超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

111 / 254
雷門VSザ・ジェネシス ~氷の感情、炎の思い~

 再び二点差に放されてしまった。そんな中、円堂は再び吉良星二郎に向かって声を上げる。

 

「大好きなサッカーを汚すな!」

『どういう意味ですか?』

 

 すると、プロジェクターに自身の姿を映し出して答えてくる。

 

「力とは皆が努力して付けるものなんだ!」

『忘れたのですか?あなたたちも、エイリア石で強くなったジェミニやイプシロンと戦い、強くなったと言うことを。エイリア石を利用して強くなったという意味では、雷門もジェネシスも変わらないのです』

 

 ここに来て正論が出て来る。確かにそうだ。ジェネシスも雷門もエイリア石で強化された奴らを相手にして、自身を強くしたという意味では一緒だ。

 

『雷門も最初とは随分とメンバーが替わり、強くなりましたね。ですが、道具を入れ替えたからここまで強くなれたのです。我々と同じく、弱者を切り捨て、より強い者と入れ替えたからこそ』

「ふざけるなぁ!弱いからじゃない!」

『いいえ。弱いからです。だから怪我をする。だからチームを去る。実力がないから脱落していったのです』

「違う!」

『彼らはあなたたちにとって無用の存在』

「違う違う違う!アイツらは弱くない!絶対に違う!俺が証明してやる!」

 

 円堂の敵意のこもったその目。その目を見るとヤツは、口角をあげてプロジェクターを切る。

 雷門ボールで試合再開。

 

「こっちだ!」

 

 円堂がボールを要求しパスが渡る。そして一人荒々しく突撃していく円堂。だが、呆気なくグランにボールを取られてしまった。すると、取り返そうとグランに当たっていく円堂。しかし、それを余裕な顔で躱すグラン。

 俺たちは初めて見るかもしれない。円堂のあんな、怒りに任せただけのプレーを。楽しさも熱血も何も感じない。ただの怒りしかアイツからは感じない。

 

 でも、そんなアイツでも今のオレに比べたらマシだ。

 

 ジェネシスを倒さなくてはいけない。でも、アイツらは今のオレよりも強い。

 アイツらには……特にウルビダには勝てるビジョンが見えない。ボールを取ることが出来ない。必殺技なんて使われたら止められない。ドリブルでも突破できない。シュートも封じられた。この試合だけじゃない。今まで幾度となくやって来て、実力差は痛いほど分かっている。それでも追いつこうとしてきたが、まだ遠い。その壁を越えるには、一体後どれだけ時間がかかる?分からない。

 

『スーパーノヴァ!』

 

 そんな中、シュートが放たれる。そのシュートに向け走り出そうとする……が、思いとは裏腹に足がまるで石像のように固まって、動こうとしなかった。

 ダメだ。あの威力のシュートは止められない。

 止めに行かなければいけない。だが、シュートを前に感じた出来ないという諦めのせいか、それともその威力の高さに怖じ気づいてしまったのか、オレの足は一向に動こうとしなかった。

 そんなオレとは違い、壁山が、綱海が、土門が、アフロディがシュートに向かう。だが、たやすく弾き飛ばされてしまった。それをただ見ているだけだった。

 

「ムゲン・ザ・ハンドG2!」

 

 立向居が必殺技を放つ。しかし、ボールは止まらない。シュートは止めようとしてくる手を砕きゴールへと向かう。

 ゴールへと入ってしまう寸前、二人の影がそのシュートを止めようと割って入った。

 吹雪と豪炎寺だ。二人がかりの決死のブロック。そのおかげでボールは軌道がそれ、バーに当たって弾かれ、ゴールには入らなかった。

 失点を防いだ。だが、今のシュートを止めるのに何人が身体を張った?シュート一本止めることすらギリギリな奴ら相手に、どうやって勝てる?勝つことができる?

 

「全員でフォローしなくてはならないキーパー。君たちの弱点であり、敗因となる。だからさ、キーパーに戻りなよ円堂君。そうじゃないと倒しがいがないよ」

 

 グランの発する言葉をただただ耳で流していた。いや、耳から耳へと流れていった。

 そして、そこからは一方的だった。こちらの攻撃は通用しない。守備も通用しない。ジェネシスの猛攻で、その気になれば簡単に潰せるのにそうしない。力の差を見せつけ、見せしめている。

 どうやってあんなヤツらに勝てる?勝ち筋はあるのか?……そんなのないんじゃないか?

 

「ボールを寄越せ!」

 

 吼える円堂。しかし、それだけではボールは奪うことができない。

 

「円堂……」

「あんなキャプテン。初めて見るッス」

「…………」

 

(いや、円堂君だけじゃない。十六夜君の心が完全に折れている。もう彼は戦うことが……)

(アイツはジェネシスにいたからこそ、この中の誰よりも実力差を身に染みて知っている。それに加え、アイツの力が一切通用しなかったことがこの現状を生み出している)

(十六夜をスパイに送り込んだ弊害……と言うべきか。頭にエイリア学園のことがちらつき過ぎて本来のプレーがまるで出来ていない)

 

 ピ、ピー!

 

 前半終了のホイッスルが鳴った。得点は二点差。だが、点差以上の実力差が心にのしかかってくる。

 

「円堂君」

 

 一人座る円堂に対し、瞳子監督が声をかけに行く。オレはそれを横目にベンチから離れる。

 

「…………」

 

 トイレのところに行き、洗面台のところに立つ。

 前半は何も通用しなかった。後半はどうなるんだ?いや、そもそも今のオレに、

 

「後半を戦う力なんて残っているのか……?」

 

 円堂は……いや、他の皆も怒りを少なからず抱いている。でも、オレの中には不思議とその感情が湧いてこない。湧くほど力も何もないのだろう。……ダメだ。

 勝たなくてはならない。それなのに、この絶望的な差……ダメだ。どうあがいても……

 

「勝てる気がしない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻るか」

 

 結局何にもなかった。頭から水を被ったりしたが、どうもその水の冷たさを感じない。感じないレベルで、心が冷え切っていた。

 ダメだ。恐らくオレは足を引っ張ることになるだろう。……交代するしかない。これ以上ピッチに立っていても迷惑をかけるだけだ。

 ベンチに戻ろうとする。すると、

 

「ファイアトルネード!」

 

 炎を纏ったボールが身体を直撃する。何にも身構えてなんかいなくて、ボールの威力に負け、風の前の塵のように吹き飛ばされてしまう。

 

「豪炎寺!?」

「わわっ!?十六夜さんが吹き飛ばされたッス!」

「ちょっと!?コレ大丈夫なの!?」

 

 ベンチの方が騒がしくなる。何故だろう。不思議と痛みは感じなかった。ボールが当たった痛みも、地面に打ち付けられた痛みも。

 だが、何だ?この心に来るような熱は。この熱は……何なんだ?

 

「お前だけだ。この中で勝てないと思っているやつは。お前が今まで、どれだけの思いを味わってきたかなんて知らない」

「……っ」

「試合外のことを考えるな!試合(プレー)に集中しろ!いい加減目を醒ませ!十六夜!」

 

 そう言い残すと豪炎寺はフィールドへと入っていく。立ち上がったオレのもとに監督がやって来た。

 

「十六夜君。あなたには後半も出てもらうわ」

「……無理ですよ。オレにはもう戦う力なんてないです」

「本当にそうかしら?」

「……そうですよ」

「それでもあなたにはフィールドには立ってもらう。いいわね」

 

 有無を言わせないような語調。オレはフィールドへと入っていく。……立っていてもどうせ、何も出来ない。でも、何だ?さっきから(ここ)に何か熱いものが……これは一体、何なんだ?

 

(十六夜以外の心は一つになった……後はお前だけだ。お前なら必ず気付くはずだ)

 

 ピ──!

 

 雷門ボールで後半戦開始。ボールは円堂が持ち、そのままドリブルで上がっていく。

 

「ヒロト……」

「君にオレを抜くことは出来ない」

 

 円堂の前に立ちはだかるのはグラン。さっきまでの円堂だったら突っ込んで行って終わりだったが……

 

「……前半とは違うというわけか」

 

 バックパスをし、ボールは後ろを走っていた鬼道に。そのまま円堂はグランと鬼道の間に入って、彼がブロックに行かないよう阻止する。

 

「それで我らジェネシスに敵うと思うな!」

 

 ウィーズのスライディングが鬼道を襲う。だが、鬼道は冷静に隣を走る一ノ瀬にパスを出すことで躱す。

 その後も、土門、アフロディ、吹雪、鬼道、円堂と細かくパスが繋がっていき、ジェネシスを翻弄する。

 

「何だ?どうなっている」

 

 グランと同じ意見だ。少なくとも前半より上手くなっている。何故?一体何故?

 

「俺たちの強さは仲間と共にあるんだ!」

 

 円堂が持っていたボールをあげる。すると、鬼道、土門と共に跳び上がって……

 

『デスゾーン2!』

 

 シュートを放った。そのシュートはゴールへと向かう。

 

「時空の壁!」

 

 ネロの必殺技時空の壁。その必殺技を前に、シュートは一度止まる。しかし、止まったボールから再びパワーが溢れていく。

 

「何ぃ!?」

 

 そして、そのパワーによってネロを弾き飛ばし、ボールはゴールへと刺さった。

 

『決まった!デスゾーン2が時空の壁を打ち破ってゴールへ!これで再び一点差に!』

「よし!」

「ジェネシスが二点も失うなんて……」

 

 喜びを表す雷門と対照的に驚きを隠せないジェネシス。

 

「仲間が居れば、心のパワーは百倍にも千倍にもなる」

「…………っ!」

 

 その言葉が響いてくる。そして、胸のあたりに燻っていたものが強くなっていく。

 ジェネシスのキックオフで試合再開。グラン、ウルビダ、ウィーズの三人が雷門メンバーを抜き去って、迫り来る。

 

『スーパーノヴァ!』

 

 そしてこの試合、三度目のスーパーノヴァを放った。そのシュートコースにはオレが立っている。

 

「十六夜!」

「十六夜さん!」

 

 一度目も二度目も見ているだけだった。一度目にその威力の高さを改めて肌で感じ、二度目に至ってはシュートを前に動くことすらできなかった。

 

「十六夜っ!」

 

 ジェネシスは強い。一緒にやってきてその強さは、肌で感じている。

 その中でもウルビダの強さは、こいつらと同じくらいずっとやって来て、骨身に染みている。その力は今のオレなんかではまだまだ及ばないものだ。そんなことは分かっている。

 だが、もっと根本は何だ?力の差は、頭が身体が心が感じていること。でも、この心にある炎は何だ?

 

「単純なことだよな……」

 

 その思いは最も単純なことだ。理屈とか、力の差とか、負けたらどうとか、そんなもん全部どうだっていい。

 

「負けたくねぇ!オレたちは絶対に勝つ!」

 

 負けたくない。それだけだ。絶望的な力の差があろうと、オレは負けたくない。オレたちは負けたくない。

 オレは指を口元にやって指笛をふく。

 

 ピー!

 

 現れたのは6匹のペンギン。ペンギンたちが正六角形の頂点に位置すると羽を拡げ、その羽が近くのペンギンの羽とぶつかり合い辺が出来る。その間には障壁が貼られ、言うなればペンギンの盾が生まれた。

 

「はあああああぁぁぁぁぁっ!」

 

 その盾とシュートがぶつかり合う。

 ペンギンたちも押し返そうと飛ぶが、オレ自身も左手で盾を支え、シュートを押し返そうとする。

 

「無駄だ。このシュートはお前じゃ止められない」

「無駄じゃねぇ!」

「何だと?」

「オレの後ろには仲間が居る!オレを支えてくれる仲間たちが居る!たとえこの盾が砕かれようと仲間たちが必ず止めてくれる!そう信じている!だからオレは!全力を出してこのボールにぶつかれる!」

 

 忘れていた感覚だ。サッカーは一人でやってるんじゃない。共に戦っている仲間が居る。

 仲間がオレの期待に応えてくれている。それなのにオレが仲間の期待を裏切ってどうする。

 シュートの威力に押し負けそうになり、少しずつ支えている両足の足下の地面がえぐれていく。

 

「舐めんじゃねぇぞ!」

 

 徐々に盾にヒビが入っていく。だが、まだ砕かれていない。砕かれていないのなら、砕かれるその瞬間まで耐えるだけ。耐えれば、耐えただけ威力は削がれているのだから。

 そうして耐え続けていると、少しずつボールの回転は遅くなり、ついに完全に停止した。ボールはオレの足下に転がり、それを軽く足裏で止める。

 

「何っ!?」

『ふ、防いだぁっ!ザ・ジェネシスの強烈なシュートを!十六夜が防いで見せたぁ!』

「やったな十六夜!」

「ようやく目が醒めたか」

「そのようだね」

「ありとあらゆる邪悪を跳ね返す盾……いや、ペンギン。ズバリ、アイギスペンギンと名付けましょう!」

 

 足下にあるボールを軽く蹴り出し、ドリブルをしていく。

 

「貴様……!ここは行かせんぞ!」

「ウルビダ……いいや、通らせてもらう」

 

 オレのテクニックでは、ウルビダを抜けないことは分かっている。一人じゃ突破できない壁ということぐらい分かっている。

 

「そこだ!」

 

 ウルビダがボールを奪おうと足を出してくる。

 

「円堂!」

 

 そのタイミングでバックパスを出して、前に走り出す。

 

「なっ……!後ろを見ていなかったのに……何故」

 

 すれ違う時に、ウルビダが声を漏らす。何故?そんなの簡単だ。

 

「アイツなら絶対にそこに居てくれる。だったら、オレはそれを信じて前に走り出すだけだ」

「十六夜!」

 

 そしてボールがオレの頭上を越えて、大きく前へと飛んでいく。

 

「大き過ぎる!パスミスだ!」

 

 何処かから聞こえるそんな声。だが、オレはそうは思わない。オレがアイツを信じたように、アイツもオレを信じている。絶対にこのパスを受け取るって。だからこそ、

 

「その信頼に応えないとな!」

 

 ピー!

 

「行くぞ!ライド・ザ・ペンギン!」

 

 指笛とともに現れたペラーの背に乗り、ボールに向かって飛んでいく。

 

「何っ!?」

「悪いな。このボールは奪わせない……鬼道!」

 

 ボールをカットしようと跳んでいたアーク。彼に触れる前に、ボールへと追いつきそのまま下に居る鬼道へとパスを出す。

 

「十六夜!」

 

 そのまま地面に降り立つと同時にボールを受け取り、再びドリブル。

 

「ここから先には行かせない!」

「止める!」

 

 ゲイルとキープのダブルディフェンスが立ち塞がる。吹雪と豪炎寺にはそれぞれマークが付いている状況、後ろにまたパスを出すことも出来るが……

 

「ここは押し通る!」

 

 軽くフェイントを入れつつ、二人のディフェンダーの間にスペースが出来るタイミングを見計らって……

 

「何だと!?」

「今までより速い!?」

 

 最高速で、一気に駆け抜ける。

 

「十六夜君!」

 

 すると、隣をアフロディが併走する。

 

「彼の技を破るにはアレしかない!」

「キャラバンで言ってたアレか……オッケー!今ならやれそうだ!」

「じゃあ、やろうか。僕たちの必殺技を」

「あぁ、行くぞ!」

 

 そう言ってオレはボールを前へと蹴り出す。ボールには黒紫のオーラが纏っていて、ある程度地面すれすれを飛んだ後、一気に急上昇する。

 

「はぁっ!」

 

 そのボールに対し、アフロディが追いつき、金色の翼を生やしながらボールに力を込める。すると、ボールは金色のオーラを纏い、アフロディはシュート体勢に入る。

 

「来いっ!」

 

 対してオレは力を溜めた後、地面に手を叩きつける。すると、手を中心に黒い魔法陣が生成され、そこから6匹の真っ黒なペンギンが生まれる。

 そのペンギンたちと共にボールへと跳んでいき、オーバーヘッドキックの体勢になる。

 

「「ペンギン・ザ・ゴッド&デビル!!」」

 

 オレとアフロディ、二人が同時にシュートする。神を表すような神々しい光と、悪魔を表すような禍々しい光。対極に位置する力が同時にボールへと注ぎ込まれ、一瞬、空が黒と金の光に覆われる。

 その光がやんだ後、ボールは二つのオーラを纏いながら、3匹の金色に輝く神のようなペンギンたちと、3匹の黒色に染まる悪魔のようなペンギンたちと共にゴールへと突き進んでいく。

 

「時空の壁!」

 

 そのシュートは時空の壁を前にしても勢いは衰えることがない。神と悪魔、6匹のペンギンたちがその壁をその嘴で打ち破っていく。

 

「うわぁっ!」

 

 そして、時空の壁は敗れ去り、ボールはゴールへと突き刺さった。




習得技紹介。

アイギスペンギン
ブロック技
6体のペンギンを呼び出し障壁を貼る技。シュートブロック可能。
(手で支えていたけど、バーバリアンの盾という技がハンドじゃなければこれもハンドじゃないでしょ)
花蕾様より案をいただきました。ありがとうございます。

ペンギン・ザ・ゴッド&デビル
シュート技
パートナー アフロディ
オリオンで出て来たペンギン技。灰崎の代わりに十六夜、ヒロトの代わりにアフロディが放つ。
威力は高い(元々がアジアのキーパーに通用していたことと二人のレベル的に)

世界編について

  • 原作ルート
  • 変更ルート
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。