アインツベルンの城は
破壊し尽くされていた。
すべてはバーサーカーとギルガメッシュの激突の結果である。
この極致に至った大英雄同士の戦いにおいて、陣地などというのはなんの足しにもならなかった。
それはもはやただの風景である。
「認めよう、雑種。貴様は強い。」
「最古の英雄王にそう言われるとは感激だ。」
バーサーカーは軽口で返す。
だがその体は既に傷だらけであった。
天下に二つと無き聖剣魔剣を受けきったのだ。
その消耗は激しい。
だがそれはギルガメッシュが攻めきれぬということでもあった。
「なれば、我が友の名を持つ宝具を使わせてもらおう。」
ギルガメッシュは背後の
それを見た瞬間、バーサーカーはまずいと気づいた。
己はギリシャ神話の主神の血を引く身である。
その鎖からは、神を地に引きずり降ろそうという強力な気配が漂っていた。
あれで縛られれば致命となりうる。
なればどうするか?
攻めるのみである。
「オンスロート!」
バーサーカーは一瞬でギルガメッシュとの距離を詰めると、必殺を期して己の最大の一撃を放つ。
「おのれ!」
「受けろ!
斧を闘気が包み、まるでチェーンソーのように回転する。
その一撃は英雄王の黄金の鎧を引き裂き、彼に大きな傷を与えた。
だが、それでも偉大なる英雄王を止めるには足りなかった。
「
強靭な鎖が解き放たれ、バーサーカーの体に絡みつく。
それはまさしく彼にとって最悪のシチュエーションだった。
もちろんバーサーカーはそれに任せるままではない、全力を振り絞り、鎖を引きちぎろうとする。
「させぬわ!」
ギルガメッシュはそうはさせまいと、友と頼む鎖にさらなる魔力を注ぐ。
その天秤はギルガメッシュに傾いた。
なぜならバーサーカーは、『狂化』していない。
その筋力は強大なるも補正はなく、そして神性は低下していなかった。
だが、彼のマスターの声が響く。
「バーサーカー!いえ!
イリヤスフィールだった。
そしてその声を受け、ウォーリアーの目に光が灯る。
いや、本当に灯ったのだ、赤い、紅い光が。
「
それはウォーリアーの奥義、その効果は内なる獣性を解放するもの。
攻撃力の増加など様々な効果があるが、その一つにこういうものがある。
『バインドの解除』
この状態に陥ったウォーリアーは、何者にも縛られることはない。
大きな音を立てて、『
「■■■■■■■■■■■ーーー!」
紅い闘気に包まれたウォーリアーが一直線にギルガメッシュに向かう。
ギルガメッシュは異形の剣を王の財宝から取り出し、構えようとするが、遅い。
勝敗は決したかに見えた。
だが。
「止まれ、ウォーリアー」
○
イリヤの首に、黒鍵と呼ばれる礼装が、突きつけられていた。
その礼装を持つのはカソックに身を包んだ神父、その名を言峰綺礼という。
「貴方は、聖杯戦争の監督官!?何のつもりなの?」
「君たちに話していなかったことがあったな。」
彼はその手の甲の令呪をかかげた。
二画消費され、残りは一画となっている。
「実は私も聖杯戦争の参加者でね。」
「ひどい冗談、最悪のルール破りね。」
ウォーリアーからは紅い闘気は消えていた。
その効果は長くは持たないのだ。
「英雄王、今のうちだ。ウォーリアーにトドメを刺したまえ。」
言峰はギルガメッシュに促す。
しかし彼は、不機嫌そうな顔で応じた。
「コトミネ、貴様…。」
そして応じたのは彼だけではなかった。
ウォーリアーが、その力を奮ったのだ。
「シェイクオフ」
ウォーリアーの体を蒼色をしたイバラが絡みつく。
いや、ウォーリアーだけではない。
イリヤの体をもイバラが包んでいた。
その瞬間、言峰の黒鍵がイリヤの体を貫く!
いや貫けない!
「これは!?」
シェイクオフ、それは仲間全体を、防護の膜で包むというアビリティ。
その防御力は、使用者の体力に比例する。
いかな代行者といえども、ウォーリアーの張ったそれは、人間に突き破れるものではない!
「トマホーク」
ウォーリアーの手から斧が飛んだ。
それは言峰の体に突き刺さり、その生命を狩る。
言峰綺礼は倒れ伏した。
「ふん、手間をかけたな。ウォーリアー。」
ギルガメッシュの言葉にウォーリアーは応える。
「構わん。マスターを守るのはサーヴァントの役目だ。」
そして、両雄は再び刃を交える。
○
ギルガメッシュは不可思議な形状をした剣を構える。
その剣からは強大な圧力が放たれていた。
「行くぞ、雑種、いやウォーリアー。この一撃にて貴様を滅ぼそう。」
「来るがいい、英雄王。その一撃、見事防いで見せよう。」
ギルガメッシュの持つ剣が回転を始める。
その剣の名は、乖離剣エア。
かつて天と地を割ったという対界宝具である。
そして、それに対するウォーリアー、いやギリシャ神話最大の英雄ヘラクレスの宝具は…。
「
「
時空を引き裂く一撃がウォーリアーに向かう。
しかし、ウォーリアーが地面に斧を突き刺すと大地がせり上がったのだ。
それは一言で言うならば地獄である。
ギルガメッシュの最高宝具よりも古き神秘。
この世に一切の生命が無かった、いや生命の存在が許されなかった時代の、原初の大地。
ウォーリアーはそれを現出させた。
それは原典を超えたものである。
本来のウォーリアーの宝具の名は『
大地を揺り起こし、それで身を護る結界宝具。
だがそれが原初宝具とも呼ぶべきものに変わったのは、ウォーリアーが、まさしくエアに抗うにふさわしい者だったからに他ならない。
二つの究極の宝具はぶつかり合い、そして一切の魔力を吸い込み消えたのだった。
○
ウォーリアーは右腕と左足を失っていた。
目も良く見えない。
だが、自分のマスターを守りきったことだけはわかっていた。
「見事だった、ウォーリアー。」
それはギルガメッシュだった、体中から血を流しつつも、その四肢に欠損はない。
ギルガメッシュの勝利だった。
なぜなのか、それは宝具の相性だった。
ウォーリアーの宝具は天地が分かれる前の世界を現出されるものであり、そしてギルガメッシュの宝具はまさしくそれを分かつものだったのである。
決着はついた。
「貴様の力に免じ、そのマスターの命は奪わないでおいてやろう。」
「…感謝する。」
ギルガメッシュは王の財宝から一本の剣を取り出した。
そして、ウォーリアーにトドメを刺そうとする、しかしその時気づいた。
自分の胸から、赤黒い、何かが生えている。
彼は背後を見た。
そこには、禍々しい存在が、その槍を、ギルガメッシュに、突き刺していた。
彼の名は、
時空の彼方において、狂王と呼ばれる存在である。
ギルガメッシュは言葉を発することもできず消滅した。
その瞬間イリヤは気づいた。
サーヴァント三体分の魔力が自分に流れ込んでくるのを。
「聖杯、貰い受ける。」
イリヤは狂王の恐るべき姿を前に、何もできなかった。
次回
第八話 ~暗黒騎士~