超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

169 / 254
新必殺技特訓

「木暮!起きるでヤンス!」

「しっかりして欲しいッス!」

「うぅ……俺……」

「大丈夫でヤンス!傷は浅いでヤンス!」

「……俺が行くよ」

「立向居!?無茶なことはやめるッス!」

「そうでヤンスよ!木暮の惨状を見たでヤンス!俺たちには……」

「ダメなんだ……!ここで逃げてたら何も変わらない……!」

「立向居……」

「分かったッス……そこまで言うなら止めないッス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事は1時間前に遡る。

 十六夜綾人(バカ)が帰ってこない……あまりの自由さに呆れていた八神。

 

「暇だ……」

 

 今日の練習は早く終わった……鬼道、不動、佐久間が練習に集中できずに外され、気付けば円堂と4人して居なくなってしまう。17人中5人も居なくなってしまい、全体練習は早くに切り上げられたのだ。

 仕事らしい仕事はすべて終え、休息の時間……これまでは十六夜に付き合う時間が長く、こうして1人でという時間が少なかった。だからこそ、生まれてしまったこの時間……どこで何をしようかと考える彼女。

 

「もう1本行くぞ!虎丸!ヒロト!」

「はい!」

「うん!」

 

 そんな彼女がぼーっとしながら眺める先で豪炎寺、宇都宮、ヒロトの3人が、来たるアルゼンチン戦に向けて新必殺技の練習を重ねていった。3人での強力なシュート技……完成すれば、十六夜の必殺技オーバーサイクロンPにも勝る、イナズマジャパン最強の必殺技になるだろう。徐々に完成に近づいていて、この調子なら明日の朝には完成するだろうか?そんな分析をしつつ、他の選手にも目を向ける。

 

「飛鷹!」

「うっす!お願いします!」

「おっしゃ行くぞぉ!」

 

 反対側のゴール付近では風丸、飛鷹、土方、染岡と言った面々も練習に熱が入っている。初戦に勝利し、勢いに乗っている。レベルの高さを肌で感じ、置いていかれないように……と言ったところか。

 

「人が少ないな」

 

 監督やマネージャーたちは宿舎に戻っていた。ただ、それにしては人が少ない。もちろん、彼らも練習が終わり自由時間ではあるのだがグラウンドには7人しかいない。他のメンバーはどうしたのだろうか……そう思って探しに行くことにした。

 

「うぉおおおおお!ザ・タイフーン!」

「ん?」

 

 海岸沿いに歩いているとフェンスに囲まれたコートに辿り着く。そこでは……

 

「八神さん!」

「音無か」

 

 綱海、立向居、木暮、壁山、栗松の5人が特訓をしていた。

 

「何をしているんだ?」

「立向居くんの新しい必殺技の特訓中です!」

「特訓?新しい必殺技?」

「ええ!円堂先輩や十六夜先輩の必殺技を超えるために!自分だけの必殺技を身に付けようと特訓している最中なんです!」

「ほう……」

 

 立向居……八神はジェネシス時代、彼がキーパーとして雷門のゴールを守っていたのを知っている。何なら自分も彼の守っていたゴールを奪おうとシュートを撃っていた人の1人である。

 

(なるほどな……確かにイナズマジャパンで考えれば……)

 

 現状、最初の紅白戦とネオジャパン戦しかキーパーとして戦わず、公式戦では怪我人などの交代としてフィールドプレイヤーとして出たっきり。それどころか、円堂が監督から失格と言われた試合すら十六夜が試合に出ていた……彼は一切キーパーとして試合に出ていない。

 

(もっとも、韓国戦は十六夜の問題もあったからキーパーはヤツがやったんだろうが……)

 

 立向居と十六夜……円堂がキーパーで出られなくなったときに、イナズマジャパンのゴールを託されるのはこの2人のどちらか。現状ではサブキーパーの立向居より、十六夜の方がキーパーとして上という意見もあるだろう。

 

「十六夜相手ならキーパーとしては互角以上だと思っているんだが……」

「ま、まぁ、十六夜先輩と比べちゃうと……総合的に負い目が感じるみたいで……」

「あぁ……」

 

 十六夜のキーパーとしての強さは強力な必殺技ではなく、分析力による未来を構築する力……それを最大限発揮し、シュートを撃たせないことにある。シュートのセーブ率で比べれば、立向居にも勝ち目はあるだろうが、総合的な能力値や攻撃参加など色々な視点で考えた時に、キーパーとして今の立向居が十六夜に勝てているとは言い難いのだ。

 もっとも、十六夜はキーパーで縛られるより、フィールドプレイヤーとして出てもらった方が活躍してくれるだろうから、久遠監督もよほどのことが無い限り、十六夜をキーパーとして出場させる気は無いだろうが。

 

「十六夜にはゴールを守る力がある……円堂とは別に。だが、自分には自信を持って守れる力があると言えない……か」

「そういうことみたいです」

「次!お願いします!」

「ちょ、ちょっと休憩にしないでヤンスか?」

「そ、そうッス……ずっと撃ってるッス……」

「まぁ、確かに。ずっと必殺技撃ち続けて疲れたな」

「はぁ……はぁ……もう無理……」

 

 と、八神が音無と話している間に立向居以外の4人が座り込んでしまう。流石にぶっ続けでシュートを撃つのに疲れが出てきたようだ。

 

「もう!ほら立向居くんが待ってるよ!」

「そ、そうは言っても……」

「いや、そこに居るじゃん」

 

 すると、木暮が八神を指をさす。

 

「何だ?」

「アンタ、元ジェネシスの選手でしょ?」

「そ、そうだったでヤンス!」

「そうだが……何だ?お前らに代わって撃てばいいのか?」

「あ……え、えっと、お願いします!」

 

 軽く八神は足を伸ばし……そして、

 

「はぁ!」

 

 シュートを撃つ。

 

「……っ!」

「はぁ……すげぇなおい。てっきり、マネージャー仕事で鈍っていると思ってたんだが……」

「そうッス……何だか懐かしい怖さを感じるッス……」

「次!お願いします!」

「いいだろう。はぁ!」

 

 立て続けにシュートを撃つ。十六夜の特訓に付き合う中で、自身の研鑽も積んできている。今の彼女が、ジェネシス時代とは比べ物にならない程強くなっていることを知っているのは、十六夜とヒロトのみである。

 

「……凄い……手がヒリヒリする……次!お願いします!」

「はぁ!」

 

 当然、他のメンバーは彼女を目金と同じような立場、マネージャーだと思っていたため、強くなっているとは夢にも思わなかった。

 思いもよらぬ助っ人の登場により、立向居の特訓は更に激しいものになる。

 

「やっぱり、十六夜さんって凄いッスよね……」

「どうしたでヤンスか?壁山」

「俺たちと同じDFって言ってるのに、凄いシュートまで撃てて……」

「確かにね。それに凄いブロック技まであるし」

「ドリブルも凄いでヤンス!必殺技なしで相手の必殺タクティクスを突破するのは十六夜さんしか出来ない芸当でヤンス!」

「最近思うッス……十六夜さんは何処か我慢してプレーしている感じがするって……」

「確かに……1人でプレーすることが多く感じるでヤンス」

「そうなの?最初からあんな感じじゃなかった?」

「さぁ?ノリが合う時は一緒に戦うって感じだろ」

「昔はキャプテンと一緒に俺たちを後ろから支えてくれるというか……」

「凄い安心感があったでヤンス!」

「そうなのか?アイツってガンガン前出て引っ張ってる感じだろ?」

「まぁ、前出過ぎて見えないときもあるけどね」

「……最近はプレー中に怖く感じる時があるッス……でも、この前の試合も思ったんッスけど、十六夜さんにはもっと自由にプレーして欲しいッス」

「……確かに怖いでヤンス……それに、俺たちが足を引っ張っているってのは事実でヤンス……」

「なぁに言ってんだ。確かに、今の俺たちはアイツにとって不甲斐ないかもしれねぇ。でもな、そこで止まったらいよいよ終わりだ。見せ付けてやろうぜ!俺たちだけで十分だって!俺たちはアイツが安心できるディフェンダーだってな!」

「十六夜さんが……」

「安心できる……」

「そうそう。十六夜さんみたいに難しいことも凄いことも出来ないけどさ。少しでもあの人の負担を減らせれば、あの人が自由に出来るんでしょ?」

「そうッスね……うぉおおおおお!俺、もっと頑張るッス!頑張って、十六夜さんの負担を減らすッス!」

「その息でヤンス!壁山!」

「まぁ、あの人って練習お化けだよね。朝から晩まで練習漬けじゃん?」

「そう言えば……早朝から走っているのを見たことあるでヤンス」

「それに、練習終わってからも筋トレをしてたッス」

 

 と、八神が何本か撃っている中、十六夜の話で盛り上がる4人。そんな中で、木暮が気付いた。

 

「そう言えば、アンタって十六夜さんとずっと一緒のイメージがあるから、1人って珍しいね」

「確かになっ!」

「普段一緒なのに今は1人……もしかして、十六夜さんに逃げられた?」

「……あぁ?」

 

 その瞬間、八神にスイッチが入ってしまった……が、木暮は気付かなかった。

 

「まぁ、アンタって怖そうだもん。何というかピリピリしているって言うか……もしかして、十六夜さんってアンタから逃げるためにへぶっ!?」

 

 ピキッ……そんな音が聞こえてきそうな八神が放つ渾身のシュートが木暮に刺さった。

 

 

 

 

 

 そして、冒頭の場面に戻る。

 

「これだ立向居!」

「え?」

「今のコイツを真似するんだ!この……ゴォオオオオって感じで怒りのオーラが溢れて止まらない……見ているだけで恐怖を感じるこの状態を真似するゴホッ!?」

「つ、綱海さん!?」

 

 更に余分なことを言った綱海にもシュートが刺さる。壁山と栗松はあまりの光景に震え上がり、抱き合うようにして端まで移動した。

 

「で、でもこの感じ……これが魔王……?もしかして、俺も……?よ、よし来い!」

 

 ドンっ……そう音が聞こえてきそうな重いシュートが刺さる。

 

「くっ……も、もう一度!」

 

 ドンっ!ドンっ!ドンっ!……次々打ち込まれるシュートの嵐。1つ1つのシュートに怒りが込められている……

 

「この怒りを……俺も……うぉおおおおおおお!」

 

 一瞬、立向居の背から紫の何かが現れたが、八神の渾身のシュートが腹に刺さり、それは霧散した。

 

「立向居くん!?」

 

 そして、そのまま前のめりに地面に倒れ伏したのだった。

 

 

 

 

 

「えっと……何かやらかした?」

「特には」

 

 練習終わり……一部メンバーから怖がられるようになった八神さんが居たとかいないとか。




 十六夜くんたちが割と大変なときに、こっちも結構大変な事になってますね……そして、久し振りに十六夜くんが出ないお話でした。
 次回、チームK戦スタート。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。