超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSオルフェウス ~お前だけじゃない~

 鬼道と豪炎寺の得点で盛り上がる観客。

 

「いやぁ、再び1点差だね。それにしても、豪炎寺修也ってあんな選手だったっけ?」

「さぁ?何処かの誰かさんが影響を与えているんでしょ。……彼の持っているストライカーとしての嗅覚は、十六夜綾人の持っているそれを超えているもの。別に、1人で点を取れる能力が高い人をストライカーと言うわけではない。ゴールに対する反応や嗅覚が優れている選手、どんな形であれ点を取ることの出来る選手……そんな選手のことをストライカーと言う。少なくとも私はそう思っている」

「最終的には、ゴールという結果で示している存在ってことだね。言葉じゃなくて、試合結果やその過程で分かる……自称ではなく他者から認められてってところだね」

「そういうこと」

 

 オルフェウスのキックオフで試合再開。

 

「アンジェロ!ダンテ!左右からあがれ!ラファエレは最終ラインへ!」

「「「おう!(うん!)」」」

 

 ボールはデモーニオが持つと指示を出して、選手たちを動かしていく。

 

「ジョルジョ、フィディオ行くよ」

「ああ!」

「うん!」

 

 ボールはジョルジョに渡って、フィディオに。そして、サイドにいるダンテに渡って、サイドチェンジでアンジェロに……

 

(デモーニオが中心になってパスを回している……ラファエレが最終ラインで待機して、中盤3人が三角形を形成して、入れ替わり立ち替わり動いている……ボールの動きとフィニッシャーを読ませないつもりか)

 

「壁山!そいつから目を離すな!」

「吹雪と飛鷹はそれぞれサイドの選手をマークするんだ!」

 

 不動と鬼道の指示でこちらのディフェンダー3人は守備の体制を整える。デモーニオたちに対するは司令塔の2人。これで1対1或いは2対3の状況が完成する。

 

「シャッフル!」

 

 デモーニオがボールを持った瞬間、その掛け声と共にジョルジョとフィディオが斜め前……両サイドへ別れて走って行く。それと同時にそれぞれのサイドに居るダンテとアンジェロが中央に向かって走り込み、ラファエレが後ろ……デモーニオの方に向かって走る。

 

「そこ!」

「……っ!飛鷹!自身のサイドに戻れ!」

「あっ……!?」

 

 そして、デモーニオがサイドへと大きくパスを出す。そこではフィディオがフリーでボールを受け取った。

 

(クソ!飛鷹のサッカー歴の浅さを突かれた形になったか……!マークしろって言ったヤツがいきなり中央に走り出したんだ。そのままついて行くものだと思っちまう……その後ろに巨大なスペースが出来ることまで一瞬で判断できるほど、サッカーに精通していねぇ……!)

 

「決めてこい、フィディオ」

 

 フィディオがフリーでボールを受け取り、円堂と1対1になる。

 

「来い!」

「オーディンソード……っ!?」

 

 そして、フィディオが必殺技を放とうと振り抜く……が、

 

「オレを忘れんなよ」

 

 フィディオの足がボールに当たるより早く、十六夜がそのボールをかっ攫う。フィディオのシュートを不発に終わらせた。

 

「……バレていたか。流石だね」

「潰すならここが最適だろ?行くぞお前ら。速攻だ」

 

 十六夜は不動に渡すとそのまま最前線へと全速力で駆け上がっていく。

 

「へいへい、分かってるよ。切り裂け!吹雪!」

「うん!」

 

 不動からサイドを駆け上がる吹雪へと渡る。吹雪がその速さで敵陣へと突っ込み……

 

「ここで止め……」

「ここでいいよね!十六夜くん!」

 

 ディフェンダーが自身の方へと来る前に、中央に向けてパスを出す。

 

「ああ。後はゴールまでぶち抜くだけ」

「簡単に言うんじゃ……なっ!?」

「クソ!上手いなっ!」

「止められねぇ!」

 

 受け取った十六夜はブロックに来る相手選手たちを躱していく。

 

「これ以上行かせない!バーバリアンの盾!」

 

 そんな十六夜を止めるべく相手が必殺技を発動する……が、

 

「ほいっと」

「なっ……!?」

 

 ヒールリフトでその盾を超えるようにボールをあげ、自身は横から突破していく。

 

「ここで止める!」

「豪炎寺」

 

 ベントが突破した先に現れスライディングを仕掛けるも、冷静にボールと共に軽く跳び上がりつつ豪炎寺にパスを出す。

 

「くれ」

「分かってる」

 

 そして、ダイレクトで十六夜の下へと返す。

 

「来い!アヤト!」

「行くぞブラージ」

 

 キーパーとの1対1の状況。十六夜は1点目と同じように、彼自身が放てる最強の必殺技を放つ。

 

「オーバーサイクロンP!」

 

 放たれたシュートは激しい風を纏い、フィールドを抉りながら進んでいく。

 

「これは決まりましたね!」

「はい!これで同点ですよ!」

 

 イナズマジャパン側のベンチは得点を確信し盛り上がっている。フィールドに居る選手たちも決まったと思いほんの少し気が緩んでいた。

 

「ハッ!ほんと、見違えるほど強くなりやがってよ!」

「……っ!」

 

 ただ1人、シュートを放った十六夜だけは、このシュートを見て好戦的な笑みを浮かべるブラージを見て、緊張を走らせていた。

 

「だけど信じてよかったぜ!お前ならあの技を超えてくれるってな!」

 

 そう言うブラージは胸の前で両腕を交差させ、心臓に気を貯め込んでいる。

 

「何だ……マジン・ザ・ハンドか?」

「いや、モーションが違う……これは?」

 

 続いて豪炎寺と鬼道もブラージの繰り出す必殺技がコロッセオガードではないことに気付く。そんな中で、限界まで心臓に気を貯め込んだブラージは両腕を勢いよく広げると同時に貯め込んだ気を解放する。

 

「「「なっ……!?」」」

 

 イナズマジャパンの一部のメンバーは現れた()()を見て驚愕を表す。ブラージの背中から、鎧と兜を装備したマジンが現れたのだ。

 

「やっぱりマジン・ザ・ハンドなのか!?」

「マルス・ザ・ガード!」

 

 そして、ブラージの動きと全く同じ動きをするマジンは、握り込んだ両拳でボールを力強く挟み込む。荒れ狂うボールをその圧倒的なパワーで挟み込みそのまま……

 

「おいおい……マジか……」

 

 ボールの勢いがなくなってしまう。するとマジンの姿は消えて、両拳に挟み込む形でブラージがボールをキャッチしていた。

 

『防いだぁ!な、何と!十六夜の強力なシュートをブラージの新必殺技が完璧に止めてみせたぞぉ!』

『これはとんでもない必殺技を隠していましたね……!この技を破れるシュートはそんなに多くありませんよ……!』

『流石はイタリア最強の守護神だ!そのゴールは簡単に破らせないぞ!』

 

「本当は決勝トーナメントまで隠しておくつもりだったが……コロッセオガードが破られた以上、流石に使わないわけには行かないだろ?それに、この技のきっかけをくれたお前とエンドウ率いるイナズマジャパン相手が初陣というのは悪くない。お前が話してくれたエンドウの必殺技、マジン・ザ・ハンドを参考にさせてもらったぜ」

「……参考って……おいおい……」

「お前らがくれたヒントが俺を一段階上へと押し上げてくれた。だから、本当に感謝している。そして、あの頃から進化したのはお前だけじゃない!」

「……っ!?」

 

 ブンッ!……そんな音が聞こえてくるような勢いで、十六夜の顔の横をボールが通り過ぎていく。

 

「ナイスだ!ブラージ!」

「カウンター返しだ!決めてこい!フィディオ!」

「しまっ……!」

 

 ブラージの投げたボールはフィディオへと渡る。今まで誰にも止められなかったはずの十六夜綾人の最強の必殺技を止められた。そんな衝撃が走っているイナズマジャパンには、このカウンター返しはあまりにも痛い。

 

「っ!戻れ!」

 

 ただでさえディフェンダーの十六夜が相手ゴール前にいて、その上カウンターを仕掛けていたから全体的に前のめりになっている状況。ここでの反撃は、オルフェウスにとっての絶好のチャンスである。

 

「行くよ!」

「来い!」

 

 淀みないパスワークと丁寧で素早いドリブルを前にボールを奪うことは叶わずゴール前まで到達される。そして、そこではフィデイオがボールを持っていた。

 

「フィディオ!あの技を見せてやろうぜ!」

「うん!今なら絶好のチャンスだよ!」

「そうだね……うん!行くよ、ラファエレ!アンジェロ!」

「おう!」「うん!」

 

 フィディオ、ラファエレ、アンジェロの3人はボールを囲うようにして立つ。そして、3人同時に地面に拳を突き付けると足元から巨大な山が出現する。

 

「な、何?あの山……!?」

「どんどん大きくなっていますよ!?」

 

 突如として現れた山はボールと3人を頂上に置きつつ、空高く伸びていく。その山が伸び切ると、山からボールへとエネルギーが集まっていく。

 

「魔法陣……?何をするつもりだ……一体……!?」

 

 山頂ではボールにエネルギーが集まって神秘的な光を纏っていた。そして、ゴールまでの間には12枚の魔法陣が現れている。

 

『マウント・オリュンポス!』

 

 3人が同時に蹴るとボールはゴールに向かって突き進む。その道中にある魔法陣を通過する度にシュートが放つ光は強くなっていく。

 

「真空魔V2!」

「ザ・マウンテンV2!」

 

 飛鷹と壁山が必殺技でブロックを試みるも容易く打ち破られ……

 

「イジゲン・ザ・ハンド改!」

 

 円堂が必殺技でシュートを逸らそうとするも……

 

『ゴール!フィディオ、ラファエレ、アンジェロの強力な必殺技がイナズマジャパンのブロックを貫き、ゴールを決めたぞ!』

 

 生み出された半球は貫かれボールはゴールに刺さった。

 

『強力な必殺技ですね……!ブラージ選手の必殺技だけでなく、あんなシュートまであったとは……オルフェウス側の力をまだ甘く見ていたようです……!』

『4-2!オルフェウスが2点差に戻しました!イナズマジャパンを追いつかせません!』

『イナズマジャパン側にとっては中々苦しい展開ですね……!』

 

「本当に苦しい展開だろうね……十六夜綾人の強力な必殺技はジジ・ブラージの必殺技に止められる。フィディオ・アルデナ単独でも止められていないのに、もっと強力な必殺技を隠し持っている。しかも、得点のされ方も、絶好の得点チャンスを潰され手痛いカウンターを喰らってのもの……その上でオルフェウスとイナズマジャパンの差が浮き彫りになってしまった……どうするの?シスター?」

「どうしようもない。私たちは眺めるしか出来ないって言ったでしょ?」

「えぇ……じゃあ、何か打開策はあるの?」

「さぁ?でも、シュートの方は簡単に何とか出来る方法が1つあるわ」

「え?」

 

 観客席でAとLが話す中、フィールドでは鬼道が十六夜と話をしていた。

 

「これ以上突き放されるのはマズいな……十六夜、ちょっといいか?」

「……ああ」

「お前には――」

「フィディオのマンマーク……向こうの攻撃時にアイツからマークを離すな、シュートを撃たせるな。違うか?」

「――その通りだが……行けるか?」

「とりあえず、前半残りだけやってみるわ」

 

 そう言って十六夜は円堂の方へ向かう。一方の鬼道はベンチにやって来る。

 

「監督、十六夜と風丸のポジションを変更したいです。構いませんか?」

「意図は?」

「向こうの攻撃時にフィディオのマンマークを頼みたいからです。また、これでDFを1枚減らして3枚にするのは余りにも危険ですので風丸を下げます」

「分かった。それと鬼道。1点差だ……前半を終えるときに1点差以内におさえておけ。いいな?」

「はい。ですが、理想は同点以上ですよね?」

「出来るならな」

「分かりました」

 

 引き返すと、鬼道は他に指示を出す。

 

「円堂、壁山。いいか?」

「何だ?」

「何ッスか?」

「前半残り、フィディオのシュートはオレが止める。他のシュートは任せる。頼むわ」

「おう!任せておけ!」

「はいッス!」

 

 そして、それぞれポジションにつく。

 

『イナズマジャパン、ポジションを変更してきましたね。MFの風丸とDFの十六夜がチェンジし、風丸は飛鷹と入れ替わってサイドにですか』

『攻撃力を強化してきたということでしょうか?前半の内に少しでも追いついておきたいという考えでしょうかね』

 

 そのままイナズマジャパンのキックオフで試合再開。ボールは……

 

「さてと覚悟しろよ、フィディオ」

「なるほど……そう来たか……」

 

 豪炎寺が持っている。だが、攻撃側であるはずの十六夜はフィディオの前に立ちはだかり、攻めようとしない。

 

「マンツーマンディフェンス。フィディオ・アルデナにシュートを撃たせない……いや、ボールを持たせないためのディフェンス。他のことを一切無視したディフェンスね」

「……でも、大丈夫なの?フィディオ・アルデナ以外にも、円堂守からゴールを奪える選手は相手に居るから危険なんじゃ……」

「別に問題ないでしょ。あくまで十六夜綾人はフィディオ・アルデナに撃たせない……実質10人対10人にするためのマンマーク。向こうの要を封じているのだから、他の相手くらいは、やってもらわないと困る」

「確かにね。しかも、そうすればあの3人の必殺技も撃たせないことが出来るのか」

「うん。簡単に出来るあの必殺技の対策方法」

「でも、今はイナズマジャパンの攻撃だよね?それなのにもうマンツーマンディフェンスを?」

「いいのよ。だって、フィディオ・アルデナに貼りついている以上、彼らはカテチナオカウンターを発動できないんだから」

「なるほど。攻撃面でもこのマンマークには意味があるわけか」

 

 カテチナオカウンターを発動しようとすれば十六夜がそのまま一緒に入ってしまう。それでは発動しても意味が無い。

 

「おっと、自由にはさせねぇから」

「なるほど、振り払うのは大変そうだ」

 

 動かない2人を置いて試合は動いていく。鬼道と不動が指示を出してボールを動かしていく。

 

「今だ!染岡!豪炎寺!」

「おう!行くぜ!」

 

 ボールは染岡に渡り、そのままシュート体勢に。

 

『ドラゴントルネードR!』

 

 放たれたシュートは空中にいる豪炎寺の下に飛んでいき、豪炎寺が相手ゴールへとダイレクトで放つ。

 

「何だアレは……!?」

 

 豪炎寺が放った直後。ゴール前にいた4番のアントンは両手を上に掲げ、彼の頭上には無数の武器が出現していた。

 

「ヘファイストス・ウェポン!」

 

 そして両手を振り下ろすと武器たちが一斉にシュートに向かって突撃していく。次々とシュートに当たって行き、ある武器は砕かれ、ある武器は炎を前に燃え落ちる。だが、着実にシュートの威力を削ぐことに成功していて……

 

「今度は巨人!?」

 

 アントンの隣には3番のオットリーノが控えている。彼の背後には棍棒を携えた巨人の姿があった。

 

「オリオンブロック!」

 

 シュートが全ての武器を突破し、巨人の前に到達した瞬間、巨人は勢いよく棍棒を振り下ろす。

 

「ハッ、凶悪なコンボ技だな……」

 

 シュートは地面に叩きつけられ、勢いを完全に失っていた。それをオットリーノが確保する。

 

「無数の武器をぶつけ、威力とシュートの速度を下げる。そして、あの巨人が確実に棍棒をぶち当てる。1つ1つでも厄介だが、スピードやパワーだけじゃ突破できないってわけか……」

「そうだね。アレは対人では危険すぎて使用できない。だから、シュートを止めることだけに特化した必殺技……あの2人がそれぞれ思考して編み出した必殺技たちだよ」

「しかもアレを何とか超えてもブラージが控えている……最悪すぎる状況だな。あの守備陣を超えてから撃つしかねぇか……」

「でも、この状況はこちらにもちょうど良い。利用させてもらうよ」

 

 ボールの保有権はオルフェウスに変わる。だが、十六夜とフィディオの状況は変わっていない。フィディオをフリーにさせないよう十六夜が貼りついている。

 

(オフェンスもディフェンスも消極的。シュートを撃たせない……いや、そもそもボールを受け取らせない気だね。無理に振り払おうとしてもいいんだけど、振り払える確証がない以上それは最終手段だね)

(少しくらい走り回ってくれれば体力消費もさせられると思ったが……流石に安直すぎたか。全てを考え、今優先すべきはコイツに撃たせないこと。ボールを持たせないことが一番確実なプラン……だがクソ、歯痒さがあるな……)

 

 ここでデモーニオがボールを持つ。

 

「妥当な判断ね。オルフェウス側は、フィディオ・アルデナに固執する必要もなければ、時間を費やす必要も無い。攻めることは別の選手にも出来る」

 

 ボールを持ったデモーニオはフィディオの状況を確認しつつ、アンジェロ、ダンテにパスを出しつつ攻め上がっていく。

 

「スレイプニル!」

 

 再びアンジェロに渡り、必殺技で飛鷹を突破する……だが、

 

「スピニングフェンス!」

 

 風丸がフォローに入り、必殺技で奪い取る。

 

「佐久間!」

「ああ!」

 

 そして、佐久間へとボールが渡る。

 

「うーん、フィディオ・アルデナも十六夜綾人も動かなくなったね」

「動かないじゃなくて、下手に動けない。十六夜綾人はフィディオ・アルデナがどこに行こうと一緒に動いてやりたいことを封じている」

「それはそうだけど……」

「そして、向こうも同じ考え。十六夜綾人にボールを持たせないよう、フィディオ・アルデナがはりついている。十六夜綾人の突破力はかなりの脅威……単独での必殺技がキーパーに通用しないとしても、何かを起こす可能性があるからね」

「なるほどねぇ……つまり、お互いがお互いを警戒しているから硬直状態に陥っている……と」

「そういうこと。この状態はある意味では誰にとっても都合が良いのよ。現時点でのお互いのトップをお互いのトップが封じている。無理やり打開しようとしなければ悪化はしない。……まぁ、試合から浮いちゃうのはしょうがないけど」

 

 と、佐久間がどんどん攻め上がっていく中……

 

「ブラインド・ハデス!」

「……っ!?」

 

 突如、ボールが消え失せた。

 

「おいおい……ダンテのアレ、神出鬼没かよ……」

「攻守共に刺さる必殺技だね」

 

 そして、ボールと共に現れるダンテ。デモーニオへとパスを出すが、そこを不動がカット。そこから鬼道へとボールが渡る。

 

「読まれていたか……」

「フィディオが居ないに等しいなら、取りあえずお前に来るだろうってな」

「そう……それならそのことを考慮した策を考えるよ」

 

 鬼道がボールを運ぶ中、ベントがブロックに行く。

 

「ここで止める!」

「ここで抜かせてもらう!真イリュージョンボール」

 

 と、鬼道は向かってくるベントに対して必殺技を放つ。しかし、そんなことお構いなしなのか両腕を広げて猛スピードで駆け寄っていく。そして、生まれる風の流れを両手に集め、鬼道の前に到着すると同時に前に向かって交差するように両手を振りかざす。

 

「ボーラスマッシュ!」

 

 それによって両手に集まった風の流れが融合して強烈な暴風となり、鬼道を吹き飛ばし、増えたボールを霧散させた。

 

「……おいおい、ベントもかよ。さっきから見たことねぇ技のオンパレードなんけど?」

「そりゃそうさ。皆、成長している。進化しているのはイナズマジャパンだけじゃないよ」

 

(なるほどね……あの暴風なら、相手のシュートに向かって放てば十分な壁になる……か。そういや、ベントのヤツって結構スピードがあったっけな。よく使う風丸や吹雪のスピードを活かした安直な無茶ぶり(キラー)パスは控えた方が良さそうだな……)

 

 ボールはベントが奪い、何度目かの攻守反転。

 

「デモーニオ!」

「戻れ!」

「ラファエレ!」

 

 ベントからデモーニオを中継してラファエレまで、フィールドを縦断するロングパスが通る。守備を整えようとするイナズマジャパンをよそにラファエレがシュート体勢に入る。

 

「フリーズキャノン!」

 

 そして放たれた必殺技。それを止めようとする影が割って入る。

 

「ザ・マウンテンV2!」

 

 壁山の必殺技が阻止しようと立ちはだかる。……だが、徐々に山には亀裂が入っていく。

 

「俺も……!」

「飛鷹!ペナルティーエリア内まで下がれ!」

「う、うすっ!」

 

 飛鷹が割り込もうとしたところを不動が指示を出し、立ち位置を後退させる。

 

「そんなブロックじゃ止まらないぜ!」

「うわぁああああああ!」

 

 すると、壁山がシュートの前に吹き飛ばれる。だが、シュートと円堂の間にはまだ飛鷹が居る。

 

「真空魔V2!」

「そういうことか!」

 

 飛鷹が必殺技を発動した瞬間、円堂が何かに気付いた様子で前へと走り出す。

 

「後は任せてくれ!」

「キャプテン!」

 

 飛鷹が捌けると円堂が跳び上がり……

 

「いかりのてっついV3!」

 

 円堂が進化した必殺技を放つ。背後に現れた魔神は拳を堅く握りしめ、真空魔で発生した空間にあるボールをそのまま地面に叩きつける。

 

「うぉおおおおお!」

「何!?」

 

 ボールは地面に埋まり、シュートが止まる。脅威的なシュートをしっかりと止めきったのだ。シュートを止めたことで湧き上がるイナズマジャパンを応援する観客たち。

 

「よぉし!反撃だぁ!」

 

 ボールは円堂から鬼道へと渡った。

 

「そういうことですか!」

「え?急にどうしたの?」

 

 と、ベンチでは目金が立ち上がり叫んでいた。

 

「不動くんの狙いですよ!彼のシュートは貫通力に優れていて、イジゲン・ザ・ハンドでは相性が悪い」

「それで、1点目を取られてしまったんだよね」

「だけど、彼のシュートはそれ以上に速いのが問題。いかりのてっついを放とうにもタイミングが合わせるのが困難。だから、十六夜くんが止めた動きをヒントにしたんです」

「十六夜が止めた……そういうことか。飛鷹の必殺技で、シュートを一時的に押し止める」

「その状態で円堂くんがいかりのてっついを使って上から叩きつける!これは凄いですよ!これなら、相手のシュートがどんなに速くても、確実にタイミングを合わせることができる……!さしずめ」

「真空の鉄槌……かな?」

「って、何で言っちゃうんですかぁ!?折角の最後を奪わないでください!?」

「強力だが、飛鷹がペナルティーエリア内に居ないといけないのが欠点か……」

「でも、うまく嵌まれば相手の必殺技に対して、円堂くんが必殺技を発動できないで点を取られる事態は避けられそうだね」

 

 ベンチではこの連携必殺技に可能性を見出していた。

 

「1人でダメなら2人……2人でダメなら3人で……こういうのを見ると雷門中の空気を感じるというか……円堂守率いるチームらしいわね」

「そうだろうね」

「でも、そのチームプレー……味方ありきのプレーでは満足しない選手が居る」

「味方ありきのプレーって……言い方悪いよ?……でも、何でだろうね。ちょっと前の彼はそれに否定的じゃなかったんでしょ?寧ろ、円堂守と共にやっていたような……まさか、シスター。何かした?洗脳とか調教とか……」

「……後で双子会議を開こうかしら?」

「……調子に乗りました」

「一応言っておくと何もしていないわ。介入したのチームK戦後からだし……」

「そっか……その前には既に変わっていたか。でも、何で?」

「それは私も謎なのよね。何故、十六夜綾人は変わってしまったのか……」

「留学で何か……いや、それも不思議なのか。別にオルフェウスのメンバーは個人能力主義みたいなチームじゃなくて、彼らもどちらかと言うとチームプレーには賛成寄り。だから、彼らの影響とも言い難い。言い難いのに、明らかに思想が変わった……」

「直感だけど変わったんじゃなくて戻ったんだと思うわ。急に見せるようになった二面性のプレーもそうだし、どちらも協力的なプレーは前より格段に減った」

「二面性のプレー?」

「気付かない?十六夜綾人は意識か無意識か、理性的なプレーと本能的なプレーを使っている。基本は理性、時々本能って感じね」

「へぇ……でも、変じゃない?だったら、何でこの大会まで本能的なプレーがほとんどなかったの?」

「封印していたか、封印されていたか……よく分からないわ。一体、何が本当なのか……まぁ、十六夜綾人って不思議の塊みたいな存在だし、いいんだけど」

 

 実質、10人対10人となったこの試合。前半終了の時間まで刻一刻と迫っているのであった。




登場必殺技紹介

マルス・ザ・ガード 属性 山 成長タイプ V 使用者 ブラージ
武者修行の為にイタリアに来た十六夜から円堂守の話を聞いて感銘を受けたブラージが、苦難の末に習得したというマジン・ザ・ハンドを参考にして編み出した必殺技。
胸の前で両腕を交差させると同時に心臓に気を限界まで貯め込み、両腕を勢いよく広げると同時に貯め込んだ気を解放する。すると、ブラージの背中からローマ時代の鎧と兜を装備したマジンがブラージと同じポーズで現れ、握り込んだ両拳でボールを力強く挟み込む。そして、ボールの勢いがなくなるとマジンの姿は消えて、両拳に挟み込む格好でブラージがボールをキャッチする。
なお、心臓に貯めた気を利き手に移す過程を省略した為なのか、技の威力は参考にしたマジン・ザ・ハンドはおろかコロッセオガードを遥かに超えており、フィディオのオーディンソードですら止める事が可能。
技名はローマ神話の軍神マルスに肖ったものである一方、参考にしたマジン・ザ・ハンドとその使い手である円堂守に対する敬意を表する為にあえてマジン・ザ・ハンドに似せたものにしている。

h995様よりいただきました。ありがとうございます。


マウント・オリュンポス
シュート技 使用者 フィディオ、ラファエレ、アンジェロ
チーム名のオルフェウスはギリシャ神話に登場する詩人らしいので、ギリシャ神話に登場するオリュンポス山から名前を拝借しました。
3人同時に地面に拳を突き付けると足元から巨大な山が出現してボールと共に上昇します。
上昇しきると山からボールにエネルギーが集まって神秘的な光を纏い、ゴールまでの間には「オリュンポス十二神」にちなんで十二枚の魔法陣が現れ、ネオ・ギャラクシーのようなモーションで3人同時に蹴り、魔法陣を通過するたびに光は強くなります。

ヘファイストス・ウェポン
使用者:アントン
シュートブロック技
両手を上に掲げると同時に無数の武器が出現し、振り下ろすと同時にシュートに突撃して止める技です。

オリオンブロック
使用者:オットリーノ
シュートブロック技
背後に棍棒を持った巨漢(オリオン)が現れ、棍棒をシュートに叩きつけて止める技。

これら3つはGanzin様よりいただきました。ありがとうございます。

ボーラスマッシュ 属性 風 成長タイプ V シュートブロック可 使用者 ベント
オルフェウスの中でも上位のスピードを持つベントが自身の強みを生かす為に編み出したディフェンス技。
相手プレイヤーやシュートされたボールに向かって、両腕を広げて猛スピードで駆け寄る。その際に生まれる風の流れを両手に集め、対象の前に到着すると同時に前に向かって交差するように両手を振りかざす。それによって両手に集まった風の流れが融合して強烈な暴風となり、相手プレイヤーやボールを吹き飛ばす。
技名に含まれている「ボーラ」とは、アドリア海やギリシャ、トルコなどで北または北東から吹き付ける強風の事。


真空の鉄槌 属性 山 成長タイプ V 使用者 円堂守(メイン)、飛鷹征矢
ディフェンス技としては珍しい真空魔と怒りの鉄槌の連携必殺技。なお締めはGKがボールを止めるキャッチ技である為、GKである円堂がメインを務める。
シュートされたボールを真空魔で発生した空間の裂け目で押し留めている間に上から怒りの鉄槌を叩き込むといったシンプルな構成。単純に真空魔→怒りの鉄槌を連続でぶつけるよりも威力が高くなっているものの、真空魔をペナルティエリア内で使用する必要がある為にDFの飛鷹がGKの円堂と横並びに近い状態になるというディフェンス面でのリスクがある。

この2つもh995様よりいただきました。ありがとうございます。

次回、少女の瞳に映るもの
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