超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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スパイ教室を読みたい欲に駆られ、1週間で本編1~8巻と短編集も1~3巻を読んだバカです。最新刊である9巻は今週中には買って読み終わってると思います。
前々から買ってはいたんです。読みたくはあったんです。読まず計11冊が積まれていたんです。アニメの第2話見た後に読書欲が爆発しただけなんです。ちなみに推しはグレーテさんです(誰も聞いてない)
そして、ここに書いている理由は……今作者は頭がとろけていることの説明ですかね?卒論に追い詰められた人の末路です。次回の前書きも何か書いてたら気にせずスルーしてください。
というわけで(?)本編どうぞ。


VSファイアードラゴン ~爆発~

「……そろそろ練習の成果を見せてもらおうか」

 

 ベンチでは監督が意味深につぶやく中、相手のスローインで試合再開。ボールはチャンスウが持った。

 

「まぁ、いいでしょう。この攻撃で1点です」

 

 チャンスウが静かに手を挙げるとアフロディ、ガゼル、バーンの3人がイナズマジャパンゴールめがけて攻め込んでいく。

 

「き、来たッス……!」

「今度こそ止めるでヤンスよ……!」

 

 ディフェンス陣に緊張が走る中、十六夜は……

 

「構えて……いない?」

 

 なんというか……脱力していた。余計な力は一切入らずそれでいて……

 

「何か……喋っているのか?」

 

 口が僅かに動いている。喋っている……わけではないだろう。話し相手がいない。それなら独り言か……でも一体、何を……?

 

「やはり、ファイアードラゴンの攻めは凄いですね……こちらのディフェンスをあっさり突破していきますよ」

「ど、どうするんでしょう?これでシュートを打たれたら2点差に……!」

 

 十六夜のその様子に気付いているのは私だけだったようだ。ベンチに居る他のメンバーはボールの方を見ていた。フィールド上でも、こちらはボールを持っている相手を、相手はこれから突破するディフェンダーを見ている。

 ……だからだろうか。ゴール前で口角を僅かに上げ、獰猛な笑みを浮かべたアイツに気付いたのが私しか居ないのは。

 

「さぁ、行きますよ!」

 

 ボールを持っていたチャンスウの言葉。その言葉と同時にボールは蹴り出され、アフロディはディフェンダーを突破する。蹴り出されたと同時に裏を取って突破したのだ。

 

「うぉぉおおおおおお!」

 

 飛鷹がパスカットを試みて突撃する。だが……

 

「それくらい読み通りです」

 

 アフロディに向かっていたはずのボールは曲がっていき、その狙いを変えた。そこに居たのは……

 

「ハッ!これで2点差だ!」

 

 バーンだ。飛鷹が釣り出された為に完全にフリーだ。

 

「これで終わ……なっ!?」

「これで1点取れるってシナリオだったか、三流さん?」

「……なんて男ですか……!」

 

 バーンに渡る直前でそのボールをカットしたのは十六夜だった。

 

「キーパーが前に飛び出してパスカットは計算外か?ごめんな、キーパーとしての経験が浅いから飛び出したらいけないタイミングとかよく分からねぇんだわ」

「それぐらいは分かるでしょうに……!」

「じゃ、役目は果たしたんで、あとよろしく」

 

 役目……?気になることを言った十六夜は鬼道へとパスを出す。ボールを受け取った鬼道は……

 

「流石だな」

 

 フィールドの中央でボールを受け取るも……動いていない。一体、どういうことだ?

 

「せっかくの同点のチャンスを無駄にしましたね」

「さぁ、それはどうだろうな」

「パーフェクトゾーンプレス!」

 

 チャンスウが声をかけつつ、必殺タクティクスを発動させる。近くに居た虎丸も捕まってしまったが、鬼道のヤツ……まさか、ワザとパーフェクトゾーンプレスを発動させる隙を作ったのか?でも、アレは十六夜の強引な策でしか破れてはいないんだぞ……?

 

「皆!泥のフィールドを思い出せ!」

「泥のフィールド?」

 

 その言葉の真意を汲み取れず首を傾げる。フィールドでは、十六夜も頭に?を浮かべていた。

 確か、十六夜以外は泥のフィールドで練習をしていた……んだったか?しかし、鬼道は何故その話を……そう思った時だった。パーフェクトゾーンプレスの中から空に向かってボールが打ち上げられたのは。

 

「俺が取る!」

 

 いち早くバーンが反応し、跳び上がってボールを奪おうとする……だが、

 

「凄い……ちゃんとボールが繋がっている……」

 

 先に風丸が跳び上がってボールに追い付くとダイレクトでパスを出す。受け取った選手も、一回トラップをするとすぐさま別の選手へとパスを出す。いつもと違うのは、全員が浮かせたパスを出していることだろうか?

 

「なるほどな……」

 

 泥のフィールド……仮にここが一面の泥沼なら、グラウンダーでのパスは繋がらない。しかもトラップでも地面に落とせば終わり……監督が意図していた破り方はコレだったわけか。

 

「素晴らしい必殺タクティクスです!この戦術をルート・オブ・スカイと名付けましょう!」

 

 目金の声が聞こえてるが、無視でいいだろう。……ただ、気になるのは……

 

「でも監督、何故十六夜先輩を泥のフィールドで練習させなかったんですか?」

 

 と、音無が代わりに質問をしてくれたようだな。

 

「そうですね……十六夜さんなら泥のフィールドで練習していれば、すぐに空が鍵だってことに気付けそうですよね」

「うしし……だってあの人、ペンギンに乗ってよく飛んでいるしね」

 

 立向居と木暮が言うことも分かる。一体何故……

 

「1つは発想を縛ってしまうからだ」

「……え?」

「泥のフィールドで練習したことが、必ずパーフェクトゾーンプレスを破るための鍵になる。その思考に辿り着いてしまうと、それ以外のことに目を向けられなくなる。それを危惧してのことだ」

「……なるほどな」

 

 オーストラリア戦の前にあった練習禁止……あれにはボックスロック・ディフェンスを破るための鍵があった。今回も同じ事があると考えてしまうと、アイツのやった破り方は生まれなかった。縛られないこと……アイツにとってはそれが自身の持つ武器を最大限に発揮できる方法だと監督は考えたわけか。

 

「俺にくれ!」

「分かった!頼むぞ緑川!」

 

 ゴール前へ走っていた緑川にボールが渡る。

 空中でパスを受けた緑川は踵でボールを回転、現れた宇宙空間の中で回転するボールは力を溜めていた。

 

「アストロゲート!」

 

 そして、蹴リ出されたボールは紫のオーラを纏い、地面を抉りながら進んでいく。アストロブレイクの進化版……空中から放たれたその威力は、アストロブレイクを大きく上回り、十六夜との連携技であるアストロペンギン以上に感じた。

 

「大爆発張り手!」

 

 それに対して、張り手が繰り出されるものの張り手をする度に押し込まれていき、爆発と共にボールはゴールへと刺さった。

 

『ゴール!イナズマジャパンの必殺タクティクスがパーフェクトゾーンプレスを打ち破った!そして、ゴールを決めたのは緑川!新必殺技でゴールを決めたぞ!再びイナズマジャパンが追いついたぁ!』

 

「やったな緑川。最高の必殺シュートだよ」

「やるじゃん、緑川。すげぇシュートを完成させたな」

「ありがとな、ヒロト、十六夜。お前たちのお陰で完成できたんだ」

 

 ゴールを決めた緑川に声をかけに行くヒロトと十六夜。ヒロトも緑川も進化している……か。

 

「気に入りましたよ、イナズマジャパン。龍の餌食に相応しい相手です」

 

 この失点を受けても気にした様子がないファイアードラゴン。……パーフェクトゾーンプレスが通用しなくなるのも時間の問題と分かっていたか。ビッグウエイブスの時もボックスロック・ディフェンスが破れてからは戦術を切り替えてきていた。彼らもまた、パーフェクトゾーンプレスが破れたのなら別の戦術に切り替えるのだろうか。

 

「特に鬼道有人、十六夜綾人。龍はあなたたちを倒したくてしょうがないようです」

「あのチェ・チャンスウに認めてもらえるとは、光栄の極みだな」

「ははっ、もっと楽しませてくれよ?」

「フフフッ、最後に戦場の勝者になるのは龍だと嫌でも分かりますよ」

 

 そう宣言してポジションにつくチャンスウ。

 

「それにしても、あのカットは凄かったな。しっかり役目を果たしてくれた」

「ボールを奪う……キーパーが前に出てカットするなんてアイツの辞書にはねぇと思ってな。それにそうじゃなくても、あそこがアイツにとって最善のコースだった。そこを潰しただけに過ぎねぇよ」

「それでも充分だ。ただ、お前が常識的にありえないタイミングで飛び出すことも、これで刻まれただろう。もうこの試合では通用しないんじゃないか?」

「さぁな。まぁ、不用意にはやらないよう気を付ける」

 

 前半残りわずか、ファイアードラゴンのキックオフで試合再開。アフロディ、バーン、ガゼルの素早いパス回しとチャンスウの指揮で一気にイナズマジャパン陣内に切り込んでくる。

 

「コース切れ土方!飛鷹!マーク外すな!栗松、そこじゃ意味ねぇ!」

 

 十六夜からの指示が飛んでいる……が、味方が対応できていない。焦っている?いや……分かっていないんだ。恐らく、相手のやりたいことは確実に見えている。見えていて、そこを潰そうとしているが……潰す側の動きが考慮できていない。

 

「面白い選手だ。私たちの道筋を見えているのに、味方を上手く動かせていない。敵の能力は把握しているのに、味方の能力を把握できていない」

「……っ」

 

(そうじゃねぇ……!こっちは味方の能力も分析済みなんだよ……!何でだ……何で想定とズレるんだ……!奴らのコースは見えているのに……!何で防げねぇ……!)

 

 たまらず十六夜が一歩踏み出さんとすると、

 

「そこだよ!」

「……っ!」

 

 ヒロトが戻ってきてパスカットをする。ボールは弾かれ、コースが変わった。

 

「助かった、ヒロト」

「気にしないで。今の十六夜くんはキーパーでしょ?」

 

 そのままボールは緑川のもとへと渡る。

 

「奪わせてもらうぜ!」

「そうは行くか!ライトニングアクセル!」

 

 緑川の必殺技で相手ディフェンスを抜き去る。

 

「……くっ、風丸!」

 

 ディフェンスを抜き去った緑川は、何処か苦悶の表情を浮かべながら風丸へとパスを出した。

 

「風神の舞!」

 

 そして風丸の必殺技で別の相手を抜き去る。どうやら、今までの試合であまり使われていない必殺技の対応は遅い傾向にあるな。まぁ、十六夜の分析力を持ってしても初見で完璧に見破ることはほぼ不可能だしな。

 

「虎丸!」

「はい!」

 

 ボールは宇都宮に渡る。宇都宮がボールを運び、豪炎寺がその前を走る。

 

「タイガー……!」

 

 そして宇都宮がシュート体勢に入った。彼の必殺技、タイガードライブを放つが向かう先はゴールではない。シュートは空高く上がっていく。

 

「……っ!ストーム!」

 

 そのシュートに合わせたのは豪炎寺だった。爆熱ストームを合わせ、ボールはゴールに向かう。だが、虎が吠えたかと思った次の瞬間。纏っていた炎やオーラは消え失せ、シュート大きく逸れ、ゴールから外れてしまう。

 タイガードライブと爆熱ストームの合体技か……面白いことを考える。決まれば強い合体技。……だが、タイミングが合っていない……か。

 

「……何処見てるんだ?」

 

 十六夜が何処かを見ていた。

 

(やはり、今日の豪炎寺……観客の方を見ることが多いな。前の2つの試合ではそんな素振りほとんど見せていないのに。……どうにも、集中出来ている感じがしない)

 

 その視線を追うも特定できない。一体何処を……と、そう思っていると、ゴールキックで試合再開。蹴られたボールは、チャンスウのもとに。そこには土方と鬼道の2人がブロックに行った。

 

「ならく落とし!」

 

 チャンスウの技が土方を襲う。ならく落としの勢いで吹き飛ばされる土方。だが、運の悪いことに吹き飛ばされた先には鬼道が……

 

「土方!鬼道!」

 

 笛は鳴っていない……2人が倒れているも試合は止まっていない。そんな中、バーンにボールが渡る。

 

「勝負だムーン!正面突破してやるよ!」

「……っ!来い!」

 

 ボールと共に上空へ跳び上がるバーン。最高地点に到達したところで、紅の炎を纏った足でボールの下側を蹴り、縦方向のスピンをかける。アトミックフレアと違う……見たことのない技だ。

 

「進化したのはガゼルだけじゃねぇ!クリムゾンブレイズ!」

 

 ボールがスピンと同時に紅の炎を纏ったところで、バーンがキックの時の勢いを利用して1回宙返りをする。そして、体勢を軽く立て直して全力でゴールへと蹴り出した。ファイアーブリザードの時の動きからゴッドノウズに繋げた感じだろうか。

 紅の炎を纏った足で二度蹴られた事でボールは太陽の様に激しく燃え上がる。時折プロミネンスを吹き出しながら上空よりゴールへと飛来する。

 

「ペンギン・ザ・ハンド!」

 

 そのシュートに右手をぶつける十六夜……だが。

 

「何だよ……この威力……っ!?」

 

 咄嗟に右腕を左手で支えるも、ゴールへと押し込まれていく。そして……

 

「吹き飛べ!」

「クッ……あああああああっ!」

 

 激しく噴き出た炎が右手を弾き飛ばし、十六夜の身体ごとボールをゴールへと押し込んだ。

 

『ゴール!南雲の新必殺技がイナズマジャパンのゴールをこじ開けたぁ!ファイアードラゴンがリードしたぞ!』

 

 ピ、ピー!

 

『そして、ここで前半終了のホイッスル!5-6と壮絶な点の取り合い!激しい攻防の行方は後半に持ち越しだぁ!』

 

 ゴールの直後に鳴り響くホイッスル。前半をリードされて終わり……か。

 

「何てシュートだ……おい」

「ガゼルやアフロディだけが進化したとでも思ってたか?俺も負けてられねぇからよ」

「クソ……」

 

 ガゼルの新必殺技がスピードを強化し、相手に反応させない……十六夜のヴァルターペンギンに近い考えなら、バーンは高い打点から放つことにより、シュートブロックしても届かせないってことだろうか?ただ、2人とも元々使っていた技より威力を桁違いに上げている……見ない間に進化している。

 

「十六夜の背中も遠いが……」

 

 周りに居たはずの奴らも進化を遂げている……か。

 

「軽視していたわけじゃねぇけど……お前も相当な進化を遂げやがったな」

「ああ、そして勝つのは俺たちだ。後半も楽しみにしておけよ!」

 

 フィールドでは十六夜とバーンが話を終えて、ベンチへと戻ってくる。今はイナズマジャパンが勝つために出来ることをするだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十六夜」

「八神か。どうし……っ!」

 

 ベンチに下がると八神が十六夜の傍まで行く。そして、強引にグローブを脱がせた。

 

「痛いだろ。その手」

「……バレてた?」

「はぁ……座れ。冷やすぞ」

「分かったよ」

 

 グローブを取った彼の両手は真っ赤に腫れていた。痛みは感じていたはずだが、それでも予想以上の赤さだろう。

 

「全員集合。後半はメンバーを入れ替える」

 

 監督は全員の顔を見渡すと、メンバーの名を告げた。

 

「緑川、土方、鬼道。お前たちは下がれ」

「なっ!どうしてですか!」

「緑川、無理をし過ぎたようだな。足に来ているぞ」

「……っ!…………はい」

「土方、お前のその足ではこの試合はもう走れない」

「……すまん皆。足を引っ張るくらいなら、大人しく下がる」

「そして、鬼道。お前も最後の土方との衝突で膝を痛めただろう」

「……気付いてましたか」

「下手に庇うように動いては悪化させるだけだ。無理する前に下がれ」

「分かりました」

 

 告げられた交代。今まで以上にベンチは怪我人で埋まっていた。

 

「土方の代わりには木暮。お前が入れ」

「はい!」

「そして、緑川の代わりに不動。行けるな?」

「「「えぇ?」」」

 

 ほぼ全員が驚いたような表情で不動を見る。呼ばれた本人も驚いている状況だ。

 

「へぇ、やっとですか」

「待ってください!不動はまだチームに溶け込んでいません!なぜこの場面で不動を出すんですか?」

「敵は不動を知らない。言うなれば……不動はジョーカーだ」

「ジョーカー?」

「ジョーカーですか。そいつはいいや」

 

 予選が始まってから不動は一度も試合に出なかった。当然、試合映像をいくら見返しても不動だけはどんな選手か分からない。さらに、イナズマジャパンのメンバーの何人かと関わりのあるアフロディ、南雲、涼野でさえも不動のことは知らない。つまり、不動という選手はファイアードラゴンにとっては一切情報のない、読めない選手ということになる。

 

「それなら流れを取れるかもしれない。だろ、鬼道?」

「……円堂」

「いいこと言うねぇ、キャプテン。強いモノは弱いモノを食らって生きる。それが自然界の掟だ」

「……くっ」

 

 そう言うとウォーミングアップを始める不動。

 

「……監督。あと1人は?」

「いや、このまま10人で行く」

「「「えぇっ!?」」」

 

 10人で戦うことに驚くメンバー。円堂を含め、交代枠は後2つあるがどちらも切るつもりがないことに驚きを隠せない。

 

「監督……もしかして、オレはキーパー続投ですか?」

「そうです監督。十六夜の手も限界に近い……」

「キーパーはお前のままだ。変えるつもりはない。それと、指示だが……十六夜、後半は攻めることを禁止する」

「……っ!……どういうことですか、監督」

「そのままの意味だ。攻撃は勿論、守備でもペナルティーエリアから出ることを禁止する」

 

 そう言うとベンチに腰掛ける監督……

 

「悪いんですが、その指示の理由を聞かせてください」

「そ、そうですよ!十六夜くんのお陰でここまで戦えているんですから……!」

「……私は十六夜綾人という選手を過大評価し過ぎていたようだな。はっきり言おう、今のお前に世界一のプレイヤーにはなれない」

「……っ!」

 

 ベンチの空気が重く、冷たいものに変わっていく。

 

「傲慢なプレーを繰り返し、独りで戦い、独りで勝つ……確かにお前のレベルはこの中でも群を抜く。世界にも十分届き、韓国代表の選手と……いや、このアジアのレベルで見ても頭1つ抜けているだろう。お前ほど個人技に優れ、分析力も高く、自由な発想で攻守共に熟せる同年代の選手は世界中を探しても決して多くはない」

「だったら……!」

「……だが、今のお前はチームを勝たせることが出来ていない。サッカーというスポーツで見れば、1点ビハインドで、イナズマジャパンは負けている。お前のその実力を持ってしても負けているのが何よりの証拠だ」

「…………」

 

 拳を硬く握り締める十六夜……手に走っている痛みには気付いていないようだ。

 

「それは……アンタが指示したからだろうが……!」

「そうだな。私はお前にある指示を出した。お前が、引き分けや勝っている状態で点を決めることを禁止するとな。それにキーパーをやれと指示を出したのも私だ」

「……っ!監督、それって……!」

「前の試合でも、十六夜だけ体力を温存させ……この試合でもですか」

「で、でもそれって、俺がキーパーだったら……」

「お前がキーパーだったとしても現状は変わらなかっただろう、立向居。そもそもの話だ。キーパーで出場している選手にとって、私の指示は縛りにもなっていないはずだ。違うか?」

「…………」

「はっきり言おう。お前は高い実力を有しながら、世界レベルの武器を持ちながら、それでも勝てていない。このチームが勝つことが出来ていないのは、円堂が出場してないことでも、他の選手がトラブルを抱えているからでもない。お前だ、十六夜綾人。お前が果たすべき仕事が出来ていないことを自覚しろ」

 

 ダンッ!

 

 床に拳をぶつける十六夜。普段では見られないその姿に周りも声を掛けられないでいた。

 

「頭、冷やしてきます」

「好きにしろ」

 

 そして、そのままベンチから去って行く十六夜。

 

「1つ言っておく。後半のあの指示の期限は、ある時が来るまでだ。それに気付けなければ、お前にはチームを離れてもらう」

 

 その声は届いたのか届いていないのか。

 

「か、監督!確かに十六夜は慣れないキーパーでかなり失点をしたかもしれません!でも、いくら何でも厳しいんじゃ……!」

「今のお前には物申す資格はないぞ、円堂。アイツをあそこまでさせた原因の一端はお前だぞ」

「……っ!俺が……?」

「付き合いの長いはずのお前が、キャプテンであるお前が、アイツの問題点を爆発するまで気付けなかった。……お前にとって、多くの者にとってはこの試合でいきなり爆発したように思えるが、予兆はあった。……それにお前は気付けなかった、感じ取れなかった。名ばかりのキャプテンが率いるチームでは、未来はない」

「…………」

 

 重い空気がハーフタイム中のベンチを包み込む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響木さんは、十六夜の過去を知っていますか?」

「十六夜の過去……か。よくは知らないが、急にどうしたんだ?」

「私には、彼という選手の思考がどうしてもただの中学生には思えないんです。特に、チームプレーを重んじていた雷門に在籍しながら、彼の中には一人でというのが根強く存在している……そう思えまして」

「アイツは俺も出会った時から一人が多かったな。なんというか……チームで浮いている訳でも孤立している訳でもないのに、一人に感じた。……ただ、アイツが話さない以上分からない。それに……」

「両親の死がきっかけの可能性もある……ですか。確かに、安易に踏み込むべき問題ではありませんね」

「……それにしても厳しいことを言ったな」

「今の十六夜はチームに必要ありません。それは事実ですので」

「難儀な選手だな……そして、扱いの難しさを再認識させられる」

「一番厄介な選手ですね。このイナズマジャパンのメンバーで……いえ、今まで見てきた選手の中でも異質に感じる。他の選手もですが、特に彼はどうするのが最適なのか悩むばかりです」

「悩んだ結果がヤツの問題を無理矢理浮上させ、爆発させた……か。確かに、アイツの問題を放置したままでは世界で戦えない。今、爆発させなければもっと深刻化していたかもしれない。……だが、久遠。お前にしてはだいぶ甘かったんじゃないか?」

「…………」

「普段なら、あそこまで言わないだろう?それだけ、十六夜に期待しているってことか?」

「……彼ほどの選手がここで潰れてしまうのは惜しいですからね。ですが、撤回する気はありません。もしもの時は……容赦なく切り捨てます」




原作よりも悪化したハーフタイムです。
ここに来て主人公の爆弾が……ただえさえ、問題が多いこの試合にとびきりの問題を持ち込んで……さて、どうなるんでしょうか?
そして、十六夜の価値観の形成理由・過程は絶対監督たちじゃ分からないんですけどね。まさか、この世界に来る前に原因があるなんて想像できるわけがない。両親ではなく、自分の方が死んでいるなんて思うわけがない。
さて、そんな十六夜くんの過去を挟もうかどうしようか迷い中……って感じですが一応補足しておくと、前の世界で十六夜くんは特別な存在というわけではありません。特別な過去みたいなのはなく、取り巻く環境が性格形成に影響しただけのどこにでも居る一般人です。


次回サブタイトル、見えていないもの

習得必殺技紹介

アストロゲート
シュート技
使用者 緑川
ゲームで習得本編未登場の緑川のシュート。この世界線では無事に習得し、ゴールを飾った。


クリムゾンブレイズ 
属性 火 
成長タイプ V 
シュートブロック可 
使用者 南雲
涼野が新必殺技グレイシャルレイドを完成させた事に対抗心を燃やした南雲が自らの持ち味である高い跳躍力を最大限生かす形で開発したシュート技。
ボールと共に上空へ飛び上がり、最高地点に到達したところで紅の炎を纏った利き足でボールを蹴って縦方向のスピンをかける。ボールがスピンと同時に紅の炎を纏ったところでキックの勢いを利用して宙返りをしてから全力でゴールへと蹴り出す。紅の炎を纏った利き足で二度蹴られた事でボールは太陽の様に激しく燃え上がり、時折プロミネンスを吹き出しながら高角度でゴールへと突き進む。
アトミックフレアに比べて一工程多く踏んでいる事から発動までの時間が伸びてしまっているものの、威力は大幅に増している。また非常に高い位置からシュートする為に相手DFからの妨害を受けにくい上、上空から放たれるタイプのシュートをこの必殺技で即座にブロック、カウンターシュートに繋げる事も可能。

h995様より頂きました。ありがとうございます。
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