今回は……タイトルから察してください。
イタリアでの修行も一ヶ月が経とうとしていた今日この頃。皆様、いかがお過ごしでしょうか。
こちらに来てからは、フィディオをはじめとし、今まで日本では出会ったことのないレベルの選手と何人か出会いました。彼らとは、最初こそレベルの差に驚いたものの、練習することで少しずつ何が足りないかなどが見えてきた気がします。……まぁ、よくよく話を聞いてみると、彼らはイタリア代表?代表候補?そんな感じの選手らしいけど。……いやー……そりゃあ、強いわけだなぁ。
これはそんなとある日の出来事でした。
「ふぅー……」
ランニングコースを3周ほど走り終えて息を整える。今日は、練習に付き合ってくれている彼らが、各々の用事で忙しいため、一人で自主練をすることにした。
ピー
『はーい』
「よし、今日も練習するか」
『んーでも、今日ってフィディオたちが用事あるって言ってたでしょ?』
「だから、お前と二人……いや、一人と一ペンギンで特訓だな」
『そうだね~あ、綾人綾人』
「どうした?」
『試練を受けてみる気ある?』
「試練?いや別に……」
『まぁ、渋るよね~いきなり聞かれても。うんうん、分かるよその気持ち』
「そりゃそうだろ。何があるかぐらい教えてもらわないと、はいともいいえとも答えられないっての」
『でも、ゴメンね』
「は?何を謝って……」
『綾人が暇だと思ってもう頼んじゃった』
「……はい?」
ピー……
どこからか聞こえてくる笛の音。
そして次の瞬間。俺の目の前の景色は一変した。
さっきまでは言うなれば街。建物がいくつか並んでいて、道路の脇には街路樹があるような感じの街だった。しかし、今目の前に広がっているのは一面の銀世界……は?
『おぉーうまく行ったね~ようこそオレたちの世界へ』
「いやオレたちの世界ってどういうこと!?」
『ん?だから、綾人が呼び出すペンギンたちがいるでしょ?そのペンギンたちが住んでいる世界』
「いやいやいや!?異世界転生!?ちょい待て整理させろ!?」
『うーん、分かりやすく言うと普段と逆のことをしたんだよ』
「逆……?」
『いつもは綾人がオレたちを指笛を使って呼び出すでしょ?でも、呼び出すペンギンたちって、綾人が土とか無から生成している訳じゃないんだよ』
「まぁ、どこから来るかは疑問に思っていたが……」
まさか、こんな世界があるとは誰が想像できようか。
『それで、今回は逆。オレたちが綾人を呼び出すために指笛を使ったの』
「はぁ……」
『ちなみに、人間をこの世界に呼び出すなんて初の試みだから、成功してよかったよ!』
「おい待て。失敗していたらどうなっていた?」
『んーまぁ、何も変化ないか、綾人が氷から上半身だけ出てきたか……最悪、氷の中で生き埋め?』
「さらっと恐ろしいことを言うんじゃねぇ!」
どうしようか。さっきから夢とか疑っているが、妙に寒いし感覚もあるしで……ヤバい現実だこれ。
『さぁ、ボスに挨拶に行くよ』
「は?ボス?」
『今回の試練を与えようと進言したペンギン。ちなみに結構偉いよ』
と、ペラーが歩き出したので、オレも続いて歩き出す。
「いや、ちょっ、試練って何も聞いていないんだけど?」
『安心してよ綾人。オレも何も聞いていない』
「おい」
『だってさぁ。ペンギンがこうして人間を呼び出した、なんて話聞いたことないもん。一体どんな試練なんだろうね?』
「呼び出すならそこをはっきりさせておいてくれよ……試練をやる目的すら分かってないじゃねぇか」
ペラーがとことこと歩くがペースが遅すぎたので、ペラーを頭の上に乗せて歩く。
さっきから何匹かペンギンとすれ違うが……
「どうしよう。会話が聞こえてくるんだけど」
『やっぱり綾人は特殊だね~』
「それは前々から言われているけどさ……」
『オレはこの世界では結構頭がいい方なんだ。だから、ある程度のコミュニケーションを取れるけど……ほら姉御とだって、ホワイトボードを通してだったじゃん?でも綾人とは会話が出来る。それは、綾人がこの世界のペンギンの声を聞こえるからなんだ』
「……お前だけじゃないのかよ……!」
『うーん、ここに来て確信かな?他のペンギンとは必殺技を発動したときしか会わないじゃん?会話なんてしないからね』
マジか……異世界転生したらペンギンと会話できました。って今更思うと弱くないかその能力。
『さてさて、そろそろ見えてくるかな?』
「いや、目の前海ですけど?」
『あーうん。じゃ、いつも通り乗ってよ』
そう言うとペラーは飛び降りる。まぁ、いいけどさぁ……
「乗ったぞ」
『じゃ、バランス保ってよ?ここ、人間基準だと寒いから』
「十分寒いけど?振り落としたら許さねぇよ?」
『任せてよ~』
そう言いながらゆっくりと進んでいく。気分はそうだなぁ……セグウェイとかそんな感じ?まぁ、落ちたら地面じゃなくて冷たい水の中だけど。
そして数分後、氷でできた城が見えてきた。
「あれは?」
『あそこがボスの住んでいる城だよ』
「いや、どう考えてもボスって王様のことじゃねぇか」
『違う違う。ボスは正確には王子だよ。王様は別にいるよ』
「あっ……そう」
段々と城に近づいていく……が、想像の数倍でかかった。おかしい。ペンギンサイズだと思って、オレが入れるか心配していたんだけど……
「なぁ、あの入り口バカみたいにデカくねぇか?遠目でも分かるんだけど」
『ん?あーボスってね。身長3m超えているよ』
「…………え"?」
『あ、安心して。ボスに踏み潰されることはないと思うから』
「いや待て。どうしたらそんなデカくなるんだよ?お前らペンギンだろ?」
『ダメだよ~綾人の世界で考えたら。あ、もうすぐ着くよ』
そう言って城の前に到着。間近で見るがでけぇ。何だよこの城……マジかよおい。
『さてこのまま行くよ』
「え?お前から降りなくていいのか?」
『別にいいよ?だってこの城、氷で出来ているし。後、多少の雪』
「え?大丈夫か?溶けない?」
『心配ないよ~多少溶けてもすぐに凍らせているから』
「…………」
何だろう。これ以上はツッコミたくない。
『あ、綾人~そこの3階のボタンを押して』
「え?エレベーター?城にエレベーター?」
『だって、階段登るのに一苦労だよ?』
あ、そっか。階段のサイズを考えたら、確かに登るのはきついな。
「いや、お前飛べるじゃん」
『飛べるけど疲れたくない』
「そうなのか?」
『そうそう』
そう言いながらもエレベーターは上に進んでいく。
「ここに電気でも通っているのか?」
『電気?水力を使えば解決だよ』
「水力……そっか。ここ、水が大量にあるし……なるほど。考えられているな」
『でしょー?』
三階にしては着くのに時間がかかる……と思ったけどよく考えたら、一フロアの高さが、全然違ったわ。そりゃ、時間がかかるわ。
驚きを通り越して、興味深くなっているとエレベーターが目的のフロアに着く。
そして、少し進むと巨大な扉が……
『ここがボスの部屋だよ』
「そうか……」
『ボスー入るよー』
「いや軽っ!?ノリが軽くないか!?」
いや、この世界の王子だろ!?ノリが軽くないか!?
『おぉー連れて来たか兄弟』
そう思って入ると……うんまぁ。人生で初めてだ。初めてペンギンを見上げているんだけど。
『ボスーこの人が十六夜綾人。オレと契約している、ご主人様で友達だよー』
『なるほど……この人間が。いやぁ、弟が世話になっているな!』
「いえ、こちらこそ……ちょい待て?弟?舎弟ってこと?」
『おっ、本当に話が通じているな。ちなみに実の弟だ』
「ちょっと待て。王子の弟って……お前も王子なのか!?」
『あれ?言ってなかったっけ?』
「言ってねぇ」
『オレは第三王子だよ。兄が二人と姉が二人の末っ子なんだ』
「五人兄弟……!」
初めて聞いたよ。なんだかんだで長い付き合いになってくるのに初めて聞いたよ。
『説明していなかったのか?普通のペンギンが他のペンギンを呼び出せるわけないのに』
『あれ?知らなかったの?オレは、この世界では偉いからほら貝で呼び出せたんだよ?』
「知らねぇよ!?てっきり、オレが呼び出せなかったからお前が呼び出していると思っていたけど!?」
『普通のペンギンには無理だよ~』
「お前って……凄いんだな」
『知らなかったのか?それにペンギンの中で一番賢い……智将とも呼ばれているぞ?』
『いや~褒めないでよボス~』
「知らねぇ……!」
もう何なの?意味分からねぇよ。
『で?ボス、綾人を連れてこいって言ってたけど。試練ってなに?』
『ああ、試練は嘘だ』
いや、試練が嘘ってどういうこと?
「じゃあ、何のために呼ばれたんだよ……」
『その前に拳を出してくれないか』
「はぁ……?」
そう言いながら右手をグーにして突き出す。すると、そこに羽をちょこんと乗せた。
『……やはりな』
「何が?」
『弟を呼び出せたからもしやと思ったが……これは凄い「器」の大きさだ』
「器……?あー前に聞いたな」
『凄いでしょ?歴代のペンギン使いの中で断トツでしょ?』
『あぁ。お前なら行けるかもしれないな……』
「え?何が?」
『十六夜綾人。我と契約しろ』
「……はい?」
『お前の器の大きさなら我をあの世界に呼び出せる。しかも、適性もかなり高いと見た』
「……えっと、どういうこと?」
『前に器の話はしたでしょ?姉御と一緒に』
「いや、それは覚えているけど……」
確か、呼び出す個体によって使う容量の大きさや、負担が変わるって話だろ?で、容量が大きいほど強いんだっけ?
『ボス……というか、うちの家系はその使う容量が結構大きいんだ。例えであらわすと普通のペンギンは1MBに対し、うちの家系のペンギンは1GBぐらい?』
「それ……1024倍違うんだけど……」
『だけど、普通の人間は精々100MBとか多くても500MBしか器がないんだ』
「あーね。そりゃ、どんなに頑張っても入らないな」
『うん。で、綾人は1.5GBとかかな?もっとあるかもだけど、そんな感じなんだ』
「へぇー……え?そんなにあるの?」
『これでもまだまだ発展途中だと思うよ?』
「マジで?」
『……歴代のペンギン使いでは我を呼び出すことは不可能だった。だが、お前なら可能だろう。……だから契約を結ぼうじゃないか』
「契約って……」
何か契約って聞くと、嫌な響きにしか聞こえないけど……
『たいしたことはやらんよ。手を開いて突き出してくれ』
「こうか?」
『そうだ。そして……』
そう言うと羽を手のひらに合わせるように差し出してくる。
『契約完了だな』
「……え?これで?なんかもっと……こう……え?ないの?契約書とか……巻物とか……血判とか」
『ないな』
『ちなみにオレは契約済みだよー』
「いつの間に」
『綾人が寝ている間に』
「おい」
『でも、ボスが契約かぁ……なんかあったの?』
『話を聞いていると興味が湧いてな。この男に力を貸すのも悪くないと思ったわけだ』
『そう?』
『ああ、十六夜綾人。この弟と違って、我は自由に行き来するつもりはないから心配しなくてもいい』
「そこは心配していないけど……」
『そもそも、自由に行き来できる時点で特殊だが』
「おい」
確かに鬼道とかに聞いても疑問符浮かべられたもん。やっぱり、特殊だったのかお前。
『それでどうするの?この後は……』
『ああっ、せっかく呼べたんだし、宴でもしようかと』
『綾人は魚平気だよ。だけど、生でそのまま食べさせるのは可哀想だよ?』
『じゃあ、刺身にするか……』
こうして食事をいただくことになったが……うん。宴で刺身オンリーってマジで?
『綾人ー鰯のジュースかアジのスムージーどっちがいい?』
「おい。カオスな二択を進めるんじゃない」
『オッケー。ミックスジュースね』
「やめろ!?さっきの選択肢から何のミックスが出てくるか想像できないんだけど!?」
『ちなみに容器は海水を凍らせたモノだからちょっとしょっぱいかも』
「なんだかすげぇ不安になってきたんだけど!?」
ちなみにこの後、宴を乗り越え、無事に現実世界に帰還出来ました。
世界編の閑話に何しようか考えた結果、ふと浮かんだ話。実際、ペンギンたちってどこから来ているんでしょうね?