選考試合当日は雷門中に大勢の観客がやって来ていた。
少し前にオレたちは日本代表のユニフォームが配られた。Aチームには青色を、Bチームには白色を基調としたユニフォームだ。一応、青の方がメイン、ホーム用で、白の方がサブ、アウェイ用となるらしい。そのユニフォームを身にまといながら、外に出ると待っていたのは大勢の観客……
「いやーすげぇ数だな」
「だな!くぅ……!燃えてきたぁ!」
流石は日本代表を決める大事な1戦。会場がスタジアムではなく中学校だと言うのに、すごい数を集めたものだ。改めて見ると、多いな……うん。
探すと、昔みたいに木に寄り添って、試合を見守っている八神の姿が……堂々と見ればいいのに。やましいことなんて昔みたいにないんだから。
「そう言えば十六夜。良かったのか?」
「ん?何が?」
「お前のポジションって本当はDFだろ?でも、この試合はMFとして出るって……」
「バランス的にな。まぁ、気にすんなよ」
「そうか?」
「そんなことより、そろそろ試合が始まるぞ。切り替えていこうぜ、キャプテン」
「おう!じゃあ、皆!円陣組もうぜ!」
そう言って円堂がAチームの面々を招集する。そして……
「行くぞ!悔いのないゲームにしようぜ!」
「「「おう!」」」
鬼道率いるBチームも円陣を済ませて、準備万端のようだ。
「よし!試合開始だ!」
響木監督の合図で両チームのメンバーがポジションにつく。今回はAチームのポジションは4-3-3。こっちにDFとFWが多かったため、オレと三つ子の青いのと佐久間はMFとして試合に出ることになった。よく思い返せば本職がMFってヤツ、こっちのチームに居なかったような……まぁ、あくまで3ヶ月以上前の記憶だからアレだけど。コンバートしていたら知らん。
『さぁ!お待たせしました!』
……なんだろう。3ヶ月ぶりに見たけど……え?角間、お前ってこの試合も実況するの?なんというか……ここまで来るとお前も凄いな。何だかんだで、日本代表を選ぶ大切な1戦の実況が出来るように成長しただなんて……ある意味感激だよ。
「……
アイツと再び相見えるためには、この試合……いや、これからの試合もオレは出場し、日本として勝たなければならない。だから、この1戦は最初の1歩であり、大事な通過点……さぁ、行こうか。
『さぁ、いよいよAチームのキックオフで試合が始まります!』
ピーー!
審判の笛、染岡が吹雪にボールを渡して試合が始まった。吹雪からヒロト、そして再び染岡へとパスが通る。染岡の前に立ち塞がったのは不動だ。
「……あの動き」
染岡を抜かせまいと不動がついて行く……が、逆をつかれて抜かれてしまう。不動を抜いて、そのまま攻めていきたい染岡。
「そこだ!」
だが、カバーに来ていた風丸によってボールを容易く奪われてしまう。
不動のヤツ……あえて抜かせたか。面白いことするじゃん。
そこからボールは鬼道へ。そして、豪炎寺へと渡った。豪炎寺は土方を抜いて、円堂と1対1に。
「ファイアトルネード改!」
前に見たときよりもパワーが上がっているファイアトルネードがゴールへと向かっていく。
「真ゴッドハンド!」
それに対し、こちらも前よりもパワーが上がったゴッドハンドで対抗する。
「よぉし!」
ボールは円堂の手の中におさまる。
『いきなりの円堂と豪炎寺の対決!まずは挨拶代わりかぁ!』
雷門のエースストライカーとキャプテンの激突に観客が沸く。
「さぁ、反撃だ!十六夜!」
「おう!」
投げられたボールはオレの下へと辿り着く。
「さぁ、見せてみろ。修行の成果を」
「はっ、いいぜ。乗った!」
ボールを持ったオレに立ち塞がったのは鬼道。ここでこうして相手チームとして向き合うと……最初に出会った時のことを思い出しそうだ。そう思いながら……
「……っ!」
シザースで軽くフェイントを入れつつ、足を一歩前に出して、ヒールリフトで鬼道の上を通していく。そして、抜いたタイミングでヒロトへとパスを出す。
「フェイントのキレが数段増しているな」
「向こうで散々鍛えたからな。まだまだこんなもんじゃねぇよ」
「ふっ、面白い」
ボールは吹雪へと渡り、染岡に。染岡はボールを高く蹴り上げると……
「ワイバーンクラッシュV2!」
進化したワイバーンクラッシュが立向居の守るゴールへと向かう。
「ムゲン・ザ・ハンドG4!」
それを立向居は完璧に止めてみせた。やはりというか、皆の必殺技も見ないうちに成長している。油断していたら足下を掬われるな。
「鬼道さん!」
ボールは鬼道へと渡った。
「行かせねぇよ」
相手チームの中枢をフリーにさせておくほど、舐め腐ったことはしない。すぐにブロックしに行き、時間を稼ぐ。DFではなくMFなんだし、無理に取る必要はない。
「考え事してる場合か?」
「くっ!」
……そう思っていたが、鬼道の思考に乱れが入った。プレーに集中できていないところがあるなら、そこをつくまでということで、ボールを奪おうとプレスをかける。
だが、鬼道も考えている場合じゃないと悟ったのか、ボールを出す。その出した先には不動……いや、鬼道と不動って……そこまで拗れているのか。想像以上なんだけど……というか、響木監督はそれを分かって同じチームにしたのか……?
不動に渡ったボールを佐久間がスライディングをして奪い、染岡に渡す。
「どうだ!」
佐久間が不動に声をかけるが、不動は落ち着いた様子でいる。おっと、鬼道と不動だけじゃなく、佐久間と不動もあれなのか。不動と2人って感じで何かギスギスしているなぁ……
「これは勝つための試合じゃねぇ。決めるところだけ決めればいいんだよ」
……いやぁ……確かに、今までみたいな勝つか負けるかの試合というより、実力を見せる側面が強い試合だけど……言い方が……ねぇ?火に油を注ぐってこういうことではないだろうか?
「これだけは言っとくぜ?今日は自分のことしか考えてねぇよ」
そう言い残して、自分たちのチームの方へと戻っていく不動。
彼の言ってることは、ある意味正しいというか……今は便宜上こうやって2つのチームに分かれていて、そのチームで試合をしているが、最後の選ばれる時はどっちのチームに居たかなんて関係ないだろうからなぁ……
「気にするな。試合に集中だ」
「ああ、そうだな」
その言葉を聞いた後、切り替えようとする2人。なんというか心配にはなるが、心配していてもしょうがない。アイツらの問題と今は割り切るか。
ボールは染岡からヒロトへと渡り、ヒロトが木暮を抜いて……
「流星ブレード!」
必殺技を放つ。その軌道にいた栗松はそのシュートをしゃがんで避けて……え?そのせいで反応が遅れた立向居が飛び込もうとするもゴールへと突き刺さった。
『ゴール!先取点は円堂チームだぁ!』
いや……え?あそこで避けたら流石にダメでしょ?
「くぅ……俺だって本当はFWなんだ!MFなんて納得いかねぇ!みたいな!」
「まぁまぁ、FW4人ってバランス悪いし、諦めろ、みたいな?」
「諦められるか!というか、真似するな!クソォ……俺だって点を取ってやるから!みたいな!」
「へいへい、無茶苦茶はやるなよ」
今回の試合は何人か、本来のポジションとは違うところで出場している。だから、そういう不満も出てくるか……共感は出来ないけど。DFが一番本領を発揮できるけど、そこじゃなくても、ある程度動けるからよく分かんない。
そんな中、Bチームのキックオフで試合再開。シャドウがドリブルで攻めてきたところを奪って、ドリブルをしようとする。
「……ん?」
BチームのDFである木暮と風丸がさっきよりラインをあげている?鬼道の指示か?まぁいいや、ドリブルで攻めるか。
「勝手に指示を出すな!」
って怒られた先には不動……こっちが攻めようとする中で最終ラインをあげる……
『おおっ!?武方が突然前線に上がっていくぞ!』
「はぁ?」
思わず声が出てしまった……のは置いておいて、武方を探すと……あぁ、前線に走っているわ。そして、その奥を走っているのは不動……
「風丸!十六夜にあたれ!」
不動の指示通り、ブロックに来る風丸。そんな中で、武方の前に立ちはだかる不動。
「パスだ!パスを寄越せ、みたいな!」
武方からのパス要求。彼にボールを渡すべく、パスするためにボールを蹴る……
「……まぁ、無視でいいや」
……ことはせず、キックフェイントをいれて、そのままスピードを上げて突き進む。
「何してるんだよ!パスをしろ、みたいな!」
未だにゴール前で何か言っている武方の方を見ると……予想通り、不動が場所を移動していた。そのせいで、彼はBチームの最終ラインより奥にいる……いや、いい加減気づけよ。
「はぁああああ!」
「よっと、ナイススライディング」
風丸のスライディングをジャンプして躱す……おっと、
「パスが出来ない相手から奪いに来た?」
「あーあ、仕掛ける相手を間違えた」
「まぁ、武方を使うまではよかったでしょ。ボールを持っていた相手が悪かっただけでさ」
躱した先に居たのは不動。進ませないように進路を妨害する……時間を稼ぐディフェンスだな。ボールを奪う気をそんなに感じない。木暮や躱した風丸がブロックに来ると厄介だな……
「じゃ、打つか」
パスは出せないし、強引に抜くのは悪手……少し距離はあるけど、打つか。幸い空中で放てる技ならブロックとか関係なさそうだし。
そう思って、ボールを空高く蹴り上げ、跳び上がる。
「オーバーヘッドペンギンV2!」
元々の技より6匹から12匹に増えたペンギンが、蹴り出されたボールと共に突き進んでいく。
「ムゲン・ザ・ハンドG4!」
だが、立向居の必殺技により、ボールは止められてしまう。というか、ボールと共にペンギンが潰されたように見えたけど……え?今更だけど死んでないよね?
『止めたぁ!十六夜の進化した必殺技を立向居が受け止めました!』
「ナイスセーブだな、立向居」
「はい!俺も負けていられないですから!」
立向居がボールを蹴って前線へとボールを渡す。さて、自陣に戻るか……
「何で、パスを出さなかった!俺に出しておけば決められた、みたいな!」
と思ったところ柄の悪い兄ちゃん……もとい武方に絡まれる。
「……え?何言ってんだよ」
「本職がDFのお前より、FWである俺が打った方が……」
「いやいやそうじゃなくて……え?お前本当に気付いてないの?」
「何をだ、みたいな!」
「オフサイドトラップ……不動の仕掛けた罠にお前、まんまと嵌まっていたぞ?」
「う、嘘だろ……?」
ショックを受けた武方を
Bチームのスローインで試合再開。ボールを持った豪炎寺は、すぐにシュート体勢に入った。
「爆熱ストーム!」
炎を纏ったシュートは円堂の守るゴールへと迫っていく。
「正義の鉄拳G2!」
そして、シュートと円堂の必殺技が激突する。少しの拮抗の後、正義の鉄拳は砕け、ボールはゴールへと刺さった。
1-1の同点。互角の戦いと言っても差し支えない状況……さて、どうしたものか。
前の話では誤字報告をしてくださり、ありがとうございます。もし誤字がありましたら気軽に報告してください。
後、オーバーヘッドペンギンがV進化かは知らないです(記憶が正しければ、どういう進化か分からなかった気がするし)……もし、違ったら教えてください。