野生中戦も終わって何日かした後、河川敷での練習にてそれは起きた。
「ついに俺たちにも出来たんじゃないのか……?」
「出来たって……何が?」
「ファンだよ」
「「「えぇぇ!?」」」
と、現在橋に沢山のギャラリーが居るのだ。ただし、
「なぁ、豪炎寺。アレって……」
「十中八九他校からの偵察だろうな」
そのすべてが他校の奴らで、オレたちの分析に来ている奴らだが。
まぁ、練習試合で帝国と尾刈斗に勝ち(実際、帝国に関しては大敗だが)地区予選の優勝候補だった野生中を下したオレたち雷門は、言わばダークホース。注目がされてなかった分データが少ないし、そもそも録に去年まで活動していない。そのデータを取りに来たのは分かるが……この世界ってここまでやるの?
「さぁ練習練習!必殺技にもっと磨きをかけるぞ!」
おい。こっちの手の内を堂々とさらしてどうする。
と、思ってるとグラウンドに突っ込んでくる1台の車……雷門お嬢様の車だ。後少しで円堂を轢きそうになったがそれはスルー。
そして車から降りてきた雷門が一言。
「必殺技の練習は禁止します」
「よし、賛成だ」
即賛成する。異議なしだ。
「いきなり何言ってんだよ。十六夜も。必殺技なしでどうやって地区予選勝ち抜けるんだよ」
むしろ、必殺技に頼ってる方がおかしいんだよ。
「ん。アレ何か分かる?」
オレは
「何言ってんだよ!俺たちのファンだろ!」
「アレは俺たちのファンなんかじゃない。俺たちのデータを取りに来てる他校の偵察隊だ」
「「「えぇぇっ!?」」」
いや、誰1人として雷門中……同じ学校の学生にファンができないのに、他校にファンが出来ているってことに疑問を抱かなかったのかよ。
「分かった!ここで必殺技の練習をすると、他校にこちらの情報を渡しちゃうのですね!」
今のオレたちはどうぞ見てください、好きなだけ分析して対策してくださいって言ってるものだ。
「だから、必殺技の練習禁止。で、文句ないよな?キャプテン」
「でも、必殺技なしでどうやって!」
「円堂。必殺技だけがサッカーじゃない。パス回し、トラップ、シュート。やることは山ほどある」
やべぇ。激しく同意だわ。さすが豪炎寺さんです。まぁ、炎出せる人に言われてもアレだが凄い共感できます。
「だったら誰にも見られない秘密の場所で練習しよう!必殺技のさ」
「お前……今の話聞いてなかったのか?それと何処にあるんだそんな都合のいい場所」
「ぐっ…………!」
「って感じですよ八神さんや!」
「そうか。偵察とは大変だな!」
パス練習をしながら現状を報告する。まぁ、秘密の特訓場所はないが、こんな夜に偵察に来るモノ好きはいないだろう。
ちなみに、野生中戦の後にも反省点はいくつか挙げられた。今は次の試合のためにもそれを改善することも大事だ。
「だいぶペラーを呼び出す速度は上がってたな!」
「それはな!」
ペラーが出て来るまでのタイムラグ。ここを縮められればさらに隙が少なくなるそうだ。八神さん曰く、どんな技も完璧ではないそうだ。どこかに付け入るスキはあるそう。だから自身の技の付け入るスキを減らし、相手の付け入るスキを見つける。これが大事だそうだ。
「体力も付けないと前みたいになるぞ!」
「分かってるさ!」
野生中との試合は、最後の方結構バテてしまった。まだまだ体力不足。もっとつけないとなぁ。…………というか八神の方がオレより体力ありそうだなぁ。
「あの技は完成しそうか?」
「うーん。まだ何とも」
「そうか。片方だけでも早く身に付けられるといいけどな!」
「無茶言うな!」
ダイレクトでのパス練習。心なしか、この前の野生中のターザンキックなどより威力が高い気がするがスルーの方向で。
「大体お前の考案する技無茶苦茶なんだよ!」
「まだ常識の範疇だろ!」
オレにはこの世界の常識が良くわからない。
「よし、100回。次のメニューだ」
「はいはい」
こうしてオレの特訓もどんどん進んでいく……やれやれ。何時になったら八神さんに追いつけるのやら。……頭脳だけなら追いつき追い越してるんだけど。
そして、基礎練習の日々の中、それは突然やってきた。
「おい!何か変なのが来たぞ!」
今日もいつにも増して他校の偵察部隊が陣取ってる中、2台のトラックがやってきた。
すると、トラックの荷台に当たる部分は変形して、何か研究施設というか……
「なんだ?」
「次の対戦相手です」
「…………もう無茶苦茶だろ」
何?サッカー部偵察のためだけにここまでするの?この世界では。いや意味わかんねぇよもう。
「次の対戦相手?」
「御影専農中のメンバーです」
すると音無も他校のデータベースを作っていたようで見せてくる。まさか、洗脳された奴らとか……ってないない。さすがにそこまで安直じゃない。
で、そのデータベースによると今研究所にいる2人は、エースストライカーの下鶴とキャプテンでゴールキーパーの杉森だそうだ。
「気にせずいこう」
何か今までの奴らとは違ってかなり本格的だが、とりあえずいつも通りに基礎練習をする。
基礎練習をすることどれくらいか、下鶴と杉森が乗り込んできた。
「皆!ちょっとストップ!御影専農のキャプテンだな?練習中にグラウンドに入らないでくれよ!」
「何故必殺技の練習を隠す」
うわぁ。話通じてねぇ。
「え?」
「今更隠しても無駄だ。既に我々は雷門中サッカー部員全員の能力を解析している」
へぇ。公式戦練習試合未出場の目金の能力もかな?
「評価はD-だ。我々には100%勝てない」
それって何段階評価だろう。もしかして最底辺なのでは?
「勝負はやってみなくちゃ分からないだろ?」
「勝負?これは害虫駆除作業だ」
…………は?
「害虫!?」
「そんなの酷い!」
「俺が追い出してやる!」
「落ち着けお前ら」
「十六夜さん!あんなこと言われてムカつかないんですか?」
「いや、オレよりうちのキャプテンの頭に血が上ってる」
明らかに円堂から怒ってますよオーラが漂ってる。まぁ、怒るのも無理はないな。事実オレも怒ってるし。
「俺たちを害虫と言ったの取り消せ」
「事実を言ったまでだ」
「理解できないとは意味が分からない」
「もう許せねぇ!俺たちの必殺技見たいなら見せてやる!決闘だ!」
「「「決闘!?」」」
おいおい頭のおかしなこと言い出したよ。
「決闘?なぜそんなことをする必要がある?」
そして理解されてねぇ……
円堂が説明すること何分か。そうしてようやく理解された。何だこのめんどくせぇ奴らは。お前ら人間か?この世界にはまともな人間はいないのか?
で、向こうがユニフォームに着替えたりして、先攻は向こうのエースストライカー下鶴だ。
「絶対に止めてくれよ!」
「頼みますキャプテン!」
「ああ、任せとけ」
気合は十分か。
「では始める」
「よし来い!」
さてさて相手の実力は……ん?軽くドリブルした後、ボールを高く上げ、足に炎を纏いながら回転……アレってどこかで見たような……
「ファイアトルネード!」
ああ、ファイアトルネードか。何だ、アレって豪炎寺以外にも使えるんだ……てっきり使えないものだと思ってたけど……うわぁ。化け物増えた。
「熱血パンチ!」
円堂は一瞬反応が遅れた後に熱血パンチを繰り出す……が無情にもボールはゴールの中に入った。
「ファイアトルネードだ」
「どうしてアイツが……」
「こちらの能力を解析したと言ってましたが必殺技をコピーされているとは」
……え?そんなに必殺技のコピーって難しいの?まぁ、確かに難しそうだけど……そこまで驚くことなの?前から有名な豪炎寺の技なんだから、誰かは真似して習得してそうなのに。
とまぁ、何だかんだでボールはこっちのエースストライカーである豪炎寺の下へ。いや、逆に彼以外誰が蹴るの?で、ゴール前には杉森が。
「決めろ!豪炎寺!」
「ファイアトルネードはお前の必殺技だ!」
「コピーは本物には敵わないって教えてやるっすよ!」
「頼むぞ!」
頷く豪炎寺。ていうか、1つ思ったこと。杉森の頭に付いてる電極なに?凄い気になるんだけど。
そんなオレの興味をスルーして蹴り始める豪炎寺。そしてそのまま、
「ファイアトルネード!」
ファイアトルネードを放つ。それを杉森は、
「シュートポケット!」
腕を交差させた後、何やら空間が杉森の前に形成される。そこにシュートが入るとシュートの威力は弱まってゆき、杉森に片手で止められた。
……え?今何したの?え?空間作っちゃった?え?え?どういう原理かさっぱり分からないんだけど?催眠術……ってわけではなさそうだしどうなってんの?驚きを通り越して疑問しかない。いや、マジで何が起きた今?誰か詳しい説明を求む。