4-4の同点……ユニコーンとイナズマジャパンの試合が熱くなっていく中、一ノ瀬が交代されることが宣言される。
「イチノセ、交代だ」
「えっ……?」
「監督!なぜカズヤを下げるんですか!?」
「そうです!ギンギンに攻めているところだというのに!」
「監督お願いです!最後まで戦わせて下さい!」
ユニコーンの監督の交代に対し、異を唱える選手たち。確かに、彼の運動量は前半に比べると落ちていたが……それでもここで交代とは……
「お前はずっと全力の戦いをしてきた。疲労が激しいはずだ」
「大丈夫です、まだやれます!今日は特別な試合なんだ……俺は最後までピッチに立っていたい!」
「…………私には選手を守る責任がある。もう交代は認められた」
選手を守る?……一ノ瀬の身体に何かあった……か。そう思って、周りを見ると円堂と木野、土門、西垣の4人が何か思い当たることがあるような感じの反応を見せていた。
「……後は頼む」
「一ノ瀬……」
一ノ瀬がベンチに下がり、試合が再開する。
試合終了まで後半も半分を切った。そんなある意味衝撃的な交代があった……しかし、一ノ瀬が下がった後のユニコーンのプレーは彼の分まで応えようと更に熱いものになっていた。
「これって……」
「……一ノ瀬の気持ちはまだピッチにあるんだ。だったら、俺たちはそれに応えよう!」
「ああ……そうだな!」
不思議だな。円堂の言うようにベンチに下がっているはずなのに、一ノ瀬はまだピッチに居るみたいな感じがする……本当に不思議な感覚だ。これがアイツの思いってところだろうか?
「十六夜!行ったぞ!」
「ああ、分かってる」
ボールを持っているのはマーク。
「勝負だアヤト!」
「ここは通さねぇよ」
フェイントで突破しようとしてくるのを前に進ませないようにブロックする。ショルダータックルをしてくるのをタックルで弾き返そうとする。
「なかなか突破させてくれないな!」
「そっちこそやるじゃねぇか」
「だが、悪いけど突破させてもらうよ!」
すると、別の選手がマークに近づき、マークの腕を持って回転、空へと飛ばした。
『ジ・イカロス!』
「それは通用しない」
この技は目の前の相手と太陽の間に自分を挟み、太陽の光で目潰しを仕掛ける技。何故か羽が生えてるいるように見えるけど……
「知ってるか?イカロスは最後、羽を失って墜ちるんだぜ?」
「それは神話の話だろう?俺たちは墜ちない!」
跳び上がって、空中にあるボールをかっ攫おうとする……が、
「行け!ディラン!」
「オーケーマーク!」
奪う直前に踵落としで強引に地面に向けボールを叩きつけた。
「来るぞ!円堂!」
「おう!来い!」
「行くよ、ミスターエンドウ!」
そのボールを受け取ったのはディラン。そのままヒールリフトでボールを浮かせ、頭越しに移動させると共に足を止める。円堂から背中が見える程に体を捻りながら利き足を限界まで振り上げる。……ちょっと待て……確かあの技は別の試合でも使ってた……!
「円堂必殺技!そのシュートは……!」
「気付いたようだね!でも、もう遅いよ!」
ボールが足元に落ちてくると同時に貯めに貯めた捻りと力を解放して力強くシュートする。
「トランザムマグナム!」
瞬間、ボールは軌跡すら残さない程の圧倒的な速さでゴールに向かって飛んでいく。
「イジゲ……なっ!?」
その圧倒的な速さを誇るシュートがペナルティーエリア手前から撃たれたんだ。当然ながら……
『ゴール!4-5!キーパーの円堂が反応できない一撃がゴールに突き刺さったぁ!』
『あれはディラン選手の必殺シュートですね。予選並びにこの本戦でも既に何回もゴールを奪っているシュート……圧倒的な速さで相手キーパーに反応させない一撃です。あのレベルのシュートを持っている選手はこの大会でも少なく、アレをあの距離で止められるキーパーは果たして居るのか……止めるのは至難の業ですよ……!』
必殺技が発動する間もなくゴールに突き刺さる。円堂が必殺技を発動しようとしたときには既にゴールの中に入っていた。
エドガーのエクスカリバーが、距離があればあるほど威力の上がる意味の分からないシュートなら、ディランのコレはシュートを見てからでは間に合わないシュート。それが近くから撃たれれば反応すら出来ない一撃となる。
「この試合はカズヤが特別視していたからね!封印していたんだけど、こんな熱い試合に封印するなんてもったいないね!」
「封印って……よく言うぜ。一ノ瀬の影に潜んで、オレを抑える役として、お前はエースストライカーとしての存在感を消していた。誰もが油断したこの瞬間を静かに待ち望んでいたんだろ?」
「まぁ、ディランはこう見えて強かなプレイヤーだ。ハッタリもコイツの十八番だからな」
「こう見えては酷いね!」
「やっぱ、お前ら一筋縄じゃいかねぇよ……つぅか、熱過ぎなんだよこの試合」
「なら、もっと熱くしてあげるよ!」
「そして、勝つの俺たちだ!」
「ハッ!いいぜ、ぶっ潰しがいがあるってもんだ!」
おもしれぇ、なら今度はこっちが見せる番だ。
イナズマジャパンのキックオフで試合再開。ボールは不動が持つ。
「潰す……!壊す……!不動!着いてこい!」
「命令すんじゃねぇよ!」
そして、オレがボールを持つ。
「ここは通さないよ!」
「もう1点奪う!」
「ハッ!ぶっ壊してやんよ!」
「「……っ!」」
(何だ……アヤトのプレーの質が変化している?さっきまでの冷静さを感じないが……焦っている感じもしない?どちらかと言うと凶暴で荒々しく……?……一体、何が……?)
(なるほどねぇ……エドガーの時に近い感じか。ノロノロ思考してからじゃ間に合わねぇと踏んで、本能でプレーしようとしているわけか……なら、合わせてやんよ!そのプレースピードに!)
「不動!」
「ここに居るっての!」
(十六夜がディランとマークを背中越しに抑えて、近くにやって来た不動にバックパスを出した?でも、あんな近場じゃ……)
「行け!十六夜!」
「マジ、タイミング神!」
「「なっ……!」」
(マークとディランを抑えるのをやめて反転し、2人の間を強引に突破しようとする……そんな十六夜に強烈なシュート性のパスを出す不動。そして、そのパスを全くボールを見ずにヒールで自身の頭を越えさせて前に送り、2人に反応する隙を与えずに突破する十六夜。不動の声かけでタイミングを測っていたが、互いに言葉をほとんど交わさなくても通じ合ってる……!)
「ここは行かせない!パワーチャージ!」
ディランとマークを突破すると、ディフェンスが思い切りタックルをしてくる……だが、
「っ!?吹き飛ばない……!?」
「ハッ!軽いなおい!こんなタックル、
「なっ……!」
相手のタックルに肩でぶつかる。数秒の拮抗の後に弾き返すと倒れ込むディフェンス。そんな彼を無視して進もうとすると……
「あぐっ……!?」
一瞬、頭に電撃が走ったような強烈な痛みがした。……あれ?
「トニー!?」
「トニーのパワーチャージを真正面から……!?」
「フィジカルもバケモノかよ!?」
「フィジカルモンスター!?」
「本当に何なんだアイツは!?」
相手側(と何故か味方からも)が何処か困惑した感じを出しているが、一切気にしていられなかった。
「今……誰のことを……?」
オレは今……誰と比べて弱いって思ったんだ……?無意識に出てたけど……アイツって……
「隙を見せたな十六夜!スピニングエッジ!」
数秒試合から意識が逸れていた。いつの間にか目の前に居た西垣が必殺技を発動する。回転したまま上空に上がり、そこから青い衝撃波を3発こちらに向けて放ってくる。
「……っ!」
その衝撃波が当たる前に、オレは右サイドへとパスを出す。オレが吹き飛ばされる中、そのボールは……
「パスミスだ。このボールは……なっ!?」
「ううん、僕のスピードなら追い付ける」
駆け上がっていく吹雪が掻っ攫い、そのスピードのままディフェンダーを突破する。やっぱりだ。吹雪のスピードなら追いつける……
「……っ!?……今も……」
「ウルフレジェンド!」
吹雪が必殺技を放つ中……オレは誰と比べていたんだ?誰のスピードと比べていたんだ?
「フラッシュアッパー!」
そこに相手キーパーの必殺技が放たれる。ボールは空高く上がっていき、そのまま落下。相手キーパーの手中に収まる……そう誰もが思っていた。
「うおおおおおおおぉぉっ!」
「なっ……!?」
落下するボールを受け止めようとするキーパー……だが、そこに走り込みオーバーヘッドでボールをゴールにねじ込んだ選手がいた。
『な、なんと言うことだぁ!吹雪の必殺技が止められた次の瞬間!豪炎寺が飛び込み、ジャンピングボレーでボールをゴールにねじ込んだぁ!再び同点!同点ゴールだぁ!』
『ストライカーの意地……豪炎寺選手から意地でも決めると言う執念を感じるような素晴らしいゴールでしたね』
ゴールへの嗅覚、反応……そして絶対に決めるという強い意志。やっぱり豪炎寺は
「すげぇ!すげぇよ豪炎寺!」
「何だよ今のシュート!滅茶苦茶熱いシュートじゃねぇか!」
「フラッシュアッパーで止められたボールが打ち上げられた後、相手キーパーの手中に収まるまでには時間がかかる。俺はその隙をついただけだ」
「ついただけって格好つけやがってこの野郎!何が何でも点を取るって執念を感じたぜ!」
「そうだぜ豪炎寺!やっぱりお前がこのチームのエースストライカーだよ!」
円堂と染岡が豪炎寺の下へ駆け寄る中、吹雪と鬼道がやって来る。
「確かに豪炎寺のシュートも凄かったが、その前の十六夜が敵を吹き飛ばしたパワープレーも、キラーパスに対応した吹雪も見事だった」
「十六夜くんなら見えていたって思ってね……でも、十六夜くん大丈夫?もしかして、相手の必殺技で何処か痛めた?」
「あ、ああ……悪い考え事してた。大丈夫、問題ねぇよ」
「考え事って……まぁいい。まだまだ点を取りに行くぞ」
「うん」
「ああ」
今のもだ……誰なんだ?オレは……誰かを忘れているのか?中学時代のチームメイト?それとも高校時代の?……いや、そうじゃない。多分、元の世界でオレが仲間と認めていた数少ない存在で……一体誰なんだ?
「ヒュー凄いゴールに対しての執念だね!」
「だな。あんなプレーをするなんて……」
「……なるほどな」
「ヘイ、マーク。何が分かったんだい?」
「そうだな……ドモン、ニシガキ。お前たちはイナズマジャパンのエースストライカーは誰だと思う?」
「そりゃあ豪炎寺しか居ないだろ」
「ああ、次点で吹雪か染岡かだが……豪炎寺が頭一つ飛び抜けているように思える」
「お前たちならそう答えるだろうな。だが、そうやって答えるのはゴウエンジたちを前から知っているヤツらだ。この大会だけ見れば……」
「そうか!豪炎寺の印象は強くない……」
「むしろ、十六夜の方が……」
「そうだ。イザヨイアヤト……あのテレスを破って点を奪った男だ。それに彼のプレーがイナズマジャパンの決定機に繋がったシーンも少なくなかった」
「なるほどな……つまり、エースストライカーとしてのプライドってことか?」
「ああ。このチームのエースは自分だと。言葉ではなくプレー……ゴールで知らしめるわけだ」
「イナズマジャパンのエースストライカーはアヤトじゃないって見せつけたんだね!いいねいいね熱いエースストライカーだよ!」
「ふっ、じゃあこっちのエースストライカーも見せてやらないとな」
「オフコース!そして最後に勝つのはユニコーンだよ!」
さっきの不動からのシュート性のパス……
パンッ!
自身の頬を両手で叩く。
「……切り替えろ。今はこの試合だ」
過去はいつでも振り返られる。でも、この試合は今しかないんだ。余計な思考は排除しろ……
「円堂、ちょっといいか?」
「なんだ?十六夜」
5-5の同点、試合は最終局面を迎えるのであった。
~NGシーン(ネタ)~
「ここは行かせない!パワーチャージ!」
「ハッ!こんなもん正面から吹き飛ばしてやんよ!」
向かってくるタックルに対し、十六夜もタックルで返す……が、
「ぐふっ……」
「「「え?」」」
大見得を切った割に呆気なく吹き飛ばされる十六夜。宙を舞うと、思い切り地面に叩きつけられた。
「「「…………」」」
あまりのことにフィールド全体が一瞬にして固まってしまう。えっと……
「な、中々やるな……!」
と、そんな微妙な空気の中、ゾンビのように立ち上がる十六夜。だが……
ピー-!
「ちょっ、血!頭から血が出てるって!」
「顔が真っ赤に!?誰か救急車!」
「十六夜!?ちょっ、大丈夫かお前!?」
頭から血を流し、既に顔の上半分は赤黒く染まっている……一種の狂気を感じる状況。審判もその状況には試合を中断させる。
「ハッ、大丈夫に決まってるだろうが……」
バタッ
一歩進むと倒れ込む十六夜。
「「「何も大丈夫じゃねぇ!?」」」
久々のNGシーン……フィジカルが足りなかった時の十六夜くんですね。
この後、彼は一ノ瀬よりも先に病院送りになったとかなっていないとか……何て悲しいんだ。
さてさて、十六夜くんが少しだけ本能でのプレーをしましたが……何かに引っかかった様子ですね?
次回、決着。
登場必殺技紹介
トランザムマグナム 属性 火 成長タイプ V ロングシュート可 使用者 ディラン
ミスターゴールの異名を持つディラン・キースが放つ、渾身の必殺シュート。
ヒールリフトでボールを浮かせて頭越しに移動させると共に足を止めて、GKから背中が見える程に体を捻りながら利き足を限界まで振り上げる。ボールが足元に落ちてくると同時に貯めに貯めた捻りと力を解放して力強くシュートする。ボールは軌跡すら残さない程の圧倒的な速さでゴールに向かって飛んでいく。
持てる力を限界まで振り絞った事でセンターライン上からでも直接ゴールを狙える程の威力と飛距離を有しており、マークとのコンビプレイが主体であるディランの最大の切り札である。その一方でハッタリの類も得意である彼は時に相手の隙を作る為の見せ札としても使用している。
なお、技名に入っている「トランザム」は「TRANS AMerican(アメリカ大陸横断)」の略語であり、技名全体の意味合いとしては「アメリカを席巻する弾丸シュート」になる模様。
h995様よりいただきました。ありがとうございます。