ペンギンの世界に行ってから更に一ヶ月程が経過しました。留学(?)の期間も残り一ヶ月程になった今日この頃。
「休憩にしようか、アヤト」
「そうだな。フィディオ」
ベンチに腰をかけ、水分を補給するオレたち。
「そういや、この前の試合見に行ったぞ」
「本当か!?どうだった?」
「ああ、すっげぇいい試合だった。相手のレベルも高かったけど、ブラージのナイスセーブから、アンジェロが繋いで、フィディオが持ち込んで決める。あそこまで鮮やかにカウンター攻撃を決めるとか凄いな。あの速い展開には相手も追いつけていなかったし」
「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいよ」
「あんなの見せられたら、オレも早く試合がしたいと思ったよ」
当然ながら、こっちに来てから試合をした記憶はない。フィディオのおかげでイタリア代表のメンバーとはそこそこ交流があり、彼らの自主練習に混ざることはあるものの、公式戦となれば別問題。試合形式の練習は参加したけど、試合は見ているだけの状況だ。
「でも、アヤトのレベルなら俺たちについて行けそうだけどな」
「ははっ、まだまだだよ」
まだまだフィディオたちとのレベルには差がある。二ヶ月前に比べれば、その差は縮まった方ではあるが、やはりそこに至るには足りてないことがいくつかある。
「でも、いつかお前たちに追い付く……いや、追い抜いてやるさ」
「こっちも負けてられないな。そう言えば、日本はFFIはどうするんだ?」
「あーフットボールフロンティアインターナショナルか。うーん、連絡を多少は取っているけどその話は持ち上がっていないな。もしかしたら、選手候補を選んでいる最中かも」
「他のチームや国の事情は分からないけど、そろそろ準備した方がいいと思うけどな。ほら、俺たちだって、ある程度の実力はあっても、何人かとは初対面で連携を取るのに時間がかかったし……」
「うーん……日本代表か……」
よく考えれば雷門って日本一になったし……かなり昔に感じるけど。そういう意味では、雷門から代表に選ばれる人が多いか?後はエイリア学園騒動で一緒に戦ったメンバーとか……
「まぁ、誰になるか分からないけど、円堂は入っているだろうな」
「エンドウ……あぁ、アヤトがよく話すマモルのことだね」
「そうそう。あのサッカーバカ」
「アヤトがそこまで褒めるんだったら、一度会ってみたいけどな」
「ああ。絶対に気に入るはずだ」
サッカーを本気で好きでやっている奴なら、海外の選手であっても気に入ると思う。それほど、アイツはサッカーにかける思いが人の何倍もある……少なくともオレはそう思っている。
「そういや、あの子のことはどうなった?」
「あの子……ルシェのことか?」
「そうだな」
「相変わらず……だね。ああでも、手術が出来そうなところは見つけたんだ」
「本当か!?なら、手術を受けてもらえば……」
「ああ。でも、その手術を受けるには莫大な手術費が必要……」
「…………」
ルシェ。フィディオが出会った盲目の少女で、オレも少し前にフィディオと話しているのを目撃し、少しだが交流を深めた。話してみると、どこにでもいそうな普通の少女。手術と言っているが、目を見えるようにするための手術であり、やはりというべきか、中学生がどうこう出来る額ではなさそうだ。
「それに、ルシェ自身も手術が怖いみたいなんだ」
「金銭面だけではなく、精神面もか……」
「ああ。だからルシェの説得は頑張ってやってみる。その上で俺がプロになって、手術費を稼いでみせる……!……途方もない額かもしれないけどね」
「オレも協力する。微力ながら力になる」
「アヤト……ありがとう。なんか、巻き込んだみたいでごめんな」
「気にすんな。巻き込むのも巻き込まれるのも慣れている」
どこに行っても何かに巻き込まれている感じがするしな……ほんと。オレってこんなに巻き込まれ体質だっけ?いや、トラブルメーカーと言うべきか?どちらにせよ、トラブルとは切っても切れない関係になりつつあるなぁ。
「おーい、フィディオ!」
「ん?アンジェロ?」
「なんだ、アヤトも一緒か」
「ブラージか。何か用?」
「僕たちも一緒に特訓しようと思って」
そう言うと、アンジェロやブラージを始めとした数人がこちらにやってくる。
「まぁ、1対1ばっかだったし、いいんじゃないか?」
「そうだね。よし、やろうか皆」
「アヤト!ウォーミングアップに付き合ってくれ!」
「へいへい。今日こそ、お前の必殺技を破ってやるからな」
「おう!今日も決めさせるつもりはないぞ!」
「盛り上がるのはいいが、こっちのバーバリアンの盾も破れてないんじゃなかったのか?」
「分かってるってベント。纏めてぶち破ってやるからよ」
「その前に、俺のシュートがお前のアイギスペンギンを破ってやるよ」
「いいや、ラファエレ。まだまだ破らせるわけにはいかないな」
この後はイタリア代表のメンバーの何人かと練習に励んだ。やっぱりというべきかチームとしてのレベルも高そうだし……ほんと、日本はどうするんだろうか?
その日の夜……。
「これで……!」
ボールが無人のゴールに刺さる。
「はぁはぁ……やっぱり、オレのムーンフォースじゃ、ブラ-ジのコロッセオガードを破るには威力が足りないか……!いや、それどころかベントのバーバリアンの盾もヒビを入れるのが限界だったし……!」
自分が点を取る側の人間ではない、と言ってしまえばそれで済む話だろう。オレはメインはディフェンダーで、守る側の人間だし。ただ、それでも……
「……負けたままでいられるか……!」
他の必殺技も効かなかったし……新必殺技が必要かもしれない。だが、重大な問題点としては……
「オレが今まで身に付けた技って……偶発的に生まれたか……八神のアイディアが基なんだよな……」
そう思うと一人で考えて、特訓して身に付けた技ってないんだよなぁ…………あれ?なんだろう。この思考に至った時点で、もう大分この世界に染まったな。いや、日本の危機をサッカーで救っていた時点で染まっているか。
『いいかい綾人。まずは分析が必要だよ』
と、ホワイトボード片手に現れたペラー……うん。もう、ペラーが呼ばなくても来るのは驚かないや。
『相手の必殺技を破るには、分析して、そこから必要なことを考えるんだよ』
「確かになぁ……ただ、コロッセオガードやバーバリアンの盾専用の技じゃ、あまりにも汎用性がなさすぎる。だから分析はほどほどに、必要なことを考えるか」
『そうだね……じゃ、まずシュートについて改めて考えてみようよ』
「シュートについて?」
『ほら、どうしたら相手のゴールを奪われるか。どうしたら、必殺技を破れるかだよ』
「うーん。まずは純粋なパワーか?圧倒的な力で突き破る」
そう言うと、パワーって書くペラー。
「後はスピードか?相手が必殺技のモーション中に決める」
そう言うと、今度はスピードって書いている。
『後はコースじゃない?』
「ん?ああ、確かに正面じゃなくて四隅とかな」
とりあえず、コースって書くペラー。
『それもあるけど、コースを読まれないようにするとか……』
「うーん、無回転ってことか?」
『それもいいけど、逆に回転をかけまくったら?』
「はぁ?普通のカーブシュートじゃねぇか」
『いやいや、それで地面に叩きつけてバウンドさせるんだよ。そうすれば、バウンドするたびに違う方向に行くから読まれにくそうじゃない?』
「跳ねるたびにあらゆる方向に飛んでいくって……ゴールに向かうか?それ?」
『そこはほら……綾人の運!』
「運でどうにかしろと!?」
いや、運ゲー……それでゴールに行くとか無理だろ。というか、運でどうにかしろって方が無理だ。
「だが、跳ねるたびに違う方向って……難しいって次元じゃないだろ。どうするんだよ」
『うーん、綾人って実質両利きでしょ?』
「まぁ、両方とも蹴れるけど……」
『右足で回転かけて、左足で回転かけて、それで蹴る』
「いや、どう考えても左足で回転かけたのが優先されるだろ」
『……どうしよう。姉御が居れば、いいアイデアをもらえたのに……』
「……そうかもな」
何だかんだ八神の発想のおかげで、必殺技のイメージを掴めたり、完成することができたこともある。そう思うと……
『元気にしているかな……』
「さぁな……少なくともあと一ヶ月は再会できないしな……」
『会いたいね』
「そうだな」
『あ、珍しく素直だ。素直にデレた』
「デレてねぇよ!……はぁ。とりあえず、オレたちで考えるぞ」
『はーい。とりあえず、どうしたらいい感じの回転をかけられるかを考えようよ』
「あ、その方針で行くのね」
『まぁまぁ、凄い回転かけられたら貫通力もある気がするから、必殺技を破るにはもってこいかもよ』
「分かった。確かに、コロッセオガードはゴール全体をカバーできる必殺技。いくらコースが読まれなくなっても、ああいう技を破るには結局シュート自体の威力が必要だし」
『とりあえず、今日はこのくらいにしようよ』
「そうだな。休みながら考えるか」
ということで、まだまだ漠然としているが、必殺技を作るべく動き出すのだった。
なお、ディフェンダーなのにシュート技ばっかり増えていくことには目をつむることにする。
そんなこんなで次回は、皆様待望のお話(だと勝手に思っています)