超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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豚のレバーは加熱しろってアニメですが、豚の声と絵と内容が色々と重なって笑ってしまう……豚……豚が……でも、ただのギャグアニメじゃないらしいので、しっかり見ていきたいですね。
ちなみに、ぐらんぶるの最新刊を読みましたが……やってましたね。笑いが止まりませんでした。

と、そんなこんなで過去編も5話目で、遂に高校2年生になりました。十六夜くんの高校2年生は彼にとっても大きな年ですからね……


過去編 ~自覚なしで興味なし~

「へい綾人!今年も同じクラスでよろしくだぜ!」

「ハイテンションだな、お前」

 

 4月……2年生になった十六夜と陽向。そんな初日の放課後……

 

「やっぱり一緒のクラスだと分かって嬉しいんだもん!また1年一緒に居られるね!」

「まぁ、このクラスはそのまま3年も持ち上がりだろうから、来年も一緒だろうな」

「おぉっ!じゃあ、高校生活ずっと一緒だ!えへへ……」

「じゃあ、帰るぞ……放課後はオレの家で勉強だろ?」

「うん!ついでに綾人は筋トレね」

「へいへい」

 

 帰り道……リフティングをしながら帰る十六夜に対し、陽向は質問をしていた。

 

「そういえばずっと気になっていたんだけどさ」

「何だよ、寝癖でもついてたか?」

「ううん、ついてないよ。綾人って、サッカー凄く上手いじゃん?でも、中学時代はサッカー部の顧問、無能で使えなかったんでしょ?」

「ドストレートだなおい。まぁ、事実なんだが」

「高校も進学校だからか、そこまで力入ってないしさーそう思うと、どうして綾人ってそんなに上手いの?」

「別に上手いとは思っていないけどな」

「またまたーってなると小学校の時かね?どんな感じでサッカーやってたの?」

「どんな感じって……普通じゃないか?」

「詳しく教えてよ!綾人の普通って大体普通じゃないからさ!」

「ひでぇなおい……と言ってもなぁ」

 

 そう言いながら小学校時代のサッカーについて話す十六夜。それをリアクションをとりながら聞く陽向。そして、大体話し終えると……

 

「ふむふむ……これが綾人のプレーの起源か……そのコーチも面白いことを考えるね。個の能力のみを重視し、繋がりは無視して、すべてのステータスが高い選手を育成するか……」

「そんな感じ」

「いいね……1つの武器を極めた達人もその武器で勝負しなければよさそうだし……相手によって自分の武器を入れ替えて戦うか」

「まぁ、オレたちは真っ向から行くヤツが多かったから、そんな器用なこと出来なかったけど」

「それに一騎当千な選手が11人集まれば敵なしか。ふぅむ……真の力を引き出すには指揮する人が求められるね。全員が全ポジションをそつなくこなせるのも、変幻自在な戦い方が出来るし凄い戦術とか取れそう」

「確かになぁ……全員が全ポジション出来るから、フォーメーションも組み合わせれば、膨大な量のパターンが考えられるからな」

「けど、惜しいね。小学校6年……ああ、5年だっけ?そんな期間だけじゃなくて、小学校に入る前から社会人になるまで、その人に徹底して教えてもらえれば最強の選手……そのコーチが求める選手たちが誕生しただろうね。成長、発達段階に応じて、指導方針を調整できたらもっとよかっただろうね」

「……肯定的なんだな。お前は」

「うん、ボク自身は賛成よりだね。後はあれだ。多分、コーチは能力……要は武器の質を重視したんだ。でも、そこに武器の使い方……要は頭脳だね。そっちをもっと伸ばせると凄い選手が出来ると思うな。……まぁ、闘争心剥き出しの小学生に、頭の方も鍛えるってのはちょっと無理かな?」

「さっきも言ってたけど、試合ではコーチが全部指揮を執っていたからな……今思えば、仮に分析力が凄くてもそこまで評価されてなかっただろうな」

「ある意味コーチの実験なんだろうね……コーチの思う最強の選手を育成する実験。そして、綾人たちは替えの効く実験体(モルモット)……潰れたらそこまでって感じだね」

「替えの効くモルモット共が、替えの効かないオンリーワンを目指して潰し合うか……まぁ、オレとしては望むところだな。どうせ、仲良しサッカーなんて出来ないし、やるなら徹底的に潰し合いたい。相手だろうが味方だろうが、そんなの関係ねぇ。オレにとっては全員が潰し喰らう相手だな」

「……そう」

 

 一瞬、陽向が悲しそうな表情を向けるも十六夜は気付かない。

 

「今の話のお陰でもっと綾人の事を知れたよ~ありがと」

「へいへい。そういや、お前の話は何かないのか?」

「ぼ、ボクの話!?ボクは至って平凡だよ!?」

「チェスで日本1位になっておいてよく言うわ……まぁ、話したくねぇなら無理に聞かないけど」

「う、うん……ひゃい!?」

「どうした、奇声を発して」

「て、手が……」

「ああ、お前がずっと手を繋ぎたそうにふらふらさせてたからな。嫌だったか?」

「い、嫌じゃないよ……でもリフティング中だし……」

「安心しろ。いいハンデだ」

「勝手にハンデ扱いしないでよ!?」

「じゃ、ドリブルに変えるわ」

「そもそもボール蹴るのやめた方が良いと思うけどな……ほら、万が一車とかに当たったら面倒だよ?」

「それもそうだなっと」

「お、凄い。ボールを蹴って綺麗に鞄の中に入れた……じゃないよ!?手を使え手を!キミの手は何の為にあるのさ!」

「神奈と手を繋ぐため」

「あ、綾人……!…………騙されないからね?」

「ッチ」

「舌打ちした!酷い!最低!」

「もう遅い」

「でしょうね!」

 

 全く……そう思いながらふと疑問が出てきた陽向。

 

「そう言えばさー。綾人って、何でDFやってるの?」

「はぁ?」

「いや、キミのプレースタイル的にさ、別にFWでもMFでもいいわけじゃん?寧ろ点を取りに行くんだったらFWでいいし……というか、サッカーってスポーツでキミが1人で勝つなら点を取るのは守ること以上に必要だし。さっきの話を聞いていてもよく考えたらDFやってる理由は言ってなかったし。何でDF志望なの?」

「それは……」

「それは?」

「…………」

「…………」

「……………………」

「……………………」

「………………………………」

「………………………………」

「……………………そういや、何でオレはDFをやりたいんだ?」

「…………(ガクッ)」

 

 長考の末に出した結論に対し、コイツダメだ……って目を向ける陽向。一方の十六夜は繋いでいない方の手を顎にやって真面目に考えていた。

 

「え?嘘でしょ?」

「割とマジだ」

「何か憧れの選手が……とかもいないの?」

「いない。つぅか、興味ない」

「いつからDFを希望していたかは?」

「中学に上がる前には。特に覚えていない」

「……もしかして、思い当たる理由が無いの?」

「ああ……神奈、知らないか?」

「知らないよ!?流石のボクでも本人が知らないことまで分かるわけないよ!?」

「いや、お前って割とオレが気付いていないこと気付くし……それに……ほら。超常的な何かで……それかその凄まじい洞察眼と分析力で……」

「ボクのこと何だと思ってるの!?流石に無理だよ!?どんなに分析してもキミがDFをやりたいかなんて知らないよ!?」

「本当に?嘘をついていないだろうな?」

「うぐっ……」

 

 と、何故か陽向が図星を突かれた人みたいな反応をする。

 

(ん?何でコイツ、本当は知っているみたいな反応をするんだ?……もしかして、本当は知っていて、ここまでの流れは全部演技だったのか?)

(ま、マズいマズい……ボクの分析ではなんとなく答えが出ているんだけど……流石に本人の知らない本人のことを知っていますなんて言ったら引かれそうだし……本当に合っているかって言われたら綾人のことだから9割以上合っている自信があるけど、万が一外れた時に信用が落ちるし……だから、答え合わせしたかったけど……こ、ここは何も知らないことにしておくんだ。ボクは何も知らないボクは何も知らないボクは何も知らない……)

 

 妙な沈黙が2人を支配すること数十秒。沈黙を破るように十六夜が切りだす。

 

「……まぁ、冗談は置いておこう」

「うん……ん?何処から冗談だった?」

「お前に知らないか?って聞いたところ」

「じゃあ、理由は?」

「ガチで分からねぇ」

「…………もしかしたら、綾人はバカかもしれない。ボクはそう思ったが声には出さなかった」

「思い切り聞こえてるぞー」

「綾人が読心術を身に付けた……!?ボクは驚きを隠せなかった」

「変なスイッチ入ったな。待ってろ、今ハンマーを取ってきてやる」

「やめて!?綾人の冗談って冗談に聞こえないから!ちょっとした悪ふざけなんです……!」

「やらねぇよ……精々、レンチで殴るくらいだ」

「ハンマーどこ行った!?と言うか死んじゃうからね!?シャレにならないからね!?」

「ははっ!やっぱ、からかうと面白いわ」

「うぅぅ……!…………で、本当に理由が見当たらないの?」

「今、頑張って思い出している」

「頑張れ♪頑張れ♪頑張れ♪」

「うっせぇ気が散る」

「……ぐすん。彼女の声援を容赦なく一刀両断するなんて……酷いけどこれが綾人か」

「早い。立ち直って諦めるまでが秒だな」

「ふっふっふっ……伊達に綾人の彼女をやっていませんので」

「どういう意味だコラ」

「綾人が鬼畜であることは前から知っているからさ!」

「よし、今からお前を監禁するわ」

「それは本当に鬼畜!?というより警察案件になっちゃうよ!」

「大丈夫大丈夫。お前のご両親には2泊3日の部活の合宿にでも出掛けたと伝えておくからさ」

「思いの外監禁時間が長い!?……で、でも、綾人とずっと居られるならそれもありかも……ずっと綾人と2人きりで……誰にも邪魔されず……えへへ」

「…………お前って怖い時があるんだけど……大丈夫か?悩みあるなら聞くぞ?」

「悩みは綾人がボクに好意全開なアピールが少ないことです。もっとたくさん好きって言って欲しいです」

「悪い、この辺電波障害起きているみたいだわ。うまく聞き取れなかった」

「いやこの距離だけど!?何、それっぽいこと言って誤魔化そうとしているのさ!」

「……で、何の話だっけ?」

「綾人がボクのこと好きって言うことが少ないって話だよ!」

「そうか……それは深刻な悩みだ。オレじゃ解決できねぇわ」

「キミしか解決出来ないんだよバカ綾人!リピートアフターミー、好きです」

「リピートアフターミー、好きです」

「何でそこからリピートするのさ!?」

「ほら、家着いたぞ。とりあえず、勉強だな」

「そうだね……あ、勉強頑張ったらご褒美欲しいなぁって」

「お前、勉強嫌いなキャラじゃねぇだろ」

「えぇー」

「……まぁ、何か考えるわ」

「やったー!綾人に沢山甘えよーっと、あ、お邪魔しまーす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十六夜綾人!私と勝負しなさい!」

 

 2年生になって1週間くらいが経過したある日の放課後。部活もなく、珍しく教室に残って陽向と勉強していると声をかけられる十六夜。

 

「…………」

「おーい、綾人?お客さんだよ?」

「…………」

「十六夜綾人、聞いてるの?」

「…………」

 

 この瞬間、十六夜は考えていた。

 

(外、雨降ってるなー……)

 

 なんとなく面倒くさい予感がする。だから無視しようと、全く違うことを考えていたのだ。

 

 ツンツン

 

「…………」

「あ、この反応は聞いてるから大丈夫だよ」

「そう?じゃあ、遠慮無く言わせてもらうけど……」

「待てコラ。人の意見スルーすんな」

「喋ってなかったじゃない」

「というか、名乗るのが礼儀だろ?お前、誰だよ」

「「……え?」」

 

 と、ここで固まる女性陣。そんな反応に対し、頭に疑問符を浮かべる十六夜。

 

「ちょ、十六夜綾人?冗談よね?仮にも同じクラスの人間なんですけど?」

「いや、1週間でクラスの人間の顔と名前一致させることなんて出来ねぇだろ」

「そもそも、綾人さんは興味の無い人間は覚えていないよねー」

「いやいや、私って一応生徒会副会長に就任していて、ほら選挙もやってたでしょ?」

「興味なかった。覚えてねぇ」

「それに、癪だけど。非常に癪だけど、テストとかでは私学年3位よ?常にあなたの一個下に名前を連ね続けているんだけど?」

「そうなんだ。初めて知ったわ……で、3位って誰だっけ?ごめん、名前知らねぇわ」

「屈辱……!私は敵として認知さえされていなかったなんて……!私はこんなにあなたを敵として認め!倒そうと研鑽を積んできたのに……!」

「そういうこともある。お茶いるか?」

「いらないわ……」

「じゃ、今日はこの辺で……」

「って帰さないわよ!」

「……ッチ」

「舌打ちした!?もしかして、あなた相当性格悪いわね!」

「はぁ……で?お前、誰?」

美空(みそら)(ゆき)よ」

「はぁ……で、美空。何か用か?」

「宣戦布告しに来たのよ」

「丁重にお断りします」

「ふっふっふっ、十六夜綾人。学年次席に位置し、運動神経抜群の優等生」

「聞けよ、人の話」

「あなたの存在は私にとって目の上のたんこぶなのよ!」

「どこがだよ」

「あなたは常に私の上に居る……!この前の全国模試も総合偏差値70越えだったのに、何故か校内順位は3位!自己最高なのに……ぐぬぬ……!」

「すげぇじゃん。あの模試の結果で70越えとか凄いと思うけど?」

「それは自慢のつもり?あなたの方が良い結果だったのは知ってるのよ!」

「いやいや、ここにオレ以上のバケモノいるから。存在感消してるけど、コイツが校内順位1位だから」

「えへへ……」

「いえ、陽向さんは私にとって敵ではないわ」

「なぬ……!?」

「何故オレが敵判定されて、コイツはされてねぇんだよ……」

「いい?私は頭がいいって言われてるの。少なくとも、私が通っている塾では常にトップの成績を納めているの。それに、運動神経もそこそこいいの。スポーツは何をやらせても、ある程度出来る自信があるわ。そして、何より生徒会副会長の座につき、優等生として通っているの。分かる?あなたと私では被っているのよ」

「どこがだよ」

 

 十六夜は思った。何でオレに絡むヤツは変人しかいないのだろうか、と。

 

「それは綾人が変人だからです!」

「…………」

 

 十六夜は思った。ナチュラルに心を読まないで欲しい、と。

 

「あなたは私より頭がよくて!私より運動神経抜群で!何より、私と遜色がないレベルで優等生として知れ渡っているのよ!」

「はぁ……」

「それに比べ陽向さんは、頭はいいけど、運動神経皆無で、何よりコミュ障なのか他の人と喋らない!優等生として知れ渡っていないのよ!」

「ひぐっ……」

「え?あ、陽向さん?何で泣きそうに……」

「あーあ、神奈を泣かしたな」

「ううっ……ボクは運動音痴でコミュ障で陰キャでオタクでチビで貧乳でぼっちで人見知りだけど……!」

「「誰もそこまで言ってない」」

「い、一応彼氏持ちなんだよ!」

「初めて知った」

「彼氏に裏切られた!?……ぐすん」

「え、えっと……泣かせるつもりはなかったんだけど……」

「責任取れよなー」

「あなたがトドメを刺したんでしょ!?」

 

 本格的に泣き始めようとする陽向を前に困惑している美空。そんな彼女は一つの答えにたどり着く。

 

「……あ!そうだ、陽向さん。私とお友達にならない?」

「いや、何でだよ」

「え?いいの?」

「いや、いいのかよ」

「うん……私って近づきにくいのか分からないけど、何故か友達と呼べる人この学校に居ないから」

「哀しいなぁ。お前もぼっちやってたのか?」

「おい、十六夜綾人。言葉に気を付けろ」

「そーだそーだ!ボクらはぼっち同盟を組んだんだぞ!」

「勝手に組んでろ」

「「え?綾人(あなた)もぼっちでしょ?」」

「……で?本題は?」

「私と勝負しなさい!」

「断る」

「勝負内容は6月の中間考査での点数勝負。各科目で点数を比べ、勝ち数が多い方の勝利」

「聞けよ、面倒だからやらねぇって」

「勝った方が負けた方に命令できる!これでどう!」

「却下」

「……陽向さん。この男ってどうやったら勝負の土俵に上げられる?」

「うーん……脅す、とか?」

「およそ彼女がするとは思えない提案だな」

「さっき、およそ彼氏がするとは思えない裏切りがあったので仕返しです」

「そうか……じゃあ、もう1回裏切るか」

「何故まだ争おうとする!?」

「え?やられたらやり返すのは当然だろ?」

「それじゃ終わらないんだよ!」

 

 陽向と十六夜が言い合いを始める中、美空は何かを思いついたようにぽんっと手を打つ。

 

「なるほど……ちなみに弱みの種ならあるけど?」

「しかもあるのかよ……ん?おい待て、どういう弱みだよ」

「ま、まさか……綾人浮気していたの!?それは最低な行為だよ!?あわわ……ど、どうしよう……こういう時はとりあえず包丁を……」

「してねぇっての。勝手に浮気した前提で話を進めるな。というか、浮気未遂で包丁を持ち出すんじゃねぇ」

「だってだって、こういうときは包丁で刺してからお話を……」

「刺されてから話が出来るわけねぇだろ」

「……こほん。続けていいかしら?」

「「どうぞ」」

「弱み……それは、あなたの中学時代の話よ」

「…………」

「あなたは手のつけられない素行不良な生徒だったとか。あなたがサッカー部を潰したとか。およそ、今の良い噂が多いあなたとはかけ離れた中学生活を送っていたとか。……さぁ!こんなことを話されたくなかったら――」

「別に話せば?」

「――え?」

「お前が何を知ってるか知らねぇし、何で知っているかも興味ねぇ。……だけど、その程度の真偽も分からない話に踊らされる奴らなんか、相手にする価値ねぇよ」

「あ、ちなみにボクは綾人の中学時代の話は知ってるよー」

「あの……動揺とかしないの?えっと……あれ?」

「それにさぁ……お前の知っているオレが本当の姿なら、オレは性格最悪の素行不良な問題児なんだろ?」

「え、えっと……十六夜さん?あの……」

 

 十六夜が立ち上がり、ゆったりとした足取りで美空に迫る。そして、そのまま壁際まで追い詰めると。

 

 ドンッ!

 

 彼女の脇腹の数センチ横を蹴り抜く十六夜。

 

「ひぃっ!?」

「うん、気が変わった。勝負しようぜ、美空。オレが勝ったら……どうなるか分かるよな?」

 

 そして、彼が出来る最高に嗜虐的な笑みでそう言ってのけた。

 

「ま、まさか綾人!ボクの前で浮気する気なの!?」

「いや、何でそっちに走るんだよ。今、結構いいところだから静かにしてくれない?」

「あ、じゃあやり直しを……って今の壁ドン!?もしかして、伝説の壁ドンってヤツじゃ……!あわわ……このまま2人はキスを……」

「よく考えろ?今までの流れから、どう考えてもここからそんな展開になるわけないだろ?」

「その……私、初めてだから……」

「お前まで何でボケに走ってるんだ」

「あわわ……ほ、包丁とカメラを……」

「マジでやめてくれ?何に使うか聞きたくねぇけど、本当にやめてくれ?」

 

 この後、何故か精神的な疲労を覚えた十六夜であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へい綾人!今度の休みにデートしよう!」

 

 とある日の放課後、いつになくテンションが高い陽向が十六夜に声をかけていた。

 

「分かったよ」

「ほら~そう渋らずに……え?あの綾人が即答でオッケーした?どうした?風邪でも引いたかい?」

「うっせぇ。お前のことだからオッケーするまで泣きついてきて放さないだろうが」

「な、泣きつかないし!ちょっと、手が綾人の服の袖から離れないだけだし!」

「……で?どこ行くんだ」

「水族館!」

「待ち合わせ場所は何処にする?現地集合現地解散か?」

「何で道中を一緒に楽しもうとしない!?」

「じゃ、迎えに行くから。いいよな?」

「へ?あ、えっと、待ち合わせしてみたいなぁーって。そっちの方がデートみたいじゃん!だから、集合場所と時間はね……」

 

 そして、なんだかんだあって当日。水族館にて……

 

「やっぱり、ペンギンは見ていて癒される……」

「お前、本当にペンギン好きだよな。もう水族館なのにペンギンしか見てねぇよ」

「うん!ほら、あの子の顔とか可愛くない?」

「どれも一緒だろ……」

「綾人正座!」

「はぁ?」

「そんなバカなこと言って!綾人は何も分かっていない!いい?ペンギンは1匹1匹当然ながら違うんだよ!人間が皆違うのと一緒だよ!」

「…………」

 

(そうなのか?興味ないヤツなんてどいつもこいつも一緒に見えるんだけどな……)

 

「綾人正座!」

「はぁ?」

「つまりキミはペンギン(あの子)たちに興味が無いわけだね!いいでしょういいでしょう!ボクが語ってあげるから」

「勝手に人の心読むんじゃねぇ」

「こほん、まずあの子はね……」

 

 ここからお昼までの3時間。十六夜はペンギンコーナーの前で陽向の語りをひたすら聞かされていた。

 

「ボクは異世界に行ったらペンギンと会話できる能力が欲しい!」

「唐突だな」

 

 そして、昼食……陽向が唐突にそんなことを言ってのけた。

 

「それに弱くねぇか?せめて、ペンギンを使役するくらいじゃねぇと……」

「使役なんてとんでもない!友達になりたいんだ!」

「……お前って天才だけどバカだよな」

「うっさい!……だ、だって、ペンギンと友達になれるんだよ?少なくとも欲しい能力トップ3に入るんだよ!ちなみに他には、小動物と話せる能力も欲しいかな?」

「異世界行ってペンギンと友達とか……しかも、動物と話したいって……ねぇ」

「ぶーぶーじゃあ綾人はどうなのさ?」

「オレか?そうだな…………空を飛ぶ能力か?それか時間を止める能力」

「え?意外……どうして?」

「人混みに巻き込まれない。周りを気にせず自分のペースで歩けるから」

「うわぁ……綾人らしい。…………ん?も、もしかして、空を飛べたり、時間を止めたらすぐにボクの所へ駆け付けられるから?」

「何でお前限定なんだよ……って、くっつくな暑苦しい」

「えぇーほんとは嬉しいくせにー」

「……うっせぇ」

「綾人がデレた!」

「バカやってないで飯食い終わったんだろ?じゃあ、行くぞ。餌やり体験するんだろ?」

「うん♪」

 

 

 

 

 

 時は流れ、夕暮れ時の帰り道……

 

「いやぁ、楽しかったね♪また来よう!」

「そのうちな……と言うか、9割ペンギンで終わった気がするのは気のせいか?」

「ほぇ?水族館(ペンギン館)だから良いんじゃないの?」

「勝手にあそこをペンギンしか居ない場所に変えるな。普通に別の海洋生物も居たわ」

「うーん、もしかして他も見たかった?」

「特には。オレとしてはテンションが上がっているお前が見れて満足」

「一体、水族館に何を見に来たんだキミは!水族館を何だと思っているんだ!」

「お互い様だろ……まぁ、ちょっとはペンギンの良さも――」

「え?え?目覚めた!?目覚めてくれた!?じゃあ、ボクの秘蔵のペンギンフォルダからピックアップして1000枚ほど写真を……」

「――それされたら萎えるからマジでやめてください」

 

 ツッコミが追いつかず、謝罪しか出来なかった十六夜。もう秘蔵のペンギンフォルダって何だよとか、何でピックアップして1000枚になるんだよとか、単位がおかしいだろとかを考える気力も言う気力も失せていた。

 

「それより、ほら」

 

 そう言って自身のバックから取り出したのは小さな袋。

 

「え?何々、開けて良い?」

「どうぞ」

「わーい……おぉっ!ペンギンのストラップだ!可愛い~!しかもコレってボクが見てたヤツじゃん!」

「土産屋で見てたからな。大方、欲しいけど今月は趣味(二次元)の出費がヤバい……ってところだろ?」

「うぐっ……よ、よくお分かりで……」

「昼食代を少しでも削ろうと苦心していたからな。……まぁ、小遣い貰っても使い道ねぇし」

「ありがと綾人!大好きだよ!」

「ちょっ、抱きつくな!」

 

 往来での抱擁。引き剥がそうとする十六夜と抱きついたまま離れない陽向の戦いは数分に及び、結果手を繋いで歩く形で十六夜が折れて決着を迎える。

 

「そう言えば、もうそろそろだっけ。サッカーの試合」

「そうだな。もうすぐそこそこ大きめの大会があるな」

「今年から顧問の先生代わったからね~あの先生なら綾人も出してもらえるんじゃない?と言うか十中八九出すでしょ、あの感じなら」

「勝ちに行くって言ったからな。まぁ、期待せずにいるよ」

「またまた~勝ちに行くのに綾人を使わない道理は、協調性ゼロって点以外ないんだから~と言うか、そのマイナスを加味しても綾人の能力がずば抜けているから使わない選択肢はないよ」

「へーへー、こっちは能力の高さを打ち消すレベルの協調性のなさですよ」

「まぁ、ゼロはゼロでも暴走しなければ良さそうだからね。とにかく、本能はまだ封印だよ。いい?封印するんだよ?考えず動くのはダメだからね?それと、荒れた口調も禁止だよ?分かってる?絶対絶対絶対ダメだからね?ちなみにここまで念押ししているけどやれってことじゃないからね?」

「そこまで言われなくても、理性だけでやらせてもらいますよ。もっとも、出番があればだけどな」

 

 この時の十六夜は知らない。その大会で再会を果たすことになるなんて……




 ちなみに十六夜くんが最初にペンギンをイメージできたのは陽向による布教があったからです。いやー記憶を失ってもまさかペンギンが染みついているとは……一種の洗脳か?

 そして、最後の引きに対し、次回からは本編に戻ります。理由は過去編は読まなくても本編に大きな影響はないですが、本編の時間軸に沿って、十六夜が思い出していることになるので、ユニコーン戦前はここまでしか思い出していません。それが何に関係するのかは……どこかで分かるかも?

陽向神奈
 十六夜相手なら読心術も余裕な分析家。ペンギン狂である。ペンギン大好き少女でペンギンのことなら何時間でも語れる。彼女と水族館に行くと、真っ先にペンギンのところに行きそこから離れない。他の海洋生物が好きなら彼女と一緒に行くのはお勧めしない。ちなみに、ペンギン好きと公言したら最後沼に嵌められるので、安易に公言しない方が良い。

十六夜綾人
 誰かさんに常に内心で思っていることを見透かされている。誰かさんのせいでペンギンが頭から離れない。何故か変人ばかり寄ってくる自称苦労人。
 DFをやりたい理由に自覚なし。彼女は分かっているらしいけど、本人は分かっていない。と言うか、この男は自覚がないことが多すぎる。反省して欲しい。

美空(みそら)(ゆき)
 相手にしてはいけない男に宣戦布告してしまった少女。2年生からは十六夜たちと同じトップクラスに在籍する。生徒会副会長で成績は学年3位と陽向、十六夜につぐ実力者。また運動神経はよく、どんなスポーツもそつなく熟すと、文武両道で容姿端麗な優等生。真面目な性格で、そのスペックから近づきにくい存在とされている。ただ、十六夜に対しては熱くなりやすく、好戦的で目の敵にしている。
 十六夜綾人の中学時代を知っている。理由は単純なのだが……
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