「ごめん!」
シュートを決めたオレは雷門のメンバーに頭を下げて謝っていた。
「独りよがりなプレーをして、勝手に絶望して、勝手に諦めていた……本当に悪かった!」
「十六夜……」
「だが、お前らのお陰で目が醒めた。もう、大丈夫だ」
「ようやく、いつものお前が戻ってきたか」
「それでこそ、十六夜だ」
「十六夜……ああ!一緒にこの試合、勝とうぜ!」
「おうっ、キャプテン!」
そうだ、オレにはこいつらがいるんだ。1人で戦っているわけじゃない……こんな簡単なことを忘れていたなんて、どうかしていたな。
ジェネシスのキックオフで試合再開。スコアは3ー3の同点。
パスを回しつつ、こっちのフォワード、ミットフィルダー陣を突破してくる。ボールを持っているのはウルビダだった。
「十六夜……!」
「眼中になかったんじゃないのか?」
ウルビダがフェイントを入れてくるが、それについていき抜かせない。
「くっ……!」
アイツにオレの癖が分かるのなら、オレだってアイツの癖が分かる。だから、徹底的に抜かせないようにブロックする。
少しでも足止めをすれば、他のメンバーがパスコースを防いだり、フォローの動きがしやすくなる。たとえ、ボールが取れなかったとしても、喰らいつくことに意味はある。一人で勝つ必要はない。
「だったら……!」
抜けないと判断したウルビダ。ボールを強引に真上に蹴り上げる。空には紅い月が浮かんでいた。
「させねぇ!」
ウルビダの呼び出した赤色のペンギンが、ボールに食らいつき回転を始める。
シュートを打たせることを阻止すべく、オレも跳び上がる。背後には満月があらわれ、そこからやってきた金色のペンギンがボールの回転を止めようと食らいつく。
「ブラッド──」
「ムーン──」
「──ムーン!」「──フォース!」
空中での衝突。
ボールは金と赤が混ざった色になり、お互いの衝突で生まれたパワーがボールへと貯められていく。
「はぁぁあああああああああっ!」
「負けるかぁあああああああっ!」
互いの蹴る力が大きくなる。お互いの力が拮抗し、双方引かない。
数秒に渡るぶつかり合い。その拮抗は唐突に終わりを迎えた。互いの力が加わり、強大なパワーがボールに蓄積されていった。その蓄積された力は許容量を超えたのか、一気に爆発する。
爆発によって起こった衝撃で吹き飛ばされるオレとウルビダ。
「ペラー!」
『任せて!』
空中で反転していたウルビダが地面に叩きつけられそうになる。それを防ぐため、ペラー以下ペンギンたちが彼女のクッションになる。
一方のオレは空中で体制を立て直して、地面に着地。もう一度跳躍し、落ちてきたボールをパスすることで繋げた。
「……何故、助けた」
「お前が怪我してないならいい」
「答えになってない」
「オレは正面からお前らに勝ちたいんだ。怪我させて勝つのは違うと思っただけだ」
「その甘さ……後悔することになるぞ」
パスしたボールは鬼道、アフロディ、円堂、吹雪、豪炎寺と渡って行き……
「爆熱ストーム!」
豪炎寺のシュートがゴールに向かって飛んでいく。
「時空の壁!」
しかし、ネロの必殺技、時空の壁の前にボールは止まってしまい、弾かれる。
弾かれたボールはそのまま、タッチラインを割った。
『グラン。リミッター解除です』
すると、吉良星二郎の映像がグラウンドに映し出される。
……ちょっと待て。リミッター解除だと?
「父さん!リミッター解除って、そんなことをすれば皆が!」
『怖じ気付いたのですか?』
グランの必死の訴え。しかし、あの男の目にはグランに対する失意が見て取れる。
『ウルビダ。グランに代わりあなたが指揮を執りなさい』
「はい。お父様」
「父さん!」
「やめろ!ウルビダ!そんなことをしたらお前ら……!」
しかし、制止の声は届かない。ウルビダは静かに手を上げて、
「リミッター……解除」
そのまま胸元にあるスイッチを押し、リミッターを解除した。
ウルビダが押したのを見てか、他のジェネシスのメンバーも全員リミッターを解除する。
「……くっ!」
オレは吉良星二郎本人の方を睨みつける。このままでは、アイツらが壊れてしまう。それでもいいのか、と。だが、当然、反応はない。
「十六夜君。リミッター解除って一体……」
「……そのまんまだが……気をつけろ。ここから先は、さっきまでと次元が違う」
他の雷門のメンバーも今のリミッター解除には疑問や違和感を抱きながら、試合を再開する。スローインから、ボールは円堂に渡った。
そのまま円堂は、ウルビダの隣をドリブルで突破する。そんな円堂を見ても、彼女は腕を組んだまま棒立ち。一切ブロックに行かなかったが、次の瞬間、
「なっ……!」
走り出したウルビダが一瞬にして円堂からボールを奪い去った。
「動きが……見えない」
そのままドリブルで駆け上がるウルビダ。咄嗟のことと今まで以上のスピード。雷門のメンバーは誰も反応出来なかった。
ボールを持つウルビダ。そして、左右にはグランとウィーズが。
「リミッター解除……!人間の能力を超えている!」
「十六夜!リミッター解除とはなんだ!」
「人間が本来、無意識に抑えている力を引き出すもの!人間の能力を全開に引き出す!」
「パワーアップってことか!?」
「ああ!代わりに身体への負担がバカデカい!このままだとアイツらの身体がぶっ壊れる!」
「「「……!」」」
抜かれたメンバーがボールを取り返そうと全力で走る。だが、そのスピードにオレたちは追いつくどころか引き離されてしまう。
「父さん!今すぐやめさせて!」
「そうさせたのはお前だ。瞳子」
「やめろ!ウルビダ!」
「お父様の望みは私たちの望みだ!」
クソ!声が届いていない!
「これがジェネシス最強の必殺技だ!」
そして、ウルビダたちがシュート体勢に入る。
まず、左右にいたグランとウィーズが跳びあがる。一方のウルビダは、中心で力を溜め、その間に宇宙服を着た5匹のペンギンが地面から顔を出す。そして、ボールとペンギンが空高く舞い上がり、グランとウィーズの下へ。そのまま二人はツインシュートをする。
『スペースペンギン!』
ボールはペンギンと共にゴールへと向かう。
「ムゲン・ザ・ハンドG2!」
6本の手がボールを止めようとする。だが、ボールは止まらない。
「うぉぉおおおおっ!」
更に2本の手が出て来てボールを押さえようとする。
「これはムゲン・ザ・ハンドG3!これなら……!」
土壇場で進化したムゲン・ザ・ハンド。しかし、その8本になった手は、ペンギンたちによって砕かれ、ボールはゴールへと入ってしまう。
『あぁーっと!進化したムゲン・ザ・ハンド!しかし、恐るべきシュートの前に敗れ去ってしまう!これで3ー4!ジェネシスにまたも勝ち越しを許してしまった!』
すると、急にウルビダ、グラン、ウィーズの三人が身体を押さえ、苦しみ始める。
「もうやめろ!身体が悲鳴を上げている!これ以上は……」
「これぐらい……お父様のためなら!」
「……っ!」
目と目が合う。しかし、その目には、絶対に倒す、絶対に勝つと言っているようで……
「そう。父さんのため……」
そのままポジションへと戻っていく三人。
「何だよ……ヒロトですら……ジェネシスですら道具なのかよ!」
雷門の全員が吉良星二郎の方を向く。
改めて怒りを感じる。だが、リミッター解除したところで、オレたちは負けるつもりはない。
雷門のキックオフで試合再開。ボールはオレが持ち、あがっていく。
「遅い!」
ブロックに来たウルビダ。横からボールを奪おうと足を出す。
「何ぃ!?」
それを跳ぶことで回避。空中にいる状態でパスを出し、ボールを円堂に渡す。
円堂の前にはグランが立ちはだかる。しかし、隣を走っていた鬼道とのワンツーでグランを突破した。
「リミッターを解除した私たちを躱すだと?何が起きている?」
「まさか……これも!」
「……仲間を想う力。人の心が生み出す力よ」
ジェネシスのメンバーが驚く中、
「豪炎寺!」
円堂は豪炎寺へとパスを出す。しかし、豪炎寺に渡らせまいと、ゾーハンがスライディングをする。ボールは弾かれ、そのままタッチラインを割ろうとしていた。
「このボールは、絶対に繋ぐ!」
そこを吹雪が滑り込み、体勢を崩しながらも豪炎寺へとパスを出す。
「爆熱ストーム!」
先ほどのシュートよりも炎が猛々しく燃えさかる。さっきよりも力強いシュートがゴールへと向かう。
「時空の壁!」
しかし、時空の壁に阻まれてボールはネロの手中に収まりかける。
「何っ!?パワーアップしているだと!?」
だが、収まる直前で、ボールは勢いを取り戻しネロを弾く。ネロを弾いたためかコースが逸れてゴールバーに直撃。ボールは空高く舞い上がっていった。
「まだだ!」
ボールに対して跳び上がるオレ。遅れてウルビダが跳び上がってくる。オレよりも遅く跳び上がった彼女だが、オレを抜かし、ボールへと近づいていく。
「円堂!」
「ああ!」
丁度オレたちの足下の方に居た円堂。察してくれたのか、彼の頭には大きな拳が現れた。
「メガトンヘッド!」
少し落下して、その拳の上に着地する。
「いっけぇ!」
そして、円堂は勢いよくオレを上へと吹き飛ばす。ウルビダを追い越し、ボールの下へたどり着くことに成功する。
『これはシュートか!?』
「豪炎寺!吹雪!受け取れっ!」
空中で反転し、オーバーヘッドキックでボールを蹴リ出す。ボールはシュート並みの威力で、走っている豪炎寺と吹雪の中間地点に向かう。
「豪炎寺君!行くよ!」
「おう!」
橙色のオーラを纏い走る豪炎寺と、水色のオーラを纏い走る吹雪。二人が丁度ボールの到達地点で交わり反転。二人同時にボールを蹴る。
二人が蹴ったと同時に背後には地球が。そして、ボールは橙色の炎と水色の炎を3本ずつ吹き出しながら、勢いよくゴールへと刺さった。
『ゴール!豪炎寺と吹雪の連携技炸裂!4ー4!追いついた!』
「名付けてクロスファイア!」
クロスファイアと名付けられたシュートによって再び同点に追いつく雷門。
後半残り僅か。試合は最終局面を迎えようとしていた。
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