遠坂凛は光の戦士である   作:ホリイ

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第四話 ~弓兵(第四次)~

 「我に一度破れた雑種が!よくぞ吠えたものよ!」

 

 いかなる宝具の力か、その黄金の男は宙に浮いていた。

 説明の必要などない。

 

 彼は王である。

 

 絶対なる支配者である。

 

 その足元に跪かぬものは、恐るべき罰を与えられるだろう。

 

 「弓兵(アーチャー)ギルガメッシュ!?貴方まで!?」

 

 セイバーは驚愕した。

 何という聖杯戦争だろう、恐るべし強者たちが、引き続いて現れるとは。

 

 その時、彼女の隣でいままで姿を現さなかったバーサーカーが実体化した。

 すさまじい巨体である。

 天を衝くとはまさしく彼のことだ、ほとんど裸身を晒すが、その白い(・・)肌は恐るべき筋肉で覆われ、間違いなく鋼より硬いに違いない。

 

 「セイバー、君は守りの力に優れる。マスター達を連れて一旦安全な場所まで下がるのだ。」

 

 彼は冷静な声でそう言った。

 そんな彼に吟遊詩人(バード)が疑問の声を投げかける。

 

 「私はどうする?」

 「バード、君は援護に優れるのだろう?その力を奮ってくれ。」

 

 英雄王ギルガメッシュは、自らの前で落ち着いて戦術を話し合うサーヴァントたちにいたく機嫌を損ねた。

 炎のような眼差しで彼らを睨めつける。

 

 「ほう雑種どもが、我と戦うつもりか?いや、そこなるもの。貴様からは我の最も嫌いな気配を感じるぞ。よかろう、お前から滅してやろう。」

 

 戦いの情勢は定まった。

 騎兵(ライダー)と彼のマスターは見の体勢に入ったようだ。

 戦車の上から面白そうに眺めている。

 

 戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 「旅神の舞曲(メヌエット)!」

 

 バードが竪琴をかき鳴らした。

 三拍子からなる舞踏曲が生み出される。

 それはなぜかいつぞやのような音外れではない。

 まさしく魂を震わせる名曲であった。

 

 「ほう。見事…まるでミューズの竪琴の如し!力が湧き出るのを感じる。よし、いくぞ!」

 

 バーサーカーは大地を蹴ると輝く大斧を振りかざし、一瞬でギルガメッシュの目前に達した。

 

 しかし。

 

 「たわけが!」

 

 ギルガメッシュの背後から複数の盾が出現すると、彼を守るように動いたのだ。

 バーサーカーの斧は轟音を立ててその何枚かを切断するも、ついに受け止められた。

 

 バーサーカーは宙に浮き、その体を晒している。

 

 しかし、そこにバードの一撃、いや、連撃が叩き込まれた。

 

 「レイン・オブ・デス!」

 

 彼の竪琴が突然変形したのだ。

 そして輝ける弓となり、そこから天に向け一矢を放った。

 すると無数の矢が中空に生まれ、まるで豪雨の如く降り注いだ。

 恐るべきことにバーサーカーを巻き込んでいる。

 

 この連撃によって、彼ら二人は地上に叩き落とされた。

 

 バーサーカーは咄嗟に間合いを取る。

 ギルガメッシュは怒髪天を衝いた。

 

 「小僧!貴様も我を怒らせたようだな!」

 

 ギルガメッシュの背後に複数の武器が出現した。

 

 「おい、あれは全部宝具か?ギルガメッシュというのはとんでもない英霊のようだな。」

 「そのようだ。バード、自力でかわせるか?」

 

 バードはため息をついた。

 

 「ああ、何とかしよう。」

 

 そして真の死の雨が彼ら二人に降り注いだ。

 バーサーカーはその巨体から想像もできない素早さで宝具の雨をかわしていく、かわせないものはその大斧で砕き、あるいは叩き落としていった。

 

 そして、バードは。

 そのすべての攻撃を、紙一重でかわしていた。

 まるで射線が見えるようだ、否、見えているのである。

 

 そこにいれば死ぬという死のライン(AOE)が彼には見えるのだ。

 この世界では、おそらく未来視と言われただろう。

 これが彼の最高の宝具の一端である。

 

 ギルガメッシュが一旦攻撃を中断する。

 バーサーカーとバードは合流した。

 あの恐るべき攻撃を受けて二人共傷一つついていない。

 彼ら二人も、偉大なる英霊であるということがわかる。

 

 ギルガメッシュは考えを改めた。

 

 「よかろう。どうやら貴様らは、我を楽しませることができる雑種のようだな。」

 

 バーサーカーはこれはまずいと気づいた。

 ギルガメッシュは本気を出すかもしれない。

 ならばこちらも本気で返さざるを得ず、そうすれば背後で自分達を見ているライダーのみが得をするだろう。

 

 それに。

 

 『バード、おそらくマスターたちは安全圏に退いた。撤退するぞ』

 『そうだな。ライダー陣営に得をさせることはないか』

 『それにだ。』

 

 『マスターたちの憩いの場が無くなってしまうだろう?』

 

 バードはそれに笑顔で応えた。

 

 『まったくだ、いいこと言うじゃないか。』

 

 

 アインツベルンの森に近い場所で彼らは合流した。

 

 「お、衛宮。難しい顔をしてるじゃないか。安心しろ多分家は壊れてないぞ」

 

 バードが軽口を叩く。

 だが事態は急変していたのだ。

 

 「魔術師(キャスター)の使い魔が手紙を持ってきたのよ。藤村先生を預かったって…。」

 

 

 場所をアインツベルンの城に移し、彼らは今後について話し合った。

 

 『ふむ、要求は柳洞寺に来ること。サーヴァントは二騎まで同行を許す、か…。』

 

 バーサーカーはここでもその巨体ゆえ、実体化を解いていた。

 沈思黙考しているようだ。

 

 「藤ねえを見捨てることは絶対にできない!二人に迷惑はかけられない。俺一人で行くよ。」

 

 士郎は強い口調で断言した。

 しかしそれは凛が却下する。

 

 「私達は利害を一致させなければならないのよ、同盟を結ぶとはそういうこと。もちろん藤村先生を救うためには協力するわ。」

 

 凛の隣ではバードが頷いていた。

 バーサーカーもそれは否定しない。

 なぜなら彼らが真の英霊だからだ。

 そしてイリヤが口を開いた。

 

 「ねえリン。一般人を人質に取るなんてとんでもないルール破りよ。監督官に介入は依頼できないの?」

 「一応私もダメ元で監督官に電話してみたんだけど、あいつ藤村先生のことを一般人じゃないって言うのよ。」

 

 イリヤは眉を顰めた。

 

 「どういうこと?その藤ねえって人は魔術師なの?」

 「そんな筈はないわ!冬木のセカンドオーナーとして私が保証する。」

 

 しかしイリヤがうさんくさそうに応える。

 

 「でもリンはシロウが魔術師だってことに気づいてなかったんでしょう…?」

 「それはそうだけど!間違いないわ!」

 

 士郎が二人の間に入った。

 

 「いや、藤ねえが魔術師ってことはないと思う。もしそうだとしたら、隠せるような人じゃないよ。」

 「ん、そうね。納得できるわ。」

 「ならなんで監督官はそんなことを言ったの?」

 

 悩む彼らにバードが割って入った。

 

 「まあそれは置いておこう、今考えるのは。どう行動するかだ。期限は今夜なんだろう?」

 『同意する。その女性を救うつもりならば、私達は二手に別れることになる。その人選を決めるべきだろう。』

 

 凛がバーサーカーに問いただした。

 

 「どういうこと?」

 『つまりだ、二騎のサーヴァントが柳洞寺に向かったとして、残る一騎はここに残ることになる。』

 「つまりあの金ピカに襲われる可能性があるってことか。」

 

 バーサーカーの言葉をバードが継いだ。

 それはありうる未来だった。

 バードは苛立ったように言う。

 

 「キャスターもそれを狙ってるんだろうな。そして二騎までならなんとかする自信があるんだろう。なめた話だ。」

 

 『できればここに残るのは私とイリヤにさせてもらいたい。ここはイリヤの陣地だ、戦うに当たって一番有利なのは私達だからな。』

 

 もぐもぐ

 

 

 柳洞寺のふもとで、凛と士郎は話し合っていた。

 

 「正面からは私たちが行く、それでいいわね?」

 「ああ、本当にいいのか?遠坂」

 

 セイバーが口を開いた。

 

 「バードの語った理屈。正面にはおそらくトラップがある、ならば最も人質に近づけるだろう裏からは、シロウが行くべき。その理屈は理解できました。」

 

 それはバードの提案だった。

 

 「ああ、その人質を一番助けたい人間が助けに行くべきだ。逆の理屈もあるだろうがね、私はそっちの方がいいと思う。」

 

 そして凛とバードは石段に足をかけた。

 

 

 気づいていた。

 その山門に、待ち構える者がいるということは。

 彼は、着物を身に着けていた。

 

 そして、肩を露出(・・・・)させ、長い刀を持っていた。

 

 「キャスターじゃねえな、何者だ?」

 

 その美丈夫はバードの呼びかけに静かに応えた。

 

 「───セイバーのサーヴァント、佐々木小次郎」 

 

 

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