超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSナイツオブクイーン ~剣VS盾~

 ナイツオブクイーン戦当日の朝。オレは……

 

「うん、中々の味だ」

 

 厨房にて、調理担当と一緒に朝食を作っていた。

 

「こんなところに居たのか、十六夜」

「おはよ、八神」

「他の奴らは練習しているぞ」

「知っている。皆、試合前からやる気十分だな」

 

 初戦ということもあってか、朝食前からほとんどの者が既にウォーミングアップに外へと出て行った。

 

「お前は……って聞かなくても分かるか」

「過去のデータのインプットは終了している。軽く走って身体も動かした……ウォーミングアップなら済ませたな」

「……で?今日の試合は勝てそうなのか?」

「さぁな」

「さぁなって、お前なぁ……」

「韓国戦の前はイナズマジャパンはチームとしていくつか問題を抱えていた。相手が格上ってこともあって、あのままじゃ負けると思っていた」

「ふぅん。今は?」

「お前も分かるだろ?確かに世界からすれば日本のレベルは低いって思われている。……だけど、雷門ってチームが強い相手との試合の中で成長を重ねて来たように、このイナズマジャパンも同じ事が言えるだけの可能性を秘めている。……だから、オレからは今日の試合、勝てるとも負けるとも言えない……やってみなくちゃ分からないってやつだ」

「そうか……でも、微塵も負ける気がしないって目をしているが?」

「あ、バレた?……やるからには勝つ。というか、最初から負けると思って試合なんかしねぇよ」

「……まったく」

「それに、エドガーは情報に違わずすげぇヤツなんだろ?恐らく過去のデータ(予選の時)よりレベルアップしている……そんな相手にどこまでやれるか。早く試合したくてうずうずしている」

「まぁ、お前がパーティーに参加していれば、会えたんだけどな」

「あはは……それは言わないお約束って事で……もう散々言われたんで……っと」

 

 完成っと、後は揃うまで待つかぁ……

 

「でも、世界大会というだけあってすごい規模だな。まさか、試合会場は近くの島に作られたスタジアムとは……」

「それはオレも驚いた。開会式で使ったタイタニックスタジアムは決勝トーナメントまで出番がないらしいし、今日だとウミヘビ島に作られたウミヘビスタジアムが会場なんだろ?他にもそれぞれの島にそれぞれのスタジアムが作られているし……」

「しかも、それぞれのスタジアムもかなりの大きさ。どれだけ金がかかっているのやら……」

「だな。この島を買い占めてこんな改造したのにも驚きなのに、近くの島々まで買い占めてスタジアムを作るとか……流石の一言だ」

 

 正直、タイタニックスタジアムだけでも日程的には回せるように調整出来るだろう。だが、色んなスタジアムで開催……しかも、各国専用の船まで用意してくれている。ほんと、どれだけ金かけているんだろうか。

 

「もしかしたら、FFIが終わった後も何らかの形で使うんだろうな。というか、一度きりだったらいよいよ金の使い方がヤバい」

「私たちでは想像の出来ない世界だな」

「おはよ!あれ?十六夜、練習は?」

「あー軽く走って飯作ってた」

「お前……いや、それでこそ十六夜か」

「だな。十六夜なりに気合い入ってるんだろ」

「ははっ、とりあえず座れよ。冷めねぇうちに食おうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 船旅を終え、ウミヘビスタジアムにやって来た。そして、グラウンドにてアップを開始するオレたちイナズマジャパン。……まぁ気になるのは……

 

『ナイツオブクイーン!かんばれぇ!』

『イギリスに勝利を!』

『エドガー様~!』

 

 まだ試合前だが……うん。観客の声援がすごい。というより早い。

 

「いやー圧倒的なアウェイだなー」

「そう言いながら、まったく気にしていないだろう?」

「まぁな。オレはオレのプレーをするだけだし」

「ふっ、流石だな。呑まれていないようだな」

「ははっ、そんな柔なメンタルは持ち合わせていないからな」

 

 と、鬼道と話していると……

 

「君がイザヨイアヤトだね」

「そうだけど……そっちこそエドガー・バルチナスだな?」

「その通りです。キミだけはパーティーに不参加だったからね。試合前に挨拶をと思って」

「それはそれはご丁寧に……パーティーの件は悪かったな。せっかく誘ってもらったのに」

「いえいえ。私たちも当日の朝に伝えましたからね。都合が悪いこともあるでしょう。……いい試合にしましょう」

 

 そう言って手を差し出してくる。握手ってことか。

 

「こちらこそ、よろしくな」

 

 差し出された手を握り返す……ん?

 

「では、これで」

 

 そして、去って行くエドガー。

 

「試合前に挨拶出来ていなかった選手に挨拶か……」

「そういうところを見るとやっぱり、紳士って感じだな……十六夜?」

 

 さっきまで話していた鬼道と、近くで見ていた豪炎寺が声をかけてくる。

 

「……どうやら、向こうの紳士様はかなりお怒りらしいな」

「……どういうことだ?」

 

 握手した手を見つめる。……うん、これはそういう事だろう。

 

「アイツ、笑顔で握手の手に力を込めていた……やれやれ。どうやら、パーティーを蹴ったことを根に持っているらしい」

「まぁ、その件はお前が悪いからな」

「うぐっ……し、仕方ねぇだろ……もっと前から約束してくれよ……」

「どうだかな」

「うぐぐっ……」

 

 信用ねぇ……仲間からの信用がないんだけど?

 

「というかパーティー1つ蹴っただけで、監督もエドガーも厳し過ぎだろ……」

「まぁ、そう言うな。ただ、やっぱり十六夜の知名度は俺たちより上らしいな。試合前から個人的に宣戦布告してきているあたり……そうだろ?鬼道」

「ああ。十六夜がパーティーに参加しなかったことがバレている……無名の選手が不参加でも相手は気にしないだろうけど、わざわざ言ってきたあたりそういう事なんだろう」

「もし、十六夜がパーティーに居たら、余興の相手は変わっていたかもな」

「あり得るな」

「でも、知名度もだけど、今だけって話だろ?……というか、そんな前評判なんて興味ねぇよ。()り合えば分かる。お前らがホンモノなら徐々に伝わっていくだろ?イナズマジャパン(このチーム)には他にも凄いヤツは居るって」

「そのためにも勝たないとな……あの感じ、負けるとは微塵も思っていないらしい」

「ああ。だが、負けられないのは俺たちも一緒だ」

「勝とうぜ。アイツらに……そして、世界に知らしめてやろう」

 

 そして、アップの時間も終えて、ベンチに集合する。そして……

 

「スターティングメンバーを発表する」

 

 恒例のというべきか、必要な通過儀礼というべきか、今日のスタメン発表である。

 

「FW、豪炎寺、宇都宮。MF、基山、鬼道、土方、風丸。DF、綱海、壁山、十六夜、飛鷹」

 

 おっと、初めてだな。最初からDFとは……

 

「ゲームキャプテン兼GK、円堂。以上だ」

 

 ……世界大会だから出し惜しみはなしってことか。

 

「いいか。全力で戦い、勝利を掴んでこい」

「「「はい!」」」

 

 久遠監督の言葉を受けて、円堂以外の10人がフィールドへ。円堂は、キャプテンとして、審判のところに行き、キックオフを決めるコイントスを行っている。

 

「イナズマジャパンのキックオフか……幸先よく行きたいな」

「わわっ……き、緊張して来たッス……」

「やろうぜ、壁山。全力を見せ付けてやろう」

「は、ハイッス!」

 

 解説では、ナイツオブクイーンとイナズマジャパンについてそれぞれ言っている……が、メインはエドガーとおまけでのオレの紹介。エドガーの凄さが改めて伝わっただけだな。解説も一応中立的な立ち位置では居るんだろうが、心の中ではナイツオブクイーンが勝つと予想しているのだろう。

 

「あれ?十六夜、お前手袋なんてしてるのか?」

「フィールドグローブってヤツだよ」

「はぇー……そんなのもあるんだな」

「まぁ、ウチのチームでしているヤツいねぇし。ちょっと気合を入れるためにな」

「ははっ!お前も世界大会で乗ってるってことか!」

 

 綱海から背中を叩かれる。グローブを付けていることに意味があるかは分からない。ただ……

 

「こういうのは形から……ってな」

 

 円堂もポジションについたので、改めて気を引き締める。

 

 ピーー!

 

 ホイッスルが鳴り試合開始。ボールは鬼道が持った。鬼道がドリブルで突破し虎丸へ渡る。そして、虎丸から豪炎寺へとパスを出す……が。

 

「へぇ……」

 

 そこを相手チームの5番がパスカットをする。なるほど……読まれていたか。そして、そのプレーで湧き上がるイギリスのサポーターたち。

 

「土方2歩下がれ、風丸ボール持っているヤツにサイドからタックル、綱海とヒロトはそれぞれFWの選手のマークを」

「「「おう!」」」

「飛鷹、3メートル先だ……今、行け」

「おっす!」

「ナイス、そのまま鬼道へ」

「ほぅ……味方を動かしてパスを出させましたか」

 

 飛鷹がカットしたボールを鬼道に渡す。そのまま鬼道がパスを出すもカットされてしまう。その後も、シュートを打たれる前に味方がボールを奪うも、出したパスは悉くカットされてしまう……流石というか、レベルが高いな……こっちの攻めが通用してない。

 

「十六夜さん、攻めなくていいんッスか?」

「まだだ……もう少し見てぇ」

 

 DFであっても攻めることが多いからか、攻めずに最終ラインに居ることに疑問を持ったらしい。こちらが得ている情報は古いもの……現在の情報との差を埋めておきたい。ズレがあっては致命的な読みのミスへと繋がりかねない。

 そんなことを思って指示と分析をしていると、ボールはエドガーに渡った。

 

「受けてみよイザヨイ!この聖なる騎士の剣を!」

 

 エドガーが一回転し右足を大きくあげる。すると、オーラが巨大な剣を生成し、まるで足から剣が生えているようだ。

 

「エクスカリバー!」

 

 そして、その剣――エクスカリバーを振り下ろし、ボールは衝撃波とともに地面を切り裂き進んでいく……

 

『出たぁ!エドガーのエクスカリバー!』

「いいぜ……受けてやるよ。エドガー」

 

 わざわざ名指しで挑発し、オレの正面に来るように打ってくれたんだ……ここで逃げるわけには行かない。

 

「ダメだ十六夜!それは円堂ですら……」

 

 ピー!

 

 仲間の静止する声に聞こえないふりをして、ペンギンを呼び出す。相手が剣ならこっちは盾だ。

 

「アイギス・ペンギンV2!」

 

 12匹のペンギンたちが現れ、6匹ずつに分かれ盾を2つ生成する。2つの盾が重なってボールを受け止めようと待ち構える。

 

「……っ!予想以上のパワーだなぁ……!」

 

 盾とシュートがぶつかり合う。少しずつ押されていき、1枚目のパリンッと音を立てて砕け散る。

 

『防ぎました!なんと十六夜の必殺技がエドガーのシュートを防いだぁ!』

 

 2枚目の盾はヒビが入ったものの砕かれることなく、ボールを止めた。そして、足下に転がるボール……

 

「止めましたか。少しはやるようですね」

「これで少しか……まぁいいけどさ」

「そろそろ動いたらどうです?あなた方については、大体掴めて来ましたけど?」

「こっちも分析はほぼ完了した。早くお前の手の内も晒して欲しいものだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十六夜の進化させたアイギス・ペンギンがエドガーのエクスカリバーを受け止めた。

 

「さ、流石は十六夜くん……いかりのてっついですら止められなかったものを止めるとは……」

 

 ベンチ、観客、フィールド……驚いていないのは止めた張本人と撃った張本人だけだろうか。挨拶代わりの一撃なんだろう。ただ、それでもエドガーの必殺技をディフェンダーである十六夜が止めたと言うのは、衝撃として会場中に伝わっている。

 

「でも……何であんな凄い技があったのに、韓国戦では使わなかったんだろう?」

「あ……そう言えば。アレを使えばカオスブレイクも止められたんじゃ……」

「使えなかったんだよ。十六夜は」

「どうして?」

「あの技は確かに強固だ。進化して2枚になっていたが、多くのヤツは1枚目を砕くことすら出来ないだろう」

「確かにそうですね……じゃあ、やっぱり何故使わなかったんですか?少なくとも7失点もしなかったと思いますが……」

「あの技の欠点は2つ。1つ目は正面に来たシュートしか使えないこと。あくまで盾を生成し、支えるのはヤツ自身……正面以外への対応が遅れてしまうこと。そして、2つ目はあの必殺技は十六夜が支えて止めるということ」

「それが、どうしたら使えないことに繋がるんですか?」

「今も十六夜自身がシュートの威力で後ろに下げさせられたように、盾が砕けなくてもゴールになってしまうことがあることだ」

「なるほど……止める位置が後ろ過ぎると、ボールがゴールに入っているかもしれないんですね」

 

 だからあの必殺技はディフェンダーとしてシュートを防ぐ分には使えるが、キーパーとして使うには不便な面がある。だからこそ使えなかったんだろうと推測される。それに加え、手が限界を迎えていたから支えられなかったんだろうな。

 十六夜がエドガーの必殺技を止めた……だが、あくまでそれだけ。こちらのパスコースは読まれ、攻めることが出来ていない。そして更には……

 

「何ですか!?あのフォーメーションは!?」

 

 ナイツオブクイーンのフォーメーションが変わる。具体的には5人の選手がVの字を作るような感じになっているが……っ!

 

「次から次へと……!」

 

 Vの字のとがった部分に位置する選手を躱しても、次の選手がすぐにやってきて、それを躱しても次が……攻め手に息もつかせないような連続プレスをかけてくる戦術。

 

「アブソリュートナイツ」

 

 アブソリュートナイツ……そう呼ばれた戦術の前に、攻め手を失ってしまうイナズマジャパン。

 

「反撃開始です」

 

 向こうの監督の指示で攻め上がってくるナイツオブクイーン。

 

「な、何ですかあの戦術は……」

「…………」

「どうしたの?八神さん、気になることでも?」

「いや、十六夜のヤツが大人しいなって」

 

 ディフェンスになると十六夜が的確な指示を出す。韓国戦で使った未来視によって、味方がパスカットやブロックすることで、さっきのエドガーのシュート以外に相手のシュートはない。双方、攻撃がすべて止められている形だが……

 

「十六夜がほとんど動いていないな」

 

 アイツは指示しか出していない。自分がブロックに行くことなく、攻撃を防いでいる。それにまだ、さっきのシュート以外にボールに触れてさえいない。ディフェンスとはいえ、攻撃にも参加していない……今までの試合のせいか妙に大人しく感じるな。

 

「ただ、それはエドガーも同じ……か」

 

 エドガーもほとんど動きを見せていない。水面下での探り合いが行われていると見るべきか。嵐の前の静けさ……試合はそんな予感を思わせる立ち上がりで進んでいくのだった。

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