超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSジ・エンパイア ~アンデスのありじごく~

 十六夜がヒロトと豪炎寺の肩を借りてベンチに運ばれてくる。

 辛うじてテレスが支えてくれたおかげで地面に伏すことはなかったが、ガス欠を起こしている。一歩も動けない状態に陥ってしまった。

 

「情けねぇな……動けねぇとか。……わりぃ……後、頼む」

「は、はいでヤンス!」

 

 代わりに入ったのは栗松……飛鷹をMFにあげ、DFに栗松を入れた。

 

「それとヒロト……」

「うん。しっかり受け取ったよ」

「お前のゴール、無駄にはしない」

 

 キャプテンマークを受け取ったヒロトと、豪炎寺がフィールドに戻っていく。

 

「ほら、ドリンクとタオルだ」

「…………」

 

 ベンチに座った十六夜……その表情は何処か悔しそうだった。……いや、当然か。試合の途中で下がる嵌めになり、しかも、まだ勝ち越せていない……最後まで立てなかった。最後まで戦うことが出来なかった。覚悟していても悔しさはあるのだろう。

 だが……これは聞いておかないといけない。

 

「…………なぁ、十六夜。お前が円堂たちと試合をしたことは知っている。だがあれ程の消耗度合いは流石におかしいだろ。一体、何をしていたんだ……?」

 

 来たときには既に体力が底をつきかけていた。前半ほとんど動けなかったのがその証拠。そして……後半は少し息を吹き返したものの、こうしてベンチに下がらないといけない状況になってしまっている。

 試合が再開している中、タオルを頭に被った十六夜が質問に答え、静かに言葉を紡いでいく。

 

「影山の策に嵌められた……オレも、円堂たちも」

「嵌められたって……どういうことだ?」

「影山が姿を見せたのはわざとだったんだ……アイツが姿を見せれば、必ず鬼道が食いつくと知っていた」

「じゃあ、狙いは……お兄ちゃんだったんですか!?」

「恐らくそうだろうが、それじゃ足りない。……最初からオレを含めた5人が狙いだったんだ。オルフェウスの選手を6人になるように怪我させたのは、オレたち5人が入れば丁度11人になるから……イタリア代表の座が本当の狙いじゃない。本当の狙いは――」

 

 ――オレたち、イナズマジャパンの敗北だ。そう怒気を込めて言った。

 確かにそうだ、監督たちが居ないのも偶然じゃない。その上、キャプテン、副キャプテン、司令塔と言った主要メンバーを欠けさせる……全員揃っていたとしても、確実に勝利できるような相手じゃない以上、これだけ削ればイナズマジャパンの敗北は濃厚だろう。

 

「でも、十六夜くんはギリギリ間に合ったんだよね?試合を抜け出してきたの?」

「いいや……試合は14時過ぎに終わったんだ」

「試合開始1時間前ですか……でも、1時間もあれば間に合ったんじゃ……」

「ああ、普通はな。……立て続けに妨害されたんだ、オレたちは。まずグラウンドから出られないように謎の集団が現れた。それを突破しバスで港に向かおうとすれば、道中交通事故を起こしていて渋滞が出来て足止め。それを乗り越え船にたどり着けば、ここに着くはずの船がエンジントラブルで替えの船もない状況……」

「徹底的に、お前らをアルゼンチン戦に参戦させないようにしているな……」

「あれ……?」

「どうしたの?冬花さん」

「それじゃあ、十六夜くんは……どうやってここにたどり着いたんですか?」

「……必殺技だよ。ペンギンたちに運んでもらった……それに加えて、イビルズタイムで時間を止めてここまでたどり着いた」

「まさか……!お前、イビルズタイムを長時間使用したのか……!だからガス欠寸前に……」

「どういうことですか?」

「十六夜の使うイビルズタイム……超がつくほど強力な反面、実は体力の消費が著しいんだ」

「そんな技だったのか!?」

 

 詳しい理由は分からないが、イビルズタイムの体力の消費の仕方は()()だ。消費の公式は基本値×時間×運動量と言っていたか。ただその基本値と言うのが、体力の割合になるらしく……例えば、MAXの体力が100のヤツは10に対し、1000のヤツだと100になる。体力をつけたとしても、その分消費量も上がってしまうというよく分からない技らしい。……こいつの話と状態を察するに、会場には体力が尽きた状態で来たと考えていい。

 

「コイツは、この技を強すぎることを理由に封印している。だが実際、こんな技は連発出来ないだろう」

 

 試合中に使う状況としては、アフロディみたく、相手も時を操れてイビルズタイムを使って互角になる時くらいだろう。他は十六夜の裁量だが……とにかく、そんな体力消費の激しい技の長時間使用に直前の試合……そしてこの試合。さっきまで戦えていたのが不思議なくらいだ。

 

「……そういや、監督が居ない理由を教えてくれ」

「大会本部に呼び出されたんですよ。理由は分かりませんが」

「そうか……」

 

 そして、十六夜は静かになる。話疲れた……ということだろうか。そのまま十六夜は、タオルを被りながら真剣な目つきでテレスの動きを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合は徐々に押されていった。十六夜の得点で1点を返すも、あの破り方は十六夜だから出来たこと……他のメンバーの参考にはならず、時間だけが過ぎていった。立向居をはじめとした守備陣の奮闘により、失点は免れているも攻略のきっかけがない。

 

「……こんな時……円堂君が居てくれたら……」

 

 精神的支柱の不在。突破口が見つからず、いいようにやられているだけ。十六夜の得点、及びその前のことで士気は上がっていたものの、あの得点はチームで取ったというよりは、たった1人でこじ開けたのが大きい。そして、士気が上がるきっかけになった男も今ではベンチに下がってしまっている。

 勝つための希望が見えない……時間が経つにつれ、皆の士気が下がっている。せっかく上がった士気も下がってしまっていた。

 

「十六夜……声を掛けなくていいのか?」

「…………」

 

 あれから一言も喋っていない十六夜……おそらく、コイツの頭の中では……

 

「自分が動く必要はない……ということか?」

「…………」

 

 言葉に無反応だった。既にハーフタイム中にヒントは示していたし、私にも2回のチャンスを貰うまでは絶対交代するな……それだけを伝えてきた。その後、どうなるかは薄々予想できていたのだろう。いや、流石に予想できないわけがないか。この試合を最後まで戦うことができない可能性を考慮し、自分が抜けた後は他の面々に任せるしかない……そんなある種のピンチ。その状況をコイツは……

 

「誰かが欠けていて不安になる……誰かが居ないから実力を出せないようじゃダメだ。もし、このまま何も出来ずに負けるんだったら……それがイナズマジャパンというチームなんだろうな」

「なるほどな……まるで試しているみたいだな」

 

 きっと、利用している。イナズマジャパンを試し……この先も一緒に戦えるチームメイトかを考えている。サッカーにおいて、ある種の冷酷さも持ち合わせているコイツなら……ここまでの試合で信じ始めた気持ちを、この試合の結果次第で閉ざすことぐらい容易だろう。それが、いくらさっきまで自身を助けてくれた仲間であっても。積み上げることは難しくても壊すことは容易なのだから。

 ボールが外に出て試合が止まる。そんな中、マネージャーである久遠がベンチから飛び出した。

 

「みなさんどうしたんですか!まだ試合は終わってないですよ!なのに、諦めるんですか!」

 

 久遠にしては、珍しく大きな声で、そして言葉に強い意志を感じる。

 

「何があっても諦めない!それがイナズマジャパンのサッカーじゃないんですか!」

 

 その言葉がフィールドに居る11人へ、そしてベンチに居る私たちへと届く。

 1人、また1人とその言葉を受け前を向き始めるイナズマジャパン。

 そして、試合が再開する中、風丸が十六夜に声を掛ける。

 

「十六夜、お前のことだから、アンデスのありじごくの攻略法を分かってるだろ?」

「ああ……最初はお前のスピードで、囲まれる前に突破を考えたが、それは出来なくなった」

「そうだな。それに、お前がやったのも攻略じゃないだろう?どうすれば出来るんだ?」

「……まぁ、アイツらには聞こえてないし、そろそろ気付いたからいいか……ありじごくから抜け出せばいいんだよ」

「抜け出す?」

「あれはテレスの前にボール保持者が来るようになっている。……テレスのところに引きずり込まれているんだ。……だから、それに抗うようにして走ればいい……あんな風にな」

 

 と、十六夜が指をさした先では、木暮がありじごくに嵌まり、両サイドに栗松と壁山が走っていた。木暮がテレスの元によらないよう、2人が両サイドからどうなっているか教えているらしい。

 

「いいよ!木暮くん!」

 

 そのまま木暮がバランスを崩しながらも、壁山へとボールを繋げた。

 

「……そうやって、引きずり込まれないようドリブルをしていれば、必ず隙が生まれる……それまで耐えて、パスを出す」

「でも、パスを出された奴もアンデスのありじごくに……」

 

 壁山が囲まれ、アンデスのありじごくにはまってしまった。

 

「いや、それでいい。少しずつでいいんだ……相手にアンデスのありじごくを攻略している……そうやって焦らせるんだ。しかも、ここで決められれば同点になる……主要メンバーの大半が欠いているチームにやられてると、焦らせて相手を誘い込む……そうすれば必ずエースストライカーに繋がる道が出来るはずだ」

 

 エースストライカーへの道……豪炎寺の近くには宇都宮とヒロトがスタンバイしていた。

 

「皆、豪炎寺くんたちに繋ぐために……!」

「頑張って!壁山くん!」

 

 そして、パスは栗松へと繋がり、3度目のアンデスのありじごくが発動する。

 

「右に行くでヤンス……!」

「栗松くん……!」

「ほら、だいぶ見えてきただろ?」

「そうだな……豪炎寺たちとキーパーの間にテレスという障壁が消えつつある」

「じゃあ、ここが大事ってわけか……」

 

 必死にアンデスのありじごくから抜け出そうとする栗松……が、ボールを奪われてしまう。

 

「絶対に繋ぐでヤンス!」

 

 しかし、相手がパスを出そうとしたところに飛び込み、豪炎寺へ繋げた。

 

「繋がった!」

「任せろ、行くぞヒロト!虎丸!」

 

 そして3人がシュート体勢に入る。

 

「グランド――」

「ファイア――」

「――イグニッション!」

 

 そのシュートはフィールド全てを焼き尽くす炎のシュートだった。シュートコースに割り込んでくるテレスやディフェンス陣を、技が発動される前に吹き飛ばし……

 

「ミリオン・ハンズ!」

 

 キーパーの必殺技をも弾き飛ばした。

 

『決まったぁ!同点ゴールだぁ!』

 

「すげぇな……いつの間にあんな必殺技を……」

「十六夜……お前、最近の練習に参加してないことがバレる発言だぞ、それ」

「あはは……ここ2、3日は、立向居くんたちが何かやってたように、あの3人も一緒に練習していたからね……皆知ってるよ」

「…………今の失言、カットで」

「「「はぁ……」」」

 

 なんというか……十六夜の自由さには困ったものだ。

 

「決まりましたね、豪炎寺さん!ヒロトさん!この調子でもう1点取っていきましょう!」

 

 ピ、ピーー!

 

 盛り上がってきたところで、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

『ここで試合終了です!イナズマジャパンとジ・エンパイアの勝負は引き分けで終わりましたぁ!』




 ちなみにイビルズタイムが進化すると技の威力が上がるのではなく、体力消費の基本値が下がりますね。


 最近、アレス・オリオンルートをふと考えてみたりしたんですけど、どんなに頑張っても日本代表の一員としてまともに出場するビジョンが見えないんですよね……記憶を失ったままならともかく、記憶が戻っている本編みたいだと……ねぇ?ちなみに、必殺タクティクスのザ・ジェネラルで皆は受け取っているのに、十六夜くんだけ何も起きず「え?何かした?」って本人も周りも困惑しているのは確かです。
 個人的には、アレスの裏で海外に留学して、帰って来ない気がします。……多分、その国の代表に潜むオリオンからの刺客と敵対しながら他国代表として出場してますね、はい。
 いや、ヒロインを八神さんにするには意地でも永世学園行きにしないといけないんですが、武者修行とか言い出して海外行く方があっているんですよね……そもそも、十六夜くんと永世学園を組み合わせると、雷門が永世学園に勝てるビジョンって、十六夜くんを出場させない上でアニメ同様怪我人続出じゃない限り、あまり見えてこないんですよね……
 とまぁ、こんな感じですね。元がアレなせいでもしかして吹っ切れてもいいかもとか何とか……まぁ、今は本編ですね。……気付けばこの週1投稿1年以上続いているってマジですか?現段階だとユニコーン戦がどうなるか状態なので……いつまで続くかですが、確実に週1投稿を世界編終了まで続けるのは厳しいですね。


 世界編で前々からやりたかったことは前話の最後の得点です。……見返して思ったのは1期の千羽山前の台詞って伏線じゃないの?ってことから生まれましたね……はい。アルゼンチン戦もやりたいけど、チームK戦もやるってなった結果(十六夜くんが)無茶しましたね。RTAなら再走案件ですかね……?まだタイム大丈夫かな……?

 とにかく、テレスも微妙に強化されている?って感じのジ・エンパイア戦も終わりですね。まぁ、ここから先に待ち受けている試合たちの方が、神様強化の影響を色濃く受けていたりいなかったりなのですが……

 次回、試合終了後とそして……
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