超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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雷門VSザ・ジェネシス ~別れの時~

 朧気な意識の中、オレはあることを思い出していた。

 それはムーンとして潜入していた時のこと。

 まだまだ情報不足が否めない最初の頃。信用をしてもらうのと、情報を集めるためにエイリア学園にいた色んな奴らと話していた。

 ジェミニストーム、イプシロン、ダイヤモンドダスト、プロミネンス、ガイア。ほぼ全員と程度の差はあれ話をした。

 

「ここの生活には慣れましたか?」

「あ、おっちゃん。どうも」

 

 そんなある時。おっちゃん……吉良星二郎から声がかけられたので簡単に答える。

 

「えぇ、おかげさまで慣れましたよ」

「ここにはね。君と似た境遇の子どもたちが多い。ある子どもは親に捨てられ、ある子どもは親を失っている。そういう子どもがね」

「なるほど……ねぇ。なぁ、おっちゃん。あなたはアイツらのことどう思っているんですか?」

 

 ただの計画の駒かそれとも……

 

「どう思っているか?そうですね……幸せになるべき子どもたち、でしょうか」

「……どういうことですか?」

「親という存在はね。子どもにとっては最も身近で、最も大切な存在なんだよ。でも、そんな大切な存在から捨てられたショック、突然失ったショックというのはね。他の人たちが思っているよりもずっと大きく深い傷になる。だから……そんな傷を負ったあの子たちは幸せになるべき存在ですよ」

 

 その眼は、とても嘘を言っているとは思えなくて、その言葉は心の底からの言葉な気がして。

 

「……その言葉、信じますよ」

 

 今のはオレを騙す建前じゃない。きっと、この人の心にあった言葉なんだろう。

 だからこそ、何でそんな大切な子どもたちを使うようなマネをしているんだと言いたくなる。何で、そんな優しい心を持ちながら、こんなことをしてしまっているんだと言いたくなる。

 

「じゃあ、失礼します」

「えぇ。ムーン、あなたも頑張りなさい」

「……はい」

 

 そんな衝動を抑え、俺は去って行く。

 アイツらの誰に聞いても、この人の悪口は出てこない。

 この人はアイツらを我が子のように愛している。アイツらもこの人を実の親のように愛している。何で、お互いがお互いを想っているのに……

 

「……こんなことを起こしてんだよ」

 

 ……だから、オレは知りたい。何故こんなことが起きてしまったのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カハッ……!」

 

 咳込むのと同時に覚醒する。

 今のは走馬灯……?いや、それにしては短いような……というか、クソいてぇ。今までのどんなシュートよりも痛かった。

 

「何故だムーン!何故止めたんだ!」

「……止めるさ」

 

 ボールが当たった部分を押さえながら、何とか立ち上がる。だが、今にも倒れ込んでしまいそうだ。

 

「……ここでこの人を傷つけたら……お前が絶対に後悔するから……!」

「お前は知っているだろ!私が……私たちが!全てを捧げていたことに!そいつが正しいと信じて!この計画が正しいと信じて!でも、そいつは私たちの存在を否定したんだ!そいつを信じてずっと戦ってきた、私たちの存在を!」

「……知ってるさ……!お前が……お前らが!この男のために全てを捧げていたことぐらい!」

「そうだろ!私たちは全てをかけて戦ってきた!全てをかけてお前らと戦った!ただ……強くなるために……!それを今更、間違っていただと!?そんなことが許されるのか!」

「許されるとは思ってねぇよ……!」

「なら!」

「だけど!……だけど、そうだとしても、お前はこの人を傷つけたら後悔する!」

「何故そう言い切れる!」

「この人はお前らの父さんだろ!お前が……お前らが慕っている、大切な父さんだろうが!」

「…………っ!」

「アンタもアンタだ!アンタは両親が居ないオレのことも受け入れようとした!アンタのことだ、オレのことを怪しんでいた気持ちはあっただろ!駒と見ていた気持ちもあっただろ!それでも……それでも。そんな気持ちの中にも、アンタはオレにもこいつらと同じように受け入れる優しさを見せてくれた」

「……っ!」

「ならさ……何で、こいつらのことを大事に考えられなかったんだよ……何で、こいつらがいたのに呑まれてしまったんだよ……!こいつらのことをすげぇ大切に思っていたのに、本当の家族のように持っていたはずなのに……何で駒としか見れなくなっちまったんだよ……くっ」

 

 倒れ込もうとするオレをグランが支える。そして、

 

「……ウルビダ。お前の気持ちもわかる……でも……それでも、ムーンの言うとおりさ。この人は……」

 

 グランがオレより前に出て、その一言を告げた。

 

「俺の大事な、父さんなんだ!」

「……!」

「……もちろん、本当の父さんじゃないことはわかってる。ヒロトって名前が、ずっと前に死んだ、父さんの本当の息子だってことも」

「……本当の、息子……?」

 

 吉良ヒロト。本当の吉良星二郎の子孫。命を落としてしまった、この人の息子。

 

「それでも、構わなかった……!父さんが、俺に本当の『ヒロト』の姿を重ね合わせるだけでも……!」

 

 エイリア学園のメンバーの共通点は、全員が各々の事情により、実の親と居られなくなり、お日様園という施設で育てられたと言うこと。その施設でのことを楽しそうに話してくれた奴らもいた。

 

「たとえ、存在を否定されたとしても、もう必要とされなくなったとしても……父さんは……たった一人の父さんなんだ」

「ヒロト……お前はそこまで……」

 

 すると、吉良星二郎の目つきが変わった。何処か真剣な表情で、覚悟を決めたように見えた。

 

「私は間違っていた。私にはお前たちに父さんと呼んでもらう資格はない」

 

 近くに落ちていたボールを拾い上げ、ウルビダの方へと放つ。

 

「さぁ打て!私に向かって打てウルビダ!」

 

 そして、オレや円堂、グランを庇うように、前に立つ。

 

「父さん!」

「こんなことで許してもらおうだなんて思っていない。だが、少しでもお前の気が収まるのなら……さぁ!打て!」

「うぅぅあああぁぁっ!」

 

 咆哮と共に足を振り上げるウルビダ。

 

「八神!」

 

 咄嗟に彼女の名前を叫ぶ。彼女の目は吉良星二郎を睨みつけており……だが、段々とその覇気はなくなっていった。そして、

 

「打てない……」

 

 膝を突き、地面に座り込むウルビダ。

 

「打てるわけない……だってあなたは!私にとっても……大切な父さんなんだ!」

 

 涙を流しながら答えるウルビダ。見ると、他のジェネシスのメンバーも涙を流していた。

 

「私は人として恥ずかしい……こんなに想ってくれている子どもたちを復讐の道具に……」

 

 その様子に吉良星二郎も膝を突く。

 

「あなたの口から教えてもらえませんか?何故、こんな計画を建てたのか」

 

 そこに鬼瓦刑事がやってくる。あくまでこの計画が出来た表面的な理由は知っている。だが、そこにある思いまではまだ分からない。

 

「どこで道を誤ったのか。巻き込んでしまった子どもたちの為にも」

 

 そして吉良星二郎からこの計画について語られた。

 吉良ヒロト。彼の息子でとてもサッカーが上手かったそうだ。将来も期待されていた彼は、サッカー留学したその地で謎の死を遂げる。そのことに政府の人の子どもが関わっていたらしく、事故死として処理された。失意に暮れ、生きる気力すらなくしていた吉良星二郎に瞳子監督がお日様園を提案する。お日様園に居る子どもたちのおかげで、生きる気を取り戻す。そして彼らが生きがいとなっていったそうだ。

 時は進み5年前。ある隕石……エイリア石がここに落下してきた。エイリア石の解析をしていく中でその強大な力にとりつかれてしまう。その力により、抑えこまれていた復讐心がこみ上げてきたそうだ。

 

「すまない……本当にすまない。私は愚かだった」

「父さん……」

 

 強すぎる力にとりつかれてしまった……ただ、この人は根っからの悪ではない。すべてが重なって生まれた、この人も被害者かもしれない。

 

ドオオォォンッ!

 

 何かが爆発するような音と共に、グラウンドが激しく揺れる。

 

「なんだ!?」

「地震!?」

「いかん!崩れるぞ!」

 

 スタジアムが崩壊を始めている。

 

「出口……!?」

 

 出口の方を見ると瓦礫で埋まっていた。……おいおい、生き埋めにする気かよ。

 

「でも、誰が……?」

 

 この人がオレたちと共に心中する?いや、そんな素振りなかったし、それならもっと早いタイミングで崩壊させているはず。じゃあ、何者かがオレたちを消すために?

 と、短く思考もまとまっていない中、イナズマキャラバンがまだ塞がれていない出口からやって来る。

 

「皆!早く乗るんだ!」

 

 徐々に崩壊のスピードが速くなっていく。ここがいつまで持つかは分からない。

 ジェネシス、雷門のメンバー全員がイナズマキャラバンに向かって走る。

 

「立てるか?」

「ああ……」

 

 ウルビダに手を貸して立ち上がってもらう。だいぶ痛みも慣れてきたし、今なら動ける。

 ただ、イナズマキャラバン。入り口は一つで約30人が乗り込む。どうしても時間稼ぎが必要か。

 

「ペラー。ぶっ壊すぞ」

『了解』

 

 ペラーを呼ぶと、ペラーが数十匹のペンギンを呼び出す。そして、

 

「『ミサイルペンギン!』」

 

 数十匹のペンギンが空高く飛んでいく。ペンギン一匹一匹を操ろうと思うとオレ一人では無理だが、ペラーのお陰で確実にデカいのとキャラバンの上に降ってきているのだけは粉々に出来ている。

 

「父さん!」

「ヒロト!」

 

 ほぼ全員がイナズマキャラバンに乗り込むことが出来た。しかし、吉良星二郎は元の位置から動こうとしていなかった。

 

「クソ……!早く連れ戻せよ……!」

 

 グランと円堂が彼の下へ向かう。瞳子監督も心配そうに見つめてるが、あの表情。ここを死に場所にするつもりか……!

 

「大丈夫か?十六夜」

「ああ……!と言っても長くは持たない……!」

 

 上の方で起こっている小さな爆発。それとともに降ってくる施設の破片。

 今、キャラバンの上、出口までの道、アイツらの上などある程度絞ってはいるがそれでも、中々厳しいものがある。それに、この施設そのものがいつまで持つか分からない。

 

「何バカなことを言ってんだ!こんなとこで死んでどうするんだよ!そんなことをしてヒロトたちが喜ぶと思ってるのか!」

「円堂……!」

「まだ分からないのか!皆にはアンタが必要なんだ!」

「そうだぞおっちゃん!アンタが死ぬことが罪滅ぼしになるわけじゃねぇ!生きてくれよ!こいつらの為に!」

「……行こう。父さん」

 

 グランと円堂がおっちゃんを連れて、イナズマキャラバンへと戻ってくる。

 

「古株さん!走れる!?」

「ああ!行くぞお前たち!何かに捕まっていろ!」

 

 キャラバンが急発進する。あまりの衝撃で後ろに倒れ込みそうになるが……

 

「八神……!」

「まだ脱出できていない。気を抜くな」

「ああ……!悪い」

 

 彼女の支えで何とか倒れずに済む。

 後ろから迫る爆発。キャラバンが出るのが早いか、あの爆発に巻き込まれるが早いか。

 

「出口よ!」

 

 キャラバンの先に光が見える。だが、すぐ後ろには爆発が。

 どちらが早いか。ギリギリの状況。結果としては、キャラバンの方が僅かに速かった。

 しかし、キャラバンが出口から飛び出した直後。出口が爆発し、爆風がキャラバンを襲う。

 

「ダメだ!崖から落ちる!」

「曲がりきれない!」

「いいや!なんとかする!ペラー!」

『任せて!』

 

 ペラーがまずキャラバンの外に何十匹かのペンギンを呼び出してペンギンの壁を作る。次に何匹かのペンギンを体当たりさせることで無理矢理コースを曲げる。更に見えてはいないが減速させようと、数匹のペンギンを正面からぶつけている。

 

「これなら行けるぞ!皆!もう一踏ん張りじゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、古株さんのドライビングテクニックにより何とか危機を脱したオレたち。そこそこ広めの場所で停車して、全員降りる。

 振り返ると、さっきまで居た基地は黒煙を上げていて……

 

「終わったんだな」

 

 エイリア学園の基地。その最後をオレたちは見届けていた。

 そこからしばらくして警察車両が到着する。

 

「瞳子。お前のおかげで目が醒めたよ……ありがとう」

「お父さん……」

 

 警官に挟まれながら連れて行かれる吉良星二郎。

 

「父さん!」

 

 彼がパトカーに乗せられる前にグランが声をかける。

 

「オレ、待ってるから!父さんが帰ってくるまでずっと待ってるから!」

 

 そのままパトカーに乗せられ、パトカーは走り去っていく。

 

「さぁ、君たちも行こう」

 

 ジェネシスのメンバーも警察車両へと歩いて行く。

 

「響木監督。円堂くんたちのこと、お願いしてもよろしいですか?ヒロトたちの傍にいたいんです」

「ああ」

 

 そういうと瞳子監督はオレたちの下にやって来る。

 

「ありがとう。皆、ここまでやってこれたのも皆のおかげよ。本当に感謝しているわ」

 

 そして、オレたちに頭を下げる瞳子監督。

 

「監督……!」

 

 頭を上げる監督。少しだけ笑顔を向けると、振り返って彼らの下へと歩いて行く。

 

「十六夜!」

「……八神」

「……さようなら」

「…………っ!」

 

 彼女が静かに手を振る。そして、振り返ってまっすぐと歩いて行く。

 

「さようなら……」

 

 オレの声は届いたかは分からない。でも、きっとこれで別れなんだと思うと……

 

「……また、きっと会えるさ。サッカーを続けていれば」

「ああ……そうだな……」

 

 色々と言いたいことはある。でも、今、言うことはできない。

 

「…………次は、何のしがらみもなく会いたいな」

 

 敵としてでも、味方としてでもない。純粋な友として……

 

 そんな再会が出来る未来……ただそれを願うばかりだ。

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