超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

196 / 254




レベル差

 そして、翌日。イナズマジャパンとスペイン代表、レッドマタドールの練習試合の日を迎える。

 

「さてさて、どんな勝負になることやら」

 

 グラウンドを眺めているのはL。Aに頼まれて様子を見に来たのだ。

 

「と言っても、シスターの介入の影響を受けているのはイナズマジャパンの方だけ。レッドマタドール側には何も影響ないからなぁ……」

 

 もっと言うと、レッドマタドール側……正確にはBグループ側は原作に比べるとリトルギガントにメハトが参戦したものの、彼らのチームは本気を出していない。また、代表選手の枠の増加もあるが、特別大きな影響を与えているとは言えない。そのため、十六夜綾人がこの世界に来たことによって起きた現象による強化が一切ない。もちろん、彼らが知る由もないことだが、AとLの介入の影響以前に、十六夜綾人による影響も受けていないのだ。

 

「まぁ、勝つのはイナズマジャパンでしょ。3-0くらいかな?」

 

 Lはこの試合がどうなるのかを何となくの予測を立てる。そして、試合が始まった。

 

『皇帝ペンギン3号!』

 

 試合開始早々、鬼道、不動、佐久間の連携であっさりゴールまで到達。必殺技がゴールネットを揺らすことになる。

 

「まず1点目」

 

 そして、レッドマタドールのキックオフ。キャプテンのケラルドが攻め上がっていく。

 

「マタドールフェイント!」

 

 ケラルドが必殺技で染岡を突破し、

 

「スリングショット!」

 

 必殺シュートを放つ。

 

「イジゲン・ザ・ハンド改!」

 

 しかし、進化した円堂の必殺技を前に簡単に防がれてしまった。

 

「あーこりゃ、終わったわ」

 

 Lには既にこの試合の結果が見えたようで、真面目に見る気が失せ、それでも、見続けなければいけない状況を作った人間に文句を言いたい気持ちになっていた。

 

『ドラゴントルネードR!』

 

 そして、円堂からのボールを受けて染岡と豪炎寺の連携必殺技で2点目を奪う。続くキックオフで、レッドマタドールが攻め上がるも……

 

「ザ・マウンテンV2!」

 

 壁山がそれを食い止め前線に。鬼道が単独でシュートを放つもそれは弾かれコーナーキックになる。

 

「ザ・チューブ!」

 

 キッカーは綱海。身に付けた新しい必殺技によって、コーナーキックから直接ゴールに叩き込んで3点目。

 

「真空魔V2!」

「スピニングフェンス!」

 

 その後も飛鷹や風丸とディフェンス陣が相手をシュートまで持ち込ませず、そのままハーフタイムになる。前半だけでスコアは3-0。受けたシュートも1本だけと圧倒的である。

 後半はメンバーを総入れ替えをする。染岡、綱海、壁山、飛鷹、風丸に代わって、吹雪、土方、木暮、虎丸、立向居が投入される。キーパーは立向居となり、フィールドプレイヤーとして円堂が入った。

 

「グラディウスアーチ改!」

『ザ・バース!』

 

 攻撃は虎丸が点を取り、吹雪とヒロトの連携必殺技で点を取って5-0にする。

 

「スーパーしこふみV2!」

「旋風陣改!」

「魔王・ザ・ハンド!」

 

 一方の守備も土方や木暮を中心に相手の攻撃を阻止。シュートが来たとしても立向居がセーブし、点を決めさせない。

 

『イナズマブレイクV2!』

 

 最後は円堂、鬼道、豪炎寺の連携必殺技で点を取り、最終スコア6-0で試合終了。まさに圧勝である。

 

「へぇ、予想以上の点差だね。でも、もっと点差をつけられたかな?やれやれ、この展開はシスターにとっても誤算か予定調和か」

 

 もっとギリギリの戦いになる……そう考えていた人たちにとっては驚きを隠せない試合になった。

 

「うーん、この感じは十六夜綾人が加わっていたら10点は固いかな?……いや、多分ベンチに居て出ることはなかったんだろうね。うん、出すまでもないってヤツだ」

 

 十六夜が加わっていたIFを想像し、居ても居なくても変わらなかったなと思い苦笑するL。

 

「まぁ、しょうがないよ。AグループとBグループのレベルは段違いだから。ザ・キングダムもリトルギガントも本来の実力を出していないんだからね。Aグループみたく、全チームが全試合を本気でやっているわけではないんだからさ。ここまで差が生まれてしまったのは仕方ないよ」

 

 全チームが本気でぶつかり合い、高め合っていくAグループ。対して最強格の2チームが本来の実力を出していない状態で戦い続けるBグループ。当初は差など無かったかもしれないが、今では目に見えるほど広がってしまっている。

 

「これはゴメンとしか言いようがないけど、君たちには興味が無い。君たちの役割はあくまで指標。オレたちが関わらなかった世界との違いを測る道具に過ぎないんだ」

 

 そのままスペイン代表との合同練習という形に切り替えたのを尻目に見つつ、ジャパンエリアから去って行く。

 

「さてと。シスターは十六夜綾人を連れてブラジル行っちゃったし……オレはやるべき事をやりますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1人で遅くまでってのはねぇんじゃないの?鬼道クン?」

「不動……」

 

 夜……グラウンドにて。練習していた鬼道のもとにやって来たのは不動だった。

 

「次の相手が影山だからって気合い入り過ぎじゃねぇの?ちょっとは肩の力を抜けよ」

「…………」

「練習試合だってそうだ。お前が突っ走るから上手く噛み合わねぇところがあった。圧勝はしたが、反省点も多い試合だった」

「……それは反省している。少し冷静さを欠いていた」

 

 スペインとの練習試合は結果的にはイナズマジャパンの圧勝で終わった。しかし、試合内容としては鬼道のプレーに何処か焦りのようなものがあり、上手く周りと噛み合わなかったプレーが見られ、満足いくものではなかったのだ。

 

「たくよぉ……俺だって、次の試合の監督が影山だって考えると柄にもなく意気込みたくなる。でも、お前が熱くなりすぎたら終わりだろうが。俺たちはイナズマジャパンの司令塔……ブレーンだぞ?」

「フッ……」

「……何を笑っていやがる」

「珍しいことを言うものだと思ってな」

「うっせ。確かに影山の存在は気になる……が、オルフェウスは間違いなく強敵だ。それは一緒に戦った俺たちなら分かるだろ?」

「ああ。個人個人のレベルの高さの平均は今までの3チームより上。そして、そのチームを率いるフィディオの実力は世界トップレベル……」

「今回の練習試合……相手チームには悪いが、個人個人のレベルの高さは今までのAリーグのどの相手よりも下。それに加えて十六夜の言う世界トップレベルの選手が居ない。だから、誰かさんが突っ走っても勝つことが出来た。だが、今度の相手はそんなわけがねぇ。余計な雑念を持ち込もうものなら、一気に負けるぞ」

「そうだな……頭を冷やすとするか」

 

 そう言って練習を切り上げる鬼道。

 

「お疲れ様、ドリンクいるか?」

「佐久間……ああ、ありがとう」

 

 そこに現れたのは佐久間。手にはドリンクの入ったボトルを持っていて、それを鬼道に渡す。

 

「ちょっとは落ち着いたようだな」

「……悪い。迷惑をかけたな」

「まぁ、お前がそこまで考えるのも無理はない。だけど、影山と決着をつけたいって考えているならお前一人でなんて水臭いぞ。俺たち三人で決着をつけるべきだ」

「そうだな。余計な雑念はいらねぇが、全てを捨てる必要はねぇんだ。どのみち避けては通れねぇ。この三人でやってやるぞ」

「ああ」

「つぅわけで、まずは今日の試合の反省会からだな。お前の軽めの暴走はさておいて、別のところだな」

「と言っても、そんなにあるものなのか?正直、終始こちらのペースで進んでいただろ?」

「確かに、攻撃も守備も思い通りに行った場面が多かった。司令塔からすればかなり楽な試合だったとも言える」

「それなら良かったんじゃないのか?」

「だが、そこで満足しては成長がねぇ。オルフェウスは俺たちより強い。これまでの試合の映像を見たが間違いなく格上だ。影山って要素抜きでもな」

 

 格上……そう言い切った不動は本気の表情だった。その表情からも今のイナズマジャパンと差があることを読み取れる。着実に強くなっているはずだが、それでも同じステージにはまだ立てていない。それが現状なんだと告げている。

 

「確かに……チームK戦で一緒に戦ったときも、彼らの一人一人のレベルの高さは感じた。チームとしてはボロボロの状態。だが、各々のプレーに大きなミスは目立っていなかった」

「プレーも安定しているのが大きいな。こっちは主要メンバーや監督が欠けただけで、一苦労あった感じだが、向こうは監督が影山に代わってもプレーに大きな影響が出ていない」

「アルゼンチン戦のあれはイレギュラーが重なったからな……」

「ただそれでも、意識の差もあるだろう。あの試合で一部の選手に頼り切っていたという事実を確認し、少しずつ一人一人が代表である意識を持ち始めたこちらに対し……」

「向こうはそんなこと、前から出来ていただろうな。監督が誰になろうと、自分たちが代表でその使命は試合で勝つこと。当たり前に聞こえるそれを、ちゃんと当たり前に出来ている」

「つまり、個人のレベルに差もあるし、意識から違うわけか……」

「ああ。そして、そんな向こうのチームで飛び抜けているのはフィディオだな。能力値だけでも十六夜と同等だ」

「それは痛感しているが……能力値だけでも?」

 

 言い回しに引っかかる佐久間。まるで、それ以外の要素もあるような言い回しだ。

 

「頭一つ抜けている選手の存在……状況はこちらと近い。だが、チームとしてのまとまりは向こうが上。それはフィディオが味方のために献身的なプレーをしたり、味方のプレーを引き出したりするところが見られるのも大きいだろう」

「だが、そんなのは性格や性質の問題で片付けてもいい。十六夜が個人主体のプレーをするなら、向こうは仲間とのプレーをするってだけだ」

「じゃあ、何が……」

「致命的なのは俺たちと十六夜との間にあるディスコミュニケーション。能力値が同等でも、十六夜はフィディオ程味方を活かせない」

「まぁ、逆も然りなんだけどな。今の俺たちじゃ十六夜を満足にプレーさせてやれねぇ。そういう意味では十六夜だけが負けているわけじゃねぇな。お互いのトップ抜きでも負けている」

「なるほど……だが、お前たち程の司令塔でも無理なのか?お前たちは俺たちの力を引き出し最高のゲームメイクをしてくれる。そんなお前たち2人でも十六夜の力を引き出せないのか?」

「……正直、難しさを感じている。こう言ってはなんだが、俺には十六夜綾人という男が分からないんだ。やりたいプレーも、考えていることも、持っている実力も……分からないところが多いんだ」

「そういや、鬼道クンは前から十六夜と同じチームだっけか。でも、俺より付き合いなげぇし……ん?」

 

 と、ここで一つの疑問が湧いてくる不動。それはとても些細なことで今まで気にしていないことだったが……

 

「そういや、十六夜と初めて会ったのは代表選考戦だったな。まぁ、それだけなら豪炎寺も似たような感じだが。何であのアホはあの時いなかったんだ?」

「あの時って真・帝国の時か?」

「そうだ。お前らが日本を回っていた時だ」

「スパイ活動をしていて、エイリア学園に単身で潜入していた」

「……は?アイツは何をしているんだ?」

「え?そういう事だったのか?え?あ、だからアイツはエイリア学園側で試合に出たり、雷門側で試合に出たりしていたのか?」

「そうだな。裏切りではなく作戦。だが、それを俺たちは後になって知ったから、敵で出たときは色々と考えたものだ」

「…………」

 

 眉間を押さえる不動。彼も彼であの事件の裏では色々とあって、色々と起きたわけだが、そんなことを軽々超えそうなことを言ってのけたのだ。何故雷門側の一サッカー部員がスパイ活動なんてしているんだろうか。単独行動は今に始まったことではないのか。様々な疑問が浮かんで溢れそうになる。

 

「なるほどな……アイツってエイリア学園の事件後もメディアには出ていなかったからな。色々な憶測が飛び交っていたと思うが、そんなことだったとは……」

「流石に日本全国を巻き込んだ大事件の首謀者の下に、一介の中学生がスパイ活動をしていた……なんて、知られようものなら何が起きるか分からない。アイツの留学は、あの騒動の影響が収まるまで、追求を逃れるためでもあったんだ」

「何て理由で留学しているんだよ……」

 

 鬼道はここで思い出す。このことを知っているのは地上最強イレブンとして最後に一緒だったメンバーと一部の大人……よく考えなくても大多数は知らないことだったと。イナズマジャパンのメンバーでさえ全員が知っている共通認識ではないことを。

 

「まぁ、深掘りしてぇ気持ちも多少はあるが一旦置いておく。それを聞いても思うのは、鬼道クンはアイツとの試合数が多いのは事実だろ?付き合いもそこそこあるんだし、そんなに……」

「いや、実はそこに大きな問題がある。十六夜綾人という選手のプレースタイルは、留学前後で別人レベルに変わっているんだ」

「……マジかよ」

 

 不動はここで理解する。付き合いが長いはずの雷門出身の選手たちでさえ、十六夜のプレーは制御は愚か適応も満足に出来ていないのが現状。だが、もし鬼道の言葉が事実なら昔の十六夜を知っているほど、今の十六夜とのギャップが酷く、理解に苦しんでしまう。特に雷門中サッカー部が仲間や協力を重んじるならなおさらだ。

 

「確かに、俺も十六夜があそこまで我が強いというか、そういう感じなのは驚いたな。帝国学園として戦ったときもそこまで感じなかったし……」

「……結局問題点は変わらねぇわけか。過去を知っている知らないに関わらず、現在の十六夜とのコミュニケーションが取れていない……」

 

 思ったより問題の根が深そうなことに気付く不動。

 

「つぅか、件の自由人は外泊届出して行方知れず……確かに俺も必要以上に馴れ合うつもりはねぇから強くは言えねぇけど、だからと言って全く関わらねぇはやり過ぎなんだよ……」

 

 あまりのことに頭を抱える。そして、その自由人が相も変わらず次の試合の鍵を握り、自分も頼りにしているところがあると思うと笑えてくる。

 

「これ以上は日を改めるとしよう。俺はもう少しボールを蹴って行く」

「じゃあ、俺も付き合おう。実は考えている必殺技があるんだ」

「俺は戻る。ちょっと整理してぇしな」

 

 鬼道と佐久間は残ってボールを蹴りはじめ、不動は一足先に宿舎に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっといいか?不動」

「何すか監督?わざわざ待っていたようで」

 

 宿舎に入った不動。そんな彼を待っていたのは久遠監督だった。話があるということで、誰にも聞かれないよう監督の部屋に行くことに。

 

「今度のオルフェウス戦だが、お前を途中から出す予定だ」

 

 部屋に入るなり本題を切り出す。

 

「へぇ。まぁ、出す予定だろうが出さない予定だろうが、俺のやることは変わらないけど。で?そんなことわざわざ伝える為に待つなんてしねぇだろ?」

「そうだな。……お前には1つ、大きな役割を与える」

「……大きな役割……ねぇ。で?それは何でしょうかね?」

「それは十六夜のフォローだ」

「はぁ?アイツのフォロー?」

 

 予想外の一言が来て、不動は聞き返す。

 

「今日の練習試合を見るに、フォローが必要なのは鬼道の方だと思うんだが……」

「既に精神的なフォローは済んでいる。違うか?」

「……入り口で待っていたから分かるわけか」

「話を進めよう。前提として十六夜綾人という選手は、余程のことが無い限りスタメンから外せない。何故だと思う?」

「総合的な能力の高さだろうな」

「そうだな。ほとんどのパラメータが高水準にあり、贔屓目抜きで十六夜綾人という選手の総合的なステータスは世界トップレベル。イナズマジャパン最強の選手であることはもちろんで、相手の強さを鑑みるに外す余裕がない」

「外す余裕?」

 

 まるで余裕があれば外したいと言っているような言い方をする。その言い回しから不動は推測を進め……

 

「……ああ、そういうこと」

「何だと思う?」

 

 ある一つの仮説を立てた。久遠監督はその仮説を話すように促す。

 

「ゲームチェンジャー……試合の流れを大きく変えるために使うこと。それがアンタが考えている、十六夜の理想的な使い方だろ?」

「どうしてそう思う?」

「アイツの一番の強みは分析能力の高さ。だから、試合序盤は相手の分析に使うため尻上がり……後半に連れて力を発揮するタイプだ。だったら、最初は下げて徹底的に分析させた方が良い」

「それで?」

「加えて全ポジション熟せる万能型なところも魅力。アイツは試合の流れに応じて、必要なタイミングで必要なポジションに置くことが出来る。何とか~という選手が欲しいと思えば、多くの場合でアイツのスペックなら不足することはねぇ。しかも、アイツが加われば文字通り別のチームに化ける。こちらに対応しつつある相手を振り出しに戻し、一気に崩すカギになる」

「概ね正解だ。私としては、お前と同じで試合の流れを変える切り札(カード)として使いたい……だが、実際は使えない。なぜだと思う?」

「今回の練習試合と今までの試合が答えだろうな。イナズマジャパンの能力と対戦する相手チームの能力的に、アイツを外せる余裕がない。その上で、外せる余裕のある試合だとそもそもアイツが必要ない」

 

 相手が強力なら十六夜は不可欠で、最初から試合に居て欲しくて外せない。相手が弱ければそもそも十六夜を使うまでもない。今日は練習試合だったが、この先戦う相手たちは何処も格上。十六夜を外して流れをどうの考えられる余力がないのだ。

 

「そうだな。例えば他のチーム……ナイツオブクイーンのエドガー、ユニコーンのディラン、オルフェウスのフィディオ……彼らに共通して、うちのチームに十六夜以外で居ないのはどんな選手だと思う?」

「ボールを1人で運べて1人で決める能力のあるFWかMFだろうな。それも世界トップレベルでの話。例えば、吹雪は1人で運べる力があるが、単独の決定力に欠ける。豪炎寺は単独での決定力はあっても、ドリブルの能力がそこまで高くねぇ。もちろん、2人にしても他の選手たちにしても、一概にこのレベルだと言い切るのは難しい。ただ、あくまで世界基準での話だから、日本国内レベルでなら両立出来ている選手は居る。だが……」

「十六夜なら世界レベルで両立出来ている。その上で、十六夜は先に挙げた他のチームの主のFW、MF陣との大きな違いがある」

「ジ・エンパイアのテレス……世界トップレベルのディフェンダー。彼とそこまで差が無い守備力だな」

「正解だ。自己完結型選手……十六夜は基本的に全てのプレーを1人で終わらせる力がある」

「確かにな。1人で運べて1人で決めるどころか1人で奪うことまで出来てしまう。ブロック、ドリブル、シュート……確かに、世界トップクラス相手に個人技で渡り合えるのは、イナズマジャパンだと十六夜しか居ないな」

 

 1人で運び、1人で決めることだけでなく、十六夜には確かな守備力がある。1人で奪って1人でゴールを決める……たった1人で全て出来てしまう。

 

「このチームは円堂や鬼道、豪炎寺を中心とした調和……連携や仲間重視。突出した才能持ちに頼るのではなく、互いの不足を補い、互いの力を引き出しあう相乗効果で力を発揮して戦うチーム」

「だけど、本来の十六夜は個人重視の選手……チームの方針に合っていない、それどころか真っ向から否定する存在だった。なるほど……ある意味では想定外だったってわけか」

「そうなるな。正直、あそこまでとは想定外だった」

 

 鬼道たちとの話も踏まえると、久遠監督でさえも留学前後での思想の変化は想定外。ここまで来ると十六夜に何があったのか……気にはなるものの、答えてくれる本人が居ない以上聞きようがない。

 

「アイツの性格面で誤算はあったものの、代表から外す気は更々ない」

「だろうな。強すぎてベンチにすら置けないヤツを代表から外せるわけがない。いや、それだけじゃないか。確かにチームの方針には反発する存在だが、アイツは合わせることができてしまう。アイツが合わせるプレーと他のヤツの本気のプレーで比べても、十六夜の方が突出してしまっている。アイツはその万能さから誰にでも合わせられてしまう選手だから」

「だが、アイツの本気のプレーに合わせられる選手がこのチームにはいない。他の選手の本気には合わせられても、十六夜だけは誰も合わせられない」

「悲しい話だな。デザートライオン戦で、虎丸に言っていた言葉の数々が、十六夜を苦しめるわけか。日本中から集めた最強の選手たちでも、十六夜の本気を受け止められるヤツはいない」

 

 圧倒的な力を持つ故の孤独。しかも、その孤独に気付いているのは一部のみ。その孤独をどうにかしようと各々が力を付けてきているもののまだ足りない。

 

「……だから、フロー……没頭状態になれば、アイツはまず個人プレーしかしなくなるだろう」

「フロー?没頭状態?」

「エドガーと戦っていたときの状態で、十六夜が最大限力を発揮した状態と言えるだろう」

「最大限……ねぇ。ん?でも、何で出さなかったんだ?出せばユニコーン戦はもう少し楽に勝てただろうに」

「アレは入りたくて入れるものじゃない。自然と入るもの……そう私は解釈している」

「なるほど……文字通り没頭しないといけないわけか。入りたいなんて雑念があってはダメって訳だな」

「次の試合……いや、ここから決勝トーナメントの試合も含め、必ず入る場面が来る。ここから先の戦いは一層、相手が強くなるからな」

「だけど、アンタはアイツのそれを戦術に組み込んでいない。自由自在にオンオフ可能な使い勝手の良いものじゃない。そうだろ?」

「その通りだ。だが、入れたときのことを考えなければならない。十六夜がフローに入ったときのプレーを理解できるのは……不動。お前や鬼道くらいだろう」

「へぇ、じゃあ何で鬼道クンはスルーしたんで?」

「お前の方が十六夜との連携が上手くとれるからだ。……十六夜綾人は劇薬だ。一歩間違えれば、このチームを崩壊させてしまう」

「だが、その劇薬を使わなければこの先も厳しい状況。しかも、フローに入ったバケモノがチームに合わせるとは考えられない」

「そうだな。そんなプレーをあいつは望んではいないだろう」

「だから対処する存在が居るわけか。劇薬がチームを崩壊させないようにする存在が。劇薬を世界一に導くため上手く使う存在が……で、俺はその為の人材ってわけか」

 

 十六夜綾人の制御装置としての役割。司令塔として勝利へと導くだけではない別の役割。

 

「別に十六夜がこのチームをぶっ壊そうがどうでもいいな。……だが、そうだな。勝つためだ。勝つために、精々アイツの本気を利用してやるよ」

「それでいい。純粋にこのチームを守るため……と言うのはお前のやり方じゃないだろう。お前が十六夜を利用してこのチームの主導権を握り、試合に勝って世界一に立つために利用する……それぐらいの気持ちでいけ」

「ハッ、とてもじゃねぇがこのチームは調和とか仲間とか言っていた監督の言葉とは思えないな」

「だが、お前も考え方の立場は円堂よりは十六夜の方が近いだろう?」

「違いない」

 

 部屋を出て行く不動。そのまま彼の自室へと戻っていくのであった。




 スペイン戦について補足。
 アニメ版は引き分けでしたが圧勝でしたね。状況はネオジャパンの時と近いですが、あの時との違いは、イナズマジャパンの選手たちのレベルが目に見えて上がっていることです。ネオジャパン戦以降の相手は何処も強くなっています(チームKを除く)し、十六夜も手を抜かなくなりましたからね。彼らを相手にするため、更なる強化を重ねていましたから……
 これまでの試合も失点数だけを見るとアニメ版に比べて多く、円堂のセーブ率が低く見えますが、それは相手も強化を受けているために起きていることです。だから、数値だけなら弱体化かもしれませんが、彼もしっかり強化されています。
 ということで、そんな中の強化なしスペインVS十六夜抜き強化日本って……ねぇ?

 一応、決勝トーナメントに進出しない6ヶ国の本編での強さはこんな感じです。
 ユニコーン>ナイツオブクイーン・ジ・エンパイア>ローズグリフォン・レッドマタドール・ブロッケンボーグ
 アニメやゲーム軸ではそんなに差がないはずですが、本編だとかなり差が生まれていますね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。