超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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ペナルティーと約束

 パーティーから一夜明け次の日……オレがバックれたパーティーでは余興として、エドガーと円堂の1対1が行われたらしい。そこではエドガーの必殺技エクスカリバーが、円堂のいかりのてっついを圧倒的な力で砕いたとか。

 で、そんな世界トップレベルのシュートを見せられ、それぞれ思うところがあったらしい。そのおかげか、いつもよりも練習に熱が入っているな……と、グラウンドの外周を走りながらそう思っていた。

 

「後10周」

「うへぇ」

 

 ちなみにオレが走らされているのは、招待されたパーティーを無断で蹴ったことによるペナルティーらしい。いや、だから……ねぇ?前日までに伝えてくれればオレだって、別の約束を取り付けなかったんですよ。当日いきなりじゃなければ……というか、罰で外周を100周するのはやり過ぎなんだと思うんですよ。

 まぁ、そんな余興をするんだったら混ざりたかったという思いがある反面、オレはオレで貴重な経験が出来たなと思うからよしとしよう。うん、走らされていること以外はよしとしよう。

 

「監督ー100周終わりましたよー」

「そうか。それで十六夜」

「反省したか、ですか?」

「いいや、違う。お前はどうだったんだ?」

「……はい?」

「パーティーを蹴って、エドガー以外のAグループの主要……アルゼンチン、アメリカ、イタリアに居る世界トップレベルたちと一足先に戦った感想を聞きたい」

「あー」

 

 どこまでもお見通しなのだろうか?というか、お見通しなら何でペナルティーが発生したんですかね?パーティーを蹴ったからですかね?……まぁ、いいんですけど。

 

「正直、肌で実感しましたよ。……アイツらにはまだ勝てない」

「……そうか」

「でも、あの時……留学していた時よりは確実に近付いている……あの頃とは違って手の届く範囲まで来ている……そう感じました」

「それならいい。目的は果たしてくれたようだからな」

「目的?」

「アジア予選とはレベルが違う本戦……世界の壁を実感することだ」

「そういうことですか。だからパーティーの誘いを受けたんですね」

「あくまでそれも1つというだけだ」

 

 本物の世界の壁というヤツを実感する……そのためにパーティーを受けた。親睦を深める目的もあるだろうが……実際に話すことで得られるものがあるってところだろう。

 

「お前しか知らなかった世界を皆が知った。勝ち上がる為には、自分たちがアジア予選を勝ち上がった猛者……そんな慢心があっては足を引っ張るだけだ」

「……なるほど」

 

 言っちゃ悪いがアジアのレベルは高くない。韓国はまだしも、他のチームはレベルが低い。吹けば飛ぶ紙切れ程度だ。だからこそ、レベルが高くないところを通過したことを誇っていては初戦で鼻が折られ、その後もズルズル惨敗するだけだ。

 レベル的にオレたちは挑戦者(チャレンジャー)。間違っても、相手してやる、待ち受ける側じゃない。格上を喰らってやるって気持ちがないと、負けてしまうだろう。

 

「まぁ、全員目の色が変わった。多かれ少なかれ何か感じたんでしょ。壁の高さを見て恐れるヤツは居ても、自分たちが上だって慢心するヤツはねぇっすよ」

「お前もここからは厳しい戦いになる。同格……いや、今まで居なかった格上が相手に居るんだからな」

「そんなの百も承知です。というか、ようやく面白くなるんでしょ?韓国戦より楽しい試合が待っている……うずうずが止まらないですね」

「お前にとってはビッグウェイブスもデザートライオンも歯牙にかけない、取るに足らない相手だったからな」

「本気を出しても勝てるか分からない……勝算が低い相手……ようやく楽しくなる。そして、格上(そんな相手)が居るってのは負けていい理由にならない……やるからにはオレたちは勝ちますよ」

「それでいい」

 

 オレ個人としても負ける気はないが、何よりイナズマジャパンとして負ける気はない。全勝で一位通過……それぐらいの気概で行く。

 

「おーい、十六夜!キーパー練習付き合ってくれよ!」

「へいへい。じゃあ、行ってきますわ」

「ああ」

 

 ただ、心配なのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜……練習も終わり、夜ご飯も食べ終えた後、砂浜に十六夜と共に来ていた。

 

「なぁ、八神……オレさ。改めて思ったんだ」

「何をだ」

「世界一になりたい……イナズマジャパンとしてFFIの頂点に立ちたいって」

「今更何を言い出すかと思えば……」

「はは……まぁ、これは再確認だよ。……そして、イナズマジャパンとしてFFIの頂点に立った後は……オレ個人はサッカー選手に、プロの選手になりたいって」

「意外だな。お前の実力だから、昔からサッカー選手になりたいと思ってプレーしているかと……」

 

 十六夜のプレーの技術はもちろん、圧倒的なまでの練習量……てっきりプロを目指しているものだと思っていたが……

 

「前はさ……何というか、夢も目標も無かったんだよ。負けたくないからやっていただけで自分からってのはなかった……その先になりたいものがなかった。ようやく……この世界でオレが本気で目指したいものが見つかったんだ」

「そうか……それはよかったな」

 

 やはり意外……という言葉しか出てこなかった。夢も目標もない……この男はこう見えて勉強も欠かさずやっていたらしいし……たとえサッカー選手になる気がなくとも、何かはそういう目標があると思っていたんだが……

 

「……それで何だけど……オレのことどう見えてる?」

「はぁ?急にどうした?」

「……何て言うか……こう言う言い方をするとアレだが、オレは徐々に戻っている感じがするんだ。お前と……円堂と出会う前の自分に」

「…………」

「だから、怖いとか冷たいとか……」

 

 私は思い切りヤツのケツを蹴り上げた。

 

「いてっ!?ちょっ、何故蹴ったし!?」

「お前は過去を語りたがらないから、触れないようにしてきたつもりだからそんなこと知らん。お前が昔、出会う前はどんな人間だったかなんてよく分からん」

 

 家族が居ない男の過去だ……何か隠したい重いこともあるんだろう。私たちに通ずる何かがある……安易な気持ちで踏み入れてはいけない空間だろう。

 

「だから、今の私の主観で語らせてもらう。お前はクソほどマイペースだ。協調性皆無のトラブルメーカー。頭が良いクセしてバカなことを言うし、よく分からんことをやる。常人じゃ思いつかない奇抜なアイデアを平然と出すし、平然とやってのける。特に最近の試合中なんかは口が悪いときも多いし、性格が悪いって言われても仕方のない言動もあるだろう」

「…………」

「私はお前のことを完璧とも思わないし、超が付くほど善人とも思わん。裏があるし、黒い面もあるだろう。怖いとか冷たいとかそういうマイナスな面もあるだろう」

「そうだな……」

「……だけど、人ってそういうもんだろ?全員から好かれる善人なんてまず居ない。私だってそうだ。私だってプラスな面だけじゃなく、マイナスな面もあるだろう。お前からすればよく分からんこともあるだろう」

 

 私は十六夜綾人という人間を完全には理解していない。むしろ、分からないことだらけだろう。彼女として、近くに居る者として、同じイナズマジャパンのメンバーとして、一人のサッカープレイヤーとして、知らないことも多いだろう。だが……

 

「私は知っている。お前の性格がどれだけ悪かったとしても、過去に何か隠したいことがあったとしても……お前のサッカーに対する努力は知っている。お前の家に居たときに見たボロボロでも丁寧に磨かれたスパイク……色が禿げ落ちて補修跡があるようなボール……あんなのは1日2日で出来たものじゃない。ずっと練習し続けないと出来ないものだ。それに、ちょっと目を離すとすぐにサッカーのことをやってるし考えている。ずっと前からお前の練習に付き合って、何だかんだ言いながらも、私の拙い指導をモノにして上達してきた……一朝一夕じゃない。何日何ヶ月と、私はこの世界において、お前のそんなサッカーに対する姿を1番近くで見てきた自信がある」

「……っ!」

「だから私は十六夜綾人という人間は誰よりも努力出来る人間だと思う。怖いとか冷たい面があっても、私はお前の真摯な面を知っている。……だから、私はお前のことを好きになったんだ。1番近くでお前のことを見てきて、お前のそういう姿に気付いたら惚れていたんだ」

 

 最初はエイリア学園の計画に使えるか、或いは立ちはだかる壁になるのか……たったそれだけの事だったのに、気付けば大切な存在になっていた。私にとって大きな存在へと変わっていった。

 

「……だから、それくらいで離れはしない。もちろん、お前の行動を、プレーを全部肯定するようなバカになる気はない。お前が道を外してると思えば蹴り飛ばしてでも戻してやる……だから、やってみろよ十六夜綾人。見せてみろ、お前の全てを、本気のプレーを。この先、プロを目指すんだろ?プロは手を抜いて戦い抜ける程甘くはない世界だろ?」

「……そうだな。その通りだな……マジで」

「やり過ぎたら意地でも戻してやる。お前がもし暴走しようものなら全力で止めてやる」

「助かるわ……それなら安心してプレーできる。安心して自分(本気)を出せる」

「そうだろ?」

 

 バシン!

 

 思い切りヤツの背中を叩く。何処か暗い表情を見せる馬鹿が、いつも通り前を向けるように。少しでもこの男を縛るしがらみがなくなるように。

 

 バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!

 

「って痛いんですけど!?こういうの1回で良いんだって!ちょっ、やり過ぎだって!」

「でも、余計なことは吹っ飛んだだろ?」

「大事なことも吹っ飛ぶわ!」

「お前はごちゃごちゃ考えすぎなんだよバカ」

「たく……でも、ありがとな。最高の彼女だよ、()()

「……っ!」

「ちょっと練習するから付き合ってくれよ」

「……ふん。言われなくても付き合ってやる」

 

 十六夜綾人という人間にはきっと何かある……何かとんでもない秘密がある。でも、たとえどんな秘密を抱えていようと私は……

 

「お前を信じ、支えてやるさ。()()の彼女としてな」

 

 私がお父様を傷つけようとしたとき、自分の身を挺して止めてくれたんだ。私たちを止めるために、危険な潜入活動を行い、戦ってくれたんだ。その姿が嘘だと思えない。だから……私は私の出来ることをしたい。




十六夜綾人は戻り始める……だが、同時に進もうとしている。
彼が選ぶのは破滅か光かそれとも……
次回、ナイツオブクイーン戦スタート。
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