い!

 その結果、パソコンもスマホも使い放題である。

 そして彼女は様々な創作物に触れる機会を得、ドハマリし、マニアックな二次創作、さらには薄い本を始めとするアダルティな分野にも手を出していた。

 

 よって!彼女はやや偏った 恋 愛 脳 を手に入れたのである!

 

 そして自分の衛宮士郎への感情を

 

 『これってもしや恋!?』

 

 などというテンプレートな結論に至らせていた。

 間違っているわけではないのがタチが悪い。

 

 さらにそれだけではないのだ。

 

 今彼女はリアバレをするかどうか悩んでいるのである!

 リアバレとは?

 

 説明しよう!

 

 MMORPGというのはいささかリアルで表明しずらい趣味である。

 だが相手が同じゲームをやっているのなら話は別だ。

 その相手とは強い繋がりができ、同じ趣味について語り合える貴重な友人となるだろう。

 

 彼女は今!

 

 『実は私、Kaleid Rubyなんだけど、衛宮くんってEmiya shirouよね?』

 

 と言いたいのである。

 

 そうすれば恋しい衛宮士郎と、強い繋がりを得ることができるだろう!

 そして、実は学園内に複数いる、彼女(・・)を含めた強敵たちとの間に大きなアドバンテージを得ることができるのである。

 

 だが、もし万が一違ったら!?

 

 彼女は悶死するしかない。

 

 今彼女は秘密を表明したいができないというドキドキに包まれているのである。

 それは彼への想いと融合され、もはやキュンキュンの位置に達していた。

 

 彼らの後ろでは、状況を察したバードがアホらしい顔で歩いている。

 その隣では黄色い雨合羽に身を包んだセイバーがすました顔で歩を進めているが、彼女はもちろん理解してない。

 

 士郎?気づくわけ無いだろバカか?

 

 そんな時であった。

 彼女が現れたのは。

 

 

 それはちょうど墓地に差し掛かった時であった。

 彼らの前に忽然と、一人の白い少女が現れたのだ。

 

 「!?」

 

 咄嗟にサーヴァントたちが前に立ち、警戒態勢に入る。

 凛と士郎も驚いて目を見開いた。

 

 そして、白い少女は口を開いたのである。

 

 「泥…」

 

 少女の目は大きく見開かれていた。

 

 「泥棒猫…!」

 「は、はあ?」

 

 凛には相手が何を言ってるか理解できなかった。

 だが次の言葉は完全に理解することができた。

 

 「リン!このイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが貴女の息の根を止めてあげましょう!」

 

 凛は息を呑んで驚いた。

 この小さな少女がアインツベルンのマスター!?

 だが、それ以上の驚きが彼女を支配する。

 

 「ま、待ってくれ!き、君がイリヤ義姉さんなのか!?」

 

 士郎だった。

 士郎もまた、全身全霊で驚いていた。

 だがこの声は間違いない。

 skypeに、毎日のようにコールしてきた相手の声だった。

 

 「…!そう、その通りよシロウ。そんな気はしてたわ、あなたがマスターになるんじゃないかって…。」

 「はあ!?なんでアインツベルのマスターが衛宮くんのお姉さんなの!?」

 「いや、それはつまり彼女は俺の義父の実娘で…。」

 「おい、マスター達落ち着け…。」

 

 さすがに場の混乱に対し、冷静なバードが声をかけた。

 だがさらに混沌を呼ぶ一声がかけられる。

 

 「そんな、あなたがあのイリヤなのですか…?キリツグの娘の?」

 

 それはセイバーだった。

 セイバーもまた驚愕していたのだ。

 

 「ええそうよ、セイバー。まさかまた会うことになるなんてね。」

 「せ、セイバー?義姉さんを知ってるのか?」

 「何でサーヴァントが他のマスターのことを知ってるの!?」

 

 場はもはや混沌だった。

 それぞれが自分の喋りたいことを喋っているが、状況を一から説明しようとするものはいない。

 一人を除いて。

 

 ~♪

 

 「え?」

 

 それは竪琴の音だった。

 皆の視線がバードに集まる。

 美しい音だった、それはそうだろう。

 彼はいつも手にしていた輝ける竪琴を爪弾いている。

 宝具であることは間違いない、それは究極(アルテマ)の名を与えられたものだった。

 

 だが…。

 

 「リン…、あなたのサーヴァント。すっごい『下手』なんだけど?」

 

 だが旋律はひどいものだった。

 どう聞いても楽器の初心者だ。

 音程は外れ、一体何の曲なのかもわからない。

 

 「だって…、私楽器演奏やってないし…。」

 「遠坂、それが何の関係が…。」

 

 十分に自分に注目が集まったと感じたバードは皆に向けてそのよく通る声で提案した。

 

 「どうかな?近くに私のマスターの家がある、そこでゆっくり話さないか?」

 

 皆は頷いた。

 確かに状況を理解したかった。

 

 「そちらさんのサーヴァントもそれでいいかな?」

 

 バードがイリヤの背後に向けて声をかける。

 すると念話で応えが返ってきた。

 

 『構わない。イリヤスフィールは私が守る。』

 

 それは念話であるにもかかわらず、重く、深い声だった。

 声だけで、紛れもない大英雄が、イリヤを守っているのだと皆が理解するほどであった。

 そして場所は移る。

 

 聖杯戦争史上、最強の同盟が生まれようとしていた。

 

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