病院から戻った円堂の話だと、冬花は今日は念のため病院で過ごす。明日、医者の許可が貰えれば、退院できるそうだ。……まぁ、入院理由が記憶を取り戻しつつあった時の副作用的な感じで倒れた……みたいな感じ……だから、多分大丈夫だろう。曖昧なのは、冬花が倒れた時に日本に帰っていたため、その時のことを詳しくは知らないからだ。
「じゃあ、行こっか。ガルシルド邸に」
「ああ、乗り込もう」
その日の夜……セントラルエリアにて落ち合ったオレとAはブラジルエリアの外れにあるガルシルド邸に向けて歩いていた。
「とりあえず、最終目標の確認ね。誰にもバレずにハッキングし、データをコレに移すこと」
「2本あるから、片方はお前、片方はオレ用ってことか?」
「後で分かるわ。潜入作戦だけど、至極単純。あなたの必殺技、イビルズタイムを使って、まずは監視室をおさえる」
「そこで監視カメラに細工する。その後はデータベースに侵入し、データを奪う。計画自体はシンプルだが……お前、一体何者なんだ?」
「協力者よ」
……この作戦を聞いたときに、オレはあることを聞き返した。そして、実践をしたが……まさか、イビルズタイム中に動ける人間がいるとは思わなかった。いや、正確にはオレ以外の人間が
「一応、潜入するときはローブのフードも被ってね。正体がバレないように」
「万が一、ガルシルドがシロならオレたちはヤバいからな……まぁ、クロって確信はしているんだが」
「それもあるし、真っ黒ならデータを奪った私たちを絶対に許さない……でしょ?」
「クロでもシロでも、どのみち身バレは避けたいってことだろ?」
「とりあえずガルシルド邸までは普通に。そこからはローブを羽織っていくよ」
「……お前、心なしか楽しんでないか?」
「そう?でも、こんなこと滅多にないから面白いと思うけど……そういうあなたも楽しんでいるでしょ?」
「楽しむというか……まぁ、いいわ」
「さぁ、行くわよ。心臓を潰すキーを手に入れに行きましょう」
「分かってるっての」
もし、ガルシルドが本当にクロなら、ブラジルの選手たちが危険だ。情報によれば、ブラジルの監督はガルシルド……黒幕が監督のチームなんて、何かされていてもおかしくはないんだから。
「はぁ……あのバカ。抜け出したな……」
一方その頃のイナズマジャパンの宿舎。もぬけの殻となった十六夜の部屋を見て、ため息をつく八神の姿があった。
『まぁ、最近は忙しいみたいだしね』
「ペラーか。十六夜にかまってもらえなくて暇なのか?」
そして、ペラーが看板を持って八神に伝えた。……まぁ、この世界の必殺技に関わるペンギンが主人の許可無く出歩き、剰え暇だと言うにはいささかおかしいのだが、今更である。
『そーなんだよ。綾人がずーっと忙しそうにしてさぁ。最近は全然話せてないんだよー』
「ほんと、お前たちは親友みたいだな」
『みたいじゃなくてそうなんだよ!ただ……』
「ただ……?」
『なんというか……綾人、最近おかしな力に目覚めたかもしれないんだ』
「おかしな……力?…………まさか、あのエイリア石に飲まれかけた時のか?」
『そうとも言えるし……そうとも言えない。オレじゃよく分かんないんだよねー』
「そうか……」
『よし!考えても分かんないし、姉御の練習に付き合うか!』
「練習に付き合うって……いいだろう。私も最近は十六夜が相手してくれなくて暇なんだ」
『まぁ、代わりにオレがやりますよーっと』
そう言うとペラーは八神の頭に乗る。
「行くか」
そして、宿舎を出てグラウンドに降り立つ……すると、
「誰だ?」
1人の少年がボールを蹴っていた。
「あ、やっと来た。やっぱりシスターの言う通りだったよ」
「何の話だ?」
「オレは……そうだな、シスターに習って
「私に?」
「うん。あ、その頭に乗せてるのって、十六夜綾人の相ペンのペラーだよね?いやーシスターが勝手なことしてゴメンね」
『シスター?……もしかして、最近綾人が一緒に行動してる女子のことかな……?』
「そうそう。その人がうちのシスターなんだ」
『……っ!?』
「どうした、ペラー?」
『この人、話が通じてる……』
看板で状況を伝える。そして、そのことに驚きつつ……
「……何者だ貴様。見るからにただ者じゃないが……」
「おぉ、面白いこというね。でも残念。オレはあくまで君とサッカーがしたいだけのただの少年さ」
「どういう事だ?」
「それ以上でもそれ以下でもない存在ってこと。さぁ、サッカーしようよ」
(なんだ……この今までに無い異様な雰囲気は……そして……この男……)
『どうしたの?姉御』
「……いいだろう。私の練習相手になってもらう」
「うん、よろしくね」
(……初対面のはずなのに、何故こんなに見覚えがあるんだ……?)
とりあえず感覚で木を伝い、塀を飛び越え中に潜入した。……いや、ほんと身体能力高いな……何でとりあえず感覚で侵入できてるんだろ?前の世界なら絶対無理だぞ?
「ここからは?」
近くの茂みに隠れながら状況を確認する。
「まず、あなたのイビルズタイムでは止まっているものを動かせない。それは生物も無機物も一緒。でしょ?」
「そうだな」
「だから、まずは侵入するために、鍵が空いてるところを見つけましょう。なければ私がなんとかするわ」
「オッケー」
そう言ってオレたちはガルシルド邸の窓を全てチェックする……が、
「ダメだな。後は正面玄関だが……」
「監視カメラがある以上、確認するだけ無駄ね」
「で?どうするんだ」
「こうするのよ……」
ピーー
静かに指笛を鳴らす彼女。
「インビジブル・ペンギン」
「なるほどな……」
「理解が早くて助かる。よく見ておいてよ?」
「分かってる。1回で成功させる」
オレは玄関を注視する……そして、
「イビルズタイム」
指を鳴らして時を止める。
「透明なペンギンに呼び鈴を鳴らさせて、鍵を開けて外に出てきたところを時を止めて侵入か。考えたな」
「理解が早いね。……監視カメラに何も映っていないのに、呼び鈴が鳴れば不審がって絶対に開けると知っていたけど……行くわよ」
「ああ、さっさと終わらす」
と、ガルシルド邸に入ると……
「……っ!」
「どうしたの?」
「何でもねぇ……」
何故か、今になって今朝の夢を思い出す。……何でこのタイミングで……?
「監視室は……」
「この通路を真っ直ぐ行って、突き当たり左側の部屋……」
「よく知ってるわね。その通りよ」
彼女が教える前に口から出た言葉に自分で驚く。あれ?オレは何で知ってるんだ……?
そんな疑問をよそに、オレたちは監視室の扉の前……
「カメラの死角はここね。私が開けるから……」
「すぐにイビルズタイムで止めて状況整理……だろ?」
「行くわよ。カウント、3……2……1……」
「解除」
近くに人が居ないため分かりにくいが、イビルズタイムを解除したことで時が正常に進み出す。Aが何の苦も無く、扉を人が1人分通れるだけ開けたのを見て……
「イビルズタイム」
再び時を止める。そして2人で中に入った。
「監視室ね」
「監視してるのは……2人だけだな」
「あなたはコイツを、私はアイツを気絶させる。渡したモノは持ってるわね?」
「ああ……てか、何だよコレ」
「スイッチを押すと相手を気絶させる魔法の道具」
そう言ってスイッチを押して見ると……ん?
「何も起きていない?壊れてるのか?」
「電気がバチバチ出るとか針が出て薬品を打ち込むとか思った?」
「まぁ、そんなところだが……」
「安心していいよ。しっかり、気絶させることは出来るから」
「その発言に何一つ安心できないんだが?」
「さぁ、やるわよ」
魔法の道具を相手の首筋に合わせる。向こうも合わせたようで。
「カウント、3……2……1……解除」
解除と同時にスイッチを押す……すると、座っていた男はもたれかかるように、立っていた男は普通に倒れた。
「うわっ、何で倒れたかさっぱり分からねぇ」
「とにかく、これで10分は起きないわ」
「へいへい。じゃあ、さっさとハッキングするぞ……というか、今更ながらこの発言もやべぇな」
「本当に今更ね」
ということでAがキーボードに触れていく。
「管理者パスワードは……」
「こうだろ?」
「ありがと」
パスワードを入力する画面で、オレはキーボードに手を触れ、自然にパスワードの入力を終えていた。
「……ん?」
あまりにも自然な流れ過ぎて気付かなかったが……何でオレはそんなもの知ってるんだ?というか……今朝見た夢と一致している?監視室の場所も、パスワードも……
「何してるの?ハッキングは完了したわ」
「あ、ああ……イビルズタイム」
そして、時間を止める。
「これで今から数分間、全てのカメラの映像は、ジャミングが入って上手く流れなくなるわ」
「ウイルスに近いものを送り込んだのか?」
「そうね、そういう認識でいいわ。それで?データ室の場所は分かった?」
「問題ない。……確かに時を止めたままだとデータ室でデータのダウンロードが出来ないか。だから、
「じゃあ行くわよ。ここから一旦二手に別れるわ。それぞれの場所でデータを手に入れるわよ」
「……は?聞いてねぇんだけど?」
「相手もバカじゃない。大事なデータ……私たちが欲しいデータは一ヶ所で纏めてないみたいよ。だから、あなたはデータ室をお願い。私は別の場所に行く」
「分かったよ。イビルズタイムの解除と使用のタイミングは?」
「解除は今から1分後。使用のタイミングは、私がインビジブル・ペンギンを飛ばすから肩にペンギンが触れた段階で、あなたの作業が終わっていればそこで。終わっていなければ、あなたの方が終わってからね」
「落ち合う場所は、
「じゃあ、今から60秒後にスタートよ。カウントスタート」
そう言ってそれぞれの場所目指して走って行く。……今更だが、何か凄いことやってねぇか?しれっと凄いことをたくさんやっているような……いや、そんなことはないだろう。うんそうだ間違いない。
「……59……60。解除」
解除と同時に部屋の扉を開けて中に入る。そして閉めてから、近くのパソコンにUSBメモリを差し込んだ。
「さてさて、データを拝借拝借……っと。ああ、なるほどなぁ……こりゃ、クロ確定だわ」
とんでもねぇデータの山だなおい。一言で表すなら……
「ガルシルドが世界征服を企んでると分かるデータか」
オイルカンパニー……ガルシルドの会社のデータに、そこでの油田状況。更に、ガルシルドが保有している兵器の数々に、その兵器による実験データ。
「FFIが始まってから裏で紛争とか各国の小競り合いが起きているとは聞いていたが……戦争を起こし、兵器を売りつけ莫大な利益を得る。そして、疲弊した国を乗っ取って……か」
つぅか、このデータでもヤバいのにまだヤバいデータが隠されているのかよ。
と、時間が少し経つと扉が少し開き、肩に何かが触れた。……向こうは終了したみたいだな。
「こっちも終わりっと」
扉を開け、外に出てから閉める。
「イビルズタイム」
そして、時を止めて移動する。そのまま予定通り、監視室前で合流した。
「このデータは明日の夜確認しましょう」
「オッケー」
「預けておくわ」
ということで、渡されたUSBメモリをしまう。
「さぁ、出るわよ」
「何処から?」
「無難に使われてなさそうな部屋の窓でいいでしょ?戸締まりを忘れたとでも思うはずだもの」
侵入した痕跡を全て消している……どころか、ほとんどの時間を時を止めた中で過ごしていたからバレる余地がないか。
念の為、1階ではなく一番上の階の隅の部屋から出ることにした。そして、無事窓を開け外に出ると、Aのペンギンに乗って塀の外へ降り立った。
「潜入作戦完了ね。じゃ、また明日の夜、同じ場所で」
「またな」
そう言ってオレたちは別れて帰路につく……後は何食わぬ顔で戻って寝るだけだな。というか……
「やっぱ、イビルズタイムは疲れるな……さっさと寝よ」
「おかえり、シスター。どうだった?」
「見た通り過ぎてつまらないわ」
「そう……」
「ああでも、十六夜綾人が力に目覚めたのは朗報ね。……もっとも、まだまだ不安定で、私には遠く及ばないけど」
「え?それ、聞いてないんだけど……ま、まさか、シスターの目的って……」
「さぁ?」
「……私にはって、十六夜綾人はシスターと同じ力に目覚めたの?あのオレたちの中でも一際異質な……」
「そうね。でも、本来は逆なんだけど。私が十六夜綾人と同じ力を有してる……まぁ、そんなことはどうでもいいわ。ブラザーはどうだったの?八神玲名との接触は」
「うーん、予想通りって感じ。でもまぁ、つまらなくはないかな?面白そうってのが本音だね」
「そう。じゃ、眠いし帰るわよ」
「分かったよ」
お察しの方も居るとは思いますが、今年の投稿はこの話で最後になります。
……まさか、今年1年毎週投稿が続けられるとは思いませんでした。割と驚いています。
皆様、よいお年をお過ごしください。作者はまだ冬期講習が残っていますので頑張ってきます。
~オリキャラ簡易説明~
名前 ???(
性別 男
所属 ???
年齢 今の十六夜と同い年
ポジション ???
備考 ペンギンと会話できる怪しい少年。Aと共に十六夜を助けた経験あり。一応、協力的だが……?
こちらも簡易過ぎて情報のほとんどが分かってないとかマジで?