試合に出さない通告を受けたオレは、監督の指示でユニフォームからジャージへと着替える。……そこまでするってことは、この試合がどんな状況になろうと絶対に出す気はないのだろう。
なんというか……ネオジャパンのメンバーもベンチにユニフォームを着ていないオレが居るのを見て驚いている様子だ。いや、オレが一番驚いていますけど?え?本当に何かした?怪我もしてないんですけど?
「何ぃっ!?アンタ試合に出ないの!?」
「嘘でしょ!?日本代表がかかっているんじゃないの!?」
と、着替えている最中にやってきた浦部と塔子に驚かれるが……
「監督が言うには出すつもりないってさ。まぁ、この試合は円堂たちに任せるわ」
審判は古株さんが、実況解説はお馴染み角間がやってくれるそう。で、相手チームを見渡すとほとんど……と言うより、全員が顔見知りであることに改めて驚く。なんというか……レベルが高いんだな、オレたちの周りって。……で、それはいいんだが……
「デザームがMFなんだ……FWかGKだと思っていた」
一部のメンバーはポジションが知っているものと違った……瞳子監督のもとで鍛えられた……とか?……というか、今更ながらネオジャパンのメンバー16人しかいないな……17人まで選手登録が可能なはずなんだけど、後1人は誰なのやら。
そんな事を思っていると試合が開始される。
「風丸」
「はい」
試合が始まった直後、風丸を呼ぶ監督。一言二言話したかと思うと……
「十六夜。悪いがついてきてくれ」
「ん?分かった」
何か呼ばれたのでついて行くことにする。出番がないことは確定してたからなぁ……でも、何故呼ばれたのやら。
そしてついた場所は、サッカー部の部室前のスペース。今はグラウンドで試合しているためか、辺りに人は居ない。
「監督の指示だ。前半が終わるまでに俺の必殺技を完成させたい」
「お前の必殺技?」
「ああ」
……前半が終わるまで……つまり急ピッチで完成させろと言うのが監督からの指示。……風丸がベンチスタートだったのはそのためか……
「分かった、協力する」
「話が早くて助かる」
どうしてそんな急ぎで……と思ったが、理由を聞くのは後でもいい。前半が終わるまでってことはモタモタしていたら間に合わなくなってしまう。
「とりあえず、何処まで完成している?」
「一応イメージは掴めているつもりだ。ただ……」
「ただ?」
「まだ対人では試していない……ボールを持った状態でもだ」
「なるほど……察するにドリブル技か?ボールを持って対人ってことは」
「そのつもりだ」
「オッケー。軽くボールを取りに行けばいいか?」
「頼む……行くぞ」
そう言って風丸はこちらに向かって走り出す。そして……
「……っ!」
一気に加速し、オレを風の中に閉じ込めた。なるほど……身動きを封じるって魂胆か。
「そこ!」
「……くっ……!」
横を通り抜けようとした風丸からボールを奪い取る。すると、竜巻のようなものは消え去った。
「風の中に閉じ込めて突破する……コンセプトはいいんじゃないか?」
「止められてなければ、素直に受け取れたんだけどな……」
「あはは……軽くって言ったけど、ちょっと手加減の度合い間違えた」
「いや、それくらい突破できないと通用しないだろうからな……で、受けてみてどうだった」
「そうだな……さっきも言ったようにコンセプト自体はいいと思う。相手を竜巻の中に閉じ込める……その時のスピードもかなりものだった。……だが、その後だな。オレの横をドリブルで突破しようとしたときに、一気にスピードが落ちていた。少なくとも、オレが反応して奪うことができるレベルまで遅くなっていたのは確かだ」
「やっぱりか……」
「やっぱりって?」
「自分でも遅くなったのは感じていた……ただ、あれ以上に速くすると……」
「今度は別の問題が生じる……か」
「そうだな」
自分の速さとボールの速さが噛み合わない。風丸の足が速い分、ボールのスピードをそこに合わせようと思うとコントロールに不安が残る……か。
「あの風の中だと、お前も竜巻の外は見れないんじゃないか?」
「そうだな……その通りだ」
「となると、必然的に遅くなるな……ドリブルのスピードを速くしてしまうと、万が一竜巻の外でカバーに来た相手が居たときに接触する可能性が高い」
見えてから止まろうに距離が近すぎる……1対1ではそんな心配はないだろうが、試合中となれば、自分と相手以外にも選手がいる。そいつらの位置が分からなくなってしまうのに制御できないスピードで走る……風丸も他者も接触して怪我をする可能性が残ってしまうな。
「……発想の転換か」
「何かいいアイデアが?」
「出来るか分からんけど……その竜巻というか風の勢いで相手選手を飛ばすのはどうだ?」
「……ただ竜巻の中に閉じ込めるんじゃなく、閉じ込めた上で最後は吹き飛ばすってことか?」
「ああ。そもそも竜巻の中では外が見えないし、逆も然りなんだ。それくらい強烈な風の壁が出来てしまえば、外から干渉することはまず出来ないだろう。出来たとしてかなりの荒業になるだろうし」
「つまり、竜巻の中に閉じ込めた相手と俺は、他の奴らの横槍が入られない……1対1の状況になるんだよな?」
「そうだな。そこでお前はドリブルで突破しようとしたが……そんな狭いスペースでは、風丸の速さって武器は普通にやれば死んでしまう。それどころか、ブロックする側からすれば、お前の取れる選択肢はパスもシュートも消えドリブル一択……迷う要素がない」
「こっちは長所が消された上で、ディフェンス側はドリブルすると分かっている……有利にするはずが不利になっているんだな」
「だから、1対1の勝負をしない。相手を竜巻で吹き飛ばしてしまえば、そんな駆け引きはいらないだろ?」
「なるほど……確かに、それなら格上相手にも通用しそうだな。お前のような突破するのが困難なディフェンダー相手でも、そもそも勝負しなければいいってわけだな」
勝負する前に片をつける……1対1の駆け引きを行わず相手を倒してしまえばいい。中々の暴論だし、風で吹き飛ばすって言っている以上普通は不可能だろう。だが、もし出来れば、この必殺技を破る方法はかなり限定される。
「となると帝国のサイクロン並の風力を生み出す必要がある……か」
「いや、それ以上だろ。あの風力じゃ足りない」
「少し実験してみる。付き合ってくれ」
「オッケー……って……ん?」
それってオレが吹き飛ばされること確定なような……
「ただいま……」
「十六夜か。前半も終わりになるというのに何処に……って何でそんなボロボロなんだ!?」
「ちょっと、打ち上げ花火の花火玉の気分を数十回くらい味わってきた」
「何を訳の分からないことを言っている。ほら見せてみろ、手当てする」
「あはは……」
事実以外の何者でもないんだけどなぁ。それにしても、あれから何度も打ち上げられたなぁ……うん。おかげで技は完成したけど……いやぁ……よく飛んだな、今日は。空が青かったです。
とまぁ、八神さんの手当てを受ける傍らで話を進める。
「で、試合はどんな感じだった?」
「一番大きいのは、向こうの
「マジ?」
よく見るとイナズマジャパンはネオジャパンに0-1で負けている……おいおい。お前ら何しているんだよ。オレは空高く飛ばされてたけどさぁ。
「一応その後は、円堂が正義の鉄拳を進化させてグングニルを弾き返したが……」
「なるほど……でも0点ってことは攻めきれていないのか?」
「ネオジャパンのディフェンスが思ったより強固でな。崩すことが出来てないんだ。シュートもまだ1本しか打てていない」
「へぇ……それは中々の堅さだな。まぁ、だからこそ、刺さりそうだけど」
八神と話している間に、虎丸と交代でフィールドに入っていく風丸。
ヒロトのスローインで試合再開。ボールは緑川に渡る前にデザームがカットする。そして、そのボールを鬼道がカットし、風丸へと繋げた。
「な、何ですか!?あの竜巻は!?」
風丸がドリブルをしてボールを運んでいく中で、ブロックに来た相手を竜巻の中に閉じ込める。
「さっき完成させたばかりの風丸の新必殺技。竜巻の中では風丸が、ボールを取られないよう、自分にパスを出しながら風の勢いを強めているはずだ」
「風神の舞!」
そして、少しすると閉じ込められていた相手選手が大きく空へと打ち出される。それと同時に発生していた竜巻は霧散し、着地する風丸。そのまま、前へとボールを蹴り出し、ドリブルを再開した。
竜巻が消えたとき、風丸のスピードはゼロになっている。スピードを完全に殺せば、周りを見る余裕が生まれ、次の行動をしやすくなる……しかも、目の前にいた相手はその間空中にいて手出しができない。
「爆熱ストーム!」
ボールは豪炎寺に渡り、シュートを放つ。そのシュートに対し源田は手に巨大なドリルを生成し……あれ?
「ドリルスマッシャーV2!」
デザームの必殺技を放った。勢いよく回転するドリルはシュートを弾こうとするも、豪炎寺のシュートを弾くことはかなわずドリルは破壊される。
「はぇ……源田がデザームの必殺技を……ねぇ」
「ネオジャパンの選手は、新必殺技を生み出すのではなく、他者の持っている強力な技を取り込んで自分の物にしている」
「なるほどねぇ……確かにゼロから生み出すより、元々ある強力な技を使えるようにした方が効率的ではありそうだな」
1点決めたことで木野と冬花は手を取り合って喜び、目金は名前が付けられなかったと言って項垂れていた。
そんな中、前半終了のホイッスルが鳴り響き、フィールドに出ていた選手たちがベンチに集まってくる。……ん?もしかして、前半でシュート数2ですか?それ大丈夫か?
「後半の指示を伝える……が、その前に十六夜」
「はい」
何だろう。やっぱり試合に出すから準備しろってことだろうか?
「コレを渡す」
そう言って渡されたのはDVD……?
「えっと……」
「使い方は分かるだろう。今から行け」
「試合は?」
「必要ない」
「…………分かりました」
遂にベンチにすら要らないようだ……いや、試合に出ないことが決定しているからかもしれないが。さてさて、DVDの中身は……っと。
「これは韓国代表と中国代表の試合か……ってことは1回戦だな……っ!?」
試合を見ようと思った矢先、韓国代表ファイアードラゴンの選手を見て驚く。
「マジか……アフロディ、バーン、ガゼルの3トップとか……」
冗談じゃねぇ……いや、確かにこれなら日本代表の選考に居なかったのも、ネオジャパンのメンバーに居なかったのも頷ける。だけど……いやぁマジか……まさか3人が別のチームとして出場するとは……な。……あれ?あいつらって韓国と関わりあったのか?
「まぁ、せっかく時間もらったし……分析させてもらいますか」
ファイアードラゴンは次の試合勝てば決勝進出で、オレたちと決勝戦を戦うことになる。もし、準決勝で彼らが負けたとしても、このチームを越えるチームが出てくると考えれば分析しておくに越したことはない。というか……こいつらが手を組んで負けるビジョンが見えないんだけど……
「久遠監督」
試合終了後、久遠監督に声をかける瞳子監督の姿があった。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ」
「……十六夜くんを出さなかったのは、チームの成長の為ですか?」
「…………」
「ビッグウェイブス戦、デザートライオン戦共に見させてもらいました。もし彼が出ていれば、ネオジャパンはもっと簡単に負けていたでしょう。そして、円堂君を始めこの試合を通して選手たちは成長しなかった」
「……1人の力には限界がある。彼を出さなかったのは、このチームが十六夜綾人という選手にどこまで頼っていたかを見るためです。彼に頼り切っていては、ここから先の戦いを勝ち上がれないでしょう」
「今回の試合は通過点に過ぎなかった……と?あくまで、自分たちが成長するための通過点に……」
「ここで負けてしまうのならそれまでだっただけです。1人の選手が居ないから負けた……その程度のチームなら、世界一になることなど到底不可能でしょうから」
「彼はネオジャパンが勝った場合には17人目の選手として貰い受けるつもりでしたが……彼抜きのイナズマジャパンに負けたのなら文句もありませんね。また鍛え直してきます」
ちなみに久遠監督が必要ないと言ったのは、十六夜くんがこの試合に必要ないということと、十六夜くんにとってこの試合は必要ないことの2つの意味がありました。
ネオジャパン戦はかなり悩みました(というか、FFIまでに空いてた原因の大半はここをどうするか悩んで執筆が止まってた)
他の選手の持つ有用な必殺技を共有している→十六夜くんは既に分析済みのためあっさり止められる。
強固なディフェンス→十六夜くん1人で突破できてしまう。
ネオジャパンを強くする→十六夜くんが苦戦できるレベルまで強くしたら、久遠監督普通に選手入れ替えるだろ。
……とか何とか考えたら、ネオジャパン戦がデザートライオン戦以上の虐殺になりそうでしたね。そうなるんだったら一層のこと十六夜をベンチにすればいいなってなりました。
とまぁ、こんな感じでネオジャパン戦はあっさり終わらせましたが、ファイアードラゴン戦はそこそこありますのでお許しを……!というか、若干3名ほど十六夜くんのせいで原作より強化された選手が居ますので……ね?
後、ネオジャパンメンバーも出番はある予定です。