新年になりましたね……今年はどこまで行けるのか。
ファイアードラゴンのキックオフで試合再開。ボールはアフロディが持っている。アフロディからバ-ンにボールが渡り……
「はぁあああ!」
緑川がスライディングでボールを奪おうとする。しかし、あっさり躱され、ボールはチャンスウの下へ。
「少しは上手くなったようだなレーゼ。だが、ここまでだ」
「どういう意味だ、バーン」
緑川の言葉に応えることなく、走って行くバーン。今更だけど君たちもお互いのこと
「スノーエンジェル!」
チャンスウからボールを奪ったのは吹雪。FWでありながらDFもこなせる彼は、スピードを活かして攻守共に駆け回ってくれている。このイナズマジャパンでも強者に入る……が。
「……今の」
チャンスウはボールを取られたはずなのに、笑ってみせた。いや、笑うというか口角を上げたというか……とにかく、想定通りって感じがした。
ボールは吹雪から綱海へ。そして、綱海に渡ったとき、チャンスウが叫んだ。
「龍の雄叫びを聞け!」
「……急にどうした?」
「必殺タクティクス、『パーフェクトゾーンプレス』!」
ボールを確保していた綱海を中心に、チャンスウを含めた3人の選手が時計回りに走る。そして、綱海と走る3人、近くに居た吹雪の5人を囲うようにして4人の選手が反時計回りに走り始める。その速さは眼で捉えるのがやっとなほど。2つの包囲網により、綱海、吹雪、そしてオレたちが分断されてしまう。
その上、2つの包囲網は徐々に狭くなっているようで、閉じ込められた2人を押し潰さんばかりだ。
「……やばいな……もう使ってきたか」
未だ攻略法を見出せていない必殺タクティクス……どうする?あれをどう攻略する?
『あっと!綱海、ボールを奪われた!』
綱海がボールを奪われた後、何かに弾かれる音がする。性格的に、取り返そうとタックルした綱海が包囲網の壁に弾かれたのだろうか。
そしてボールは2つの包囲網を行き来しているそうで……何だろう、嫌な予感がする。
「吹雪!綱海!ボールを奪い返さなくていい!」
「無駄だよムーン。あの中にいる2人は、想像もできないくらいのプレッシャーを感じている……その声は届かない」
嫌な予感を頼りに声を出すが、ガゼルに無駄だと一蹴される。……というか、オレもそっちで呼ぶのね。バーンもそう呼んでいた気がしたけどさ。
そして、悲劇は起こった。
『なんと!吹雪と綱海が激突!』
砂煙がやみ、包囲網を作っていた選手たちの動きが止まる。見えたのは吹雪と綱海の2人が倒れている光景だった。ボールはチャンスウが持っている……おそらくだが、ボールを奪いに行こうとして、2人が激突したのだろう。
『信じられない展開!チームメイト同士でクラッシュだ!』
2人が足を抑えて動けなくなっている。……最悪だ。ここで吹雪と綱海の2人を失うなんて……
試合は一時中断、吹雪と綱海がベンチに運ばれる。……チャンスウが言っていたが、恐怖による精神の支配……しかも、それはあの必殺タクティクスを受けた2人だけじゃない。周りで見ていたオレたちをも支配しようとしている……ダメだ、フィールドで見て改めて感じた。アレはボックスロック・ディフェンスの比じゃねぇ。正面突破出来そうにない……か。とは言え、最後はあの中に入らないと何も分からないだろうが……
負傷した吹雪と綱海に代わり、入ってきたのは虎丸と栗松。ファイアードラゴンボールで試合再開。
「ならく落とし!」
チャンスウは踵落としをボールに喰らわせる。ボールは緑川の手前で一度回転、緑川の身体に当たり吹き飛ばし、ボールはチャンスウのもとへ帰る。
「アフロディ!」
そして、ボールはアフロディに渡った。
「止めろ!シュートを打たせるな!」
鬼道の指示に土方と壁山が応えて向かうが、そっちじゃない……あいつらのフィニッシャーは……
「南雲につけ!」
「正解だよ、十六夜くん。このチームの得点源は僕だけじゃない」
そう言って、ボールはサイドを走るバーンに渡った。
「よっしゃ!行くぞガゼル!」
「進化したのはお前たちだけじゃない!」
そう言って高く蹴り上げられたボール、跳び上がる2人。これは……まさか……!
『真ファイアブリザード!』
やはり、進化していたのはアフロディだけじゃなかった。彼らが放つファイアブリザードも、前までとは比べものにならない進化を遂げている。
「ダブルロケットペンギン!」
それに対し、アフロディの時と同じ技を放つ……が。
「…………っ!」
「十六夜!」
ペンギンたちの突撃は空しく、ボールはオレごとゴールへと突き刺さった。
『ゴール!ファイアードラゴンのシュートがゴールに入った!これで同点!追いつかれてしまったぞイナズマジャパン!』
「大丈夫か十六夜!」
鬼道の手を取って立ち上がる。
「ああ、何とかな……すまねぇ。止められなかった」
「無理はない。この1点は俺たち全員の責任だ」
「悪いが、ムーン。このシュートは、本来キーパーじゃないお前には止められない」
「止めたければ、円堂を早く出すんだな」
「言ってろ。次は止めてやるからよ」
「ハッ、じゃあ次も決めさせてもらうぜ!」
「精々楽しませてくれよ」
去って行くバーンとガゼル……っ!
「ハハッ……シュートを喰らった手がヒリヒリするわ……慣れていないからか、アイツらのシュートの威力が高いからか」
「行けるか?」
「やるしかねぇだろ。それに、2度もやられるつもりはねぇ」
とは言え、この技は通用しない。どうにか別の方法を考えるしかないか。
そして、イナズマジャパンボールで試合再開。ボールは土方が持った。
「パーフェクトゾーンプレス!」
土方と風丸がパーフェクトゾーンプレスによって捕まってしまう。
「無理するな!土方!風丸!」
鬼道の声が聞こえる。さっきみたいな激突で、これ以上戦力を減らされるわけにはいかないが、彼らには届いたかどうか……
『あっと!ボールを奪われた!』
包囲網の中でボールを奪われた土方。
「取り返さなくていい!2人はじっとしていろ!」
中の様子は分からない。だが、先ほどとは違い、ボールは外の選手に向かって蹴り出され、パーフェクトゾーンプレスが解かれる。……2人は怪我もなく無事……だが、その無事を喜ぶ暇を与えてくれない。
パーフェクトゾーンプレスは7人がかりの必殺タクティクス。しかし、流れるような攻めへの切替で、その人数差を感じさせない。ボールはチャンスウが持ち、攻め上がる。
「ならく落とし!」
「うわぁあああああ!」
栗松がブロックに行くと、ならく落としの前に吹き飛ばされてしまう。
「ここで追加点です!」
そしてボールはバーンに渡った。隣にはガゼルが居る。
『真ファイアブリザード!』
つい先ほど点を決めたシュートがこちらに向かってくる。もう一度ダブルロケットペンギンを放つか?いや、アレじゃ止められねぇ……ミサイルペンギンを……いや、アレじゃ細かい操作が必要だ。それに、この距離じゃ威力はダブルロケットペンギンに劣ってしまって止められねぇ。アイギスペンギンもダメだ。盾が破れなくてもゴールラインまで押されこまれればゲームセット……どうすりゃいいんだ。どうやって止める……!
「真ザ・ウォール!」
「壁山!」
「少しでも威力を下げるッス……!そうすれば、十六夜さんなら止めてくれるって信じているッス!」
「壁山……!」
必死に堪えてくれている壁山……クソ!やる前から何を弱気になっている!やれることをやるだけだろうが!
「壁山!十六夜!」
ベンチから円堂の声が聞こえてくる。それと同時に壁山のザ・ウォールは破れ、シュートが向かってくる。
「……っ!イチかバチかだ!来い!」
ピー!
指笛で呼ぶと赤色に染まったペンギンが5匹、空からやって来る。5匹のペンギンたちは、オレの右腕に食らいつく。
「ゴッドハンド!」
そしてそのまま右手を突き出す。しかし、円堂みたいな大きな手は現れなかったが……
「ただでやられるつもりはねぇんだよ!」
突き出した右手にシュートが激突する。僅かな拮抗の後、ボールは勢いを失い……
『止めたぁ!強力なシュートを十六夜がキャッチ!イナズマジャパン!防ぎましたぁ!』
そのまま右手におさまった。
「ふぅ……ナイス壁山。フォロー助かった」
「それほどでもないッス!」
「十六夜!」
「って、どうした鬼道?そんな血相変えて……」
鬼道が血相を変えてこちらにやって来る。え?何かあったか?
「お前、痛みは!?右手は大丈夫か!?」
「右手?」
あーそう言えば右腕、ペンギンに噛まれたんだっけ?噛まれたというか噛ませたというか……
「なんともないけど?」
自分でもびっくりだ。噛まれたはずなのに痛くない。というか、シュートを右手だけで止めたら痛いと思うけど、そういう痛みもない。……もしかして、凄い必殺技が誕生した?というか、ペンギンの色が真っ赤だったな……いや、普段のペンギンたちも技によって色が違うから今さらか。
「そう……か。ならいいんだ」
「???」
(あのペンギンの色と雰囲気……間違いない。皇帝ペンギン1号……禁断とされる必殺技のペンギンだ。皇帝ペンギン1号のキーパーバージョン……そんな技、1度でも使用すれば痛みに襲われ、2度使用すれば試合続行は不可能なはず。なのに、十六夜は何もない……どういうことだ?……いや、後でいいか)
「まさか止められるとはな」
「フッ、面白い。やはりムーンはムーンで侮れないようだな」
「ああ!だが、そうこなくちゃ面白くねぇ!強くなったのはヤツだけじゃねぇんだ!」
「我々の真の力を思い知らせよう」
「あの技……真・帝国の時の禁断の……」
「ど、どういうことですか!?アレって確か……」
そう言って、真・帝国戦のことを知っているメンバーは不動の方を向く。だが……
「知るかよ。アレは皇帝ペンギン1号じゃねぇし、そうだとしても何でノーリスクでアイツが使えてるのかなんて、分かるわけねぇだろ」
「皇帝ペンギン1号……?」
「とても危険な必殺技なの。2回使えば試合続行は不可能……3回使うと選手生命に関わってしまう禁断の必殺技」
「……絶大な威力を誇りますが、代償が大きすぎる技……そう鬼道くんから聞きました」
不動は興味が失せたように試合の方を見るが、内心では疑問に感じていた。帝国の禁断の必殺技を、しかも皇帝ペンギン1号を見たことないはずの十六夜が、何の代償も支払わずに使えていることに。
ベンチのメンバーの一部が十六夜の身体を心配する中、八神が声を出す。
「心配するな。十六夜はあのペンギンを制御しているようだ」
「そ、そうなのか……?」
「ああ、十六夜のペンギンが伝えてくれた」
「ならいいけど……え?十六夜のペンギン?いつの間に」
「ついさっきな。だから、心配しなくていいそうだ」
「ま、まぁ、それならいいでしょう。皇帝ペンギン1号と円堂くんのゴッドハンドを掛け合わせた技……そう、その名も──」
「ペンギン・ザ・ハンドってところか」
「──次はあなたですか!?僕は何人に邪魔されればいいんですか!?」
試合は1-1の同点。十六夜の新必殺技でシュートを止めるも、パーフェクトゾーンプレスを破る活路は見えていない。
「…………あ、思いついたわ。アレの攻略法」
ただ1人、十六夜綾人を除いて。
習得技紹介。
ペンギン・ザ・ハンド
キーパー技。キャッチング。
GO2のメカ円堂の技である。
十六夜くんは前もどこかで言ったように、ペンギンを扱える器がバグレベル。だから常人なら、身を滅ぼしかねない皇帝ペンギン1号のペンギンも一切の反動なく使えてしまうチートな性能をしているため、この技を無反動、ノーダメージで使える。
何人かこの技はどうかと提案されましたが、ばっちり習得しました。ちなみに十六夜くんが真・帝国戦を知らない理由の一つは、この技を習得しやすくするためだったりする。知ってたら、皇帝ペンギン1号を使った佐久間の姿を見て、使おうとなんて考えもしないだろうし。