超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSジ・エンパイア ~不落の要塞~

 14時55分……

 

「監督も円堂くんたちも来ない……」

「キャプテンたち、試合日程の変更を知っているんでしょうか?」

「…………」

 

 焦るイナズマジャパンのメンバー。そんな中で八神は静かに腕を組んでいた。

 

(クソッ……十六夜のヤツが、問題(トラブル)に首を突っ込むと分かっててトラップを……しかも、相手はオルフェウス。アイツがチーム単位で関わっていたであろう相手……知ってしまえば見捨てる選択なんて取れないことを踏んで……いや、それだけじゃない。円堂たちも、影山が関わっているなんてことを聞いて黙っていられないことを分かって……十六夜だけでも止めるべきだったか……!)

 

 14時56分になる。だが、誰も来ない……そのまま1分経って14時57分に……

 

「ふぅ……皆、そろそろ準備を……」

 

 なろうとした瞬間、何の前触れもなく、1人の男がフィールドに現れた。

 

「「「えぇっ!?」」」

「わりぃ、待たせた」

 

 十六夜綾人、フィールドに突如として現れる。

 

「い、十六夜!?」

「どこから現れたんですか!?」

「い、いきなり現れたでヤンス!?」

「と言うかどうしたんだその汗の量は!?」

「かなり無茶した……ごめん、水分を」

「ほら」

「ありがと」

 

 チームメイトからの驚きを無視して、十六夜は八神から投げ渡されたドリンクを一気に流し込む。

 

「ふぅ……サンキュー。生き返った」

「生き返ったって……あれ?キャプテンは?それに鬼道さんたちも……!」

「アイツらは来れねぇ。いろいろあってオレだけ何とか来た」

 

 その返答に戸惑う選手たち。汗だくの十六夜は1回深呼吸をし、まわりを見渡す。

 

「話し始めたらキリがねぇ。時間ねぇし、とりあえず監督たちは?」

「本部に呼ばれたっきりだ」

「クソッ、最悪だな」

「十六夜」

 

 そんな十六夜に渡されたのはキャプテンマーク。

 

「お前たちに何があったかは知らない。だが、俺たちは監督たちや円堂たちが居なくても試合に出る」

「風丸……お前らの意志は固まってるわけか」

「当たり前よ!こんなとこで棄権なんて選択は取れねぇっての!」

「キャプテンはお前に任せるぞ」

「任された。スターティングメンバーは?」

「まだ決めてない」

「そうか……」

 

 そして、キャプテンマークをつけながら、もう一度まわりを見渡す。

 

「覚悟十分……オーケー、こうしようか。FWは中央に豪炎寺、左右に染岡と虎丸の3枚。MFは中央にヒロト、左右に風丸と土方の3枚。DFは左から綱海、壁山、オレ、飛鷹の4枚。最後、GKは立向居。木暮、栗松はベンチスタート。異論あるヤツ居るか?」

「ないな。お前たちも行けるな」

「「「はい!」」」

「いいかお前ら。ジ・エンパイアの守備は予選を無失点でおさえているほどの堅さ。勝つカギはその守備を破ることにある。攻撃陣、任せたぞ」

「任せとけ!」

「ああ!」

「さぁ、行くぞ。勝つのはオレたちだ」

「「「おう!」」」

 

 掛け声と共にフィールドに入っていくイナズマジャパンのスターティングメンバー。

 

「ふぅー……」

「本当に大丈夫なのか?十六夜。もう息があがっているが……それにその汗の量も……」

「心配いらねぇよ。なんとかする……そのために無理やり来たんだからな」

 

 十六夜はコイントスをするために、審判のもとへ行く。

 

「見たところ、監督も居ないようだし、この前のヤツもいない……お前も相当消耗してバテているけど、何かあったか?」

 

 すると、既に待ち構えていたテレスが声をかける。

 

「ちょっと、キツめのウォーミングアップをしてきただけだ」

「ふぅーん、まぁいい。全力で捻り潰してやるよ」

「ハッ、こっちこそ、お前らの守備を突き破ってやるからよ」

 

 コイントスが行われ、イナズマジャパンボールで試合が開始されることが決まった。

 

「ふぅー……行くか」

 

(体力をかなり消耗してしまっている……が、負けられねぇ。絶対に勝ってやる……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 船の待合室にて……

 

「良かった……辿り着いたみたいだね」

「それに何とか間に合ったみたいだな」

「流石は十六夜だ!」

「にしても、よくあそこから間に合う策を出したな。鬼道クン?」

「策ってほどでもない。ただ、全滅するよりアイツだけでも行った方が戦力になると思っただけだ……まぁ、しかもアレは十六夜しか出来ない博打だったが、何とか勝ったようだな」

 

 十六夜が試合会場に間に合った理由。それは……

 

「アヤトの必殺技ライド・ザ・ペンギンで海を渡ってヤマネコスタジアムに行くとは……中々の強行だね。普通は船で行くところを自力で行ったんだから」

「船長さんに、おおよその方角を教えてもらって、フィディオの持ってきた地図をインプットしたからな……下手したら漂流ものだったが」

「そこは十六夜のペンギンたちが上空を飛んでカバーしたんだろ?そして万が一、十六夜が体力切れで必殺技が使えなくなったか遭難した場合は、ペンギンの世界に逆召喚させて、メハト?ってヤツにこっちに召喚してもらうよう頼むんだったよな?」

「まさか、ペンギンを呼び出すだけでなく、呼び出されることも出来るとは……つくづく規格外のヤツだな。聞いたこともねぇけど?」

「それが十六夜綾人って男だ。ペンギン使いとしての高い実力と器の大きさ、そして信頼関係がないと出来ないって十六夜のペンギンが言っていたな」

「まぁ、多分ってつけていたけどな」

「そして、島についたらイビルズタイムでの瞬間移動……これで妨害されることなくグラウンドに到達できる」

「まぁ、影山は十六夜が空を飛べることも時を止められることも知っているんだろ?それに、アイツが無理やり海を越えようとしたことは何かしらでバレているだろうしな。だから、島中に警備を置かれたり、スタジアムの警備員を買収されたりしている可能性がたけぇ」

「ああ。そして、警備に見つかり次第、こじつけで何処かに監禁するくらいやってのけるだろうな。その点、島に到達からグラウンドまで時を止めてやり過ごし、そいつらより先に観客の目やカメラに映ってしまえば下手に手出しできないはずだ」

「確かにな。試合が始まってから、何かしらの手で妨害出来るんだったら、こんな回りくどいことせず俺たちをスタジアムに行かせてもいいはずだしな」

 

 あらゆる可能性を考慮した結果、十六夜は島の目立たない場所に着くと同時にイビルズタイムで時を止めてグラウンドで解除することにした。これは十六夜にしか出来ない芸当で、かなりの博打要素が絡んだ策だったが、無事に時間までにたどり着く事に成功した。

 

「ただ、イビルズタイムは消耗が激しい技と聞いてる……アルゼンチン戦でアイツはほとんど動けない可能性だってある」

「ああ。実際、相当消耗しているようだな……息が上がって、顔に余裕がないし、汗の量もテレビ越しに分かるほど」

「あそこまで疲弊しきっているなんて最初の合宿の夜くらいだろうな」

「大丈夫さ!それを承知の上でアイツは行ったんだ!信じようぜ!アイツなら必ず何かを起こしてくれる!それに他の皆だって、俺たち抜きでやってくれるさ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石に、短い時間の間に無茶をしすぎたらしい。イビルズタイムを使用しすぎて、マジで立っているのがやっとレベルの状態。既に息はあがっていて、足取りも重いものになってる。視界はふらついて、頭はぼーっとして……コンディションは最悪と言っていいだろう。

 

 ピーー!

 

 そんな中、イナズマジャパンボールで試合が開始された。上手くパスを繋いで攻め上がっていく……だが、

 

「戻れ!」

 

 パスカットをされ、ボールは10番に渡った。

 

「通さん!ブレードアタック!」

 

 そこを土方の必殺技ブレードアタックで何とか防ぐ……

 

「豪炎寺!」

 

 すかさず豪炎寺へとパス。だが……

 

「そんなノロマなパスが通るかよ」

 

 相手の9番がダッシュしてカットする。……速いな……アイツらの動き。

 

「まるで獲物を狙うオオカミ……!」

 

 ドリブルし、そこから11番へとパスを出す。そこをカットしたのは染岡……

 

「ジグザグフレイム!」

 

 4番がジグザグに進みながら、炎を出している……そのまんまだが、染岡はボールを奪われ、炎の勢いで飛ばされた。

 強力な必殺技……それに素早い動き……予想以上に厄介な相手だ。

 

「十六夜さん……大丈夫ッスか?」

「……ギリギリってとこだな」

 

 試合開始数分……まだディフェンス陣までボールが来ていないのに、息が上がって立つのがやっとの状態になっているオレを心配するチームメイト。クソッ……ここまでキツイとは思わなかったが……想定が甘かったな……

 その後も試合展開は徐々にジ・エンパイアのペースになっていく……精神的支柱と司令塔の不在、自分がなんとかしなければという強い思い……あらゆる状況が選手たちを焦らせ、攻撃が噛み合わない。

 

「ペースが……完全に相手のものだな……」

 

 前半も半分を過ぎる頃には完全に相手のペースに飲まれてしまった。

 

「十六夜くん。上がれる?」

「……かなりキツいな」

「そうだね……今までに無いくらい疲労しているもんね」

 

(こういう時に起爆剤になりそうな十六夜くんが攻撃に参加できない……か。皆も円堂くんや鬼道くんが居ないこと、十六夜くんの消耗が激しいことに気付いている……)

 

「気付いてるか……ヒロト」

「うん……皆、自分が何とかしようとして、まわりが見えていない。本来のプレーが出来ていない」

「ああ……こういう時は、誰かが指揮を執らねぇと……飲み込まれて試合が終わる」

「指揮を執る……そうだね。そうするしかないよね……十六夜くんはそのまま待機で。何とかしてみるよ」

「分かった……頼むわ」

 

 そう言ってヒロトは前線へと戻っていく。ボールは壁山が持って上がっていく。

 

「染岡さん!」

「こっちだ壁山くん!」

「え?」

「上がれ風丸くん!」

 

 ヒロトが間に入り、指示を出すことでパスを繋げていく……

 

「風神の舞!」

 

 風丸が守備を躱して隙を作る。そして、豪炎寺にパスを出した。

 

「爆熱スクリュー!」

 

 豪炎寺の渾身の必殺技が炸裂する。だが……

 

「アイアンウォール!」

 

 テレスがシュートコースに立ちはだかり、鉄の壁を生み出す。ボールは壁に激突……数秒後、ボールは弾かれテレスの足元におさまった。

 

「アレが……アンデスの不落の要塞……!」

 

 そしてテレスがシュートを止めた時、ジ・エンパイアの空気が変わる。全員が前のめりな姿勢になる。

 

「上がれ!」

 

 そしてテレスからのロングパスが通った。速いパス回しで一気にイナズマジャパン陣内へと切り込んでくる。

 

「戻れ!体制を整えろ!」

「遅い!ドッグラン!」

 

 相手の必殺技、ドッグランによりオレの足元をボールがまるで生き物のように駆け回る。……っ!ダメだ、思うように身体が動かねぇ……反応できない……!

 

「悪い立向居!そっち行った!」

 

 そしてボールは10番に渡る。

 

「ヘルファイア!」

 

 急停止した10番はボールを軽く蹴り上げ、ボールの下を蹴る。ボールは炎と共に激しい回転を見せ、その隙に10番は一回転し、ボールをゴールに向かって蹴る。

 

「ムゲン・ザ・ハンドG5!」

 

 立向居のムゲン・ザ・ハンドG5がボールを止めようと放たれる。しかし、その手を砕いてシュートはゴールに刺さった。

 

『決まったぁ!先取点はジ・エンパイアだぁ!』

『これはイナズマジャパンにとって重い1点が入りましたね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅ……未だ無失点を誇る相手に先取点を取られてしまった……これは大きいですよ……!」

 

 ようやくチームとしての歯車が噛み合い出した矢先の失点……しかも相手は守備が堅い。

 イナズマジャパンボールで試合が再開される。ボールは染岡が持った。

 

「染岡くん!」

 

 ヒロトのパスを要求する声……だが、聞こえなかったのかそのまま突っ込んでしまう。そして……

 

「ジグザグフレイム!」

 

 相手の必殺技の前に簡単に取られてしまった。素早いパス回しで、ボールは10番レオーネが持った。一気に切り込んでいく10番……そして、

 

「ヘルファイ――なにっ!?」

 

 ボールは外に出た。

 

「十六夜!大丈夫か?」

「ああ……」

 

 シュート体勢に入った10番……1回目に蹴った後、十六夜がダイビングヘッドで飛び込んで、ボールをクリアした。

 倒れた十六夜を風丸とヒロトが支えて起こす。

 

「その身体でどうやって……!?」

「ピンポイントで……読み切りゃいいだけの話だろーが」

「……なるほどな」

「はぁ……はぁ……わりぃけど……簡単には打たせねぇよ……」

 

 両膝をおさえ、既に肩で息をしている十六夜……ただ、目は死んでいなかった。

 

「やっぱり、油断は出来ないか……だが、その身体じゃ無理だ」

 

 十六夜の様子を見て、相手のキャプテンであるテレスが指示を出す。

 そのままジ・エンパイアのスローインで試合再開。ボールは10番が持った。

 

「いかせねぇぞ……!」

「突破する気はないさ」

「ッチ……!」

 

 大きく逆サイドへとボールを蹴った10番。拾ったのは11番だった。なるほどドリブルじゃなくてパスを主体か……普段と違って走りに行けない。仮に、ブロックで時間を稼がれても、今の十六夜じゃフォローが間に合わないと踏んでか……!

 

「ヘルファイア!」

 

 そして、11番がシュートを放つ。……まさか、11番もヘルファイアを打てるのか……!

 

「魔王・ザ・ハンド」

 

 立向居の後ろに何かが現れたと思ったら、すぐに消えてしまう。そして、シュートは立向居ごとゴールに入った。

 

『ジ・エンパイアの追加点!2-0と差を広げました!』

 

 ……0-2……攻略法を一切見出せていない状況で、2失点はかなり大きい……

 イナズマジャパンのキックオフで試合再開。

 

「……ダメだ、どんどん焦りが出ている」

「確かにそうですね……」

 

 失点を取り返さないといけない……その思いが強くなってしまい、再びまわりが見えていないプレーに戻ってしまう。……頼れる人間の不在と消耗……これ程までにチームに影響を与えてしまうのか。

 

「怖がってんのか!」

「えっ?」

 

 そう声をあげたのは飛鷹だった。その声の先には立向居が居る。

 

「失敗したって良い!お前の全部をぶつけるんだ!」

「失敗してもいい……俺の全部をぶつければ……」

 

 そんな中、ボールは11番に渡る。先読みした十六夜がブロックしに行ったが、すぐさま逆サイドにいる10番へとパスが通った。

 

「ヘルファイア!」

 

 3度目のヘルファイアがゴールを襲う。

 

「これが俺の全部だぁ!」

 

 そう言った立向居の後ろには紫色の魔神……否、魔王が現れた。

 

「魔王・ザ・ハンド!」

 

 魔王が両手でボールをキャッチする。

 

「やったでヤンス!」

「遂に必殺技が完成したんだね」

「凄い!凄いです!」

 

 ベンチに居た栗松、木暮、音無が喜びを見せる。フィールドでも壁山と綱海が喜びを分かち合っている。この土壇場で成長を見せた……だが、2失点した事実は変わらない。得点する手段がなければ……このまま敗北してしまう。

 

「へぇ……シュートを止めたか。面白い……お前ら!アレをやるぞ!」

 

 テレスが指示を出す。そしてボールを持っている豪炎寺を7人の選手が囲んだ。

 

「な、何ですかアレは!」

「まるでありじごく……」

 

 豪炎寺の足元には砂が……そしてパスコースを完全に塞がれ、ドリブルしか選択肢がなくなる。

 

「必殺タクティクス、アンデスのありじごく」

 

 足元の砂は一定方向に流れ、周りの選手も豪炎寺を囲うようにして自陣へと戻っていく。そして、ありじごくを抜けた先で、豪炎寺はシュートを放った。

 

「爆熱スクリュー!」

「アイアンウォール!」

 

 しかし、それをテレスによって止められる……せっかく、シュートを止めたのに、点を取る活路が見えない……

 

「一体、どうすれば……」

 

 前半終了は刻一刻と迫ってくるのだった。 




 ということで、十六夜くんは無茶して間に合ったけど、代償に体力切れを起こしています。十六夜くんの能力のせいで皆間に合うor皆間に合わないの2択で大きく割れていた印象ですが、正解は1人だけ間に合うでした。ゲーム風に言うと、十六夜くんのGPが0の状態から試合スタート(回復アイテム使用不可)です。体力が馬鹿みたいに多いと言っても、流石に無限ではないので……尽きた状態でのスタートですね。ただ、ゲームと違うのは動かなければ少しずつ回復する点でしょうか?



 ちなみに、不動と鬼道の推測は正しく、船を止めた工作員によって十六夜が海を渡ろうとしたことが伝わり、スタジアムの出入口ならびに島中に警備員が配置されていました。捕まれば適当な理由で試合終了まで拘束、監禁されましたね。だから、もし十六夜以外のメンバーも行こうとしていたら、間違いなく捕まっていましたね(十六夜以外に時を止められないのと、流石に上空から目立つ入り方はしないため)。全ては影山のせいです。
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