超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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上手く分けられず、気付けばこの作品では珍しい8000字オーバーです。


VSデザートライオン ~哀れな旅人~

 ピー!

 

 イナズマジャパンボールで試合開始。ボールは豪炎寺からヒロトに渡った。相手の10番がスライディングでボールを奪おうとするも、それをはねのけた。

 

「鬼道くん!」

 

 ボールは鬼道に渡る。そこに立ち塞がったのは9番で、ショルダータックルを仕掛ける。

 

「豪炎寺!」

 

 そんな相手を押し返して、豪炎寺へとパスを出す。

 

「これ以上進ませるな!」

 

 相手キャプテン、ビヨンの指示で4番、5番がブロックに向かう……が。

 

「吹雪!」

 

 冷静に隣を走っていた吹雪にパスを出す。そして、

 

「ウルフレジェンド!」

 

 必殺技を放った。

 

「うおぉぉっ!」

 

 シュートはビヨンを直撃。そのままビヨンを吹き飛ばす。

 

「バカな!」

「任せろ!」

 

 シュートはビヨンの粘りで威力をかなり削られたようで、キーパーがパンチングで弾き飛ばした。

 なんというか……余りにも呆気なく、相手ゴール前まで進めてしまったな。前回のオーストラリア戦とは大違いだ。しかも、こっちのコーナーキックから試合再開でまだまだこっちのチャンスだし……

 

「俺に蹴らせてくれ。十六夜」

「ん?分かった」

 

 コーナーキックを蹴りに行こうとすると、風丸が声をかけてくる。無策で蹴らせてくれと頼んだわけでもなさそうだし、任せてみるか。前の試合ではフリーキックの時に頼みを聞いてもらったし。

 息を整える風丸。そして……

 

「これが俺の新必殺技だぁ!」

「はい?」

 

 What happened?急にどうした?そう思って見ていると風丸の蹴ったボールは大きくあげすぎ……誰の目にもミスキックに映った。しかし、そのボールは恐ろしいほど回転が加えられており、どんどん曲がっていく。そして、そのボールの行き先は……

 

「このぉっ!」

 

 キーパーもそのボールの行き先を察知して手を伸ばし跳び上がる。だが、反応するのが遅かったため、ボールは伸ばされた手に触れることなく、ゴールの右上の角へと刺さった。

 

『なんと!コーナーから直接ゴールに叩き込んだぁ!』

 

 何だろう……必殺技って言ってたけど、アレなら元の世界でもできる人居そうだな。……というか、ああいうものをこの世界に来てから最初に見たかったなぁ……今更だけど。本当に今更だけど。というか、アレも必殺技判定でよろしくて?

 

「大きく弧を描いてゴールを抉るシュート……そう、名付けるなら――」

「バナナシュート」

「いいかも知れませんね!」

「何で先に言っちゃうんですか!」

 

 かわいそうに。目金の仕事が冬花に盗られちゃったよ。

 

「静かにしろ目金」

「ぐぬぬ……!」

「……だが、やはりデザートライオンは接触プレーが多いな。それに……」

「それに……なんでしょう、八神さん?」

「いや、気のせいだろう。気にするな」

 

(映像で見た通りと言うべきか……デザートライオンはこの暑さで誰も汗をかいてる様子がない。……砂漠で鍛えられている以上、この程度の暑さには慣れているみたいだな)

 

 何かベンチでマネージャーたちが話し合っているが、気にしないでおこう。とりあえず、試合開始早々、1点先に取ったのはデカい。

 デザートライオンのキックオフで試合再開。10番が攻め上がってくるが……

 

「止めさせてもらう!」

 

 緑川がボールを奪う。10番も驚いているように見えたが、そんなのお構いなしに上がっていく。

 

「吹雪!」

 

 緑川を止めようと2人がブロックに来る。それを見てか吹雪にパスを出すも、

 

「ヤツを止めろ!」

 

 さっきシュートを打ったこともあってか、吹雪に別の2人がブロックに向かった。その動きを見て、吹雪はボールを受け取らずスルーする。スルーされたボールの先に居たのは……

 

「ナイスだよ!吹雪くん!」

 

 ヒロトだった。

 

「止める!」

 

 だが、すかさず別のヤツがブロックに行く。

 

「こっちだ!」

「頼んだよ!鬼道くん!」

 

 そして、ボールはフォローに走っていた鬼道へと渡る。キーパーと鬼道の間には誰も居ない。決定的なシュートチャンスだが……鬼道って単独の必殺シュートあったっけ?まぁ、普通のシュートでも工夫して打てば――

 

「十六夜、借りるぞ!」

「――はい?え?何を?」

 

 鬼道が急に何かを借りるとオレに言って、ボールを上空へと蹴り上げる。借りる?お金か?それとも何かの道具?うーん……でも、そんなの今言うことか?

 そう思っていると、鬼道は跳び上がって……

 

 ピー!

 

 空中で指笛を吹いてペンギンを呼び出した。

 

「…………」

 

 何か見覚えあるなーって思っていると、ペンギンたちはボールに嘴を突き刺して回転、そこを……

 

「オーバーヘッドペンギン!」

 

 鬼道がオーバーヘッドキックで打ち出し、シュートと共にペンギンたちがゴールへと向かっていく。

 

「借りるってオレの必殺技かよ!?」

 

 放たれた必殺技は、キーパーが必殺技を出す前にゴールへと刺さった。

 

「き、鬼道さん?いつの間にオレのオーバーヘッドペンギンを……?」

「俺も単独で打てるシュートが欲しいと思ってな。お前の技が丁度よかったんだ」

「あ……はい」

 

 ただ、気のせいかもしれないけど、鬼道のオーバーヘッドペンギン……あのペンギンって2号のペンギンだよな?まぁいいけど……

 

「そう言えば……」

 

 借りるって事は返されるってことだよな?でも、必殺技を返すことなんて出来ないし、さっきのは借りるじゃなくて貰うの方が言葉的には合ってるような……

 

「って、そんなことどうでもいいわ」

 

 相手キーパー……必殺技、使えなくはなかったんじゃないのか?たまたま反応出来なかっただけか?それとも……こちらに勢いをつけさせて、攻撃を重視させることが目的か?

 前半はまだ1/3も終わっていないのに2-0……普通なら喜ぶべき展開だろう。だが、分析した限りだと、この程度は彼らにとって計算の内……勝負は後半だろうな。

 

「この調子でもう1点取っていくぞ!」

「「「おう!」」」」

 

 確かに、後半に向けてもっと点差を広げておく。逃げ切るために点はあればあるほどいいんだが……

 

「マンツーマンディフェンス……か」

 

 壁山が相手FWからボールを奪ったと同時にこちらのFW、MF陣に1人1人ディフェンスがつく。ビッグウェイブスの時と違うのは、DF陣には一切マークがついていないことだろうか。

 

「…………?」

 

 ただ何とかいうか……寄せが甘い?フィジカル重視の割に、こちらをパワーで抑えこもうとしていない?よく言えば隙だらけで、こっちは動きたい放題なんだが……ふむ。

 

「こっちだ!」

「はいッス!」

 

 そんな中、鬼道が自身のマークを振り払ってボールを受け取る。

 

「行かせない!」

 

 ただ、振り払われたディフェンスも負けじと食らいついていく。ぶつかる肩と肩。そんな中、他の面々も自身のマークを振り払おうと、動いていて……

 

「こっちだ!」

「頼んだぞ!緑川!」

 

 ボールは緑川に渡った。

 

「これで3点目だ!アストロブレイク!」

 

 フリーになった緑川がシュートを放つ。ボールは地面を抉りながら進んでいく。そんなシュートを前に相手キーパーは足で砂煙を巻き上げながら上昇し……

 

「ストームライダー!」

 

 砂煙は竜巻のようになり、その竜巻をシュートにぶつける。竜巻の中に入ったシュートは威力を失い、キーパーの手の中におさまった。

 

「クソッ!」

「こんなものか」

 

 ボールはキーパーから前線へと送られる。当然ながら、マンツーマンディフェンスをしていた彼らも攻撃に移っていた。

 

「来るぞ!ディフェンス!」

 

 鬼道が声をあげる中、今の一連の流れを確認する。あれぐらいのディフェンスならビッグウェイブスの時に比べれば、突破するのは苦じゃない。だが、試合もまだ前半のここでやって来たその目的は……こちらの体力を消耗させること。キーパーが必殺技を使ったのは、これ以上の失点は流石にマズいと感じているから……

 

「おっしゃぁ!カウンターだ!」

 

 土方がボールを奪い取る。それを見て、全員が敵陣へと攻める姿勢を見せる。相手はマンツーマンディフェンスをしてくる……

 

「……緑川への……プレスが甘くなった?」

 

 心なしか緑川へのマークが緩くなる。代わりに豪炎寺へのマークが厳しく……いや、よく見ると吹雪も厳しめか……後、相対的にはオレも。ただ、それにしては鬼道に対して甘いな……つまり、点を取る能力が高いヤツを重点的に……ってことか。鬼道がそこまでの理由はさっきのを見て、必殺技が使えれば止められると踏んで?それとも……敢えて甘くすることで鬼道を動かして、早めに体力を枯渇させるつもりか?

 

「鬼道!」

「ああ!行け、緑川!」

 

 ボールは土方から鬼道、そして緑川へと渡った。

 

「今度こそ……!」

「行かせん!」

「なっ……!」

 

 アストロブレイクを打とうとした緑川からボールを奪うビヨン。……いくらマークが緩くなったからと言って、簡単にシュートを打たせてもらえるわけではない……か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前半終了間際。あれから点は動いていない。……そして、イナズマジャパンが()()()()攻める展開がほとんどだった。対する相手チームのシュート数はゼロ……すべての攻撃を、DF陣まででブロックし、キーパーである円堂までたどり着かせなかった。こちらも攻めてはいたが向こうに阻まれ、点を決めることはなかった。

 あと一歩足りない……そんな中、オレは緑川に声をかけた。

 

「はぁ……はぁ……クソッ」

「緑川、ちょっといいか?」

「十六夜か……どうした?」

「前半ラストに1点決めたい。協力してくれないか?」

「もちろん構わないが……何で俺なんだ?」

「まず、お前も感じていると思うがアストロブレイクじゃゴールを決めるのに少々弱い」

「クッ……」

 

 緑川が苦い顔をする。あの後も何回かチャンスがあって、彼はアストロブレイクを放っているが全て止められているからだ。

 

「だが、そのお陰でお前へのマークはFW、MF陣の中で1番緩い」

「決められないと分かっているから……だろうな」

「ああ。奴らのプレーからはお前じゃ決められない……お前のことを無意識のうちに舐めているように感じる。だから、その慢心をつく。乗ってくれるか?」

「……分かったよ。油断大敵……油断している相手にひと泡吹かせてやるさ」

「オーケー」

 

 ということで、簡潔にオレの策を伝える。

 

「そんなこと、練習もなく出来るのか?」

「そこはお前を信じている。心配すんな、失敗しても2-0で終わるか3-0かの違い。やるだけの価値はある」

「ぶっつけ本番で失敗しても大きな支障は無い……そして、成功すれば1点入るか。分かった、やってみる」

「ああ、頼んだぞ」

 

 そのまま鬼道のもとに行き、次のボールはオレに渡すようにお願いする。鬼道は何か策があるんだなと言って了承。……さて、これで準備は整ったな。

 相手ボールのスローインで試合再開。

 

「おっしゃぁ!」

 

 ボールを奪ったのは綱海だった。

 

「綱海!十六夜だ!」

「おう!頼んだぜ!」

 

 ボールはこちらへと飛んでくる。

 

「お前にはゴールを向かせない!」

「2対1だ!ここで止めてやる!」

「あー何か警戒されてる感じ?」

 

 2人の選手が背中越しにブロックしてくる。前を向かせないように力を加えてきて……おかしいな?この試合ではまだ何もしてないんだけど……何でこんな警戒されているんだ?でもまぁ……

 

「……っ!?コイツ……!?」

「なっ……なんだこの力!?」

「悪いけど、その程度で止められると思うなよ。じゃ、頼むわ」

 

 やってきたボールをダイレクトで緑川に向けて蹴って渡す。そして、2人から距離を取る。

 

(今の……相手を手で押さえ込んでいた?ボディブロック……ファールにならないように上手く手を使って二人の選手を押さえ込む……そう言えば、合宿でも思ったが手の使い方が前までと変わったのか?)

 

「ふっ、何度打とうと無駄だ。もっとも、打てればの話だが」

「言ってろ!次こそ決める!」

 

 ブロックに行ったのはビヨン。まぁ、いくら打たれても決まらないとは言え、敢えて打たせる理由もない。ボールを奪おうと、激しくプレスを仕掛ける。

 

「こんなものか!」

「くっ……!」

「緑川!」

 

 そんな緑川へ声をかけたのはヒロトだった。

 

「お前なら突破できる!見せてやるんだ!」

「ヒロト……ああ!」

 

 その声に答えるようにして声をあげる。そして……

 

「うぉおおおお!」

「な、何だ!?」

 

 白い光……助走を軽くつけ、身体を白熱化させ、電光石火のような速さでビヨンを抜き去った。

 

「名付けるなら、ライトニングアクセル!」

 

 新しい必殺技、ライトニングアクセルでビヨンを抜き去る。その様子を見て他のディフェンダーは緑川から今までとは違う何かを感じ、シュートコースを塞ごうと迫る中、緑川はアストロブレイクの体勢に入った。

 

「行くぞ、十六夜!」

「いつでもオッケー」

 

 それを見てダッシュで駆け上がっていく。そして、ジャンプをして跳び上がる。

 

「アストロ!」

 

 緑川はアストロブレイクを放った。放った先はゴールではなく上空。本来は地面を抉るように進むシュートが空高く飛んでいく。

 

 ピー!

 

 ボールがオレの頭上に到達した段階でペンギンたちを呼び、6匹のペンギンがボールに喰らいついて回転する。ボールに纏っていた紫色のオーラはペンギンたちへと移り、ペンギンたちの色が濃い紫へと変わっていく。

 

「ペンギン!」

 

 そんなボールに向かってオーバーヘッドペンギンを放つ。ペンギンたちは1度六方に散らばると、再びボールの後ろに集結し……

 

「……っ!なんて……大きさだ……!」

 

 ペンギンたちがボールを押し、シュートは加速する。そんな中で、ペンギンたちに取り込まれたオーラがボールへと帰って行き、最初よりも一回り大きな紫色のオーラを纏ってゴールへと突撃していく。

 

「ストームライダー!」

 

 ボールと共に6匹のペンギンが横並びとなって、ゴールへと突撃していく。ゴール前には相手キーパーの必殺技により砂の竜巻が出来ているが……

 

「想像以上のシナジーってとこか……」

 

 正面からぶつかって、竜巻は霧散する。ボールはゴールに刺さった。

 

『ゴール!緑川と十六夜の連携シュートがゴールに刺さった!3-0!イナズマジャパン突き放しました!』

 

 ピ、ピー!

 

『ここで前半終了のホイッスル!デザートライオンはこの3点差をどう覆してくるのか!後半戦も楽しみです!』

 

「やったな、緑川」

「ああ……!」

「それに、シュートを放つ前のアレも凄かったじゃん。この1点はお前のものだ」

「ありがとな。でも、お前の協力がなければ決められなかった……」

「まぁ、オレもあそこまで噛み合うとは思わなかったけどな」

「だけど、次は協力がなくてもアレぐらいのシュートを打ってやる。今ので、何か見えた気がするんだ」

「そうか。それなら試してよかった」

 

 そんなやり取りをしつつ、ベンチへと戻っていく。緑川を始め、他のメンバーはベンチへ戻るとすぐに座り込んでしまった。

 

「皆お疲れ様!」

「ありがとな!よし、後半もこの調子で行こうぜ!」

 

 円堂が木野からタオルを受け取りつつ、声をかける……が、出ていたメンバーは全員息が上がり、答える気力すらなさそうだ。前半だけで1試合分以上の体力を持って行かれているように思える……

 

「ほら」

「ああ」

 

 八神から水分を受け取る。

 

「お前……ほとんど走ってなかっただろ。それにボールにも最後の得点以外ほとんど触れてない」

「流石、よく見てる」

「まさか……バテたとかはないよな?」

「なわけ。この程度でバテるほど柔な鍛え方されてねぇ」

「それもそうか」

「なぁ、何か気付いたか?」

「映像で分析した通りって印象だな。タイ代表も、前半は一方的に攻めていた」

「オレも同感だ。……敗北したチームと似たような道を辿っている」

「そうだな。それに……」

 

 八神が指をさしその先である相手のベンチを見る。こちらは出ていたメンバーのほとんどが息が上がって、座り込んでいるのに対し……

 

「誰1人息が上がっていない。体力的には余裕と言っていいだろうな」

「……そうだな」

 

 余裕そう……と言うのが素直な感想だった。なるほど……ここまで差が出るのか。

 

「監督、いいんですか?」

「まだだ」

 

 何を……と聞いていないが、伝わっているのだろう。

 監督も彼らがどんな風に勝ち上がったのかは知っているだろう。まだ……ということは、動くべきはもっと先……か。流石に手遅れになる前には動くだろうし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピ、ピー!

 

 後半開始、デザートライオンのキックオフで始まった。相手はFW3枚という攻撃的な布陣に切り替える。3点差で後がないから、攻めることを重視する……って考えるのが妥当だろう。だが、1回戦も同じように後半は攻撃重視に戦術を変えてきた。やはり、前半はリードされてもいいからなるべく失点を減らし、後半で一気に巻き返す……という作戦で動いているのだろうか。

 10番がドリブルで攻め上がってくる。それに対して……

 

「緑川チェックだ!」

「分かってる!」

 

 鬼道と緑川の2人がブロックに行く……が、2人まとめて吹き飛ばされた。

 

「詰めろ、土方!壁山!」

「おう!」

「はいッス!」

 

 更に土方と壁山の2人がかりで止めに行くも、あっさり抜かれてしまいゴール前へと到達される。

 そして、円堂と1対1になり、シュートを放つ。

 

「正義の鉄拳G3!」

 

 シュートは弾かれ風丸の下に。風丸はボールを外に出して試合を止めた。

 後半開始1分足らず……相手の10番1人にこっちの4人が呆気なく抜かれてしまい、ゴールまで辿り着かれた。

 

「なんでこんな簡単に……?」

 

 円堂が今のプレーに疑問を持つ中、

 

 ドサッ

 

 何かが倒れる音が響く。辺りを見渡すと、倒れて動けなくなった緑川の姿があった。

 全員で駆け寄ると、肩で息をし、動けなくなっている緑川の姿が……

 

「どうした?こんなに早く息が上がるなんて」

「ずっと特訓をしてきたツケが回ってきたようだ……」

 

 立とうにも、足が震えてしまっている。……精神はともかく身体が限界を迎えている様子だ。

 

「すまない。皆の足を引っ張ってしまって」

「何言ってるんだ!お前のお陰で1点決めてるじゃないか!」

「だから、皆の足を引っ張ってるなんか言うなよ」

「それでも……!最後まで立っていられないのが悔しいんだ……!」

 

 円堂とヒロトが支えながら、緑川をベンチの方まで運ぶ。代わりに入ってきたのは栗松だった。これで1人目の交代枠が使われたことになる。

 デザートライオンからのスローインで試合再開。10番からのパスを栗松がカットした。

 

「一気に追加点でヤンスよ!」

 

 そのままドリブルで攻め上がる栗松。だが……

 

「やはりか……」

 

 攻め上がるイナズマジャパンの他のメンバーの足取りは重い。具体的には、ドリブルをしている栗松に追いつけていないのだ。

 ……緑川は特訓のツケと言ったが、そんなのは些細な違いだろう。緑川も他のメンバーも、デザートライオンによって前半のうちに体力を奪われている。

 

「皆、狩りの時間だ!」

 

 そう指示を出すデザートライオンのキャプテンであるビヨン。その声に他のメンバーの目の色が変わった。捕食者としての目……まるで、この時を待ちわびていたかのような目……

 

「しまったでヤンス!」

 

 ビヨンが栗松からボールを奪う。そのままデザートライオンのメンバー全員によるカウンター攻撃……

 

「来るぞ!ディフェンスを固めろ!」

 

 円堂の指示が飛ぶ……が、スタミナを奪われ、動きが鈍くなっているせいで、間に合っていない。

 ボールは10番に渡った。ブロックに行ったヒロトと土方がタックルで吹き飛ばされる。ゴール前には壁山と綱海、対して向こうは9番と10番の2枚。数の差はない……

 

「行け!」

「させるか!」

 

 10番から9番へループパスが通る。そのボールに向かって9番が跳び上がり、ヘディングを決めようとするのを、綱海も跳び上がってヘディングで対抗しようとする……空中での激突。徐々に綱海が押され……

 

「綱海!」

「吹き飛べ!」

 

 円堂が綱海を支えようとするも、円堂、綱海の2人ごとボールをゴールに叩き込んだ。……というか、2人纏めてゴールの中に叩き込むとか……どんな荒技だよ。力業過ぎるだろうが。

 

「な、なんて力だ……!」

 

 円堂は立ち上がる……だが、

 

「綱海?おい、綱海!」

 

 綱海が倒れたまま動かない。いや、動けないと言うべきか。しかも、それだけじゃない。

 

「ヒロト、大丈夫か?」

「土方、立てそうか?」

 

 その前に吹き飛ばされたヒロトと土方も立ち上がることが出来ていない。ラフプレーによるダメージ+体力の限界っていったところか。

 

「ここからが俺たちのサッカ-の始まりだ」

 

 そんなこちらの様子を見て、宣言したのはビヨン。後ろにはデザートライオンのメンバーが並ぶ。

 

「砂漠でサッカーしてきた俺たちにとって、この暑さは当たり前。いわば、この暑さこそ俺たちの本当の力を発揮できるステージなのさ!」

「鍛え上げられた身体と、無限の体力……それが俺たちの最大の武器!」

「さあ、もっと暑くなれ!そして砂漠に迷い込んだ哀れな旅人に敗北を……!」

 

 前半のラフプレーはこちらの体力を削ぐため……そして、後半でフォーメーションを変えてきたのは、そんなオレたちをその攻撃力で仕留めるため。点と点が線で繋がり、皆の心に敗北の足音が聞こえてくる。

 そんな中でオレはただ1人、静かに時を待っていた。




習得技紹介

アストロペンギン 
属性 林 成長タイプ V 
パートナー 緑川
緑川(1人目)が一足先にジャンプした十六夜(2人目)に向かってアストロブレイクを放つ。ボールが十六夜の頭上まで到着したところで指笛で6羽のペンギンを呼び、ボールに咥え込ませて高速回転させる。そこでボールを覆う紫のオーラがペンギン達に移った所でオーバーヘッドキックを放つ。その後、一度六方に散ったペンギン達がボールの後ろに一斉突撃する事でボールを加速すると同時にオーラをボールへと移し返し、一回り大きくなった紫色のオーラを放つボールと六羽のペンギンが横並びにゴールへ向かって飛んでいく。
h995様よりいただきました。

割と多くの人が気になっていたと思いますが、鬼道さん、オーバーヘッドペンギン習得です。
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