翌朝の練習にて……
「十六夜のヤツ、また居ないなー」
「ああ、最近だと顔を合わせることも少ないな。なぁ、鬼道?」
「…………」
「鬼道?おーい」
「……悪い、ボーッとしていた」
「……次の相手の監督が影山だからか?」
「……気にするな。しっかり切り替える」
「揃ってるな?」
久遠監督が来るも、グラウンドには十六夜の姿だけがない。他のメンバーはつい最近まで入院していた久遠冬花も揃っているのに、だ。
「監督、十六夜が……」
「既に聞いているから問題はない。それより、明日は練習試合を組んだ」
「練習試合?どことですか?」
「相手はグループBのスペイン代表レッドマタドールだ。お互い、最終戦を控えているチーム同士の調整試合だ」
「いよいよ最終戦か……」
「それにしてもよ。俺たちってどうなれば勝ち上がれるんだ?」
「そうだな、改めておさえておこうと思う」
「では、僕から説明させていただきます」
そう言って、目金は地面に表を書いていく。
「まず、イナズマジャパンは勝ち点7で暫定2位です」
「暫定2位……」
「ナイツオブクイーンとユニコーンには勝って、ジ・エンパイアには引き分けだからか……」
「で、最終戦の相手であるオルフェウスは勝ち点9で暫定1位です」
「勝ち点9……つまり、全勝しているってことか」
「えぇ。監督交代がありましたが、ここまで1戦も落としていません。間違いなく、厳しい戦いになります」
「でも、決勝トーナメント進出の枠は2枠だろ?他のチームはどうなっているんだ?」
「暫定3位は同率でナイツオブクイーンとユニコーンの勝ち点3。で、暫定5位のジ・エンパイアが勝ち点1ですね」
「えっと、ナイツオブクイーンは全試合終了していて変更がないから……」
「残るはユニコーンとジ・エンパイア戦だけど……あれ?」
「えぇ。残る2試合がどのような結果で終わろうとも、実は勝ち上がり自体は決定しているんです」
自分たちが負けても絶対に勝ち上がれる……そんなある意味で甘い状況に気付く面々。
「予選リーグを突破することは確定している。1位通過か2位通過は決まっていない。1位通過するには次の試合での勝利が求められる」
「そうだよな……この勢いのまま1位通過したいよな……!」
「補足しておくと、スペイン側はこんな優しい状況ではありません。勝たなければ決勝トーナメント進出が厳しいチームです。ですが、侮ってはいけません。スペイン代表もかなりの強豪ですよ」
「相手にとって不足はない。明日はこの16人で試合に臨む」
「ま、待ってください!十六夜は?」
「明日の練習試合では起用しない。十六夜抜きで戦ってもらう。では、練習開始」
そう言って、練習がスタートする。
「まるで、ネオジャパン戦みたいだな……だが」
「ああ、なんというか……あの時とは違う理由に感じる……一体、お前は何をしてるんだ?」
と、そんなやり取りがグラウンドで行われてることなんて一切知らないオレは……
「なるほどねぇ……これだけ見張りがいるのか……」
「まるで、囚人と看守ね」
「ああ。それか実験体……被験者と研究者たちか」
ブラジルエリアへ潜入していた。他の観光客っぽく見せるため、オレたちは変装をしているが……
「やれやれ。表向きはザ・キングダムの選手たちの練習を見守るサポーターたち……いや、ちょっと違うか。実際に、そういうサポーターも居るから全員が全員ってわけじゃない」
「公開練習って体を取っているけど……」
何人かのサポーター……いや、サポーターに扮したヤツらは、ザ・キングダムの選手たちのデータを逐一記録し、何処かに報告している。
「更にインタビュアーの振りをしているアイツが、データをガルシルド監督に報告……ねぇ。インタビュアーなら、報告も容易だろうし」
「……街並みも見たけど、表面上は明るいわね」
「だな。多分、何も知らない人も一定数居るんだろうな」
恐らく、ザ・キングダムの選手の応援に来てくれている家族とかには監視がついているが……それでも、明るく振る舞っている。……ガルシルドの優しさと言うべきか……あの人がそんなことするわけないって流されているんだろう。
「気持ち悪いな……マジで」
楽しそうに見せているだけ。本心では、何処か怯えながら練習している。……家族が人質に取られた状態でプレーを強いられているんだ。当然と言えば当然か……
「この島でガルシルドを捕まえただけじゃ解決しない。ザ・キングダムの選手の家族たちを保護しないと、アイツらは満足にプレー出来ない……か」
「宛は?」
「ガルシルドによって変えられた前の監督……そいつと接触してだな」
「そうね。もっとも、監禁されているから接触はかなり難しいけど」
「は?監禁?」
「ええ」
イタリアといいブラジルといい、監督の枠を無理矢理奪うとか……頭が痛くなりそうだ。つぅか、いくらなんでも監禁って……おいおい。
「こうなると、ミスターKの動きも気になるが……いや、あっちはフィディオに任せよう。アイツなら、不審な動きを見せた段階で報告してくれるはずだ」
「何とかが気になるなんて言い出したらキリがないわよ」
「ああ……っ!?」
「どうしたの?」
何だ……今の映像……ミスターKが……影山が護送車に乗せられて……護送車が事故で影山が死亡したニュースが流れて……?意味分かんねぇ映像だな……おい。
「大丈夫?」
「……ああ」
「……疲れたんじゃないの?」
「かもな……いや、でも休んでられねぇよ」
響木監督の時といい、何だよこの幻覚……いや、何か映像が流れ込んでくる感じか……まぁいい。
「少し休憩したらコトアールエリアに行くんでしょ?」
「アレを見せたい相手が居るからな」
「何となく想像がついたわ……用事が終わったら今日は休むことね。休んでいられないのは分かるけど、休息は大事よ?もし倒れたら、イタリア戦に参戦できなくなる」
「……分かったよ。今日は用事が終われば休む」
「よろしい。じゃあ、また、明日会いましょう」
「……お前は?」
「人と接触するんでしょ?私はその人と会うべきではないと思うの。じゃあね」
そう言ってどっかに消えていく……
「まぁいいや。予定通り会いに行くか……」
そのままコトアールエリアに移動する。ブラジルエリアで感じていた嫌な感覚が残っていたが、平和そのものに見える光景を見て何処か安堵する。ただ、この平和の裏に黒いものがあるって考えると……
「あれ?アヤトだ。どうしたの?」
「メハトか……」
見知った顔が声をかけてくる。そのお陰で負のスパイラルに落ちかけていた思考が中断された。
「ちょっと、このエリアに会いたい人物が居てな」
「そう?案内しよっか?」
「お願いしてもいいか?」
「もちろん」
「じゃあ、お前らの監督に会わせて欲しい」
「監督に?いいけど……」
ということで、メハトについて行く……
「穏やかな場所だな」
「うん、ここは他の国のエリアに比べたら建物とかあんまり立っていないし、皆優しい人だからね。ただ、目新しいものがないから観光客はそこまでなんだけど」
「いやいや、こういう自然を感じる場所も大事だろ」
「そう言ってくれてありがと。そう言えばレイナは?一緒じゃないの?」
「今日はオレ1人。八神は置いてきた」
「置いてきたって……まぁ、遊びに来たわけじゃないみたいだしね」
話しながら歩いて行くと……
「あら?十六夜くん、こんなところで会うなんて奇遇ね」
「雷門……お前こそ、ここで会うとはな」
「え?知り合いなの?」
「えぇ、友人……と言っておこうかしら。それで?どうしてここに?」
「アヤトは監督に会いに来たって」
「ふぅん……メハト。後は私が連れて行くわ」
「いいの?忙しいんじゃ……」
「選手にそんな仕事までさせないわ。私に任せて」
「そう?じゃあ……」
「ありがとな、メハト。助かった。また機会があったら話そう」
「どういたしまして。また会おうね、アヤト」
と、去って行くメハト。雷門は辺りに誰も居ないことを確認して……
「で?来た目的は?」
「円堂大介に会いに来た」
小声で確認してきたので、こちらも目的を簡潔に伝える。
「……そう。いいわ、案内する」
そのまま案内された場所……
「失礼します、雷門夏未です。客人を連れて来ました」
「客人?」
「失礼します。日本代表イナズマジャパンの十六夜綾人です。お久し振りですね、おじさん」
「おぉ、誰かと思えば、トラックを追いかけてきた時の小僧か」
赤キャップを被ったお爺さん……この部屋には1人だけか。
「あなた以外誰も居ませんよね?」
「この部屋にか?そうじゃの……誰も居ないな」
「……コトアール監督荒矢大介さん……いえ、イナズマジャパンキャプテン円堂守の祖父である円堂大介さんに話があってきました」
「……なるほどのう……小僧……いや、十六夜よ。……お前さんは何をしに来た?」
「この2つのデータを見て欲しくて来ました」
そう言って見せるのは先日、ガルシルド邸から盗んできたもの。
「いいだろう」
「雷門、頼めるか?」
「えぇ、分かったわ」
雷門に渡してデータを見る……すると、大介さんの目の色が変わった。
「お主……これを何処で……!」
「この大会のトップ、ガルシルド・ベイハン氏のお屋敷にて少々拝借を……」
「……潜入し、盗んできたのね」
「そうとも言います」
「「…………」」
雷門が呆れたような視線を向けるが、すぐにデータを見始める。2人は食い入るように見ていて……まぁ、正規のルートでは絶対に手に入らない超重要情報だからなぁ……。
「やれやれ……お前さんは一体何者だ?」
「ただの
「……どちらかと言うと、誰にも行動が読めない何でも屋よ」
「……え?マジで?」
「忘れていませんからね?あなたが、誰にも言わずに黒幕の懐に潜入したことがあるのを」
「…………」
「全く……でも、この情報はかなり大きいですね」
「ああ……ようやくガルシルドに一矢報いることが出来る」
「ですが、どうやって追い詰めるか……ですね。確かに強力な武器ですが……」
「使い方をミスして、相手にもみ消されればゲームオーバー……二度とヤツの悪行を止めることは出来なくなるでしょう」
「よく分かってるじゃない。……まさか、既に策が……」
「ああ、オレが考えているのは……」
オレが考える策を伝える。伝え終わった後……
「十六夜、お前さんは面白いことを考えるのう」
「……はぁ。でも、それぐらいしないとダメってことね……」
「でも、これでも勝てるかどうかは五分五分……」
「だったら――」
と、大介さんが語る。
「……確かにそれなら……でも、いいんですか?」
「なぁに、反撃の時が来たって話。そろそろ隠れる生活は終わりってことだな」
「本格的に動くのは十六夜くんね。バックアップは必要かしら?」
「お前に定期報告はする。何かあれば伝えてくれ」
「えぇ、でも気をつけてね」
「なぁに、もう危ない橋を渡ったんだ。……引き返せない以上、やるしかねぇだろ。それに……これ以上、サッカーを汚すのは許せねぇ」
「何かあったら言うんだぞ。儂らも力を貸そう」
「ありがとうございます」
「どのみち、儂らは奴らにマークされている。下手に動きが取れない以上、お前さんの存在はこちらとしてもありがたい……気をつけるんだぞ」
「はい」
「じゃあ、出口までついて行くわね。後、これ」
「ありがと」
そう言って返されるデータ……さて、後やることは……
「あれ?アヤトじゃないか」
「どうだ?あれからのミスターKは」
「悪事は特にしてないよ」
「それはよかった」
イタリアエリアにてフィディオと会う。そして……
「なぁ、フィディオ。ミスターKについて1つ伝えておく」
「何だい?」
とある調べた事を伝えていく。
「……なるほど。普通の人が聞いても信じられない内容だね」
「だろ?でも、これが事実なんだよ」
「……アヤト、よく調べたね」
「まぁ、オレの仕事だからな」
「……俺はやっぱりミスターKを信じてみようと思う。確かにキドウたちも言ってたように悪事は沢山していた……でも、こうして良心が残っているんだ。それに……あの人はサッカーについて無知ってわけじゃない。あの人の知識量は本物だ」
「…………」
「だから、次の君たちとの試合で、俺はあの人を目覚めさせたい。あの人の目を覚ますようなプレーをするつもりだよ」
「手は抜かねぇぞ。オレたちは全力でお前らとぶつかって……勝つ」
「ああ!それと、彼も君たちと戦いたいみたいだしね」
「彼?」
「試合で分かるさ」
彼……?一体、誰だろうか?
「ついでに、1つ聞いておきたい」
「なんだい?」
フィディオからあることを聞いておく……なるほど。やっぱりか……
「ありがとうな」
「どういたしまして。そうだ、それならアヤト、1ついいかい?」
「ん?」
と、フィディオからあることを聞く……
「いいなそれ。オレももちろん協力する」
「アヤトならそう言うと思った」
この後、軽い談笑の後に別れ、宿舎に帰ることに。グラウンドでは円堂たちが練習をしていたが、幻覚が見え始めたのは流石にマズいということで、Aにも言ったように今日は休ませてもらうことにした。
お久しぶりです。またしばらくの間、週一を目処に投稿を再開したいなと考えていますが、前みたいに何曜日とは言いません。多分、ちょっと空くときや、そこまで空かないときとバラバラになるかと。次回は9月中に投稿するはずですので……。
後、Xへの「投稿します」ポストは忘れていたんですが、今後もいいかなって思ったり?