超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSファイアードラゴン ~ペンギンVSドラゴン~

 あることを思いついたオレはボールが外に出たタイミングで鬼道を呼ぶ。

 

「鬼道、パーフェクトゾーンプレスを破る方法を思いついたんだけど」

「何だと?」

「――――――――って感じなんだけど」

 

 鬼道に話すと、何故か苦笑いをしてくる。

 

「……それ、本当に出来るのか?」

「理論上はいけるはず。頭の中では出来た」

「頭の中か……まぁ、やってみる価値はあるな」

「ありがと、フォローよろしく」

「……失敗してもケガだけはするなよ」

「おう」

 

 と、鬼道からの許可が得られたので、ヒロトを呼んできてもらい話をする。

 

「何かな?」

「ヒロトってさ……」

 

 あることを聞くと、少し考えて頷いてくれる。

 

「だったら……」

 

 ということで鬼道に伝えたことと同じ事を伝えると……

 

「……え?本当に言ってる?」

 

 無茶苦茶心配そうな表情を向けてくる。

 

「任せろ、失敗したことないから」

「挑戦したことがないからね」

「とにかく、やってみようぜ。鬼道にはオッケーもらったからさ」

 

 と、鬼道の方を指さすと、諦めろと言った表情をヒロトに向ける。何でそんな表情を向けているのだろうか?

 

「でも、それが成功すれば、相手には大打撃を与えられそうだね……分かった。そこまで言うならやってみるよ」

「ありがと。合図出すからよろしく」

 

 ということで今回の作戦に必要な面子への声かけは終わった。さて……

 

「作戦実行……の前にボールを奪わないとな。そうじゃないと話にならない」

 

 ファイアードラゴンのスローインで試合再開。ボールはチャンスウが持った。

 

「何か企んでいるようですね……」

「気をつけた方がいい。十六夜くんの企みは相当厄介だと思うよ」

 

 何かアフロディからの評価が酷いが……今は気にしないでおこう。

 

「ハッ、何を企んでいようが関係ねぇ。点を取れば解決だろ」

「フッ、我々の力でねじ伏せれば変わらない」

「そうですね……ここは1点決めてリードしておきますか」

 

 そう言うとチャンスウが片手を挙げる。すると、ファイアードラゴンが一気にこちらの陣内に切り込んできて……

 

「マズいな……完全に掌の上か」

 

 鬼道が指示を出すも、追いついていない。相手のパスにより翻弄されている……いや待て。

 

「ちょ……何をしているんだ?」

 

 フィールドの中央付近でチャンスウ、アフロディ、バーン、ガゼルの4人が集まっている?それ以外の面々にパスを回させて……一体何を?そう思っていると、四方にちりぢりになる。集まったのは何の狙いが……?作戦共有でもしていたのか?

 

「十六夜くん。君の弱点を突くことにしたよ」

「はぁ?」

 

 ボールを持ったアフロディが何か言ってくる。弱点って……何か前もキーパーやっていてこの対面で突かれた気がするが……と、そんな事を考えているとゴッドノウズの体勢に入った。

 

「行くよ!真ゴッドノウズ!」

 

 アフロディのシュートがゴールに迫る。狙いは……

 

「正面だと?これなら……っ!」

 

 コースは正面。そう思ってペンギンを呼ぼうとすると、シュートに走り込んでくる陰が見えた。

 

「私を忘れてもらっては困る。ノーザンインパクトV3!」

 

 ガゼルがシュートチェインをする。そのせいでコースが変わった。

 

「ッチ!そこか!」

 

 狙いは右上の隅。そう思うと同時に、ペンギンを呼び出し腕に喰わせ、走り込んで跳び上がる。

 

「ペンギン・ザ・ハンド!」

 

 手を上に伸ばしながらの跳躍。だが……

 

「なっ……!?」

 

 無情にも手がシュートに触れることはなかった。ボールはそのまま……

 

 ガンッ!

 

 響く鈍い音。それと同時にボールは大きく跳ね返る。その跳ね返った先では既にバーンが構えており……

 

「1点もらうぜムーン!アトミックフレアV3!」

 

 ダイレクトで必殺技を放つ。狙いは左上の隅……だが、シュートを放たれたタイミングでオレの身体はまだ空中にある。着地して急いで走り込んで飛び込む?いや間に合うかそれ?

 

「クソがっ!」

 

 着地して飛び込もうとするも、シュートに触れることは出来ずゴールに刺さってしまう。

 

『ゴール!アフロディ、涼野、南雲の連携シュートがイナズマジャパンのゴールを貫いた!ファイアードラゴン逆転だぁ!』

 

 オフサイド……は出ていない。期待はしていなかったが、オフサイドにならないタイミングで前に出ていたか。

 

「あなたのテクニック、フィジカル、分析力、守備力……今までの2試合を分析させてもらいましたがどれも素晴らしいものです」

 

 ゴールの中に入ったボールを拾うと、チャンスウがペナルティーエリアまでやって来ていた。

 

「……ですが、はっきり言いましょう。君はキーパーとしての経験は浅い。キーパーに慣れていないんですよ」

「…………それとこの失点に何の関係がある」

「あなたは、ゴールの大きさを感覚として理解していないということですよ」

「…………っ!」

「アフロディのシュートで必殺技の準備を行い、涼野のシュートチェインで君はコースを変えられ飛び込んだ……ですが、優秀なキーパーなら気付いたはずです。涼野が変えたコースでは、ゴールのバーに当たってしまい、ゴールには入らないのではないかと」

「…………」

「だから、判断するために跳び込むことを躊躇するはずですが……あなたはそれに気付かず跳んでしまった。いくらあなたとは言え、空中で体勢を変えるのは準備していなければ難しい。そして、跳ね返った球を南雲がダイレクトで決めた。もちろん、君が間に合いそうにないコースを狙ってね」

 

 つまり、チャンスウはオレ相手だから……普段キーパーをやっていないから、この策で挑んだ……正面からのパワー勝負を避け、確実にゴールを奪ってきた。

 

「もちろん、搦め手を使わなくとも決める手段はありましたが……この失点の仕方の方が精神的に来るのではないかと思いまして」

「……ハハッ、確かにキーパーとしての経験不足っていう弱点を突かれれば来るものはあるな」

 

 円堂ならば、立向居ならば止められた。他のキーパーなら止められたシュートを、オレは止められなかったと植え付けたい……か。

 

「ああ、悔しいな……だが、一つ言わせろ。オレがテメェ程度で測れる存在だと思うなよ」

「その言葉が威勢だけの虚言にならないことを祈りますよ」

 

 そう言って戻っていくチャンスウ。去り際には笑みを残して……

 

「ご、ごめんなさいッス十六夜先輩!俺が時間を稼げていれば……」

「気にすんな壁山。アレに反応するなんて至難の業だろ。切り替えていこうぜ」

「は、はいッス!」

「と、そのついでに次のキックオフで仕掛けるから守備任せた。……人のことを支配した気でいる勘違い野郎にひと泡吹かせてくる」

「分かったッス」

 

 イナズマジャパンのキックオフで試合再開。ボールは鬼道に渡った。

 

「託すぞ!十六夜!」

「ああ、任せろ」

 

 ゴールから上がっていき、ボールを貰う。

 

「ちょっ、十六夜先輩!?」

「ゴールががら空きですけど!?」

「ま、まさか今の失点で火が!?」

 

 ベンチで何か言ってるけど聞こえない。敵陣に向けてドリブルを始める。

 

「点を取られて自棄になったあなたから奪って、カウンターを決めてもう1点ですかね」

「奪ってから言えよ。奪えなければ、その計算は意味ないぜ?」

「えぇ、では……パーフェクトゾーンプレス!」

 

 ゆっくりとドリブルするオレを囲うようにして3人が。近くに居た緑川を巻き込むようにして4人が囲んで走る。

 

『ああっと!十六夜と緑川がパーフェクトゾーンプレスに捕まったぞ!イナズマジャパン、ここで奪われると大ピンチだがどうするんだ!?』

 

「緑川、動くなよ」

「お、おう……!」

 

 パーフェクトゾーンプレスは何度か見てきた……確かに強力な必殺タクティクス。時間をかければかけるほど狭まっていくスペースとそれによるプレッシャー。更に、選手たちが走ることにより、そのスピードで風の壁と言うべきものが出来ている。

 

「さぁ、どうしますか?」

 

 1人での突破は不可能……そう思っているんだろうな。実際、ビッグウェイブス戦みたく、時間を稼いで綻びを生み出すのは無理だろうし、デザートライオン戦みたく、フィジカル勝負に持ち込んで……なんて次元が違い過ぎてお話にならないだろう。……だが、完全無欠というわけじゃない。無敵の必殺技、必殺タクティクスなんて存在しない……必ず隙がある。少なくともオレはそう思っている。

 

『合図出したよーいつでもオッケー』

「じゃあ、やりますか」

 

 ペラーが教えてくれたタイミングで、オレの背後に巨大な対物ライフルを出現させる。ライフルの中には弾丸としてペンギンが入っている。

 

「ヴァルターペンギン」

「なるほど……そう来ますか」

 

 チャンスウが走りながら何かに気付いたようだ。だが、そんなのは無視だ無視。よく動きを見て、タイミングを見計らって……

 

「させませんよ!」

「……っ!」

 

 把握と思考を進めている中、突如現れた足。伸びてきた足に驚き、それにボールを奪われないように自身の足を振り抜いてしまった。クソッ、完全にズラされた。このタイミングじゃ突破できない――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――って感じで満足か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ……!」

 

 確かに足を振り抜き、ボールを蹴った。だが、蹴ったところはボールの下で、すくい上げるように軽く浮かせるだけにとどまる。相手の足がボールに触れることはなく、何一つズレずに終わったのだ。そして……

 

「ぶち抜く!」

 

 ボールが空中にある状態だが気にしない。タイミングを見てボレーシュートを放つ。蹴り出されたボールとその後ろを追従するペンギンは、パーフェクトゾーンプレスで生まれた2つの円に風穴を開けて相手ゴールへと迫っていく。

 

「くっ……ですが、そんなシュートでは、うちのキーパーからゴールを奪えませんよ」

「だろうな。でも、よく見てみろよ」

 

 シュートの先にはヒロトが居る。ヒロトは低い軌道のボールに……

 

「流星ブレードV2!」

 

 本来は高く跳び上がって放つ必殺技である流星ブレードを、いつもよりかなり低い位置で放つ。いつも以上の流星ブレードの威力に、こっちのシュートの威力が掛け合わさり……

 

「大爆発張り手!」

 

 そのシュートと相手の張り手が激突する。徐々に相手を押し込んでいき……

 

『な、なんとパーフェクトゾーンプレスを破壊する一撃を放った十六夜!そして、それに呼応した基山の2人によるシュートがゴールに突き刺さりました!イナズマジャパン同点ゴールです!』

 

 ファイアードラゴン側が苦い顔を見せる。チャンスウはいち早く狙いに気付いていたようだが、それでもまさかの展開だからだろう。

 

「……無茶苦茶なことをしますね」

「アフロディたちから聞いてなかったか?オレは相手の予測を裏切るヤツだって」

「自由にさせたら一番危険とは聞いていましたが……確かに、パーフェクトゾーンプレスの包囲は人が走ることで生み出している。当然ながら人と人の間にはスペースがあります……ですが、そんな僅かなスペース。しかも、内側も外側も両方のスペースが生まれる一瞬を突こうなんて……」

「まぁ、そのスペースも風の壁が生まれてしまって、普通は突こうなんて考えない。だが、人を吹き飛ばすのと風の壁を貫くのって、どう考えても後者の方が楽だろ」

「おかしいですね。この中で必殺技……ましてシュートを放つなんて出来ないはずなんですが……」

「タイミング良く必殺技を放つだけだろ?さっきみたいに邪魔されようとも、プレッシャーをかけられようと、視界が塞がれていなければ問題ねぇ」

「発想が異次元ですね……そして、それを遂行するだけの実力と自信、その無茶苦茶に呼応する仲間……あなたがキーパーの理由がますます不明ですね」

「これで同点……さぁ、振り出しだ」

「えぇ、ですが……その破り方はあなたにしか出来ません。パーフェクトゾーンプレスはあなたたちに通用することをお忘れなく」

 

 チャンスウと言葉を交わして、自陣ゴールへと戻っていく。

 

「あはは……流石だね、十六夜くん」

「ヒロトもありがと。オレの技だけじゃ、パーフェクトゾーンプレスは破れても、相手キーパーに止められていた」

「前者を破る方が凄いと思うんだけどね……でも鬼道くん、どうする?この破り方は……」

「ああ……ある意味では相手にとって防ぎようがない方法だが欠点が2つ。十六夜にしか使えないことと、十六夜がキーパーのせいでカウンターに弱すぎること。シュートチェイン前提のせいで、シュートチェインできるやつを止められたら終わり……だから、ヤツも驚きはしたが余裕なんだろう。これはあくまで一発芸……攻略法ではないからだ」

「まぁ、オレにはこの破り方しか思いつかないんだけどな……あはは」

 

 うーむ……確かにこの破り方は、キーパーに止められカウンター喰らおうものなら目も当てられないしな……誰でも出来る方法で破る……か。

 

「そもそもの話、捕まらなければ破らなくてもいいんだけどな……」

 

 あの必殺タクティクスをどうやって破るかは散々考え抜いた後なんだ。流石にこれ以上は、何かきっかけがないと閃かないぞ?

 そう思いながら、ファイアードラゴンのキックオフで試合再開。

 

「まぁいいでしょう。どれだけ点を取られても、取り返せばいいんですから」

 

 と言って、いつもの4人で攻め上がってくる……今更だが、あの4人が攻めてくるだけで、簡単にキーパーまで到達されるんですけどいいんですか?そろそろオレをディフェンダーに……

 

「行くよ、十六夜くん」

 

 とか余計なことを考える暇はないらしい。もう目の前まで来ているわ。

 

「真ゴッドノウズ!」

 

 と、放たれたアフロディのシュート。狙いは右上の隅……!クソッ!さっきの失点と同じパターン……!だったら、跳ばなければ……いやでも、さっきのを踏まえて今度はバーじゃなくてしっかりと入る可能性が……ッチ!

 

「迷ってられねぇ!ペンギン・ザ・ハンド!」

 

 右手を伸ばしながら跳ぶ。迷う時間が長ければ長いほど、もし入るコースだったときに間に合わない。だったら、跳ぶしかない……!

 

「えぇ、あなたは跳ぶしかないんです。ですが……」

 

 ガンッ!

 

 ボールはバーに直撃する。先ほどとは違い、斜め下に跳ね返った。

 

「終わりだムーン……」

 

 ペナルティーエリアのライン際ではシュート体勢に入ったガゼルが。

 

「ノーザンインパクトV3!」

 

 狙いは左上の隅……クソッ!さっきと同じパターン……!

 

「同じ手を喰らうかよ!ボス!」

『やれやれ、初登場がコレか』

 

 そう言いながらボスが片方の羽根を使い、オレの体勢を変える。

 

「借りる!」

『飛ばすぞ!』

 

 ボスの羽根に両足の裏をつけて、ボスは左上の隅に向けて羽根を振るう。

 

「膝!」

「なんて無茶苦茶を……!」

「ルーズボール!ディフェンダー!」

 

 そのまま膝をシュートの側面に喰らわせる。ボールは軌道を変え、ゴールのポストにあたり、右サイドへと飛んでいく。飛んでいったボールは……

 

「貰うぜ!」

「流石に無理だっての!」

 

 ボールを空高く打ち上げ、バーンがシュート体勢に入るのを見ながら、無情にも身体は左サイドへと吹き飛んでいく。

 

「アトミックフレアV3!」

 

 クソッ!今からじゃペンギンたちは間に合わないし、着地してからダッシュしても間に合うわけがない。どうする、どうすればいい……!今度こそ詰みか……!

 

「やらせないでヤンス!スピニングカット!」

「栗松!」

 

 と、シュートとゴールの間に割って入ったのは栗松だった。

 

「俺もいるッス!真ザ・ウォール!」

「壁山!」

 

 2人がシュートを止めようと必殺技をぶつける。

 

「その程度じゃ止まらねぇぞ!」

「「うわぁあああああっ!」」

 

 しかし、2人の必殺技は破られてしまう……が、

 

「ギリギリセーフ、助かったお前ら」

 

 2人のシュートブロックにより稼いでくれた時間で着地して、ダッシュでシュートコースに割り込む。そして、ペンギンをつけたままの右手をボールの側面にぶつける。

 

「今度こそ止めたぞ」

 

 そのままボールを受け止めつつ一回転。無事着地をして、右手におさまったボールを掲げる。

 

「ナイスブロック、栗松、壁山」

「へへっ、十六夜さんなら時間を稼げば止めてくれると信じていたでヤンス」

「そうッス。俺たちも流石に3発目なら間に合うッス」

「ありがと。んじゃ、いってくるわ」

 

 そう言って、ボールを地面に置いてドリブルをする。

 

「って、ゴールはどうするでヤンスか!?」

「十六夜さんはキーパーッスよ!?」

 

 後ろで悲鳴を上げるディフェンダー陣を置いて前線へと駆け上がる。

 

「止めなさい!彼を止めれば1点です!」

「フッ、ここは行かせない」

「おいおいお前はキーパーだろ?」

 

 ガゼルとバーンがブロックに来るが……

 

「……今」

「強引に……!?」

「強すぎだろ……!?」

 

 2人の間に生まれる空間……その隙を見抜いてフィジカルで突破する。

 

「そこだよ!」

「見えてた」

 

 突破した瞬間、スライディングを仕掛けてくるアフロディ。それをボールを軽く浮かせることで躱す。

 

「ここで時間を稼ぎます!ディフェンス、体制を整えなさい!」

「そう言うの言われるとさぁ……」

「なっ……!?」

 

 右足を1歩踏み出し、ボールを左足で右足の後ろを通し、つま先で相手の股を通す。そして、左足を軸に回転して、チャンスウを突破する。

 

「さっさと突破したくなっちゃうじゃん」

 

 そしてそのまま走って行く。ただ、1秒稼がれたせいで、ガゼルとバーンは既に戻り始めているし、アフロディも体勢を整えた。

 

「ッチ、オレのゴールまでの道筋は見えてるのに……」

 

 あの制約のせいで、今は得点を決めることが出来ない。最後はパス出すことを考えると……誰に渡そうかな……

 

「通さな……おわっ!?」

 

 やってきたディフェンダーの股下にボールを通して軽く突破する。

 

「両サイドからプレスしなさい!」

「邪魔」

「なっ……!?」

「強っ……!」

 

 そうだな……一番良い位置にいるのは……

 

「託すわ、豪炎寺」

「……っ!」

 

 豪炎寺にパスを出す……が、ボールは豪炎寺の足に当たり、コロコロと転がって外に出た。

 

「……………………は?」

 

 豪炎寺が……トラップミス?結構取りやすいように、考えて出したはずなのに……しかも、敵のプレッシャーもなく、そこまで切羽詰まった状況でもないのに……え?というか今……

 

「プレーに集中していなかった……?」

「リスタート!早くしなさい!」

「マズい!戻れ十六夜!」

「……っ!」

 

 思考を切り替えろ、考えるのは後回しだ。早く戻らねぇと……!

 

「涼野、決めなさい!」

「悪いけどムーン……この必殺技は今までの比じゃない」

「は……?」

 

 スローインからボールを受け取ったのはガゼル。そのままドリブルを軽くしたかと思うと、ボールを軽く前へと蹴り出す。そこに、体を横倒しにして、体を捻りながら高速で回転、ダイヤモンドダストを纏いながらボールを蹴り出す。まるで、ファイアートルネードを低いところで打ったみたいだ。

 

「グレイシャルレイド!」

 

 蹴り出されたボールは一直線にゴールへと向かう。強烈な冷気を纏っており、ボールの通った軌道上にはダイヤモンドダストを残して……

 

「クソ速っ!?」

 

 ノーザンインパクトの比じゃねぇ。いや、速度で言うならヴァルターペンギンに匹敵……下手すりゃ越えてる。そんなシュートに走って追いつけるわけがねぇ。いくらスローイン→ドリブル→必殺技の発動のロスがあるとは言え、そんなのは些細なものだ。

 

「ペラー!」

『全速力で発進!』

 

 それを見るや否やペラーに乗って加速するも、シュートは遙か先を行く。ペラーに乗っても追いつけない……!ダメだ、時間を稼がねぇと!

 

「ミサイルペンギンV2!」

 

 ミサイルペンギンで、シュートの威力を削ぎ落とそうとする……だが、

 

「何て速さだよ……!?」

 

 いくら人を避けるようにして、こっちがペンギンたちを操作しているとはいえ、シュートに追いつけていない。これじゃ当たらねぇ……!

 

「スピニングカット!」

「真ザ・ウォール!」

 

 栗松と壁山が構えてくれている……その隙にこっちもペンギンたちを当てて威力を削げば……!?

 

「「うわぁあああああ!」」

 

 稼げたのは僅かな時間。その僅かな時間ではオレ自身がボールに追いつくことが出来なかった。そのままボールは無情にも無人のゴールへと刺さる。

 

「これがノーザンインパクトを超えた私の必殺技。威力、スピード共に今までの比じゃない」

「……これがお前の……新たな必殺技……!」

「本当は本戦まで取っておくって方針だったけどね。でも、ムーン……いや、イナズマジャパン。君たちには打っていいって言われたよ。……だから本気でいかせてもらう」

「……なるほどな。本戦の為に隠していたってことか……」

 

 情報戦……こんな必殺技見たことがない……イナズマジャパンがギリギリのところを勝ち上がってきたのに対し、こいつらは武器を隠しながら大差で勝ち上がってきた……か。

 

「……おもしれぇ。なら、どっちの矛が強いか競おうじゃねぇか」

「フッ……精々楽しませてくれよ、ムーン」

 

 そう言ってポジションにつくガゼル。

 

「十六夜さん……ごめんなさいッス……」

「俺たちがもっと時間を稼げれば……」

「お前たちのせいじゃない。今の失点はオレの責任だ」

「そう自分を責めるな十六夜。今のは……」

「次のリスタートで即ボールくれ」

「あ、ああ……」

 

 オレはゴールへと戻り、ボールを拾って渡す。

 一度目を閉じ深呼吸をし、改めてイナズマジャパンのメンバーを見渡す。そして、ファイアードラゴンのメンバーを見渡し……ああ、そうか。

 

「ハッ……」

 

 どうやら、オレの中から抜けきってなかったらしいな。円堂なら必ず気付いてくれる、アイツさえ戻ってくれればっていう甘い考え、根拠のない信頼が。

 

「これじゃダメだな」

 

 そんなご都合主義に縋っているようじゃダメだ。そんな甘いものを捨てろ。誰かが変えてくれるなんて思ってるようじゃダメなんだ。

 

「……行こうか」

 

 たとえ1人になったとしても……世界一になるために、こんなところで足踏みしてられるかよ。




次回サブタイトル、副キャプテン。
十六夜くんが……チーム崩壊を加速させる……!?


オリジナル必殺技
グレイシャルレイド 
属性 風 
成長タイプ V シュートチェイン可 
使用者 涼野(ガゼル)
ガゼル時代に皇帝ペンギンOからノーザンインパクトにチェインする皇帝ペンギンTをまだ兆し程度だったメガトンヘッドに防がれた事で自身のシュートが威力不足である事を悟った涼野が試行錯誤の末に編み出した、ノーザンインパクトの強化改良技。
ドリブルしながらボールを前に蹴り出した後、体を横倒しにして高速で体を何度も捻りながら飛び込む。この体の回転はダイアモンドダストを纏っており、その冷気と遠心力をたっぷりと乗せたキックでボールを蹴り出す。蹴り出されたボールは強烈な冷気を纏い、軌道にダイアモンドダストを残しながら一直線にゴールへと向かう。回転の遠心力の他にドリブルの勢いも利用する事から元の技に比べて威力はおろかスピードも増しており、発動までの時間の短縮にも成功している。
イメージは胸程の高さで前に向かって飛ぶファイアトルネード。

h995様より頂きました。ありがとうございます。
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