超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

122 / 254
待たせたな皆!ようやくこの時が来ましたよ……!長かったよ……!


再会。そして……

 エイリア学園との戦いから三ヶ月が経過した。

 イタリアに武者修行というか何というかで行っていたオレは昨日帰国。相変わらずの一人暮らしをしていた。

 

「……行くか」

 

 エイリア学園との戦い……正確にはジェネシスとの戦いが終わってから、ジェネシスやカオスなどのエイリア学園のメンバーがどうなったかは知らない。まぁ、オレが海外に行っていたというのが大きな要因ではあるけど。鬼瓦刑事や響木監督が言うには、彼ら彼女らに罪はなく、今は普通に暮らしているそう。

 そして日が沈んだ、夜。かなり昔に感じるが、オレはフットボールフロンティアの頃の癖か習慣か、河川敷でボールを蹴りにきた。やはり……というか、あの頃と違って一人だけど。

 

「まぁ、この数ヶ月でそこそこは成長した……つもりだけど」

 

 そう言いながらボールをゴールに向かって蹴る。静かな夜にボールがネットに擦れる音だけが聞こえてくる。

 

「静かだな……」

 

 空を見上げると月が綺麗に浮かんでいた。

 月を見ていると自分がムーンとしてエイリア学園に潜入していた時のことを思う。

 あの時、オレが彼女に付いて、ジェネシスにいたら今頃どうなっていたんだろうか。そう思うときもあるが、あの選択は間違っていないと思える。ただ……

 

「お前の傍に居る……そう決めたんだけどな」

 

 彼女が風邪で倒れたとき、オレは心の中でそう誓った。でも、今はどうだ?彼女の傍に居るどころか、そもそも連絡すら取っていない。

 エイリア学園との戦いが終わって、全てが丸く収まった。それは大変喜ばしいことだ。だが、そのせいでオレと彼女の関係は一つの終わりを迎えたんだろう。

 オレは彼女に鍛えてもらい、彼女はオレを仲間として利用する。そんな歪で何でもない関係がきっと、終わっただけなんだろう。

 

「……っ!」

 

 そう思っていると、誰かがボールを蹴る音が聞こえる。さっきまで、誰も近くに居なかったことから、反射的に自分のボールの方を向く。

 飛んできたボールを軽くトラップし、改めてボールが飛んできた方向を向く。そこには……

 

「……久し振りだな……十六夜」

「八神……」

 

 月明かりの下。青い髪を静かに揺らし、立っている少女……八神がいた。

 唐突な再会に少し驚きつつも、オレは彼女にパスを出しながら提案する。

 

「なぁ、サッカーしないか?」

 

 トラップし、ボールを受け取った彼女。そのまま、ボールを蹴り返しながら、

 

「そうだな。やろうか」

 

 そう答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前までに比べたら、ウォーミングアップにすらならないほど優しかっただろう。

 八神から殺人的なパスを受けることもなく、死を覚悟するシュートも飛んでこなく、厳しい指摘が来るわけでもない。そういう意味では、特訓というにはほど遠いものだっただろう。

 だけど、パスをしながら、1対1をしながら、話をした。ここ数ヶ月どんな感じだったというのがメインだったけど。楽しかった。楽しい時間だったというのが、オレの感想だった。

 

「八神……楽しんでいるな」

「ふっ……そうかもな。前と違って今ではサッカーを純粋に楽しめる……昔に戻った気分だ」

「なら、よかった」

 

 あの時の八神からは、サッカーに対して楽しいって感情をあまり感じなかった。

 だからこうして、楽しんでいる彼女を見ると、心が温かくなる。

 

「なぁ、八神……よくここが分かったな」

「まぁな。勘が冴えてたよ……本当はお前の家に行こうとしたが、家の場所が分からなかったとかではないからな」

「…………」

 

 今の一言で全部台無しだ。まぁ、そういうところも彼女らしいか。

 

「……なぁ八神。オレ、思ったんだよ。数ヶ月前まではさ、お前が隣にいるのが当たり前だった。出会って、一緒にボール蹴って、敵対して……いろいろあったけどさ……離れて、ずっと考えて……こうして、再会して改めて分かったよ。オレ、お前のことが好きみたいだわ」

 

 ずっと心の中で何かが欠けていた。戦いが終わってからずっと何かが足りなかった。パズルの1ピースだけが欠けている感覚がずっとあった。

 エイリア学園との戦いが起こる前も、起きていた最中も。彼女とは何だかんだいろいろとあった。時には喧嘩じゃないが衝突したり、時には色んなところに行ったり、時には助けてもらったり。そういうことを重ねていくうち、気付けばオレにとって彼女はなくてはならない存在になっていた。

 彼女と再会して、その欠けていた感覚は消えていた。きっと、そういう事なんだろうとなんとなく察した。……次離れてしまったら、また会えるかなんて分からない。そう思うと、その言葉は思っていたよりも自然に出て来た。

 

「だからさ、オレと――」

「ま、待ってくれ!」

 

 彼女の言葉が遮ってくる。彼女の方を見ると、頬は紅く染まり、口元に手をやって、視線はこちらを向かず、ちょっと逸らしていた。

 

「わ、私はお前にそ、そんな好きって言って貰えるはずがない……」

「どうして?」

「私はお前のことを傷つけた。何度も何度も。あの時の試合だって、お前の心を考えないような発言もした。プレーでお前を傷つけた。……最後だって、私のボールをぶつけたし……そ、そんな私に、好きって言ってもらうことなんて……」

「八神。あれはお前が気にすることじゃない。だってあれは……」

「だとしてもだ!エイリア学園としての事情があったにせよ、お前を傷つけたことに変わりない。だから……!」

 

 彼女の眼からは、今にも涙が溢れてしまいそうな。そんな空気を感じる。

 

「今日だって……謝る気で来た。今までのことを……この数ヶ月でお前が私にどんな思いを抱いているか不安だった……。もしかしたら、今までのことを根に持っているかもしれない……そう思うと不安で不安で溜まらなかった」

「八神……」

「私には、お前から好きって言ってもらう……そんなことあるはずがなんてない。お前に好きだと、伝えられるはずがない。……だから、頼むから……そんな優しい嘘を言わないで……」

「嘘じゃない!」

「…………っ!」

「お前のことが好きなのは嘘なんかじゃない!お前がオレを傷つけた?でも、それ以上にお前はオレに優しくしてくれた。オレが強くなるために特訓にだって付き合ってくれた。悩んだら相談にも乗ってくれた」

「でも……!」

「覚えているか?オレがエイリア石の力に呑まれそうになった時のこと。あの時もお前が居てくれたから、オレは呑まれずにすんだ。お前がいたからオレはここまで来ることができた」

「十六夜……」

「そんなことを言ったらオレだってお前をずっと騙していた!誘いに乗ったふりをして、仲間のふりをして、お前をずっと騙していた!利用していたんだ!謝るとしたらオレの方だ!本当に悪かったと思っている……ごめん」

「違う!お前を私は利用していたんだ!お前が私を利用したって誰も責めはしない!」

「…………だったらいいじゃないか。……お互い様なんだよオレたちは。だからさ……」

 

 オレは彼女の背中に手を回し、そっと抱き寄せる。

 

「オレは八神……お前のことが好きなんだ。オレと付き合ってくれないか?」

「…………いいのか?」

「ああ」

「……っ!私も……十六夜が好き……だ」

 

 そして、月明かりの下。オレたちの距離はさらに近付いていく。そして遂にその距離はゼロになった。

 離れたとき、彼女は涙を流しながらも笑顔を向けてくれた。オレはきっと今の彼女の表情を忘れることはできないだろう。……だって、その笑顔は今まで見てきた彼女の中で一番、美しかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきのは忘れてくれ」

 

 数分後。早々に忘れてくれと彼女に言われた。

 

「え?嫌だ」

「…………」

 

 すると、握っていた手の力が強くなる。が、何かそこまで痛みを感じないので、

 

「照れてる八神も可愛いよ」

 

 そう返しておく。照れてる八神が可愛いなと思いながら、二人で歩いて行く。

 

「ところで、八神。その荷物は?」

「え?……あ、そ、その……泊めて欲しいな……って」

「……あ、そっか。この時間から帰れないよな……あれ?あの時はどうやって帰っていたんだ?」

「あのボールのワープだな」

「なるほどな」

「……で、その……いいのか?」

「いいよ」

「ありがと……」

 

 そうして家にたどり着く。

 

「お、お邪魔します」

「まぁ、あがって。荷物はリビングに置いてくれればいいから。布団は、オレの部屋にあるから、ひいておく。後は今から風呂を沸かすから……」

『あ、風呂ならさっき入れておいたよ』

「ナイスペラー、流石だな」

『いえいえ』

「じゃあ、八神。風呂、先に入っていいよ」

「お、おう……そうか」

 

 というわけで、風呂に向かう八神。そして、

 

「ぜ、絶対に覗くなよ!」

 

 そう言い残して消えていった。

 

『綾人……』

「ペラー……」

『覗きに行くの?』

「行かねぇよ」

『でもよかった~ようやく付き合ったんだね。ここまで長かったよ~』

「お前は親か」

『まぁ、控えめに言って保護者?』

「控えめに言わなかったら何になっていたんだよ」

 

 苦笑しながらその事を伝えると、電話の着信音が鳴り響いた。

 

「もしもし、十六夜です」

『響木だ。久しぶりだな十六夜』

「あ、お久しぶりです監督。すみません、連絡も何もなくて……」

『気にしなくていい。こっちこそ夜遅くにすまない』

「いえ、大丈夫です」

『ところで日本に帰っているのか?』

「はい。昨日帰国しました」

『理事長の言うとおりでよかった』

 

 一応、理事長には留学扱いだったから定期的に報告していて、帰国したことも伝えてあったが……なんだろう。急用だろうか?

 

『さっそくで悪いが、明日の朝。雷門中に来ることは可能か?』

「はい。大丈夫ですけど……部活ですか?」

『いいや、違う。用件は明日伝えるが……集合は9時。場所は雷門中体育館だ。いいな?』

「あ、はい」

 

 そう言って電話が切れる。確か、部活は明日休みって言ってたような気がするし……呼び出しか?呼び出されたのか?

 

『また面倒ごととか?』

「いや、それだったら明日用件を伝えるなんて言わないだろ」

『そっか。じゃあ、何かあるんじゃない?』

「あぁー……ん?そういや、今更だけどさ」

『なにさ』

「八神ってよくタイミングあったよな。一昨日まで日本にいなかったのに」

『そう言えば……』

「一日二日間違えていたら絶対やばかっただろうに……」

『うーん……』

 

 ペラーとあーだこーだと話し合っていると……

 

「風呂、空いたぞ」

「はーい。あ、八神。聞きたかったんだけどさ、よくオレが居るタイミングでこっちに来たよな」

「あーそのことか。実は今日の朝方、今皆で暮らしているところに、響木監督から電話があったらしくな。ヒロトとリュウジ……あーヒロトは置いといて、リュウジってのは、エイリア学園時代のレーゼのことだ。その二人が呼ばれてな」

「あーオレもさっき、電話かかってきたわ」

 

 ヒロト……グランとレーゼか。メンツ的に、サッカー関連なら、円堂、豪炎寺、鬼道、吹雪あたりも呼ばれていそうだが……まぁ、その四人も揃っていたらアレぐらいしか思いつかないが。

 

「そこで姉さん……瞳子先生が、付き添いでこっちにやって来てな。十六夜もこっちに帰ってきたらしいから会いに行くか?って聞かれて……」

「現在に至ると。……あれ?オレがいないの知っていたのか?」

「あの騒動の後、雷門中には何回か取材が入っていてな。何度も報道されていたが、最初の取材以外、十六夜の姿がなくて皆で不思議に思っていたんだ。ほら、お前はエイリア学園に潜入していたから全員と顔見知り以上だろう?そこで、姉さんが電話で聞いたんだ。そしたら、海外にいるって言っていて……」

「なるほどな……」

 

 そりゃ、その報道が本格的に来る前に姿を消したからな……

 

「そっか。教えてくれてありがとう」

「あぁ。それに、お前もアイツらと同じ用事なら明日は早いだろう?さっさと風呂入って寝るぞ」

「はいはい。ペラー、後よろしく」

『ほーい』

 

 ということで、風呂に向かう。さてさて……用事とは一体何なのか。まぁ、おそらくアレだろうが……




ここまで長かった……リアルタイムにして3年以上、話数で言うと120話(キャラ紹介を除く)ですね。本当は100話ジャストで付き合わせたかったんですけどね(白目)
終わり方は、イチャつきにしようか、次章へ向けたものにしようか悩んだ結果こちらに。ま、まぁ、まだ付き合って初日ですしね。こんな感じで。

ちなみに、十六夜君がジェネシスに残った場合のIFルートは、構想はある程度練れました。どのような形で、いつ投稿するかは分かりませんが、期待しないで待っていていただけると助かります。忘れたころにやって来ると思うので。

次回から世界編です。……次回はいつになるんでしょうね……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。