ナイツオブクイーンのキックオフで試合再開。
「いい加減、
「奇遇ですね。私も
エドガーにボールが渡った瞬間に詰め寄る十六夜。
「オレと
「その
エドガーのフェイントに十六夜がギリギリついて行く攻防……最初こそ、今までと同じ展開に見えたが徐々に、十六夜側から仕掛けることが多くなる。
「……っ!」
「潰す……壊す……!」
「バケモノ……!」
「るっせぇ……
「
十六夜のタックルに反応してエドガーもタックルを返す。ハンドワークで間合いに入ろうとすると、エドガーも自身の腕を使って、十六夜を振り払う。奪うにはあと一歩が足りない。だが、その一歩を埋められる要素がない。
「未来……分析……構築……遅い……まだ遅い……!もっと……もっと早く……!」
「…………っ!」
ボールに僅かに触れる十六夜。しかし、咄嗟に所有権を戻すエドガー。激しい攻防は誰も近づけさせなかった。
(何だこの
(足りねぇ……!もっと早くしろ……!こんなスピードじゃ通用しねぇんだよ……!全てを見ろ……情報を叩き込め……エドガーの行動を読め……オレの勝つための未来を構築しろ……!)
「…………っ!」
ベンチにも伝わってくる気迫……何だ?今までの十六夜とは決定的に違う……暴走?違う……もっと何か……十六夜綾人が何かを掴もうとしている……?
(これ以上はマズい……!この男が何かを掴み始め、加速度的に進化し始めた……!)
この試合の中で初めてエドガーが苦悶の表情を浮かべる。そして、意を決したような感じでエドガーから仕掛けた。
「……読まれた……!?」
エドガーのフェイント……ボールは伸びてきた足によって、弾き飛ばされた。弾いたのは十六夜。弾かれたボールは……
「鬼道くん!」
相手に取られるも、
「十六夜!」
既に十六夜は走り出していた。その先へとパスを出す鬼道。だが……
「ここは通させない……!」
トラップのために減速したその隙に、滑り込むようにしてエドガーが十六夜の前へと立ち塞がった。なんて切り替えの早さ……互いにこうなることが分かって、次の行動に移していたというのか……!?
(読まれた……?いや、なんて反応だ……!試合最初とは比べ物にならない……!まさか、十六夜のプレーに合わせてエドガーもレベルを……!?)
エドガーに余裕はない。いや、十六夜にも余裕がない。ギリギリの攻防、どちらが勝ってもおかしくない。
世界トップレベルのプレイヤーは本職以外も高いレベルで熟せる……今まで、誰も止めることが出来ない十六夜の突破を紙一重で止めている。
「…………っ!」
「ルーズボール!」
フェイントからのノールックキラーパス。誰にも読めず、誰にも防がれないはずのそれに、エドガーは僅かに反応し、足を掠めさせた。
「仕切り直せ!あの2人に近づけるな!」
フィールド上に居る異次元の存在の2人……そこにボールが渡ってしまえば誰にも展開が読めない。そう判断し、不動は僅かにコースが逸れたボールを確保しつつ人を動かし始める。
「ああ!行くぞ!デュアルタイフーン!」
鬼道もそれに呼応するように指示を出す。必殺タクティクス……ボールを動かし続け、相手に触れさせない。しかし、相手も喰らいついてきて、中々隙が生まれない……互いのチームの
「こっちだ!」
「エドガー!」
「狩る!」
「クッ……!」
何とかボールを奪った相手選手からエドガーへのパスを十六夜がカットし、弾いたかと思えば……
「へい!」
「十六夜さん!」
「そこだ!」
「ッチ……!」
十六夜がパスを受け取り、トラップした瞬間を狙ってボールはエドガーによって蹴り飛ばされる。互いがぶつかり合い、互いを最大限警戒し、互いにボールをキープさせない。その上、互いに相手チームからボールを奪うために最善を尽くそうとするため……
「そっちは危険だ!」
「一回戻すんだ!」
2人の司令塔が戦場で暴れる怪物たちから遠ざけつつ、パスを回そうとする。ただボールを狙って暴れるだけならまだ可愛いものだ。2人が互いのチームの最適を潰すように動くため、思うように攻め切れず、決定的な隙が見えない。
試合終了が刻一刻と近付いてくる……リーグ戦だから当然延長戦はない。引き分けなら引き分けで終わるだけ。……だが、5チーム中2チームしか決勝トーナメントに上がれないと考えると、ここでの引き分けは後に響いてくる。そのことはお互い分かっているだろう。その上で互いに譲れない、負けられない、勝ちに行く……
「染岡!」
そんな中、鬼道から染岡へとボールが渡った。
「行け!染岡!」
ブロックに来た選手を躱し、フリーになる。ゴールを狙える位置……得点のチャンスがやって来た。
「ドラゴンスレイヤー!」
染岡の必殺シュートが放たれる。彼のシュートは誰にも遮られず、相手ゴールへと……
「負けるわけには行かない!」
向かっていく……誰もがそう考えた中で、割って入ったのはエドガー。彼は右足を振り上げ……
「エクスカリバー!」
エドガーのエクスカリバーと、染岡のドラゴンスレイヤーがぶつかり合う。
『信じられない!ドラゴンスレイヤーを蹴り返しましたぁ!』
そして、勝ったのはエドガーのエクスカリバーだった。
「アイギス・ペンギンV2!」
「十六夜!?」
「全員下がれ!ここ凌がねぇと負けるぞ!」
そのカウンターシュートに、最前線で必殺技をぶつけるのは十六夜。流石にシュートを蹴り返すとは思ってなかったはずなのに、その反応速度は驚愕を隠せない……だが、
「クソッ……!何だよこの威力……!桁違い過ぎる……!」
ジリジリと十六夜の足下が抉れていく。
「だぁっ!もう1枚割れたのかよ!」
そして、1枚目のシールドが崩れ去る。ドラゴンスレイヤーのパワーとエクスカリバーのパワーが合わさった
「イザヨイ、キミの判断と健闘は素晴らしいものだ。口は悪いが、賞賛に値するものだ」
「何、終わりみたいに……!まだ1枚残って……っ!?」
そんな絶望に絶望が重なる。気付けばエドガーは十六夜の目の前に居た。誰もが十六夜を見ていたために、エドガーが動き出していたことに気付けなかった。
「身を挺し、このシュートを止めようとする姿勢、評価に値する!受け取るといい!これが我らの勝ちを決める最強のシュートだ!」
「上から目線でむかつくんだよ!つぅか、何が勝ちを決めるだ……!こっちだって負けられねぇんだよ!」
「ならば、どちらが上か決めようじゃないか!」
「はっ!やってやろうじゃねぇか!」
十六夜が止めているボールに対し、更にパラディンストライクを放つ体勢を取るエドガー。対して十六夜は、向こうの挑発に乗るように、ペンギンたちを足につけている。
そして、十六夜は支えていた盾を捨てて……両者が同時に動き出す。
「パラディンストライク!」
「皇帝ペンギン1号!」
バンッ!
必殺技を放った直後、エドガーと十六夜が同時に蹴りを叩き込んだボールを中心に、小規模な爆発が起きる。2人は爆風により互いに弾かれ合うように吹き飛ばされてしまった。
『な、何ということでしょう!エドガーと十六夜の衝突によりフィールド上では爆発が……!』
『凄まじいパワーでしたからね……2人は無事でしょうか?』
「エドガー!」
「十六夜!」
それぞれのチームからそれぞれを心配する声が聞こえてくる……が、
「私の勝ちだ!」
「わりぃキャプテン!頼んだ!」
フィールドを転がっていく中、2人が声を出す。
『勝ったのはエドガーだぁ!凄まじいスピードでイナズマジャパンゴールに向かってボールが飛んでいきます!』
『最早このシュートは誰にも止められないでしょう』
爆風の中を暴力の塊とも言うべきシュートが飛んでいく。狙いは円堂の守るゴール。
「少しでも遅らせるんだ!」
「旋風陣!」
「スピニングカット!」
ディフェンダー陣がシュートブロックをするために必殺技を放つ……が、
「「うわぁあああああああ!」」
全員が
「そうか!」
シュートがゴールに迫る中、何かに気付いた様子の円堂は、右の拳に力を溜めて、そのまま地面に拳をぶつける。すると、円堂の周りに半球状のオレンジ色の結界が出来た。そこにシュートが激突……ボールは結界に沿って進み、ゴールの上を通過していく。凄まじい威力のシュートはそのまま空高く突き進んでいった。
『ふ、防いだぁ!イナズマジャパンキャプテン円堂が、シュートを防ぎましたぁ!』
『これは凄いです!誰にも止められないと思われていたシュートが、ゴールから逸れましたね……!』
「そんな……!」
「最高かよ……!」
ベンチでは円堂が止めたことに対して盛り上がっている。止めるのではなく逸らす技。どんな高威力なシュートもゴールから逸らしてしまえばいい。真正面から止める必要はない……か。
「まさしく、イジゲン・ザ・ハンド!」
ピー-!
ナイツオブクイーンは驚愕を、イナズマジャパンは歓喜を表す中、審判の笛によって現実へと引き戻される。見ると、審判の人たちがエドガーと十六夜それぞれに駆け寄っていた。先の爆発の衝撃で2人とも倒れたまま起き上がってこない。
「立向居、選手交代だ」
「は、はい!」
担架でベンチまで運ばれる十六夜。向こうもエドガーがベンチまで担架で運ばれていた。
「無茶しやがって……バカ」
それぞれ選手交代を終え、円堂のキックで試合再開。ベンチでは意識のない十六夜の処置をしていた。
試合はロスタイムに突入。もう時間は残っていない。そして、それぞれの抱える最強格の選手もフィールドには残っていない状況。そんな状況でナイツオブクイーンのコーナーキックで試合再開。相手選手がヘディングであわせるも……
「よし!」
円堂がしっかりキャッチする。エドガーや十六夜よりもシュート技術が数段劣っている。威力、速度、コース、タイミング、駆け引き……全てが彼らに比べ劣っている。円堂という男からゴールを奪うレベルに達していない。
「こっちだ!円堂!」
「頼んだぞ!鬼道!」
「一気に攻めるぞ!」
「分かってる!ラストチャンスだ!」
ボールを受け取った鬼道。不動と共に攻め上がっていく。最後の攻防……何としても1点が欲しい。後1点取れれば勝利で終わることが出来る。
「何としても止めるぞ!」
「ああ!
「倒れたエドガーの為にも!」
ナイツオブクイーンのプレスが一層激しくなる。対するイナズマジャパンも負けていない。そのプレスを掻い潜り、一歩一歩ゴールへと近付いていく。
「行くぞ不動!」
「偉そうに命令するな!」
『キラーフィールズ!』
キラーフィールズの衝撃波でディフェンスを吹き飛ばし、ボールは宇都宮と豪炎寺のもとへ。
「行くぞ!」
「はい!」
そして、シュート体勢に入った。
『タイガーストーム!』
「ガラティーン!」
放たれたシュートを斬ろうとするキーパー。だが、剣は砕け、ボールはゴールに刺さる。
『決まったぁ!イナズマジャパン逆転です!』
ピ、ピー!
『ここで試合終了!強豪ナイツオブクイーンを降したのはイナズマジャパンだぁ!』
試合終了のホイッスルが鳴り響く。4-3で私たちイナズマジャパンは強豪、ナイツオブクイーンに勝利をおさめたのだった。
試合終了後……勝利を喜ぶイナズマジャパンのメンバー。意識を取り戻した十六夜が肩を貸してほしいと言ってきたので、肩を貸す。
「いい戦いだった」
するとイナズマジャパンの方にナイツオブクイーンの選手たちがやって来る。エドガーも同じように相手選手に肩を貸してもらって歩いているようだ。
「キミたちと世界一を競って戦えてよかった。今回は私たちの負けだよ」
なんというか……最初は日本を見下していた感じがしたが、今はそんな嫌な感じはしない。対等な相手を見ているように話してくれている。
「だが、私たちは必ず決勝トーナメントへ上がってみせる。そして、世界一になるのは我々ナイツオブクイーンだ」
こちらを対等な相手とみた上で宣言してくる。そこに驕りはないように思えた。
「俺たちだって負けないさ!また一緒にサッカーしような!」
「フッ……それとイザヨイ。良い勝負だった」
「だな。……今回はオレの負けだ。次は勝つ」
「私としては勝利とは言えないのだが……」
「試合に勝って勝負に負けた。これは譲れねぇよ。今度は絶対に勝つ」
「そうか……ならば、私もキミに負けないようにしなくてはな」
十六夜が私の支えから離れ歩き出す。エドガーも同じように支えなしで歩いて……
「イナズマジャパンの健闘を祈るよ」
「こっちも、お前らの健闘を祈ってる」
嵌めていたグローブを外し、握手を交わすとナイツオブクイーンは背を向けて歩き出した。
「って十六夜!起きて大丈夫なのか!?」
「まさか、エドガーと撃ち合いをするとは……」
「アイツには負けた。世界トップレベルとの実力差を改めて感じたよ」
その目には悔しさが滲み出ていた。イナズマジャパンとしては勝てても個人としては負けた……敗北感の方が強いのだろうな。
「円堂、お前のお陰でゴールを守れた。お前らのお陰で勝てた……ありがとな」
「気にすんなって!俺もお前や皆のお陰でゴールを守れたんだからさ!」
「それに、一方的に負けたわけでもないんだ。俺たちからすれば互角と言ってもいい。流石だ、十六夜」
「そう……か。でも……悔しい…………なぁ」
「ちょっ!?」
そのまま倒れ込みそうになった十六夜をヒロトと共に受け止める。
「い、十六夜!?」
「寝かせてあげよ?」
「そうだな。そうするか」
円堂たちも控室の方へと歩いて行く。
「まったく……お疲れ様」
「…………」
静かに眠る十六夜。この後、直接病院に運ばれたことを記す。
~NGシーン(ネタ、十六夜視点)~
「身を挺し、このシュートを止めようとする姿勢、評価に値する!受け取るといい!これが我らの勝ちを決める最強のシュートだ!」
「上から目線でむかつくんだよ!つぅか、何が勝ちを決めるだ……!こっちだって負けられねぇんだよ!」
「ならば、どちらが上か決めようじゃないか!」
「はっ!やってやろうじゃねぇか!」
止めていたボールに対し、更にパラディンストライクを放つ体勢を取るエドガー。対してこっちも、向こうの挑発に乗るように、ペンギンたちを足につけ、持っていた盾を捨ててシュート体勢に入る。
「パラディンストライク!」
「皇帝ペンギン1号!」
ピーー!
「「え?」」
お互いに蹴ろうとしたタイミングでホイッスルが鳴り響く。蹴るのを中断、ボールはそのままゴールに入り……
「16番、ハンド」
「…………はい?」
「…………」
どうやら盾を捨てた時にハンド判定が出たらしい。……え?ハンドってあったの?というか……え?これハンドになるの?手、当たりましたかね?
「ナイツオブクイーンボールで試合再開」
「「…………」」
なんというか……こういうのをいたたまれないと言うのだろうか……
『あーっと!エドガーと十六夜の激突はまさかのハンドです!』
『すごいものが見れると思ったんですけどね……』
なんか……ごめんなさい。
NGルートの場合、イナズマジャパンとナイツオブクイーンは引き分けに終わり、円堂のイジゲン・ザ・ハンド習得のフラグがへし折れます……中々にヤバいルートですね。ちなみに、とあるフラグも折れますので、相当やばいです。
ということで、エドガー微強化?と言う名の最初から本気を出したエドガー率いるナイツオブクイーン戦でしたね。
次回は休養回です。オリペンが出ます(!?)