超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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越えるべき壁

「今日の練習はここまで」

 

 十六夜が所用で帰国、更に代表交代で栗松が帰国した次の日……

 

「円堂、ちょっといいか?」

「どうした?豪炎寺」

「シュート練習に付き合ってくれないか?」

 

 多くの者が自主的に残って練習する中、豪炎寺は円堂を誘っていた。

 

「もちろんだ!やろうぜ、豪炎寺!」

 

 場所を移動し、ゴールを守る円堂と1対1になる。

 

「行くぞ」

「来い!」

 

 そして、1本、2本とどんどん撃っていく。

 

「凄い気合い入ってるな!」

「まぁな」

「やっぱ、次は一ノ瀬たちと戦うからか?」

 

 イナズマジャパンの次の相手はアメリカ代表ユニコーン。かつて共に戦った仲間である一ノ瀬や土門が所属しているチームだ。

 

「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」

「いや、どっちだよ」

 

 と、ここで豪炎寺はシュートを撃つのを中断する。

 

「アルゼンチン戦……お前もテレビ越しに見ていただろ?」

「おう!」

「どう思った?」

「そりゃあ、勝てなかったのはすげぇ悔しいけどさ。皆凄かったじゃないか!十六夜がほとんど動けない中、立向居や壁山を中心に守って、皆で攻めて……十六夜や鬼道抜きでも、1点を奪えたんだぜ?あの時は見ていてすげぇって……」

「……そうか」

「……一体、どうしたんだよ」

「俺は……凄い悔しかった」

 

 ここで、豪炎寺の手が硬く握りしめられていることに気付く円堂。

 

「やっぱり、勝てなかったから?」

「違う。俺のシュートはテレスに止められた。相手のキーパーにも止められた。……でも、十六夜は1人でそいつらの守りを崩してみせた」

「で、でも!お前だって点を決めたじゃないか!」

「あれはヒロトと虎丸が協力したからだ。……俺のシュートはアイツらに通用しなかった」

「…………」

 

 誰が見ても分かる事実だった。豪炎寺のシュートはキーパーに止められた。ディフェンダー1人に止められた。対して、十六夜のシュートはそいつらの守りをたった1人でぶち抜いた。自分が誰かと協力しないと破れなかったものを1人でぶち壊した。

 

「1点取った……結果を見れば一緒だ。でも内容はまるで違う。3人で協力して、ようやく点を取れた俺と、たった1人で全てを変えたアイツじゃ、全然違うんだ」

「……確かにな。十六夜のヤツはすげぇ……俺だってエドガーに通用したはずのイジゲン・ザ・ハンドが簡単に破られたときにはちょっと引いた……もっとやれるって思ったんだけどな」

「あーあの時か」

 

 イギリス戦の次の日、1日オフということでほとんどの選手・マネージャーがこの島で休暇を満喫していた。円堂も豪炎寺も、そして十六夜もその1人。……まぁ、十六夜がお土産を買うという概念がなくて、代わりにおもりを買ってきたときは全員がドン引きしたが。

 その日の夕食前、円堂は十六夜と勝負をしていた。正義の鉄拳、いかりのてっついに続く3回目となる勝負。イジゲン・ザ・ハンドという相手のシュートを止めるのではなく逸らすことによって、ゴールさせない必殺技。今までの弾く、叩きつけるとは違う選択肢……しかし、十六夜のシュート……オーバーサイクロンPは軽くイジゲン・ザ・ハンドを破ってみせたのだった。その時には多くの面々が目を点にしていたが……

 

「あれは技の特性の問題……って、分析で終わらなかったか?」

 

 その後、十六夜、鬼道、不動、豪炎寺の話し合いにより、イジゲン・ザ・ハンドという必殺技はあくまでコースを逸らして受け流す性質が強く、直進してくるパワー重視の技には強い。ただ、あのオーラそのものの強度は決して強くない。だから、十六夜のシュートのように純粋なパワーではなく、貫通力に優れてしまうと受け流す前に壊れてしまい、ゴールに刺さってしまう。

 

「でもさ、同時に思ったんだ。次は絶対十六夜のシュートを止めてやる……あのシュートは止められない完全無欠のシュートじゃないんだ。だから、絶対に止められるようになる……」

「円堂……」

「俺もお前と同じだぜ?すげぇ悔しい……俺の技はアイツに通用しない。でもさ、それって、この大会に参加しているヤツの中にも、軽く突破してくるヤツが居るってことだろ?立向居が一皮剥けたように、俺ももっと強くなりたいんだ」

「……フッ、立場は違うだけで……近い悩みかもな」

 

 十六夜のシュートを超えられない豪炎寺と、十六夜のシュートを止められない円堂。どちらも十六夜の得点力が絡んでいることに間違いは無い。

 

「アイツって何だろうな」

「俺もよく分かんないな!」

「分からないって自信を持たれてもな……」

「あはは……だって、エイリア学園の時もさ。鬼道とアイツってよく分からないなーって話をしていたんだ。確か、お前と綱海が鉄塔広場で特訓している裏だったかな?」

「あの時か……確かに。あの時のアイツは敵として現れてみれば今度は味方とか、潜入捜査なんてよく分からないことしていたな。ついでに今も日本に帰ったしな」

「それだけじゃなくて、アイツってさ。留学から帰ってきてからプレースタイルというか、性格というか、雰囲気がすごく変わった気がする」

「……そうだな。帰ってきてからは今までより1人が多くて、それでいてつまらなさそうだったな」

「そうそう。で、最近も何というか……日々変わり続けている気がする。留学で何があったか分かんないけど、少なくとも留学前のアイツから大きく変わっている」

「確かにな。今までも何かズレているところがあるとは思っていたが……あくまで感性の問題であって、それとは別にあそこまで自分をっていう選手だとは思わなかった」

「そうなんだよ!なんて言うか、今のアイツは『オレはこうしたい!』みたいなのを凄い前面に出している感じがするんだ」

「それはよく分かるな」

「それで一人で突っ込むけど、実はしっかり考えていて、周りも見れている。未来視なんてさ、チームのことも分かっていないと出来ない凄い芸当も身に付けて……アイツの勝ちたいって気持ちは一緒なんだなって思った。きっと、やり方や考え方は違うってヤツなんだな」

「ある意味、お前とは対極なんだよ」

「え?」

「これは俺の主観だが、お前は皆で何とかが多いけど、アイツはマイペースで個人行動が多い。仲間を見ているお前と相手を見据えるアイツ。……お前が太陽のような明るさで皆を照らして先導するなら、アイツは月のように皆から一歩引いたところを動いている。光と闇、陽と陰……お前たちは対極なんだよ」

「お、おぉ……」

「でも、2人とも互いに影響を受けている。アイツは何だかんだ言ってもお前に背中を預けている。お前は堂々とアイツに背中を預けている。……そして、チームの皆もお前たちには影響を受けている」

「え?そうなのか?」

「お前たちが思っている以上にな。少なくとも俺はアイツのお陰で明確なビジョンが持てている」

「めいかくな……びじょん?」

「ああ、アイツを超えるストライカーになること。アイツは俺のことをエースストライカーって認めてくれている。それなのに、エースストライカーがソイツより得点力が低いのは問題だろ?」

「……そうだな。俺だって、ゴールを託してくれているのに、託した側が破れるようじゃ、安心できない……うん。やろうぜ、豪炎寺!俺たちで十六夜を超えるんだ!」

「ああ!」

 

 と、2人しか居なかったところに……

 

「へっ、お前らだけでなに熱くなってるだよ」

「そうですよ!俺も混ぜて下さい!」

 

 染岡と虎丸の2人がやって来る。

 

「俺だって、あの試合で十六夜のシュートを見て、悔しいのは一緒だっての」

「十六夜さんより点を取る力がない……それを痛感したのは豪炎寺さんたちだけじゃないです!俺の超えるべき目標は豪炎寺さんです!でも、十六夜さんを超えないと俺が胸を張ってこのチームのストライカ-だって言えないじゃないですか!」

「同感だ。アイツが託したくなるようなストライカー……今の俺じゃそこまでの実力はねぇ。それに、世界にはアイツよりすげぇストライカーは沢山居るんだろ?だったら、十六夜は世界で通用するストライカーが超えるべき壁だ」

「十六夜さんが託したくなるストライカー……いいですねその表現!」

 

 会話のほとんどを聞いていた2人……十六夜の姿を見て、話を聞いていて熱くならないわけがなかった。

 

「誰が十六夜さんを超えられるか勝負ですよ!」

「はっ、面白ぇじゃねぇか!」

「フッ……十六夜のヤツが聞いてたらどう思うだろうな」

「やってやろうぜ!アイツを超えるぞ!」

「「おう!」」

「って、円堂はストライカーとしてじゃないだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい空気だね……十六夜くんが超えるべき壁。目指すべき目標になっている……監督の言ったとおりの存在になってるね」

「監督が?」

「うん。韓国戦の時に言ってたんだ」

「あの十六夜が暴走した試合か……」

 

 少し離れた場所で4人を見つめる3人の陰があった。

 

「確かに、アイツには足の速さじゃ負けないけど、それ以外で何が勝てるって言われても疑問だしな」

「うん。僕も同感だよ」

「風丸くんや吹雪くんと違って、俺だと全部が上位互換に思えるけどな……」

「何言ってるんだよヒロト。アイツより協調性はあるだろ」

「あはは……それ言うとこのチームの皆に当てはまりそうだね」

 

 風丸と吹雪の必殺技の特訓に付き合っていたヒロト。3人が練習を切り上げようとしたときにたまたま4人の姿が見えたのだった。

 

「十六夜くんはあの試合から少しは吹っ切れたみたいだね……イギリス戦も見てたよ。きっと、彼なりに答えが出たのかな?」

「答え?」

「ううん、こっちの話」

 

 韓国戦のハーフタイム……吹雪は十六夜の話を聞いただけだったが、その時より何かは変わったんだろう。本人が気付いているか気付いていないかは定かではないが……

 

「そう思うと、十六夜くんはイギリス戦で何か掴んだみたいだしね」

「そうなのか?」

「うん。エドガーとのマッチアップの中で何かを掴んだ様子だったよ」

「確かに、あの時のアイツはやばかったよな……」

「尚のこと負けられないね。僕も、復帰したからには強くなったところを見せないと」

「そうだな。次は一ノ瀬と土門が相手……アイツらにも強くなったところを見せ付けないとな」

「しかも、次の相手はディランとマークって言う、世界トップレベルプレイヤーが2人も居る。エドガーやテレスレベルが2人……厳しい戦いになるね」

「十六夜くん1人じゃ絶対に勝てない戦い……だからこそ、僕たちも1人1人が頑張らないといけない。やっぱり、世界大会本戦は違うね」

「ああ。それに、決勝トーナメントに出るって意味でも落とせないんだ……もう少し練習していくか?」

「そうだね。ヒロトくんは?」

「俺はアメリカ代表の分析かな。十六夜くんが忙しそうだし、俺も頭に入れておかないと」

「そう思うとアイツって何者だ……?相手の分析に、練習量も人一倍って……」

「だから化け物って言われるんでしょ。……でも、化け物にも限界がある」

「だね。僕らが支える……ううん。隣に立てるようにならないと」

「ああ」

 

 十六夜という選手と共存するために……もっとレベルアップしないといけない。

 

「よっし!次!」

「おう!」

 

 円堂たちの練習を見ながら、決意を固め、それぞれのやることへと戻るのだった。




 円堂と十六夜は対極の存在って言うのはチームメイトも薄々気付いていたり、いなかったり。ただ、どちらも影響を与える存在であることは間違いなさそうですね。
 次回、過去編。ある意味激動と諸々判明?

 ところで、最近は夏に始まった作品が最終回を迎えはじめ、ちょっと気分が下がり、秋に始まるアニメへの期待でちょっと気分が上がり、気分の上下が激しいですね。
 ちなみに、作者は秋は「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」「SPY×FAMILY」の2期などを見る予定で、夏よりは少ないです。(夏は結局12作品くらい追った。秋は半分以下だと思いたい)
 そんな、秋アニメで1番期待しているのは「君のことが大大大大大好きな100人の彼女」という作品です。友人に勧められ、この夏で一気にハマった作品です。どうせありがちなラブコメだろ、あータイトル的にハーレムものか、って思っている人はPVだけでいいから見て欲しい(出来ればキャラのやつも)。
 ネタバレかは分かりませんが、まだ原作でさえメインヒロイン100人全員登場していないので、アニメで人がたくさんでゴチャつくみたいな心配はないと思います。そもそも100人登場するのか、どんなヒロインが登場するのかと友人と盛り上がっております。
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