超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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記憶

 雷門と別れ、合宿所の自分の部屋で寝ているときに不思議な夢を見た。

 

「ここは……何処かの豪邸……?」

 

 何処かの豪邸に忍び込んでいくのはオレとA……その様子を2人の後ろから見ている。今の自分の身体はまるで幽霊になったようで、地に足がついている感じはせず、ふわふわと浮いている感じがする。

 目の前に居る2人は何かを話しているようだが……上手く聞き取ることが出来ない。そんなオレの姿に気付かずに、2人は玄関からまっすぐ進んでいき、突き当たりまで進む。そして、左側の部屋に入る……そこには……

 

「監視カメラの……映像か?」

 

 豪邸内の映像が映る部屋だった。オレたちは2人は監視している2人をそれぞれ気絶させ、何やら操作をする。管理用パスワードが必要だったもののAが打って開いた。……指の動きでパスワードは分かったが……

 

「へぇ……こんな感じで使うんだ。というか、コイツは何でパスワードを知ってるんだ?」

 

 まぁ、夢だからか。そう納得していると、2人は部屋を出る。すると別れて別々の場所に向かって進んでいく。自分がどっちについていこうかと考えていると……

 

「……っ!」

 

 視界が急に変わる。瞬きして確認するが、目に映るのは部屋の天井だった。間違っても豪邸ではない。

 

「ああ……なんというか、不思議な夢だったな……」

 

 時刻は早朝か。……まぁ、夢の内容をここまではっきり覚えているのって貴重だな。それに夢だと自覚して割と自由にできたのも。

 

「早いけど起きるか」

 

 ということで準備をして部屋を出る。食堂で水を貰おうと立ち寄ると……

 

「久遠監督。おはようございます」

 

 久遠監督が食堂の椅子に腰掛けていた。何か本を読んでいるようだが……

 

「十六夜か……早いな」

「はい。何か不思議な夢を見て、それで目が覚めて……」

「……そうか」

 

 それにしてもこの人の朝は早いな。この時間で既に起きているとは……

 

「次はイタリア戦だ。今までのどのチームよりも強敵となるだろう」

「そうですね……アイツらの強さはよく知っています」

「だが――」

「ですが、イナズマジャパンが決勝トーナメントに出場するためにはぶっちゃけ()()()()()()

「――そうだな。状況が理解出来ているようで話が早い。で?お前の意見は?」

「勝つ一択しかないですよ。負けてもいいなんて()()()()こと言ってたら世界一になんてなれやしない。だから、アイツらに勝つことしか見えてねぇですよ」

「そこまで分かってるならいい。……今、グループBのスペイン代表と交渉している。イタリア戦前に練習試合を組む予定だ」

「スペイン……確か、彼らは決勝トーナメントに出るためには、次の試合は勝つ必要があるチームですね」

「ああ。そこで十六夜。お前はその練習試合に出る余裕はあるか?」

「イタリア戦までに……って考えると、正直ないですね」

「そうか。それならベンチからも外しておこう」

「ベンチって……それって、出たいと言ってたら……」

「元々、お前を出す予定はない。ベンチに入る気があるかの確認だ」

「なるほど……どのみち出られない、と」

「出す予定がないだけだ」

 

 確かにスペインと戦える貴重な機会……だが、今のオレにとって、それより重要なことがある。……まぁ、出すつもりないと言われたし、お言葉に甘えるか。

 話が一区切りしたので水を一杯貰って、そのままランニングをしに外へ出て行こうとする。

 

「……十六夜。……冬花のこと、私は――正しかったと思うか?」

 

 と、そんなオレにさっきとは全く別の話を切り出す久遠監督。

 

「……冬花は記憶を取り戻しつつある。恐らくだが……直に全てを思い出すだろう」

「……そして、再び記憶を消すかどうかってことですか?」

「ああ」

「……正直な話、オレは正しいかなんて分かんないです。……確かに冬花にも、両親を失って凄い悲しい気持ちはあるでしょう。……でも、記憶を消すって、その悲しさと同時に楽しかった思い出も消してしまうんですよね?」

「…………」

「辛い記憶、悲しい記憶……そういう記憶だけを消すことが出来る。そんな魔法みたいなことは現代医学では出来ない」

「そうだな」

「……円堂を見ていれば分かります。あいつは冬花と楽しい思い出を持っている。……でも、冬花はそれを持っていない。ただ、それを思い出してしまえば、同時に辛いことを思い出してしまう。……なんというか、悲しい記憶を消すためにその他の大事な思い出を消すか、それとも大事な思い出を忘れない代わりに辛い記憶を抱えるか……このどちらを選ぶのが正しいかなんて正直オレには分からないです」

「……そうか」

「ただ、なんていうか……消された本人は、心に穴が空いた感じになるんじゃないですかね。でも、穴が空いていることに気付けない。色んなことがあったはずなのに抜けてしまっている。しかも、その抜け方は自然の忘却じゃなくて歪な形で……どれだけ大きい穴なのか分からない。大切な存在なはずなのに、忘れるはずがない存在なのに思い出せない。でも、思い出せないことが分からない。どれだけ重要か分からない。……もし、仮に断片的に思い出したとしても、まるで靄がかかったように全部は分からない。1つ1つが点で存在して、繋ぐことが出来ない……この記憶はなんだ……お前は一体誰なんだ……自分は何を忘れているんだ……自分は一体何者なんだ……これが本当の自分なのか……って、全部オレの想像ですけどね」

「…………今日、冬花の面会に行くんだろう?」

「そうですね」

「もし、面会中に冬花に何かあったら教えてくれ。すぐに向かう」

「はい」

 

 そう言って久遠監督は本を閉じ、何処かに行った。

 

(今の十六夜の話……想像にしては感情が籠もっていたな。()()()自分のことのような話ぶり……いや、流石にそれはない……のか?円堂たちや響木さんが、留学前後で人が変わったみたいと言っていた。…………まさか……な)

 

「記憶を残すか消すか……か」

 

 オレも前世の記憶があるから、色々とあったけど……もし、前世の記憶を完全に消していたら……今のオレはあったのだろうか?……それに……

 

「オレの前世の記憶は……完全じゃない……忘れるはずのない奴らのことを思い出せない……でも、何で……?」

 

 完全に消されていないが全てが残っているわけでもいない。今まで気にしてこなかったが、どうにもFFIが始まってから徐々に思い出している……今まで欠けていたパズルのピースが埋まってきて……でも、それはまだ全部埋まっていないことが感覚的に分かってしまっている。まだ大切なピースが欠けている……でも、いくつ欠けているか、そして、いつ埋まるのかが分からない。もし、全部が埋まったときオレは……

 

(十六夜綾人……やはり、ただの中学生とは思えない。一体、お前は何者なんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 面会に行くと、ベッドで眠る少女がいた。

 

「やっぱり、話せる状態にねぇか……」

 

 近くにあった椅子に腰掛ける。……ダメ元だったが、まだダメのようだな。

 

「…………」

 

 今まで分かってることを整理する……が、さてさていつ円堂に話したものか……もちろん、話せる分をだが。

 そんな感じで10分が経っただろうか……

 

「これ以上居ても意味はないか……」

 

 そう思い立ち上がって出て行こうとすると……

 

「……お父さん……?」

「冬花、起きたのか?」

「あれ……十六夜くん……?」

「お前が倒れたって聞いてな。昨日まで行けなかったから来ていたんだが……」

「そう……なんだ……十六夜くん。お父さんと守くんを呼んでくれる……?」

「オッケー。ちょっと電話してくるから待ってろ」

「うん……」

 

 病院を出て行き一旦外に出る。そして、監督に電話を掛けた。

 

『どうした?十六夜』

「冬花が目を覚ましました。監督と円堂を呼んで欲しいとのこと」

『分かった。すぐに向かう』

 

 電話が切れる。ということで、病院に入っていくと……

 

「響木監督?」

「十六夜か……どうしたんだ?」

「冬花の見舞いですよ。監督は……」

 

 さりげない動作で後ろに何かを隠した。……病院で何かを隠したって……

 

「薬……ですか?」

「ちょっと腰を痛めてな。朝から医者にかかっていたんだ」

「…………」

 

 なんと言うか……嘘をついている。そう感じ……っ!?

 

「十六夜?どうした?」

「あっ……ぐっ……!?」

 

 なんだコレ……何か映像が見える……っ!ここは……宿舎……?皆が集まって……その部屋で響木監督が倒れている……?

 

「しっかりしろ、十六夜」

 

 映像が途切れ、目に飛び込んでくるのは病院の待合……

 

「……はぁ……はぁ……」

 

 不思議と息切れがする……それに何故か目が熱い気がする……

 

「大丈夫か?」

「……ふぅ……もう大丈夫です」

「連日の疲労が出たのか?」

「かもしれないですね……戻りますわ」

 

 何だったんだ今の映像……何かが見えたんだが……

 

「今のアイツの目……何かおかしな力を感じたような……」

 

 後ろから響木監督がこちらを見ている気がするが、とりあえず冬花の病室に戻る。

 

「おかえりなさい」

「ただいま。すぐ来るってさ」

「ありがとね……」

「気にすんなよ」

 

 夢といい今のといい一体なんだ?……そろそろ本格的に動き出すのに、幻覚を見始めるとか……正直、倒れてなんか居られねぇんだが。

 少し世間話をしながら、2人の到着を待つ。

 

「ふゆっぺ!大丈夫か!?」

「円堂、ここ病院だぞ」

「って十六夜!?なんでここに!?」

「なんでって……冬花に頼まれて、監督とお前を呼んだのオレだぞ?」

「えぇっ!?……そ、そうだったの?」

「十六夜は朝から面会に行っていた」

「あーだから練習に居なかったのか……」

「それで……」

「私……思い出したの。全部、思い出したの……」

 

 そう言うと2人の表情が変わった。……円堂も冬花が記憶喪失って知っていたのか?それとも、どういうことか分かっていないって表情か?

 

「冬花……っ!先生を呼んでくる」

「やめて、お父さん」

 

 病院の先生を呼びに行こうとする監督を止める冬花。

 

「……私、もう忘れたくないの。……もちろん、悲しいこともいっぱい思い出したけど、でも守くんや素敵な仲間のことをもう忘れたくないの」

「忘れたくないって……どういうことなんだよ?」

「…………」

「監督、話したらどうですか?円堂には知る権利があると思いますよ」

「……だが……」

「守くん、私はね……記憶喪失だったの」

「ええっ!?記憶喪失!?」

「私の本当の名前は小野冬花。そうでしょう?お父さん」

「……その通りだ。私は冬花の本当の父親ではない」

 

 そこから久遠監督が冬花の父親役になった理由を話していく。……久遠監督は桜咲木中の事件の後、とある小学校にて、冬花の担任になった。……しかし、半年後に事件が起きる。冬花の両親が目の前で交通事故でなくなってしまったのだ。

 そこから冬花は塞ぎ込むようになってしまう。元々の明るかった性格は鳴りを潜め、沈んだ様子を見せた。……そして、ショックのあまり心を閉ざし、一切の食事を摂らず日に日にやつれていってしまう……このままでは生命の危機だった。そこで、紆余曲折あって、彼女の記憶をなくして、久遠監督が父親だと思わせた……それが当時の久遠監督の決断だった。

 

「ごめん!」

 

 その話を聞いて円堂から出て来た言葉は謝罪だった。

 

「俺、バカだった!ふゆっぺが苦しんでいるのに、気付かなくて……」

「ううん。私が記憶を取り戻せたのは守くんのお陰なの。昔からサッカーをする姿が変わっていなかったから……」

「ふゆっぺ……」

「そう言えば、十六夜くんは驚かないんだね……」

「あぁーなんていうか……知ってたから、だな」

「えぇっ!?お前、気付いてたのか!?」

「……オレがアメリカ戦の前に日本に帰ってたのは知ってるだろ?」

「う、うん……吹雪たちと会ってたんだよな?」

「あれは表向きの理由。裏で影山について調べ直していたんだよ……そこで知ったんだよ。冬花の本当の両親が亡くなったことを。そして、この事を」

「そ、そうだったんだ……あれ?何でそこで繋がるんだ?」

「それは……」

「……多分、私のパパが守くんのお爺さんと……そして影山って男と関わりがあったからじゃないかな?」

「えぇっ!?」

 

 驚く円堂……まぁ、そうだよな。この流れで、円堂の爺さんの登場は読めないよな。というか、病院に来てからずっと驚いてばっかりだな、コイツ。

 

「『大介さんは素晴らしい人だ。あの人ほど、サッカーを愛している人はいない……だから自分は影山を裏切って大介さんを助ける』って」

「裏切るってどういう……」

「オレから話すわ。40年前の円堂の爺さんの事件は知ってるだろ?だが、あの事件では円堂大介を匿い国外に逃亡させ、世間的……表では死んだことにした組織があったんだよ。……その組織は影山の仲間であったが、悪行を止めようとヤツを裏切った人の集まり……その組織に居たのが小野正隆という……冬花の本当の父親だ」

「バカな!そんな話は聞いていない!」

 

 ガラッ

 

「ああ、俺もだ……」

「えぇっ!?ひ、響木監督!?」

「すまんな、円堂と久遠も見えたもんでついてきたが……入るタイミングを失ってな」

 

 おっと、マジですか……いやまぁ、響木監督なら聞かれていても問題ないだろうけど……

 

「だが、それが事実なら大介さんは……」

「生きてるんだ!やっぱりじいちゃんは生きてるんだ!」

 

 喜ぶ円堂。だが……

 

「……ちょっと待ってくれ。じゃ、じゃあふゆっぺの両親を交通事故で殺したのって影山……」

「と言いたいんだが、それはまだ分からない。その辺の事実関係は鬼瓦刑事が調べてくれている」

「そ、そうなんだ……」

 

 ……まぁ、言えないよな……影山さえも操るくらいの強大な何かが動いているって。

 

「じゃあ、久遠監督。それに響木監督も。オレはこれで失礼します」

「……ああ」

「分かった」

「あれ?練習は?」

「……悪いな。しばらくパスでよろしく」

「そ、そうなんだ……」

 

 一足先に病院を出て行く。……早く手を打たないといけないんだが……

 

「さっきの映像が未だに焼き付いてるな……」

 

 よく分からない感覚を覚えながら、病院を出て行くのだった。




 すみません、鬼瓦刑事……十六夜くんに出番取られて本当にすみません。
 というか、十六夜くん……これがRTAなら余計なイベントを回収しすぎだよなータイムロスしすぎているんだよなーまぁ、今に始まったことではないですが。
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