超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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雷門VSザ・ジェネシス ~吹雪の覚醒~

「うっ……!」

 

 重なる失点。度重なる敗北。そして告げられた言葉。

 

「塔子!大丈夫か!」

「大丈夫ッスか?」

「ごめん……止められなかった」

「立てるか?」

「ああっ。ちょっと打っただけ……くっ」

 

 顔をしかめる塔子。そして駆け寄るチームメイト。

 軽い絶望にあったオレを強制的に現実世界に引き戻したのは、更なる絶望へと堕とす光景だった。

 塔子の力は現状、ジェネシスのシュートを止めるのに必要なカード。そんな彼女が試合続行が出来ないとなれば、彼らのシュートに対抗する術が減ると言うこと。

 

「監督!僕を試合に出してください!」

 

 そんな中、ベンチでは吹雪が立って瞳子監督に試合に出たい旨を伝えていた。

 

「僕は皆の役に立ちたいんです」

 

 吹雪と瞳子監督の視線が交差する。その瞳を見て監督は決断した。

 

「選手交代!財前塔子に代わって吹雪士郎!」

 

 選手交代。ベンチでは吹雪が出られるように準備を進めていた。

 

「アフロディ君は財前さんのポジションに。吹雪君。あなたにはフォワードを任せるわ」

 

 塔子がベンチに下がる中、アフロディがMFに下がってくる。

 

「さぁ、行きなさい!」

「はい!」

 

 そして、交代して入ってきた吹雪。彼はオレたちの前に立った。

 

「いいんだな?」

 

 円堂の短い問いかけ。それに彼は小さく頷いた。

 

「頼んだぜ。吹雪」

 

 両肩に軽く手を置き激励する円堂。吹雪はそのままポジションへと走って行った。

 

「よし。吹雪にボールを回すぞ!」

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫さ。アイツなら。吹雪は自分の意思でここに戻ってきた。だったら俺たちが出来るのは信じてやることだけだ」

 

 円堂の言葉に賛同するチームメイト。各々がポジションにつき雷門ボールで試合が再開される。

 ボールを持った吹雪。対してジェネシスは、豪炎寺やアフロディにマークを集中させている。パスコースを潰しただけで、吹雪にはほとんどディフェンスが行っていない。これは……打たせようとしている?

 

「舐めやがって……吹き荒れろ!エターナルブリザード!」

 

 吹雪が荒々しい口調で、シュートを放つ。

 

「プロキオンネット!」

 

 しかし、そのシュートはネロの手に収まってしまった。吹雪でもネロを打ち破れなかった……のか。

 ボールはコーマからアーク、そして鬼道と一ノ瀬のマークを振り切ったグランに渡る。そこに走り込んでいたのは吹雪だった。

 

「アイスグランド!」

 

 吹雪のアイスグランドがグランを襲う。だが、グランには通用しなかった。

 ただボールを足の裏で止めて立ち止まっていただけ。しかし、氷と共に吹雪は弾かれてしまう。

 

「僕のプレーが全然通用しない……!完璧にならなくちゃいけないのに!」

 

 シュートだけでなくディフェンスまでもが通用しない。そのことに焦りを感じる吹雪。

 そのままグランは円堂と壁山を抜き去って、シュート体勢に入る。

 

「流星ブレード!」

 

 放たれるシュート。

 

「これ以上離されるわけには……!」

 

 シュートとゴールの間に割って入り、蹴り返そうと試みる。だが、その圧倒的な力の差に飛ばされ、ボールはゴールへと向かった。

 

「ムゲン・ザ・ハンド!」

 

 立向居の背中から現れる四本の手。シュートを止めようと向かうがボールはその手を砕きゴールへと向かう。

 

「まだだよ!」

 

 ゴールギリギリで走り込んできたのはアフロディ。そのシュートを胸で受け止め、ボールはゴールラインを割ることなく止まった。そして、落ちたボールを大きく前へと蹴り出す。

 

「すみません……俺が止められないばかりに」

「気にしないで。ゴールは君だけが守るんじゃない。僕たち全員で守るものなんだ」

「そうだぜ!だからお前も諦めずにガンガンやっていけ!」

「諦めずに……」

 

 弾かれたボールはクイールが確保し、ウルビダへと渡る。

 

「止める……!」

「……そうか」

 

 ウルビダは俺がディフェンスに来ていても、意にも介さず、軽いフェイントと共に抜き去っていく。そのあまりに淡々としたプレーは、まるで何もないかのように感じ、さっきの眼中にないという発言が本気だったことが伝わる。だが、そんなプレーなのにオレがアイツからボールを奪える未来が見えない。

 

「…………クソッ」

 

 悔しさを感じるが立ち止まっている場合ではない。振り返ってボールを追いかけようとするが、既にウィーズへとパスが出されていた。

 ウィーズへとパスが繋がった瞬間。一ノ瀬、鬼道、土門、円堂の四人による四方向からの同時スライディング。ウィーズは咄嗟のことで反応が遅れ、ボールは弾かれ宙を舞う。そのボールに反応したのは鬼道。

 

「吹雪っ!」

 

 ダイレクトで吹雪にパスを出す。しかし、吹雪は何処か魂がここにない感じがして……

 

「吹雪!」

 

 豪炎寺の声でボールが迫ってきていることに気付く吹雪。あまりに反応が遅れたためか、ボールを上手くトラップすることが出来ず、足でボールを弾いてしまう。そのままボールは外に、タッチラインを割ってしまった。

 

『あぁっと!吹雪!痛恨のトラップミスだぁっ!』

 

 実況の声が響く中、豪炎寺はボールを取りに行って拾い上げる。そして、

 

「うわぁぁぁっ!」

 

 吹雪の腹部にシュートが直撃した。その威力のせいで吹雪は後方に吹き飛ばされてしまう。

 膝をつき、シュートの痛みか腹部を抑える吹雪。そんな彼の前には、シュートを打った張本人である豪炎寺が立っていた。

 

「豪炎寺君……?」

「本気のプレーで失敗するならいい。だが、やる気のないプレーだけは絶対に許さない!お前には聞こえないのか?あの声が」

「声……?」

 

 吹雪の声に答えることなく、豪炎寺は自分のポジションへと戻っていく。

 アークのスローインで試合再開。ボールはコーマに渡り、ウィーズ、ウルビダ、そしてグランへと渡る。

 

「流星ブレード!」

「止めるッス!ザ・ウォール!」

「やらせねぇ!」

 

 グランの必殺シュート。それを壁山がザ・ウォールで防ぎつつ、オレが蹴り込んでシュートを止めようとする。だが、

 

「うわぁああ!」

「くっ!」

 

 シュートの威力を削いだだけで、止めることはかなわなかった。

 

「たぁぁああっ!メガトンヘッド!」

 

 シュートと立向居の間に入ったのは円堂。円堂の必殺技とグランの必殺技が激突する。

 

「負けるかぁ……!いっけぇ!吹雪ぃっ!」

 

 弾いたボールはグランの頭上を越えて吹雪の下へ。

 

「……聞こえる。ボールから皆の声が……皆の思いが込められたボール……!」

 

 ボールを持ったまま立ち止まる吹雪に、容赦ないコーマとクイールのダブルスライディングが襲いかかる。

 それを、空中へと跳躍することで回避する吹雪。そして、空中で身に纏っていた白いマフラーを投げ捨てる。着地した吹雪。その目には迷いがなく、雰囲気も今までにはないようなものへと変わっていた。

 

「吹雪?」

 

 円堂たちもその変化には気付いた様子だ。

 吹雪は相手ゴールの方を向きドリブルで上がっていく。隣には豪炎寺が走っていた。

 ゾーハンとハウザーのダブルディフェンスが迫り来る。豪炎寺へとパスを出し、自身は二人の間を駆け抜け、そして豪炎寺から再びパスを貰う。

 その動きは速く迷いがない。今までとは大きく動きが変わっていた。

 

「これが完璧になることの答えだ!」

 

 そして吹雪はボールを軽く上げると右足で蹴り込む。ボールには三本の爪で何回も引っかくようにしてパワーが注ぎ込まれる。

 

「ウルフレジェンド!」

 

 吹雪が吼える。それに呼応するように背後にはオオカミ、そしてその後ろには満月が現れる。三つに分かれたボールは一つになり、ゴールへと向かっていった。

 

「プロキオンネット!」

 

 そのシュートはネロの必殺技を受け手もなお、止まることはなかった。

 そして、ボールはプロキオンネットを打ち破り、ネロを弾き飛ばしてゴールへと突き刺さった。

 

『ゴール!吹雪の新必殺技が炸裂!雷門!遂に一点を返したぞ!』

「やったぁ!」

 

 喜ぶ雷門。対してジェネシスは、失点するとは思わなかった様子。その様子が如実に表れていた。

 ジェネシスのキックオフで試合再開。ボールを持っているのはグラン。グランはスピードを上げてオレたちディフェンスのマークを振り切り、立向居と一対一に。

 

「流星ブレード!」

 

 放たれたシュート。そのシュートに対し、立向居は怯えることなく、向かっていく。

 

「俺だって雷門の一員なんだ!」

 

 その彼の熱意に応じてなのか、彼の必殺技ムゲン・ザ・ハンドはその手の本数を2本増やした、計6本の金色の手でシュートに向かっていく。

 

「ムゲン・ザ・ハンド!」

 

 進化した彼の必殺技。それは先ほどまで数人で止めるのがやっとだったグランのシュートを、一人で止めて見せたのだった。

 

「究極奥義は進化するんだ!俺が諦めない限り何度でも!」

 

 進化した彼の必殺技。ムゲン・ザ・ハンドG2と目金は名付けた。

 止めたボールは綱海に渡る。吹雪の得点。立向居のセーブ。このまま勢いに乗ろうとするが、

 

 ドォンッ!

 

 突如、謎の爆発音と共にスタジアム全体が揺れる。とっさの衝撃でボールは誰も居ないところへ転がっていく。

 

『ご苦労様。鬼瓦警部』

 

 すると、プロジェクターに投影された吉良星二郎の姿が。

 

『しかし、あなたたちの苦労も無駄だったようです』

 

 話を聞くに、鬼瓦警部たちが裏で動いていたようだ。

 

『確かに、エイリア石から出るエナジーには、人間を強化する力があります。そのエナジーの供給が止まってしまえば、力を受けていた者は普通の人間に戻ります』

 

 謎の爆発音……エイリア石……そういうことか。裏で、エイリア石を爆発させたのか。

 だが、それはこの試合においては、何も意味をもたらさない。だって、彼らは……ジェネシスは。

 

「ジェネシスは、エイリア石を用いていたジェミニストームやイプシロンとは違う。彼らを相手に訓練して、強化されただけの普通の人間……」

『その通りですよ。ジェネシスこそ真の人間の力。弱点などない、最高最強の人間たちです』

「「「……っ!」」」

 

 そのことに雷門のメンバーには衝撃が走る。恐らく、この試合を中継で見ている奴らもだろう。

 

『ジェネシスこそ新たなる人間の形なのです』

 

 演説が終わったのか声が聞こえなくなる。だが、特等席からこちらを見下ろすその姿は自分が正しいと言わんばかりで……

 

「お前の勝手で!皆の大好きなサッカーを悪いことに使うな!」

 

 円堂は声を上げる。だが、その声は届かない。

 

「君たちには。崇高な父さんの考えを理解できるわけがない!」

「ヒロト!」

 

 ボールはグランが持っていた。そのまま、ドリブルで上がっていき、シュートを放つ。

 

「やらせるかぁ……」

 

 それを辛うじてはじき返す。ボールは円堂の方へと飛んでいった。円堂はそのまま、吹雪へと流し、

 

「ウルフレジェンド!」

 

 吹雪の必殺技。ウルフレジェンドがゴールへと向かう。しかし、ネロのもう一つの必殺技が発動し、シュートは時計の舞う異空間へと突入する。シュートのスピードはその空間で殺されてしまい、ボールは最終的にネロの前で停止する。

 

「時空の壁!」

 

 そして、そのボールに裏拳を当てるネロ。ボールは勢いよく飛んでいき、センターラインを超えてグランの下に。グランはトラップすると、近くにはウルビダとウィーズが。

 三人はボールを中心に、ボールから背を向けるように立つ。そのままボールとともに空高く飛び上がる。空には宇宙を思わせるような景色。ボールには大きな力が溜まって行って。

 

「スーパーノヴァ!」

 

 三人による蹴りが、斬撃のように飛んでいきボールにぶつかる。ボールはその力と共にゴールへと向かっていく。

 

「ムゲン・ザ・ハンドG2!」

 

 そのシュートは進化したムゲン・ザ・ハンドをあっさりと破り、ゴールへと刺さった。

 

「我らジェネシスこそが最強と言うわけだ!」

 

 スコアは1ー3。まだまだ逆転への兆しが見えない。

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