ファイアードラゴンのスローインで試合再開。ボールは……
「やっぱりここでお前が持つよな……アフロディ」
「流石の読みだね。キーパーよりディフェンダーの方がずっと厄介だ」
再びアフロディと向き合うことに。さっきの宣言の通りか、ヘブンズタイムを使う素振りは見られない。
「どうする?ここは通させねぇけど?」
「そうだね……通してもらえなさそうだ」
「……っ!南雲だ!南雲につけ!」
アフロディの後ろから挟み込もうとした鬼道が叫ぶ。その声を聞いて、アフロディは……
「流石だね……鬼道くん。でも、遅い!」
逆サイドへ大きくボールを蹴った。そこにはディフェンダーの裏をかいて走っていたバーンの姿が……
「行くぜ円堂!ゴールは俺が決める!」
ボールを受け取るとすかさず空高く打ち上げる。そして、シュートの体勢に入った。
「クリムゾン――」
「やらせない!」
そこに割って入ったのは風丸だった。鬼道の指示を受け、持ち前の俊足で追いつき、シュート体勢に入っていたバーンからボールを奪うことに成功する。
「飛鷹!」
空中でボールを確保した風丸は、近くに居た飛鷹へとパスを出す。風丸の身体の向きは丁度自陣のゴールを向いている。あの体勢では前線へとクリアすることが出来ないと判断し、フリーの飛鷹に渡そうとしたのだろう。
……だが、
「……飛鷹?」
来たボールを蹴ろうとして、空振ってしまう飛鷹。ボールはそのまま転がり、ファイアードラゴンのコーナーキックとなってしまう。
「くっそぉぉぉ!」
頭を抱え、悔しさを表す飛鷹。……なんというか、今日の飛鷹のプレーはミスが目立つというか……負の連鎖が起きている気がする。ミスしてはいけないのにミスをしてしまう……ミスが怖くて、ミスに対し敏感になり、いつもよりも力が入ってしまい結果ミスをする。
「コーナーキックだ。ここ凌ぐぞ」
「「「おう!」」」
「アフロディ、南雲、涼野をマーク。チャンスウにはオレがつく」
「分かった。任せたぞ」
素早く指示を出していく。ここで1点決められるわけにはいかない……何としても守らなくては。
「うまくいかねぇ……!このままじゃただの足手まといじゃねぇか……!」
「何を怖がっているんだ?飛鷹」
「そんなことは……っ!」
誰が誰のマークをするか確認をしている中、円堂が飛鷹に声をかける。
「失敗したって格好悪くなんかない。本当に格好悪いのは、失敗を恐れて自分のプレーをしていない今のお前だ!」
「キャプテン……」
「思い切りプレーしてみろ!失敗したっていいじゃないか!今のお前を全部ぶつけてみろ!」
円堂の言葉に対し、何処か吹っ切れた様子の飛鷹。
「キャプテン……そうだ、失敗がなんだ!俺は飛鷹征矢だ!」
流石というか、アイツの言葉には人を動かす力でもあるのかね。とりあえず、飛鷹に関しては心配ないだろ。仮にまたミスしてもフォローすればいいんだから。
コーナーキック……ボールを蹴るヤツが助走し始めたタイミングで、動き出したヤツがいた。
「やっぱ、受け取るのはお前だよな?チャンスウ」
「よく読み切りましたと言っておきましょう」
ショートコーナー……軽いパスぐらいの感覚で蹴られたボールを取りに行くチャンスウとオレ。
「ゴールの方は向かせねぇぞ」
チャンスウの1歩分後ろを走りゴール側を向かせないようにする。フィニッシャーはあの3人だが、いずれもゴール前に居る。コイツにボールをあげさせないよう、ここで追い込めば勝ちだ。
「そうでしょうね。でも、向く必要はありませんよ」
「クソ……想定よりお前らのところのフォローが早いな……!」
チャンスウはダイレクトでボールを横に弾いた。その先には走り込んでいるサイドバックの陰が……
「釣り出された……ってことか?」
「あなたがディフェンス陣の中では厄介ですので。私に釣られればよし。釣られなければ、私が別の策を立てるまでです」
「どのみち、お前を好きにさせない選択肢しかなかったわけか」
「そういう事です。あなたが後手に回らざるを得ない以上、この駆け引きは私が勝つのは決まっていました」
そして、サイドバックからゴール前へと大きくボールがあげられた。
「決めなさい!」
跳び上がる3人……最初から自分たちのもとへボールが来ると分かっていたようでシュート体勢に入っている。
「……でも、オレがお前との駆け引きに負けても、イナズマジャパンは負けねぇよ」
「ほう……彼に何か出来るとでも」
「見てなって」
そんな中、1人の陰が空中に居る3人へと突っ込んでいった。飛鷹である。
「うぉぉおおおお!」
そして、3人の前で足を振り抜く。すると、蹴った軌跡には紫の謎の空間が生まれ、その空間にボールが引き寄せられる。
「真空魔!」
ボールは飛鷹の足下におさまった。そして、大きく前線へとボールをクリアする。
「……なんと、こんな事が……!」
「おぉ、すげぇなアイツ」
今日見た中で1番のプレーを見せる飛鷹。
「格好良かったぜ」
円堂の声かけに何処か照れくさそうに答える……もうアイツの心配は必要ないか。
「皆、上がれ!速攻だ!」
円堂の声に応え前線へと走り出す。……残る心配は……豪炎寺だけ……か。
「豪炎寺さん!今度こそ行きますよ!」
「……ああ!」
ボールは虎丸が持っている。
「タイガー……!」
本日何度目かのタイガードライブが空へと舞って行く。そして、そこに合わせるのは当然、豪炎寺である。
「ストーム!」
爆熱ストームが放たれボールはゴールへ……だが、最後はあらぬ方向へと飛んでいってしまった。
相手のゴールキックで試合再開。
「虎丸!豪炎寺!」
相手選手が受け取ったボールを鬼道が素早く奪って、再び虎丸のもとへとボールが行く。
「タイガー……!」
「ストーム!」
放たれる必殺技。しかし、またしてもボールはゴールを捕らえることなく何処かへと飛んでいってしまう。
「何やってんだ……アイツは……」
再び相手のゴールキックで試合再開。ボールはチャンスウが持った。
「ここで決めます!全員、上がりなさい!」
『なんと!後半も残り時間があと少しとなっているこの状況で、ファイアードラゴン全員攻撃を仕掛けるようだ!』
チャンスウの指示でディフェンダーまでもが上がってくる。こちらに取らせないようにするためか、ディフェンダーも巻き込んでダイレクトでパスを繋いで攻め上がってくる。
「来るぞディフェンス陣!構えろ!」
ボールはチャンスウが持った。
「このタイミングでドリブルに切り替えただと?今のはアフロディとのワンツーが最適だろうが……」
「そうですね。でも、最適な行動を取るだけが策ではありません。あなただけは確実に突破しておかないといけないのでね……」
「何だよそれ……まるでオレに確実に勝てると言ってるみたいじゃねぇか」
オレの目の前でボールを止めるチャンスウ。コイツとの1対1は見えていなかったが動き的に……
「ならく落とし!」
チャンスウの必殺技が発動する。だが……
「その必殺技は見切っている」
それは読めていた。フェイントでの突破ではなく必殺技を使うと。
ならく落としは激しい回転をするボールを相手選手にぶつけ、相手を倒して進む技。相手にぶつければ、自分のもとへと帰ってくるようにボールの回転は計算されている。だからこそ、後ろに下がることでボールを避け、通過させた後にチャンスウとボールの間に入れば、落ち着いてボールを取る事ができる。
「えぇ、そう来ると思いましたよ」
「嘘だろおい……!?」
本来、チャンスウは帰ってくるボールを待つためにその場で静止するはず……だが、アイツはあろうことかこちらに突っ込んできた。
「あなたが避けることは想定内……そのために使ったんですから」
「畜生……やってくれるじゃねぇか……!」
「行きなさい!」
空中にあったボールをアフロディへと蹴ってパスを出す。クソ、チャンスウはこちらが必殺技を読んでいると確信して、対策してくる行動を更に対策してって……改めて思うがなんて厄介な選手だよおい……!
受け取ったアフロディ……その後ろにはバーンとガゼルが付いてきていて……
「通さないッス!ザ・マウンテン!」
壁山が必殺技で止めようとするも、生み出された山より高くボールを蹴り上げるアフロディ。そして……
『カオスブレイク!』
ファイアードラゴン最強のシュートが円堂の守るゴールへと飛んでいった。
「円堂!」
円堂は拳を握り締めたまま動かなかった。迫り来るボールに対し、正義の鉄拳を放とうとはしなかった。
「諦めましたか……」
「……いいや」
オレは素早く敵の位置を確認する。今からゴールへ向かうことは愚策。だったら……
カオスブレイクがゴールに迫る中、十六夜はチャンスウから離れ、相手ゴールの方を向いていた。アイツは何を……
「一緒に行くんだ!」
そう思ったとき、円堂の声がフィールドに居る私たちに聞こえてくる。その右手には黄金のオーラが纏っていた。
「だぁあああああ!」
勢いよく跳び上がる円堂。その後ろには円堂と同じ動きをする黄金の魔神が現れる。
そして、右手を振り上げ、ボールが来たタイミングで勢いよく振り下ろす。すると、ボールはクレーターの中心で埋まっていた。
「今のは……?」
ボールは円堂が確保した。しかし、見たことのない光景に戸惑いを隠しきれない。相手もカオスブレイクを止められるとは思っても居なかったようで、戸惑っているのが目に見えて分かる。
「正義の鉄拳を遙かに超える新技……いかりのてっつい!」
いかりのてっつい……そう名付けられた技によってゴールを守った円堂。
「円堂!」
「頼んだぜ!十六夜!」
ボールはセンターライン付近に居た十六夜に届けられる。……まさか、アイツ、円堂が止めると信じて走り出していたのか……?
「……っ!彼を止めなさい!」
チャンスウの指示が飛ぶ。それもそうだ。アイツはアイツで、1人でファイアードラゴンのゴールをこじ開ける強力なシュートを持っている。
「地走り火炎!」
そんなアイツに必殺技が放たれる。炎を纏った相手の蹴り……
「よっと」
それをボールを軽く浮かせ、自身も跳び上がることで回避する。
「十六夜さん!」
アイツの前に出た虎丸からのボール要求の声。豪炎寺も虎丸の近くで準備している……
「…………」
しかし、十六夜は虎丸に出すことなくボールを上空に打ち上げた。オーバーヘッドペンギンを打つ気か?……そう思ったが、アイツは右足に炎をまとわせ、回転しながらボールに向かって跳んでいく。
「あの動きは!?」
「まさか……!」
フィールドに居たものも、ベンチに居たものも十六夜の技のモーションを見て驚愕する。なぜならあの技は――
「ファイアトルネード!」
――豪炎寺修也の代名詞である必殺技、ファイアトルネードだったからだ。
炎を纏ったシュートはゴールへと向かうことなく、ある1人の選手……豪炎寺へと向かっていった。そして……
「豪炎寺!?」
十六夜のシュートは豪炎寺を直撃した。
次回、決着。
習得技紹介。
ファイアトルネード
シュート技
単独の必殺シュートでペンギンが関わらないものでは初である。豪炎寺と違い、右足でシュートを打つ模様。