「鬼道よ、これで分かっただろう?私という過去から逃れることは出来ないのだ」
「そんな言葉には惑わされません!過去を背負っても前へ進むことはできる!」
「今のお前を作ったのは私だ。帰ってこい、私の元にしかお前の未来はない」
「ならばこれからの道は俺が作る!俺は円堂と……イナズマジャパンと共に進む!」
「言うねぇ……見せてやろうじゃねぇか」
「ああ!お前の……俺たちの答えをこの試合で!」
帝国組が影山に対し、強い意志を固めている……なるほど、久遠監督が許可したのは、影山の問題が解決しないと本調子にならない。対峙する過程で何かが起きることを期待して……か。
「円堂」
「十六夜?何だ?」
「次のデモーニオのシュート、任せていいか?」
「おう!任せておけ!」
「ありがと」
とは言え、何度も撃たせても消耗するだけ……チャンスは一度か。
オルフェウスボールで試合再開。
「鬼道、指示を頼む!」
「分かってる!アンジェロ、ダンテ!両サイドから上がれ!ディフェンス!ラインを上げろ!」
「「「おう!」」」
こっちのチームの弱点は、オルフェウスとイナズマジャパンの2チームの混合チームであることによる連携不足なこと。……だが、鬼道なら上手く指揮をして連携を取れるはず……あの男は、FFで雷門に参加したとき、その才でオレたちを指揮してみせたんだから。
「まだまだ連携不足か?」
「くっ……!」
しかし、パスを途中でカットされる。流石にあの時と違い、まだオルフェウスの選手たちの情報をインプットしきれていないのだろう。それに相手も強い……そう簡単にはいかないか。
「君は通さないよ」
「ディフェンス。下がって立て直しを」
「お前たちが相手か……面白い!」
デモーニオをマークしているのはオレ。そして、オレの数歩後ろにフィディオがいる。
「さっきの失点の際に気付いたけど……お前の動きは鬼道によく似ている」
「……っ!確かに……!」
「はっ。ソイツは見た目だけじゃなく、プレースタイルも鬼道クンの真似をしているってわけかよ」
「だが、似ているだけ……お前は鬼道の真似をしているに過ぎない紛い物。1対1じゃ負ける気しねぇな」
「黙れ!」
強引に突っ込んでくるデモーニオ……オレとデモーニオが交差する。
「口ほどにもない!簡単に突破……っ!」
「よし!アヤト!」
「ナイスパスだ、フィディオ」
オレはデモーニオからボールを奪わず、そのまま前線へと走った。煽られたデモーニオはオレを突破したことで油断する……そこをフィディオが奪い去る。やっぱり、こんな単純な挑発に乗ってくれるとは……鬼道より相手しやすいな。
「十六夜!」
「あいよ!」
目の前に来たディフェンスを突破し、鬼道へとボールを渡す。そして……
「「「うぉぉおおおおお!」」」
鬼道がボールを蹴り、その後不動と佐久間が同時に蹴る。……皇帝ペンギン2号……じゃなくて、3号に挑戦したということか。だが……
「フルパワーシールドV3!」
必殺技の前にあっけなく弾かれてしまった。
「クソッ、失敗か……」
「ああ……どうすれば……」
「何かが足りない……次、行くぞ!」
流石に幻の究極奥義と言っていた以上、やると宣言してからすぐには完成しないらしい。それもそうか……簡単にできてたら不可能だの幻だの言われていないか。
「アヤト、今のって……」
「アイツらが影山に見せつけるために挑戦したんだろうな」
「どうする?アレが完成しなかったら……」
「まぁ、この試合中に完成させるだろ。アイツらならなんとかする」
「信じているんだね」
「信じているっていうか……直感?……だが、それはそれとして試合は別。勝ちに行くならまずは確実に1点取りたい。行けるか?フィディオ」
「ああ、俺たちでやろう!」
DFがGKにバックパスをして、それをダイレクトで蹴ってボールを前線へと送る……
「またお前か!」
「またオレだよ」
ボールを持ったデモーニオの前に再び立ちはだかる。さっきと同じでフィディオがオレの後ろでスタンバイをしている。
「二度も同じ手は通用しないぞ……!」
「だろうな。じゃあ、どうするんだ?」
デモーニオがフェイントを仕掛ける……が、突破させない。デモーニオは究極と自称していたが、フィディオたちに比べるとレベルが高いことはない。これなら……
「真イリュージョンボール!」
「あーごめんな」
デモーニオが必殺技で突破しようと試みる。だが……
「その技、既に何回も見ているから」
「……っ!」
ボールを奪い去って、隣に走ってきたフィディオに渡す。イリュージョンボールは鬼道のおかげで既に分析済み……この必殺技を使うと分かっている以上、オレには通用しない。
「行くよアヤト!まずは1点返す!」
「もう走ってる」
フィディオが迫り来るディフェンスを軽やかに突破していく。ここはあそこに走って……
「アヤト!」
「ドンピシャ。流石のテクニックだな」
フィディオと目が合った瞬間、パスが来る。トラップするとドリブルをしてディフェンスを突破していく。
「アヤトもかなり上手くなったね」
「それほどでも!」
フィディオと目が合い、彼の数歩先にパスを出す。そして、フィディオが出したい場所を状況を見て、即判断し走り込む。
「速い……!」
「クソ!奪えない!」
「なんなんだこいつら……!」
フィディオも、オレが持つと同時にオレが出したい場所へと走ってくれる。そのお陰で自分のタイミングで出せる。互いのやりたいプレーを共有し、それに答えている……すげぇ、やりやすいな。やりやすいし何より……
「すげぇ、楽しいわ」
(十六夜のプレーにフィディオが完璧に応えている……いや、それだけじゃない。フィディオのプレーにも十六夜が応えている……アイコンタクトによる一瞬でのイメージ共有。そして、それを実行するだけの高い能力。たった2人でチームKを圧倒する……これが今のイナズマジャパンじゃ出来ない、十六夜との連携か……!)
「1点目はお前が決めてくれよ。イタリア代表はお前らなんだからさ」
「行くよ!オーディンソード!」
必殺技オーディンソードが炸裂する。……やっぱ、間近で見るとすげぇシュートだな。
「フルパワーシールドV3!」
相手キーパーは止めようとする……が、
「うわぁああああああ!」
キーパーごとボールはゴールへと突き刺さった。
「すっげぇシュートだな!フィディオ!」
「ああ、これが俺の必殺技さ」
「くぅうう!俺たちも負けていられない!な、鬼道!」
「ああ、これで同点……振り出しだ!気を引き締めて行くぞ!」
「「「おう!」」」
1-1の同点……前半はまだ時間がある。余裕のあるうちに点を取っておきたいな……
「鬼道。オレたちで後、2点くらい取ってくる。そこから、お前らの試行錯誤の時間でいいか?」
「2点くらい取ってくるって簡単に言うな……分かった。確かにこの試合は勝たなければならない。俺たちばかり試している訳にはいかないか」
「そういうこと。お前らなら完成させるだろうが、オルフェウス側の印象もある。練習試合ならともかく、彼らにとって確実に落とせない1戦。だから、引き分けの状態でやるより、勝っている状態でやった方が色々といいだろ?」
「そうだな……任せたぞ」
「おう。そっちは完成させることに集中してくれ」
その後、フィディオの下へ行く。
「アヤト、次はもう少しギア上げていい?」
「ああ、もっと早くしてもなんとかする」
「そう?じゃあ、しっかり付いてきてよ」
「おう」
フィディオとのプレーはやりやすいが、それはフィディオが合わせてくれているのが大きい。本来の彼のプレースピードに着いて行くには、他のこと見ている余裕ねぇな。今のオレが合わせるには、フィディオとのプレーだけに全能力、全思考を割かねぇと……
チームKのキックオフで試合再開。ボールはデモーニオが持っていた。
「ビオレテ!ビアンコ!」
11番と9番もあがってくる……ッチ、デモーニオが1人で突破しようとしてやられていることと、こっちの連携が足りてないってことを突こうとしているってとこか……
「焦ってくれればいいんだけど……思いの外冷静だな」
パス回しをしているチームK。……個々の力ならチームKの選手に勝っているヤツが多いだろう。だが、連携という点に着目すると、向こうが1枚上手だ。
「ガッツ!ベント!そっちから来るぞ!」
「遅い!」
そんな中、デモーニオが抜け出す……ッチ、こっちとは逆サイドか……!
「十六夜!」
フォローに走ろうとしたタイミングで不動から声がかかる。……なるほど、確かにこのタイミングがベストかもな……
「悪い円堂!任せるぞ!」
「分かった!」
「喰らえ!皇帝ペンギンX!」
デモーニオの必殺技が放たれる。1回目より、デモーニオの一挙手一投足を注視する。
「いかりのてっつい!」
円堂が必殺技を放つ。今度は、技の途中で衝突……ということはなく、しっかりと拳で地面に叩きつけることに成功した。……だが、その威力は止められず、円堂の拳を弾き、彼を正面から吹き飛ばそうとする。
「真熱血パンチ!」
ボールの威力に負けないよう、ギリギリで耐える円堂。そんな中、彼は熱血パンチを地面に向かって放つ。放つと同時に地面から爆風が巻き起こった。
ガンッ!
続いて響いたのは鈍い音……見ると、自ら起こした衝撃で吹き飛ばされ、ゴールポストに背をぶつけた円堂の姿が。
「大丈夫か!?」
「へへっ……」
笑顔でボールを見せてくる……ボールはゴールに入ることなく、円堂が手中に収めていた。
「……たく、無茶苦茶かよ……」
「よぉし、反撃だぁ!頼んだぜ、十六夜!」
「あいあい、任せろよキャプテン」
円堂からのボールをダイレクトでフィディオへとパスを出す。
「お前は自由にさせない!」
「やってみろよ」
フィディオがドリブルで突破していく中、オレをマークしようとデモーニオが立ちはだかる……が、
「アヤト!」
左右に揺さぶりを掛けつつ、加速してボールへと向かっていく。
「行かせるか!」
「取らせてもらうわ」
「なっ……!?」
デモーニオを身体で押さえ、ボールをトラップする。
「はい、そこ!」
そして、そのままボールを蹴り出す。場所は相手選手が密集している場所……
「よく見てたね……アヤト!」
「まぁな、フィディオ!」
ダイレクトで返してくるのでダッシュで取りに行き、ダイレクトで返す。
(2人のワンツーで相手を翻弄し、こじ開けていく……割って入ろうに2人の動きが速過ぎる。ボールの出す場所や動き出しに迷いが一切無い。明らかにこの2人だけ別格……十六夜が日本に帰らず、イタリアで代表になっていたら一体どうなっていたんだか……)
「じゃ、次の得点はアヤトが決めてよ!」
「オッケー……行くぞ、皇帝ペンギン……!」
「撃たせねぇ!」
やって来たボールに対し、右足にペンギンを喰いつかせ、ダイレクトで必殺技を放とうとするも、相手ディフェンダーのタックルが襲ってくる。
「吹っ飛べ!」
右側からのタックルに備えるべく引いていた足を地面に付ける。なるほど……
「だから、何?」
「なっ…!?動かねぇ!?」
相手ディフェンダーを受け止めつつ、ペンギンを喰いつかせ直した左足を引いて必殺技を放つ。
「皇帝ペンギン1号!」
ダイレクトで放たれたシュートは真っ直ぐゴールへと向かう。
「アレは……!?」
「フルパワーシールドV3!」
ベンチでは影山が反応したが、そんなこと構うわけもなく、シュートは相手の生み出した衝撃波の壁を喰い破り、ゴールへと刺さった。
「悪いけど、オレ両利きだから」
「ナイスシュート!」
「ナイスパス、フィディオ」
「ブロックされながらもよく撃てたね」
「分かってたしな。というか、あの程度の
「フフフ……」
フィディオとハイタッチを交わすと何故か、デモーニオが笑っていた。
「どうした?点を取られておかしくなったか?」
「ハハハッ!その技は知っているぞ!総帥が危険だと判断した禁断の必殺技!」
「なっ……そうなのか!?アヤト!」
「ああ、そうだ!1度放てば激痛が襲いかかり、2度放てば試合続行に関わり、3度放てば選手生命が危ぶまれる欠陥必殺技!威力のみを重視し、調子に乗ったな!これでお前のプレーの質は一気に落ち……」
「えっと……何言ってるんだ?お前?」
「本当は激痛が襲ってきているんだろ!平静を装っても無駄だぞ!」
「いや、信じなくてもいいんだけどさ……オレ、この技ノーリスク・ノーダメージで使えるんだわ」
「………………は?」
驚いた顔でデモーニオはベンチを見る。ついでに、オレもそっちを見る。で、2人の視線の先でベンチに座っている影山は……
「…………?」
固まっていた。どういうことだ?と驚愕しているのを必死に誤魔化しているようだった。
ちなみに、フィディオには鬼道が説明していたが、とりあえず危険が無いということで安堵した様子だった。
「鬼道、そろそろ準備しろよ?オレたちがお前らの
「ああ、分かった。頼りにしているぞ、十六夜」
情報のインプットは大体終わった。ここからはアウトプットの時間だな。
ピ、ピー!
前半終了のホイッスルが鳴り響く。あの後は、フィディオとの連携で攻め上がり、彼のオーディンソードが3点目を奪った。そして、その後は、鬼道、不動、佐久間の3人が何度も試行錯誤するがうまくいかず、時間が来たために3-1で前半を終えた。
「とりあえず、前半は勝ち越しで終わったね」
「だなーまぁ、今のところは余裕……ってところか?」
「そうだね。俺たち以外の連携もかなり取れるようになってきたし、後半はもっといけるんじゃない?」
「確かに。攻守ともにオルフェウスとイナズマジャパンの動きが噛み合ってきている。油断しなければ行けるだろ」
結果から見ても圧倒しているが、内容的にも連携が試合最初に比べ、かなり取れるようになった。何事もなく後半も行けば圧勝出来るだろう。後は……
「鬼道、そっちはどうだ?」
「後、何かが足りないって感じだな……」
「幻の究極奥義なんだろ?どんな感じになるか想像もつかないけどな」
「おいアホペンギン」
「何だいアッキー?」
「何かねぇか?何が足りねぇと思う?」
「えぇー……うーん……?」
不動にいきなり言われたので少し考えてみる。……と言ってもなぁ……
「…………人数……とか?」
「人数?4人に増やせって事か?」
「違う違う。1号って1人で撃つじゃん?で、2号って最後2人で同時に蹴るじゃん?じゃあ、3号って3人同時に撃つんじゃないかって……」
「3人同時か……確かに試してなかったな」
「ああ。でも、同時に打つには少し考えないとな……」
「帝国じゃない人間だからこその純粋な視点か……」
あはは……純粋って褒めてるのか?それとも単純って意味なのか?……まぁ、いいってことにするか。……ん?
「もしかして0号って0人が撃つ……なわけないか」
0人が撃つってどういう事だよ。……ということはオレの推測間違ってる?
「で?お前の方はどうだよ」
「ん?どうって?」
「言ってたヤツ」
「後半開始したらやってみる」
「そうか」
と、鬼道たちが話し合い始めたのでフィディオたちの下へ行くことに。
「やっぱり、凄いよアヤト!」
「ああ!お前がウチに来てくれていれば、とんでもない事が出来たかもな!」
「うんうん!僕たちオルフェウスが更に盤石になっていたよ!」
「全くだぜ!くぅ、一緒に戦いたかったぜ!」
「そうか?フィディオの方がまだまだ凄いけど……」
「いいや、アヤトもかなりレベルアップしている。俺とのプレーの中で、主張することと合わせることを上手く両立させられている」
「それは、お前のレベルが高いお陰で自由にやれているだけだっての」
「それでも、俺のプレーの意図を理解し、素早く呼応してくれているのは事実だ。前よりも連携が取りやすくなっているよ」
「そうか?と言ってもギリギリも良いところだが……」
「それでも、着いてきてくれてることは事実だよ。それに、アヤトのプレーは前言ってた理想が実現できていると思う」
「前って言うと……アレだね!未来を作るって言ってたヤツ!」
「そう言えば……2点目取ってから、チームKはほとんどボールを持てていないな。それにこっちのシュート数もすげぇ数だし……」
「まだ足りねぇよ。オレの作った未来とラグがある……特にフィディオのプレーだけは追いつけていない時がある」
エドガーの時もそうだ。アイツのプレーの先を読んだときには置き去りにされていた。全体を見ることは無意識に出来るようになっている。ただ、そこから分析し、構築して行動するまでがまだ遅い。世界レベルに通用するスピードはあるが、世界トップレベルには通用していない。
エドガーとの対決で入れたフロー……アレは恐らく、見る→分析→構築→行動までの流れを一瞬で、反射的に行えていた。それぐらいのスピードがなければこいつらには通用しない。
「いや、十分すげぇっての。ベンチから見ても、お前のブロック率が異常だって」
「そうそう。アヤトが一切抜かれていないし、抜かれてもワザと抜かせているだけだし……それにパスカットも何度もやってたしね!」
「でも、体力は持つのかい?キミの未来視は脳を酷使し続ける……体力の消費が激しいんじゃない?」
「よく見抜いているな……まぁ、心配いらねぇよ。1試合分くらい持たせないと話にならねぇしな」
……ただ、反射的に行う……前半でも試したが、フローに入るにはどうにも目標設定がうまく出来ていない気がする。まるで、入れる気がしねぇ。何かが足りてねぇ……常時フローに入れれば強そうだが……そういう思考も邪念か。……今この場における最適な目標……
「後半も勝ちに行くよ。油断して負けるのは御免だからね」
「無論だ。敗北は許されねぇよ」
「うん!勝ちに行くよ!」
「俺もベンチから応援させてもらうぜ!」
とにかく敗北は許されねぇ。今は目の前の試合だな。
一方……
「ダメ、監督にも円堂くんにも繋がらない!」
「どうする?そろそろ港に行かないと船が間に合わなくなるけど……」
「……行くしかないだろ」
オレたち5人が知らないところで、イナズマジャパンは移動をしているのだった。向かう先は――
ちなみに影山は十六夜がファイアードラゴン戦・ナイツオブクイーン戦で1号を使ったことを知りません……と言うより、見ていたとしても近い技認識で本物だとは思っていまい。だって、封印した禁断の必殺技をノーダメでポンポン撃つヤツが居るなんて……ね?